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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十八章
  探索二日目×神の怒り

「でえええええええええええいっ!」

綾那は歓声と、拍手喝采の中にいた。

「綾那、すごいのー」

「秘策といえば秘策だな」

綾那の新たな出し物は、猿・・・・ではなくて、槍の演舞だった。まさに逆転の発想というか、シンプルイズベストというか。綾那が槍を使うなんて、当たり前すぎてそれが演目になるとはな。空手の発想かな、板を割り続けるあれなのか。

「ちょわああああああああああっ!」

越後には綾那くらい小さな武将はいないみたいだし、この槍が演舞どころかリアル戦国最強の槍捌きだなんて普通は思わないだろう。

「じゃあ、今度は誰かこの薪を誰か投げるですよ!」

「おーぅ!じゃあ、いくぞー!それっ!」

町の人が放り投げた薪は、緩やかな放物線を描いて綾那のもとへ飛んで行って・・・・。

「ちょいやああああああああっ!」

「おおっ!」

その薪は、見事に空中で真っ二つ。綾那の槍はそれだけではなかった。

「まだまだですよーっ!二本が四本、四本が八本なのですっ!」

「お嬢ちゃん、いいぞー!」

「そしてお次は、八本が十三本!」

倍ではないが、凄いとは思う。

「一真様!終わったですよ!」

「・・・・っと。ではでは、勇壮な槍捌きに続いて、昨日好評だった私がやる水芸や火球による芸をしたいと思います!」

昨日見たお客さんは、やれやれーとか待ってましたとか言っていたが、初めて見る人には頭が?だったけど。

「えーと、初めて見る人もいるので、まずは昨日お見せした事から参ります!」

といい、扇子から水を出して道具に扇子を叩くと、水が出ることに驚く観客。そして、観客の一人に扇子を持ってもらい、その扇子の先から水が出た。返してもらったあとに、ある物で、息を吐くとシャボン玉が出てきた。それを目で追行けるように見る。そして今度は大きなシャボン玉を作った。

「いいぞ、兄ちゃん!!!」

「あの水の球きれーい!」

「では、水芸は終わりにして、続きましては炎のよる芸をしまーす!まずは昨日と同じことをっと」

手から火球を出して、ジャグリングを始めた。今回は火球を空に止めながら火球を生み出してから、火球が鳥の形になり、俺の周りを飛びながら消えていく。そのあとに、今度はシガーボックスだったがただの箱ではなく炎で作った箱である。それを次々と技を成功させてから、三つの箱を空高く上がったと思ったら戻ってこないことに疑問を持つお客。そしたら炎の大型の鳥が舞い降りてきてから、消えた。

「あの大きな鳥はどこに行ったんだ?」

「では、お客さんの右肩に止めてみましょう。3つ数えたらそこに止まっています。3、2、1、0!」

カウントを始めたあとに、見ている客の右肩に小さいが炎の鳥が止まっていたことに驚く客人。でも、熱くないから本物の小鳥みたいな感じだった。

「鳥さん、かわいい!」

「この鳥、熱くねえな!凄いぞ、兄ちゃん!」

鳥を消してから、一礼をした。これで今回の俺の芸は終了。

「さて、炎と水の芸が終わったあとは、我が一座の姫君による華麗な鞠捌きをご覧くださーいっ!」

「じゃあ、行ってくるの!」

俺が終わったあとに、元気一杯にハイタッチして、今度は鞠が舞台と化した大通りへと飛び出していく。鞠の蹴鞠と、シメの笛と舞によることで、今回の興業も終わり、おひねりを回収していた。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

俺達の活躍で、昨日の倍くらいに成功した。

「今日は頑張ったな、ちびっこ!」

「あっ!昨日の!ありがとうですよー!」

「お嬢ちゃん、可愛かったわよ」

「ありがとうなの!」

「兄ちゃんも格好よかったぞ!まるで本当に水と炎を操っていたな!また見せてくれよ!」

「ありがとうございます!そのときはまたお見せいたします」

俺は箱を持ちながら、おひねりを回収して、鞠も昨日のように裾をつまんでいた。綾那もおひねり回収のために、もらって回っている。俺と同じ箱を持ちながら。

「一真様、今日の綾那はどうですか?」

「ああ。今日は文句なしの大手柄さ!綾那も鞠もお疲れさん!」

正直、こういうことは初めてだけど、こんなにうまくいくとは思わなかった。町の皆も喜んでくれたし、悪い空気も少しでも祓えるならと。こういう仕事も向いているのかな?でも水芸とかマジックは現代だと仕掛けが分かってしまうが、俺がやっているのは仕掛けなんかないんだよな。

