戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十八章
拠点となる神社
「・・・・美濃と同じ状態だったわけですね」
「じゃから、別に珍しくもない話と言うたろう?ころの言う通り、美濃では久遠が勝ち、越後では美空が勝った。ただ一つ違っておったのは、美濃では土岐の残党は残っておらず殺されたが、越後には晴景派の勢力がまだまだ残っておるということじゃ」
「残党が担ぎ上げた晴景が、今春日山を占領して、人質を取って籠城しているわけか」
「うむ。美空の守護代就任は余も認める所であるから、正当性は美空にあるが・・・・まあ、今の将軍も床の間の飾り物と変わらんからな」
「何を言っているのやら。ちゃんと仕事してるだろうに」
「まぁ山内上杉は余の外戚であるからな。推されたら嫌とは言えん」
「とはいえ、無力な幕府としては、例え遠方でも有力者に媚を売る必要がありましたからな。積極的に美空殿を応援したのは間違いございませぬよ」
「・・・・まぁ少々、意気投合した部分はあるが」
「三日三晩、二人で遊び歩いていたくせに、良く仰る・・・・」
「一応聞くが、三日三晩何してたんだ?」
「無頼漢共をのして金を巻き上げておった」
「・・・・・・・」←俺
「ば、幕府の財布を潤すためじゃ!」
「はぁー・・・・なんつー事をしているんだが、俺の恋人は」
「あー!あのときの怖い人が、長尾景虎さんだったのですねー!?」
「なんです。雀は面識があったのですの?」
「んー、あったといえばあったのかなぁ?雀たちは幽さんの依頼で、影から公方様の護衛をしてましたから、遠目に見たことあるんですよ。ね、お姉ちゃん」
「・・・・・・・・」
烏もしっかりと頷いてるとなると、雀が言ってることも合っているのだろう。一葉と美空はその頃からの付き合いだったのか。どうりで、性格は似ていると思ったんだよな。
「うむ。その時の給金も奴らをのした銭から出ておる」
「えええええ・・・・そうだったんですか?・・・・まあ、お金には変わりないから、貰えるなら何でも良いですけど。あれ?でもあの時って、無頼漢どもっていうか、ふつーに三好勢に喧嘩売ってましたよね?」
「・・・・しーっ」
茫然とした様子の雀に、そんな感じで唇に指を当てて合図してたけど、もう遅いんだな。
「何がしーっ、ですか。・・・・全く!道理で長尾殿が来たあと三好・松永勢から難癖付けられると思った」
「案ずるな。過ぎたことだ」
「それを言うのはそれがしです!」
幽も大変だったんだな。
「一真様も、他人事のような目で見ないで頂きたいものですなぁ」
おっと、藪で蛇を突いてしまった。
「まあ、一葉の話を聞くにこの内紛の背景は見えた気がする」
「どこにでもお家騒動。・・・ただし、少しばかり規模が大きな、と言ったところでしょうね」
「まあ、佐渡には金山があるってどっかの小説を読んだからな、騒ぎの規模が大きくなるのは仕方がない事だ」
「・・・・・金山?」
一葉が?になったので、通信機で聞くとそれは違うとのことだった。やっちまったな。佐渡金山は、この世には未発見なんだと。戦国時代ではな、俺が読んだ小説「武田信玄」において新田次郎は佐渡金山が上杉謙信の財源であったと描写されていたが、あれは設定で、発見されたのは江戸時代だったな。
「それは天より舞い降りた一真様しか知らない情報・・・・と思ってよろしいですか?あと小説とは」
「俺というより黒鮫隊全員が知っていることだ。前にも言ったが俺と黒鮫隊は未来から来たと言ったからな。つい言ってしまった」
「はてさて。越後の一番の収入は、表向きは青芋という事になっておりますが・・・・」
「へぇ、この世ではそうなのか」
「まあ、青芋の収入以上のおぜぜが動いておるようにも見受けられますが、そこは余所者の我々にとっては知らぬが花というものでしょうなぁ」
その青芋だけで収入を得られるのはおかしいような気がするが。それに秋子のしてくれる補給はちゃんとだし、城が取られて金がないはずなのに、随分と余裕が見える。さっきの話の流れからすれば、美空を応援している豪族が彼女を担ぎ上げた手前、色々力を貸しているところなんだろうし。美空の余裕な分だけに秋子は苦労をする。
「それに佐渡は今の所、本間氏が治めておりますし。そちらで景気の良い話は聞きませんな」
「ふむ・・・・どちらにせよ、その話は聞かずにいた事にした方が良いであろうな」
「ああ。さっきのことは忘れてくれ」
「はい」
「分かりましたわ」
「・・・・綾那もいいよな?」
「ええっと・・・・良く分かんなかったです」
