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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十八章
  一真隊の準備

「ただいまー」

細かい打ち合わせをしたあとに、俺達が一真隊の陣地に戻ってきたのは夕方になるところだった。ちなみに帝釈天と四天王は神界に戻してある。

「お帰りなの!一真!」

「ご苦労であったな、主様」

「お帰りなさい!美空様達との軍議、どうなりましたか?」

「俺達は春日山を先行することになった。一葉が考えている先陣ではなく、春日山付近での諜報活動さ」

「町の様子と春日山城の備え、陣ぶれ、備蓄の量についてなどを調べ、美空様に報告します。その後は越後衆の動きに合せて動く・・・・」

「・・・・で、済めば良いのですが」

「どうやら情報を集めて終わりというわけではないと?」

「そういうことだ、桐琴。春日山の人質救出も俺らでやることになった」

「救出って、春日山城に囚われてるって人たちの事です?」

「一真隊は、城に入って人を攫うような事までさせられるのですか・・・・?」

「ええ、まあ・・・・」

「そんな無茶な」

「それが無茶ではないんだよねー。確かに城に入って攫ったことはないけど、城の中に入って城主の首を刎ねた事は何度もあるし」

「城に入らずとも攫った事はありますよね」

「あと、城に入って工作をしたりとかもちょくちょく」

「さらに言えば、城に入った後に攫った事も・・・・」

「ああ。あれは運命だな」

「そうですわね」

「あとあと、公方様を助けに二条館に乱入した事もあるよね?」

一真隊のメンツは、過去にあった事を話してたが事実なんだよな。それによって、歌夜が俺たちが救出作戦するのも分かってくれたようだし。梅の話ではないが一葉は運命なのでは、と言っていたけど運命なのではないのかな。それに救出作戦なら、黒鮫隊でお任せだな。