「みんなが喜んでくれたから、鞠も嬉しいの!一真の口上も格好よかったけど、芸もすごかったの!」

「ありがとなー」

そんな事を言いながら、二人の頭を力一杯撫でる。

「えへへー。もっとなでてもいいですよー」

「ずるいー。鞠も鞠もー!」

「はいはい」

まあこれだけ稼いだから、普通の旅芸人は店じまいして酒場や市にでも行くかもしれないけど。そこで旅に必要な情報を集めるのは、悪くはないはずだし。

「あ、あの・・・・」

そうして賑やかにじゃれ合ってる俺達に掛けられたのは、小さな小さな声だった。

「ん?なあに?」

鞠よりももう少し小さいくらいの女の子だった。いきなり顔を覗き込んできた鞠に、ちょっと驚いた様子ではあったけど。

「あの・・・・これ・・・・」

「くれるの?」

おずおずと小さな手を差し出したまま、その子は黙ってこくりと頷く。

「蹴鞠に舞・・・・とってもじょうずだったから・・・・」

「わあ・・・・・」

彼女から鞠に受け取ったのは、一枚の穴あき銅貨。それは表の文字も判別できないような擦り切れたびた銭だったけど、受け取った鞠の笑顔は満開だった。

「ありがとうなの!」

そんな笑顔を向けられて恥ずかしかったのか、驚いたのか。女の子は顔を真っ赤にすると、そのままぱっと駆けだしていった。

「一真一真!おひねり!鞠、あんなちっちゃい子からもおひねりもらっちゃったの!」

「良かったな!あの子も鞠が受け取ってくれて、喜んでくれたみたいだよ」

「うん。とっても嬉しいの・・・・。ねえ、一真。これ・・・・」

「・・・・いいよ。それは鞠の物だ」

「いいの!?」

「無論だ」

そもそも俺たちは金を稼ぎに来たわけではない。その一文銭は、鞠にとっては一文どころか、お金に変えられない価値があるからだ。

「えへへ。嬉しいのー」

「うらやましいのです。綾那もさっき足軽の人から貰ったおひねり、別にしとけばよかったです」

「あげないの。これはね、鞠の宝物にするの!」

「そうだな。さてとぼちぼち撤収して、市場で情報を集めに・・・・・」

行くかと言おうとしたら、そのときだった。

「この、無礼者がっ!」

・・・・そんな男の叫びと、か細い悲鳴が町の通りを駆け抜けていったのは、目の前で起こったことに一瞬で判断し、死神を来れるように準備した。

「え・・・・・」

綾那と鞠は、一瞬理解が出来ていなかった。

「あ・・・・・」

人相の悪い男と、彼の握る血の滴る刀。そいつの足元に崩れ落ちていたのは・・・・・。さっき鞠におひねりをくれた、あの女の子の無残な姿だった。

「ああ・・・・・・」

ここにいる兵の仕事は、罪のない町人を引っ立てたり、無礼打ちされた亡骸を運んだりと。綾那の情報では、ちゃんと聞いていた。それにちゃんと理解もしていたのであろうが。

「ああああああ・・・・・・・・っ」

目の前で行われたそれは、想像を超えた感情的で、理の通らない仕打ち。

「(死神、準備はいいか)」

『(へい!いつでもいけますぜ、旦那!小さい女の子の命を消したあの野郎は許すわけにもいかないです)』

で、俺の隣にいた綾那は前に行きそうだったので、止めた。

「・・・・待て、綾那」

銃のように放たれた弾丸みたいに行きそうになった綾那の身体を押さえた。

「何でですか!何で止めるですか!一真様!」

綾那の咆哮の意味も分かるし、理解も納得も共感もできる。

「これはお前の仕事ではないし、綾那が行くと敵だと思われて俺達の任務は失敗する。耐えろ」

小さな子供があの武士の足にぶつかって、ただそれだけで切り捨てられた。

「でもですね!」

それでも前にと行こうとする綾那だった。

「・・・・・・綾那」

ここでもう一人止める人物がいた。鞠だ。

「いっちゃ、ダメなの」

綾那の前に静かに立った、鞠。

「鞠様・・・・・ッ!」

さっきまでの楽しそうな様子はもうどこにもない。俺を振りほどこうとして、鞠に噛みついてくるような勢いで、綾那は息苦しくなるほどの怒気を露わにしている。

「いっちゃダメなの」

そんな綾那と対照的に、鞠は静かに綾那を見つめる。俺は綾那を動けなくしてから、鞠にあとは頼んだといって姿を消した。そして、大閻魔化になって斬り捨てた男のところに行っていた。

「・・・・・・・・ッ!」

俺がいない間に、鞠の真っ直ぐな瞳で、綾那を捕縛していたが力が緩んでいった。殺気と怒気も封じ込めているから大丈夫だ。一方我は、切り捨てた男と切り捨てられた女の子のところにいた。これは許されないことだ、いくら正当防衛でも小さな女の子にまで斬るとはな。

