戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
十八章
春日山城下潜入
神社に着いたあとに、桐琴と小夜叉の相手をしたけど、俺が勝ったけどな、恋が使う方天画戟にして使ったけど。次の日になった。拠点である神社の指揮を一葉達に任せて、俺達実動隊がやってきたのは春日山の城下だった。
「ふむ。ここがねぇ」
「あんまり賑わっていないの・・・・」
「町中の空気がピリピリしてる感じがするです」
「恐らく城の異変が城下にも伝わっているのでしょう」
人の往来もまばらだし、綾那の言う通りに何だかピリピリムードという感じだ。これは前にもあったな、そうだ井之口だ。すると、通りの向こうにいた武士と目が合ってしまった。・・・・いかにも目つき悪そうな武士と視線を強めるよりも早く、俺は笑みを浮かべて頭を下げた。本来なら罰当たりだけど、あとでそれを払ってもらうとするか。
「・・・・さっさと動くか」
あんな連中に絡まれると諜報活動できなくなるからな、それに面倒な感じになりそう。俺は皆を促して、その場からこそこそと立ち去る事にする。
「(小波、今春日山に入った)」
「(お待ちしておりました。春日山城を望む、寒梅という旅籠にお越しください。大通りを西に向かえばすぐに分かるはずです)」
小波の情報を聞きながらスマホで目的地であるところまでの地図を出す。
「(了解。待ってろ)」
スマホで出た道を俺達は急ぐ。
「ふぅ~~~~~~~~・・・・」
「ご無事で何よりです」
小波の誘導とマップを見ながら進んでいったおかげか、変な連中に絡まれることはなかった。目的地である旅籠に辿り着いた。マップは渋滞予測ではなく、変な人に絡まれないようにしたからだ。
「・・・・・・・・・」
けど、綾那だけは何か気になるようで、他の皆みたいにリラックスした様子もなくじっと小波を見つめる。
「どうかなさいましたか?綾那様」
「・・・・小波はその格好で町中を歩いてるです?」
「あ・・・・・」
皆はそう思ったが、俺はその姿ではなく変装でもしたんだろうと思った。陣の中や野山で動いてるところはその姿でも大丈夫が、この町中ではすぐに他国の草だと分かるしな。
「その・・・・外に出るときは、変装しておりますが・・・・」
「やはりか、その格好だとバレるしな」
「町娘とかですか?」
「お姫様かもしれないの!」
「あえて男衆の格好の可能性も・・・・」
まあ、小波の普段着は想像できないんだけどね。
「・・・・内緒です」
こうなるわけだ。まあ、いつか見せてもらいたいけどね。
「それより、ご主人様。今後のご予定は?」
「とりあえず、城内に忍び込むのは、難易度高いから、まずは町内の調査だな」
「はい。念のため変装道具を一式ご用意しております」
「さすが小波です!これを使って小波も町娘になるですね!」
「で、ですからそれは・・・・!!」
小波の反応からして、町娘の格好だったのだな。というか隠したのに自滅してどうするよ。
「それは置いといて皆は変装の格好を選べ。俺は俺で何とかする」
「色々あるですねー。では綾那はこの・・・・・。お猿にするです!」
「着ぐるみではないか!?」
「だめです?」
「やめとけ」
猿回しの衣装とかならまだ分かるような気がするが、猿の着ぐるみは無理がある。というか、ここは戦国時代だぞ。なんで着ぐるみがあるのやら。
「良い案だと思ったですが・・・・」
それ以前に、その格好は武士のプライド的にはいいのか?綾那。
「ほえ?何です?」
「なんでもない」
まあいいんだろうな。というか、これを用意したのは。
「す、すみません・・・・。何とか皆さんの緊張をほぐそうと思って・・・・」
「気遣いありがとな」
あれが小波の全力の笑みなのか。まあ可愛いからいいけど。
「綾那は今のままでいいと思うぞ?ころも鞠も、今の服だったら比較的目立たないと思うし」
「綾那様は、少々跳ねっ返りの足軽の娘と言えば、不審を抱かれないと思います」
「むぅ・・・・なんか悔しいのです。綾那は立派な武士ですのに!」
「そこはほら、我慢ということで」
着ぐるみがOKで足軽の娘設定は駄目なんだ。基準が分からん。
「むにゅ~・・・・」
「でしたら、香具師の一座で、軽業芸人ということにすればいかがですか?」
「芸人!・・・・綾那は武士ですのに!」
「だから!そこは我慢をしろ!」
「一真様は我慢我慢ばかりなのです」
「やかましいと言ってるだろうが、阿呆!」
といってハリセンで叩いた。まったく、俺達は諜報活動するために来ているんだから。武士の誇りを捨てろっつうの!