ならば、それでいい。俺たちが知る歴史は知らせない方が良さそうだ。一瞬ドキッとしたぜ。鞠を見ると、半分起きていて半分寝ているけど。まあいいだろう。あとは俺と黒鮫隊全員にはこの世の歴史を喋るなと言っておこう。あのときみたいに、消える可能性もあったからな。歴史を変えたからか、天下を取った華琳の目の前で消えたことがあったな。
「(ご主人様)」
「(ん?どうした)」
「(はい。先触れの桐琴様、小夜叉様と雫様から、目的地の調査が終わったと連絡が)」
「(そう。で、なんだって?)」
俺達が向かっているのは春日山方面だけど、それなりの人数が居る一真隊全員で春日山に入るわけにはいかない。秋子からの話だと、春日山から少し離れた所に無人の神社があるらしいと聞いた。そこを拠点にいかがと勧められた。なので、一応その神社にいる神仏に聞いたら即OKが出たけど。
「(長尾方の情報通り人もおらず、少々荒れておりますが、一真隊の駐留も問題ないだろうとのことです)」
「(連絡ありがとよ。三人にはお疲れと伝えておいてくれ。特に桐琴と小夜叉には着いたら相手してやると伝えておいてくれ)」
「(はっ!お任せ下さい)」
「(で、小波の方はどう?)」
「(もうすぐ春日山に入ります。ご主人様はいつ頃こちらに?)」
「(今の所順調だ。明日か明後日には入れると思う。とりあえず例の神社に到着してから、雫の状況次第だ)」
雫の段取りはしっかりしてるから、向こうは問題ないはず。
「(承知いたしました)」
「(小波も気を付けろ)」
「(はっ!)」
はきはきとした返事を残して、小波の声は聞こえなくなった。この世では、一真隊では小波無しではならん存在だな。黒鮫隊では、野郎どもと俺は通信機だけど、IS部隊の者達はオープンチャネルかプライベートチャネルがあるから、小波みたいに念話で飛ばせるんだよな。
「小波ですか?」
「うむ。桐琴と小夜叉と雫から連絡があって、秋子から教えてもらった神社の調査は終わったんだと。情報通りだ」
「ああ、三人を見ないと思ったら・・・・」
「では、このまま進めば夕方には着きますね」
「秋子には世話になりぱなしだ」
「そうですね。地図も補給もしていただいていますし」
「地図まで・・・・・?」
最初は黒鮫隊での補給をしていたが、やはりこの世とは合わないらしくてな。結局長尾勢に補給を任したんだったな。金はあるとして、地図も重要な戦略物資のはずなのでは。部外者に渡して良い物ではないと思うんだけど。
「美空殿は反対だったようですが、秋子さんが、それでは私たちの仕事がしづらいだろうと、用意してくださったのです」
「なかなか気が利くねぇ」
「単純に気が利く人で済ませて良い物かどうか。・・・・我ら一真隊が仕事に失敗したときに、言い訳しそうな事柄を全て潰していっているようにも見受けられますし」
「マジで?」
「補給も完璧。早合はさすがに無理でしたけど、言っていた玉薬もそれなりに融通してくださいましたし、軍資金はこちらで用意してあったのですが予備にと用意してくれましたし、兵糧もかなり余裕を持って調達してくれました」
「それに地図の他にも、町内の有力者、協力者への紹介状など、至れり尽くせりですから」
「という事は・・・・万が一お役目に失敗したときは、無能な野良犬でしたと土下座して謝るしかないということですな・・・・一真様が」
「それはないな。俺の勘によれば、成功はするさ。それに一真隊が失敗したとしても黒鮫隊がいるからな。既に調べているだろうよ、あと神が土下座はシャレにならんと思うぞ。幽」
無料お試し期間だけど、別にプレッシャーとかは感じないし緊張もしない。それに全力で認めてもらえばいいことだしな。
「まあ、一真様の土下座は想像できませんが。大人しい顔をして、なかなか厳しい方のようですね」
「でも秋子、おっぱい大きいのー!鞠もあんな風になれるかなー」
「鞠よ。主様の事を考えるなら、あまり大きすぎるのも考え物であるぞ」
「そなの、一真?」
「俺としては大きくても小さくても変わらんよ。だから鞠がなりたいような大きさになれば良い」
「さすが、妻を持っている主様は説得力があるの」
「まあ、外堀を埋めて、逃げ道を塞がれてる状況で燃えるのが一真隊だし。何なら正面突破をして黒鮫隊動員でも構わんが、一真隊だけでやった方がいいだろ」
ひとまずは、拠点である雫と森の二人と合流だ。本当なら主人公は「・・・・我命有限全胸愛」という呪文みたいなのを言うらしい。あと男たちの熱き魂の叫びとか言うらしいが、詩乃がいやらしいことしか想像できないというと、てへっ、というらしいな。
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