「おい貴様。何したのか分かっているのか?」

「なんだお前は!旅人情風情が武士に逆らうのか!」

我の格好は全身真っ黒で、先ほどの服装とは違うし、声も変えてあるから問題はない。しかも、周りにいる町人にも我の姿が見えるようにしてあるからな。

「貴様、無礼打ちにも限度があろう。この小さな命を考えたことがあるのか?」

「武士に逆らう者は斬り捨てても構わんのだ!何ならお前も斬ってやるぞ!」

「そうか。だったら、貴様を黄泉路に送ってやろう!」

言った瞬間に翼を展開。だが、6対12枚だが色が違っていた。大天使化は金色の翼だが、大閻魔化は真っ黒の翼だ。

「な、何だ貴様は!」

「我は閻魔の化身なり。貴様を苦しまずに黄泉路に送ろう。来い!我の僕よ」

地面から黒い魔法陣が現れたことで驚く町人と切り捨てた春日山武士と綾那と鞠。そして、魔法陣から現れたのは全身が黒くて、鎌を持っていて、骸骨であった。

「何あれ?」

「あ、あれは・・・・し、死神!」

「この町に死神が現れたぞ!目を合わせるな!鎌で命を持ってかれるぞ!」

「死神を召喚したあの者はいったい?」

「我の名は閻魔。または閻魔の化身なり。我は罪人を裁く者なり、そこの罪人よ。無罪な小さな命を終わらせたことを後悔するがいい。行け、我の僕よ!」

《へい、旦那。この悪しき魂を地獄に送らせまっせ!》

死神が喋ったことにより、さらに恐怖でいっぱいの町人に春日山武士。綾那の怒りはもうなくなっていて、こちらを見ていた綾那と鞠。

「あれは・・・・一真様?」

「あれも一真なの?」

と言っていた瞬間に武士の命を散らせた死神。鎌で頸を取り、その頭を倒れた武士のところに置き、その悪しき魂を持って冥界に帰った。そして、周りには町人がいたが、そこに駆けつけた武士たちが我を見た瞬間、ある噂を思い出した武士と町人。

「そういえば噂によると、12枚の翼を持った神様がいると。それは金色で悪しき者を倒すと聞いたが」

「今のあいつは、黒い翼だ!あいつも神だっていうのか!」

「貴様!我々の仲間を殺したのか!万死に値する!お前ら、こいつを引っ立てろ!」

とこっちに向かってきたが、我が手をかざすと向かってきた兵士たちを瞬間に燃やした。突然の超自然発火能力によりビビった武士と町人たち。我は空間から剣を出し、刀から鎌にした。死神が持っているのと同じように。

「我に掛かってくる者はこの鎌で地獄に送ってやる。来い、雑魚共!」

言いながら、向かってくる武士たちを一閃、また一閃として次々とばったばったと切り倒す。向かって来ない武士たちに警告を言った。

「城にいる長尾晴景に言いな。今度はお前の命を刈ると。あと、また無礼打ちをしたり、無罪な町人を引っ立てたらその武士に者を地獄に落とすと言っておけ。分かったか!」

我は鎌を武士に向けて言ったら、腰を抜かした武士たちは無言で頷いた。そして、周りには町人や武士たちはいなくなっていた。いるのは、綾那と鞠だけ。

「さてと、この武士たちも塵にしなければ」

切り倒した武士たちを発火させて、塵にしたあとに、切り捨てられた女の子に近づく。するとその母親なる者が我に近づく。

「閻魔様、この子のためにありがとうございました。きっとこの子もお喜びでしょう」

咄嗟に大閻魔化から大天使化に変わったら、翼は金色になっていた。

「我の名は二つ。一つは閻魔の化身。二つは神の頂点にいる創造神だ。この姿は創造神と呼べ。この女の子の魂は我が黄泉路へ送ろう、そしてそなたの子としてまた生まれるようにしようと思う。きっとこの子もそなたも喜ぶであろう。ではさらばだ」

といって、この子の小さな魂を持って、黄泉路にと行った。そして、係の者に頼んで輪廻転生をさせるように言った。頷きながら小さき魂を渡して生まれ変わりとして転生システムを作動させた。そして我は再び大閻魔化になって冥界に行った。ちょうど、女の子を斬り捨てた武士だったので、閻魔の代わりに申した。この者は無実なき小さき者に斬り捨てた男。それは例え無礼打ちであっても限度があると、そして判決は地獄行。そのあとに次々と春日山武士が連れて来られて我を見た者は、顔を青くしていた。現世で見たのが、あの世でも会ったからだ。そりゃ驚くだろうけどな。こいつらも判決は同じだが、強制労働をさせることに。そして、我が現世に戻ると悲しい顔をしながら歩いていた綾那と鞠。我は大天使化から解除してから近づいた。 
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