「全く、だから綾那は向いていないとも思ったんだよ。今の俺たちが何しにここに来たのか。任務に集中したいのなら誇りを捨てろ。あと約束もしたろ」
「うぅ・・・・・。わかったです」
「お頭、私はどうしましょう?」
「流れの浪人。という設定はどうだろ?」
「城内を調べるには有効かと。噂を聞いてはせ参じたと言えば、それなりに信じてもらえるでしょうし、切り札もあります」
「切り札?」
「後程お渡ししますれなば、今の役割の確認を」
「了解。ころの役割は」
「はい。私は仕官を希望する浪人になって、城内に入り込めば良いのですね」
ころは飲み込みが早いから助かるな。
「危険な役割だとは思うが、ころにしかできない任務だ。頼んだよ」
「大丈夫です。お任せください!」
「じゃあ、俺と綾那は町内をだな。小波は言わんでも分かるだろ」
「はっ。昼の間に春日山城周辺の様子を探ること。城内については夜、忍び込みましょう」
「よろしい。あとは鞠だな」
「鞠はどうすればいいの?お猿さんになるの?」
「む、ずるいのです!お猿は綾那がやりたかったですのに!」
「猿はなしだ。鞠はこの手の任務は初めてだろうから、俺達と一緒に町の探索の方がよさそうだな」
「それが良いと思います」
「町を調べればいいの?」
「うむ。俺が香具師の座長兼芸人で、綾那は軽業師だろ。だとすれば鞠は・・・・」
「芸人にしては気品がありすぎやしませんか・・・・?」
「気品がなくて悪かったです!どうせ三河の山猿ですよ綾那は・・・・。やっぱり・・・・」
「猿はもうええねん!」
「白拍子などは見目麗しい者も多いですから、鞠様が香具師に混じっていても問題はないかと」
「白拍子!静御前みたいなの!」
なるほどな。舞を踊る人のことか。確かにそれなら違和感ないな。
「じゃ、鞠は踊り子の見習いという設定でいこう。・・・・小波、この町で気になる事や注意した方が良い事はあるかい?」
「諜報活動では、香具師や旅の商人などが変装の定番です。さすがに武士たちもその辺りの事情は分かっていますので、絶対に安全という事はございません。ですので・・・・」
前置きにして小波が懐から取り出したのは、二通の書状だった。
「それは?」
「上野国、箕輪城主・長野業政殿ご発行の、山内上杉家ご当主、憲政様宛の書状になります」
「例のお飾りの上杉家ですね」
「はい。内容は、この書状を持つ人物の身分保障と、憲正様の無聊を慰めるための興行の保障願いとなっております。町に入ってお気付きになったでしょうか、辺りには兵達の目が光っています。しかしこの書状さえ提示すれば、町中で尋問を受けても切り抜けられるでしょう」
「長野業政殿の?よくそんなの手に入られましたね」
「もちろん本物ではありません。ですが、長野殿は上杉と関係の深い方ですから、許可の出所としては珍しくはないかと」
「何かあったときは、この書状を、控えおろー!って出せばいいです?」
「まぁそうですよ。あくまで偽造ですので、精査されると見抜かれる可能性もありますから」
「では俺がこの書状を本物にしておこう」
といって、二通の書状に向かって手をかざした。書の神を呼び、長野業政のようにして書いてもらった。そしてしばらくしてから、手をかざし終えると俺は息を吐き終える。
「これは!本物の書状じゃないですか!」
「そうだ。書の神を呼んで長野業政が書いたようにした。あと、長野業政の記憶も操作して俺達に発行させたと思わせた。これで精査されても問題はなかろう」
まあ、知らない名前の人物に頼んだのだから、たぶん夢のおつげで出てくるだろうな。
「あと、もう一つ、ころ殿の仕官に対する推薦状も用意したのですが、お願いできますか?」
俺は任せろと言い、もう一つの推薦状も偽物から本物にグレードアップした。
「出来たぞ、ころ。これを使え」
まあ、とりあえずただの香具師として目立たないよう振る舞って、何かあればこれを頼れか。
「ねえねえ小波ちゃん」
「なんですか?」
「あのね。この宿は大丈夫なの?」
「そういえばそうだったな」
一応声を小さくして話していたけど、ここは大丈夫なのだろうか。朝起きたら敵兵だなんてシャレだけは嫌だね。
「ふふっ・・・・さすが鞠様。よくぞそこにお気付きになられましたね。ここは秋子様よりお教え頂いた旅籠で、直江様の遠い親戚の方が経営なさっているそうです。昨日の内に備えもしてありますし、他より安全かと」
秋子には本当に感謝だな。あと小波も色々準備してくれたようだし、この任務は絶対に失敗はできないな。
「とはいえ警戒はしておかないとな。警戒はしつつも、必要以上に緊張はしないでな」
「一真様は難しい事を言うです」
「つまり、いつも通りでいいって事だよ」
「わかったの!」
緊張しすぎたら、逆に怪しまれるしな。いつも通りにしてた方が一番安全だしな。
「では、諸君。早速動くとするか、ころ、一人で大丈夫かい?」
「書状さえあれば、何とかなると思います。上野の訛りは・・・・何とかしてみます」
「喋り方も注意だな。普通の会話だとバレるか、俺達は旅芸人だから大丈夫とは思う」
「わかったのです!」
というわけで、早速行動を開始した俺達。小波は春日山城周辺と夜に城に忍び込む方。ころは城内での調査。俺たちは旅芸人を装いながら、この町の調査を始めることにした。俺は旅芸人に合せた服を着て行ったけどな。ちなみに俺は座長でもあって芸人でもあるという設定。
ページ上へ戻る