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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十八章
  軍議×現状×諜報任務

「やっとか、待ちくたびれたがな」

美空に協力すること数日、俺達は出陣はいつでもOKだし、黒鮫隊はもっとOKだ。そこにやっと春日山城奪還に向けての評定に呼び出された。

「はてされ。一体どのような無理難題を押し付けられますのやら・・・・」

「美空様も、いきなりそんなとんでもない事は言って来ないと思いますけれど」

こちらを信用してはいないと思うけど、様子見や小手調べとかで、重要なところを任せはしないだろう。一真隊ならな、黒鮫隊ならば、城なんか簡単に落とせる自信はあるけど。出来る限り、一真隊で信用させたほうがいいだろという俺の判断はどうだろうか。

「なら良いのですがなぁ」

「・・・・何せ、美空だしな」

「・・・・ご主人様まで」

「では小波殿は、何か良い流れの予感でも?」

「じ、自分は、ご主人様のご命令に従うだけですから」

軍師の詩乃と雫に、連絡役の小波。一葉の名代も兼ねての幽。この状況ではベストメンバーなはずだけど。誰一人ポジティブな意見はない。俺は左耳に通信機をはめている。一応黒鮫隊の諸君にも聞いてもらいたいと思ってな。

「ともあれ、協力すると言ったからには出来ることをするだけだ。まぁ、無茶なことを言われたら俺たちはこいつらで説得させるまで」

俺は目だけを神の力を解放させると、半透明の護法神四天王がいた。

「そうですね。帝釈天様たちも無理難題が来たらお願いします」

そう詩乃が言ったら帝釈天たちは頷いた。一応主導権はこちらが握っているからな。毘沙門天の加護は無ければただの長尾勢で、美空も毘沙門天の化身とかは呼ばれないだろうな。ぼちぼち歩いてると長尾家の陣幕が見えてきた。今は良い空気にしないとな、悪い空気には悪い事しか集まらないとも言う。

「お待ちしておりました、一真さん。それと護法神四天王まで、一真さんの味方なのですか?」

「そうだ。無理難題を言われると、こいつらを使うからな」

と言って秋子に連れられて陣の中に入ると、もう長尾方の一同は揃っているようだった。

「遅いわよ、一真」

「指定の時間よりかは早く来たつもりだが?」

「最後に来ておいてよく言うわね」

『うるさいわね。そんなにお兄ちゃんの事悪く言うと怒るわよ!』

と見えない声の存在に長尾勢の方は、辺りを見渡す。なので、神召喚法で実体化した帝釈天と四天王。

「帝釈も一緒なの!?」

「お兄ちゃんの事悪く言わないでよね。あと神界と冥界の神たちもこちらを見てるんだから」

「毘沙門天、余計なことを言うな」

「けどお兄ちゃん・・・・」

帝釈天が止めたので、話を止めてもらった。俺達は陣内の隅に皆は腰を下ろしていたが、俺は簡易椅子に座っていた。俺の妹たちも、創造によって簡易椅子を創り座らせた。地面だとバチが当たるしな。俺もだけど。

「では、春日山城奪還に向けての軍議を始めます」

しばらく静かにしていたら、家老の秋子の言葉に応じて、場の空気が静まる。

「まず、春日山を落とした実行犯と、その協力者についてですが・・・。謀反は晴景様を担ぎ、ご一門筆頭・長尾政景様、黒川城主・黒川清実などの阿北衆を中心に実行された模様です」

黒川城主・黒川清実・・・・越後黒川氏率いる通称阿北衆(揚北衆とも)の居城。現当主は黒川清実。

ずらずらと連なるのは、政景派とおぼしき将や関係者の名だ。数名の犯行ではなく、一派閥の規模だな。大きな作戦になるな、城を落としたんだし。出てきた名の照合と共に、黒鮫隊は聞いていた人物の詳細を俺に告げるのと、記録として録音をしている。まあ、俺なら数名連れて落とすけどな。

「関係者と、経緯については以上です」

「この短期間で、ここまで調べられたんっすねー。秋子さん、すごいっすー!」

「ありがとう。でも今までのことしか調べられなくて、春日山の現状や将の動きについては間に合わなかったの。・・・・軒猿の質も落ちたものね」

これまでの事は分かっているが、現状今どうなっているかまでは分からんか。

「・・・・御大将が加藤を追放したから」

「う、うっさいわよ!うさんくさい奴は何してもいいの!うさんくさいだから!」

「(うさんくさい奴は何をしてもいいなどと言われておりますぞ)」

「(だな。何かされるんじゃないのか、幽)」

「(はっはっはっ。そのときは一真様を巻き添えにするのでご安心を)」

「(うわぁ、迷惑だぁー)」

まあ、俺達は胡散臭くないから大丈夫だろうな。あちらに毘沙門天の加護があるのなら、こちらは神界と冥界にいる神たち全員俺の仲間だ。あとは精霊もな、いつでも力を貸してくれるというのはとてもありがたいことだ。神界と冥界の神の協力もそうだけど、上にはトレミーがあるしな。クルーたちは暇だと言ってるが、今回はそういう任務なんでね。