「とりあえず人質救出は、黒鮫隊でやるとして一真隊は情報を集めるとしよう」

見たことのない城だけど情報は入ってきている。あとは実際に見るしかなさそうだな。あとは警戒の度合いや、足元の様子も分からないし。

「なら、当面は今まで通りに出陣の準備ですか?」

「あんまり大人数で行くと騒ぎになるからな。潜入組を助けられるように、もう少し前には出てもらうが、基本的なのは準備を続けてもらう事だな」

俺達織田家の人間が動いていると察知されるわけにはいかない。一真隊が動くのは、切り札ではあるが。

「鞠はどうすればいいの?」

「無論鞠も一緒に来てもらうけど・・・・潜入工作は鞠には無理だろ。一葉の護衛をやってもらうとする」

「何?余はまた留守番なのか?」

「うむ」

「なんじゃと・・・・!」

「なんじゃとではありません。どうして一真様が即答なさったのか、胸に手を当てて良くお考え下さい」

「・・・・胸に手を当てたくらいで思い当たるなら聞いたりなどせんわ。主様に触れられたら思い出すかもしれんがな」

「おいおい。そういう事をここで言うな」

「それに一真様。余の趣味、忘れたか?」

「分かっているから言ってるんだよ!」

ハリセンで叩いたけどな。まったくこの阿呆公方は、自分の立場を考えろってえの。

「左様で。公方様のお楽しみは、町人の格好をして情報集めではなく、破落戸に喧嘩を売る事ではありませんか」

「うぅぅ・・・。主様のそれは痛い。じゃが、売ってなどおらん」

「そうなんですか?」

「ただで撒くだけじゃ」

「・・・・却下」

「主様ぁ!」

俺はハリセンを出したらおとなしくなった一葉。タダでばら撒くどころかその後に金品巻き上げるなど、京では出来たことだけど他でやったら盗人だぞ。

「あれはどう見ても押し売りだったってお姉ちゃんが言ってますよ」

「・・・・・」

「烏さん、全力で否定してらっしゃいますわね」

「というか、京ならまだしも他でやったら盗人何だからそういうのは禁止だ!それに何かあった時は一真隊を指揮してもらわないとな。分かってくれ」

「むぅ・・・・主様に正論を言われると、嫌とは言えん」

「では、実動隊はどうします?」

「そうだな・・・・。まずは俺で小波は外せないだろう」

「はっ」

「で、後はころと・・・・」

「わ、私ですか?」

「一真隊じゃ一番こういう事の見識が広い。頼んでも良いか?」

この手の任務は総合的な知識と経験は、野武士活動が長いころがトップだろう。

「は・・・はいっ。頑張ります!」

「これで三人と。あんまり多くても困るから、あと1人か2人かな?」

一葉は一真隊の指揮があるし、幽と梅には一葉の補佐を頼みたい。詩乃と雫は小波が伝えた情報分析をして欲しいし、ひよは物資の管理があると。残っているのは・・・。

「ワシらは力を温存しておくからの。それに森一家は先陣向きだ、諜報には向いていない」

「分かっているよ。桐琴たち森一家は、戦があるまでの温存だ」

間違いなく森一家の出番はまだだろうしな。

「だったら・・・・・」

「はいはいはいはい!綾那なら出来るですよ!そういうの多分、きっと、絶対に!知らないけど!」

「・・・だそうですけど、どうしましょう」

「あうぅ・・・・」

「綾那か・・・・」

諜報活動には向いていないような気がするんだが。

「ですが、綾那様。このような汚れ仕事、本多家の方がなさるような事では・・・」

「にゃ?これって汚れ仕事なのです?一真様」

「まあ綾那には向いてるかどうかは知らんが。俺達で春日山を取り返すための大事な任務だ」

「だったら尚更です。綾那もやってみたいのです!」

「綾那様・・・・」

「・・・小波もそんな寂しい事を言うな。情報集めも補給も戦も大事なことで、誰が欠けても隊が成り立たない、大切な仕事だ」

「は・・・っ。申し訳ありません」

「小波のお陰で、一真隊が助けっているんだ。それを分かってほしい」

一真隊の動きは、小波のお陰で助かっているんだ。黒鮫隊も負けてはいられないけど。

「・・・・はい」

「で、綾那はどうなのですか!」

「ふむ・・・・」

綾那なら、何かあった時の戦力にはなるだろうし、人懐っこいところもあるから意外と情報収集できるかもな。まあ、うっかり色んな事を話してしまうのは、アカンと思うがそこだけは注意だな。

「だったら・・・・・」

「・・・・なら、綾那にも来てもらおうか。今後を左右する大事な任務だから、俺達の言う事を聞いてくれ。決して一騎駆けはするな」

「分かったです!」

「あうぅ・・・・」

あと一人はどうしようかな。綾那の手綱を任せるなら歌夜かな。

「一真」

と考えていたら俺の袖をくいくいと引っ張っている小さな手があった。

「んー?どうした、鞠」

「鞠も行きたいの」

「・・・・鞠が?」

「鞠もお勉強したいの。お城は・・・・鞠も取り戻さなきゃいけないの」

そう呟く鞠の目は、いつもの鞠とは違う、決意を込めた目だ。

「そういえばそうだったな」

鬼の件が片付いたら、今度は駿府屋形をも取り戻すんだったな。でも、この外史が消滅するのはこの外史の終幕。駿府屋形を取り戻す前に、保護及び黒神眷属の一員になる可能性は大だ。でもまあ本人が勉強したいって言うしな。

「一真様・・・・」

「主様」

二人もどうやら考えは同じのようだ。

「・・・・分かっているが、鞠、一つだけ約束」

「鞠、一真の言う事も、ころや小波ちゃんの言う事もちゃんと聞くの。何かあったら、一真も守るの!」

「俺を守るより皆を守ってほしい。俺の強さは分かっているだろう?城を取り戻すやり方は勉強するのは良いが、駿府屋形を取り戻すのは、俺達と一緒だぞ?」

「うん!だから、その時に鞠がどう動いたら良いか、ちゃんとお勉強するの!だったらいいでしょ?」

駿府屋形を取り戻すというのは、あくまで鬼の件が片付いたら出来るのかはわからない。だけど、鞠の勉強によっては、スムーズにいけるかもしれないし、俺の強さは知っているしな。

「よし。じゃ、潜入部隊はこの5人で決定。歌夜はころがいない間の長柄組を任したい」

「分かりました。お預かりします」

「後の皆は言わなくても分かるだろう?」

といったら、皆は頷いた。雀だけはなぜか元気がなかったけど行きたかったのかな?それからの数日は、補給や準備で慌ただしく過ぎた・・・。黒鮫隊の諸君もいつでも動けるようにと言ってあるが、いつも通りにしておけとな。 
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