「・・・・まぁ私たちも反対はしませんでしたけど。諜報活動の質の低下は、戦の勝敗に直結しますから・・・・」

「で、次は何を調べるんすか?」

「春日山の現状と、周囲の豪族の動きを同時進行で確かめておきたい所ですが・・・・」

周囲の豪族が晴景派の調略を受けたのか、美空の味方のままなのか。それでこちらの説得や対処の仕方も変わってくるだろうから、優先順位は高くなることが分かる。というか、諜報活動の質が落ちたから今の所はここが限度ってことか。まぁ、俺らの場合は町に潜入したり小型偵察機などで調べるからな。すでに、春日山の城下町のスキャンは完了している。あと城の方もな、どこに人質の位置とかもすでに分かっている。春日山の現状を知りたいのなら、今後の方針が立たない。

「すればいいじゃない」

「したいのはやまやまですけれど、残念ながら手が足りません」

「・・・・だって」

そんな言葉と共にこちらを見る。もう分かっていることだ。

「そんな目で言われなくとも分かっているさ。春日山の現状は俺たちがやる。それで文句ねえだろ」

「ええ。一真隊は搦め手専門の部隊なんでしょ。諜報活動は得意って聞いたわよ」

「ああ言ったね。ただしここは俺たちの知る場所ではない。そっちが欲しい情報や重点的に調査してきてほしいことを言え。具体的に言わないと困るぞ」

「そうね・・・。なら、一真は春日山城下の様子と、城攻めで必要な城内の情報を集めて頂戴。周囲の豪族まわりはこちらでやるわ。それでいい?」

「了解した。一真隊はこれから諜報活動に行く。集めるだけの情報を集めてくるよ。で、そっちの本隊はどう動く?それを聞かないと予定を決めたいし」

「どうするの?」

「いきなり春日山に迫るのは無理です。まずは兵を集めて向こうを威圧しつつ、各地の豪族を再び味方に引き込む流れになるかと」

「ふむ。こっちの準備が出来る時間はできるな」

軍議が終わったら、このまま出発は無理だ。そこまで強行軍ではない、黒鮫隊は除いてな。

「あと、空様と愛菜様はどうするっす?」

「問題はそこ」

「人質として盾にされたら、こちらは動きが取れなくなりますからね・・・・」

「本格的に戦端を開く前に何とかするしかないわ。・・・・ねっ?」

「ねっ?じゃねえよ。阿呆!俺達を何だと思ってんだ!なめてんじゃねえだろうな!いくら搦め手専門でも情報が足りなさすぎるんだよ!毘沙門天の加護を無くしてやろうか!」

「お、御大将!一真さんにそのような態度を取ったら怒るに決まっていますよ。それにほら!帝釈天様たちの目を見てくださいよ」

俺と護法神四天王は立ち上がり文句を言いながら、殺気と覇気を解放。ここにいる長尾勢を立ち上がれなくした。なお、こちら側には殺気と覇気はぶつけてないから問題はない。

「悪かったから!その覇気と殺気を閉じてくれる?」

「命拾いしたな。お前ら座れ。詩乃たちも良いな?」

「はっ。とにかく一真隊は春日山城付近の偵察に参ります。それから具体的にどうするかを相談します」

「それが常道でしょうな」

「で、美空の本隊はどう動く?」

「もう少ししたらここを引き払うつもりよ」

そしたら、俺達が戻ってきたらここにはいないわけか。

「それじゃお前らとの繋ぎはどうするんだ?搦め手専門でも限度があるぞ?」

そしたら無言になる美空。おいおい、俺達が搦め手専門だから何でも出来ると思っているんじゃねえだろうな。まったくこの無鉄砲な嬢ちゃんは、分かっていて言っていたのか大雑把なのか分からねえな。俺達の通信機はあくまで黒鮫隊の物だから渡せない。ため息を吐いて、ちらりと詩乃達を見る。詩乃も雫は俺の視線に色々と言いたそうだったが小さく頷く。

「ったく。まあ、予想はしていた。小波」

「はっ。用意しております」

俺は小波からいくつかのお守り袋を受け取ると、立ち上がり美空たちに回していく。

「何これ」

「これを持っていれば、ある程度の距離があっても小波と心の中で話せる。念話ともいうがそれが出来る。何かあったら、これでこっちから知らせる」

「なにそれ超便利じゃないっすかー!」

「一真隊はこのような物を・・・・」

「普通に凄い」

「・・・・ある程度の距離って?」

「秘密だ・・・・さすがに尾張や美濃には届かないといっておく。それほど長距離な物ではないからな」

「そう。外との繋がりを付けるのには使ってないのね」

「使えてたら俺たちは焦ったりしていない」

「けど、こんなものこっちに渡して良かったの?それこそ、一真隊の秘中の秘でしょ?」

「これはあくまで念話で話せる中距離な物だし、使える物は使わないと損をする」

それに俺にはこういうのではなく、耳にはめている通信機がある。あと、これを渡すのは詩乃と雫に反対されたが問題はないと言っておいた。情報の通じる速度は、そのまま兵の反応速度に直結する。使いこなせれば部隊運用が現代風になるし、今の常識がひっくり返ることになる。それに詩乃や小波には秘密だがさっき渡したお守り袋には細工をしてある。発信器と盗聴器を超小型にして仕込んでおいた。

「そう。これで恩を売る気になったわけではないのでしょ?」

「恩はもっとデカいところで売るつもりだ」

「なら何よりね。良い報告、楽しみにしてるわよ」

相変わらずの上から目線だが、帝釈天たちは怒る気満々だったのを手で停めた。あと俺が渡したお守り袋を物珍しそうに見ていたけど。さてと、搦め手専門の部隊だ。こちらの実力を見せないとな。 
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