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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十七章 幕間劇
  越後の龍からの問答

我は神界に行っていた。月一の会議に出席していたからだ。

「それで閻魔は何と言っていたか?聞かなくても分かるが」

「はっ。冥界の閻魔様によると、鬼になった者たちをどう対処していいか分からないと」

「そうか。あのときは我もやったからな。だが、鬼の魂ではなく人の魂と聞くが」

「御意です。鬼であろうとも素体は人間ですので、それに魔薬による者たちがほとんどだそうで」

「ならば、鬼になった者で元から人間の皮をかぶった鬼は地獄に。いい奴だったのが、強引に鬼にされた者たちは、神の配下にすればよい。どこかのお家流による戦死したすべての武士を騎馬武者として召喚し、大軍勢としてぶつけるとかでな」

「ならば、そうさせましょう。あとは、夜叉の一人としてだな。八大夜叉大将、頼めるか?」

「御意。その者の魂を鬼神として、夜叉として育てましょうぞ」

「それでは今回の会議は終わらせる。散開」

会議が終わったので、我は背伸びをしていると帝釈天と四天王がやってきた。そしたら、そのまま下界に行ったけどね。一方陣地では、柘榴と松葉がやってきていた。対応は詩乃がしてくれたようだが。

「ええー!一真さん、いないんっすか?」

「はい。ただいま神界に行っております。何でも神同士で、会議をしているらしいですが」

「神界。まさか本当にあるとは。でも私たちも急ぎの用事で、一真さんを連れてくるように言われた」

「と言われましても、『我がどうかしたか?』あ、創造神様」

我の話題をしてたので、大天使化のままだけど。空から地上に降りてきた。

「で、我に何の用だ?強い奴と戦いに来たのか?」

「それでもいいっすよー。そうっすねー。あの槍を持っている小っちゃいのとかいるっすか?」

槍を持っていて小さいの。綾那か小夜叉か。

「どっちだ?」

「どっちが誰だか分かんないっすけど、どっちでも・・・・。何だったら両方でもいいっすよ!」

「両方はどうだろな」

戦国最強と戦国最狂のツートップはアカン気がする。その前に桐琴もだけど。柘榴の腕がどのくらいまでかは知らんが、初見でそれは無茶ではないのか。

「まあ、連れて行けば何とかなるだろう。詩乃、柘榴を案内してあげろ。中に綾那と桐琴と小夜叉がいるだろうし」

「承知しました、創造神様。柘榴さん、こちらへ」

「分かったっす!松葉、後は任せたっすよ!」

「承知」

さてと、詩乃は柘榴を連れて行ったけど。我に用があるのではなかったのか?

「松葉も来てるということは、我に何か用か?」

「柘榴はおまけ。大将がお呼び」

「軍議では無さそうだな、呼び出されたのは我だけか?」

松葉は頷いたので、我は行くことにしたが大天使化は解かない。俺の周りには帝釈天と四天王がいるからだ、召喚されたのではなくな。我を兄と慕うからなのか、まるで妹が増えた感じだ。妹設定にしたのは我ではないけど、たぶん帝釈天たちなんだろうなとね。他の者は主様や創造神様が多い。

「あ、一真様、じゃなくて創造神様」

松葉に連れられて陣を離れると、そこでは補充物資を届ける黒鮫隊の者たちと受け取る側のひよところ。あと、小夜叉もいた。

「あ、一真じゃねえか。と、その格好だと創造神と呼ばなきゃいけないだっけ?」

「呼び方は自由だ。だから、我が姿を変えたからと言って無理に呼ぶ必要はない。それよりどうして小夜叉もいるのだ?」

「森一家の補給もやってくれてるから、母が顔出しに行って来いといわれてな。将来の棟梁になるんなら、自分の目で見てこいと母と各務に言われてな」

あー、なるほどな。あと詩乃に案内させたのは、戦国最強の方か。桐琴はやらないだろうな、でもやりそうな雰囲気はありそう。

「あら、一真さん、そのお姿は!?」

「秋子か。先ほど神界から戻ってきたばかりでな、美空が呼んでいるらしいから、警戒を込めてこの姿になっている。あと戦闘以外は名前で呼んでくれて構わん。ひよもだ。一々創造神様だと空気が重くなるから」

「それならよかったですけど。あと、黒鮫隊の皆さんから補給をしてもらっているのですが、どうしても無い物がありまして。秋子さんにその他の補給をとお願いしたら通ったので」

「そうなのか?ちなみにどんなのだ。玉薬か」

「はい。ひよさん達に聞いたら、ないと聞きましたのでこちらから補給をさせておきました。協力する以上は必要な物は補給しとくように、御大将から」

「そうか。こちらから礼を言いたい。ありがとう」

「い、いえ。神様に頭を下げられると、バチが当たりそうなので。玉薬も貴重なのですが、鉄砲はもっと貴重なので」

玉薬がないとただの棒だしな、こちら側だと。我たち側はそんなのは必要ないし。

「それより松葉ちゃん。柘榴ちゃんは?」

「いつもの悪い癖」

「・・・そう。それと・・・・御大将はどうだった?」

「まだ平気。普通にしてる」

「そう・・・・。なら良かった」

御大将=美空のことなんだろうな。まだ平気とはどう言う事だろうか。小声って事は、我たちからは聞かされたくないってことだろうな。

「すみません、ウチの若い衆がご迷惑をお掛けしているようで」

「多分大丈夫だと思うぞ。ウチにも柘榴と同じ性格がいると思うから、気にしないでくれ」

「・・・・ああ」

「ンだ?何かやってんのか?」

「一真様。悪い癖って?」

「柘榴が我の隊の所で腕試しをしていると思う。今頃、綾那とやっていると思う」

「え・・・・大丈夫なんですかそれ」

「大丈夫だろうよ。たぶん。加減が出来る子だと思う、近くには歌夜もいるはずだろ」

小夜叉と綾那両方というのは、黙っておこう。綾那は心配ないだろうが、柘榴はどうなんだろうな?

「秋子よ。柘榴は加減が出来る子か?」

「ええ・・・。柘榴ちゃんもその辺の加減は・・・・多分、大丈夫なんじゃないかなーって・・・・思っちゃったりなんかはするんですけど・・・・」

頭が痛くなってきた。すると、毘沙門天が心配してくれたが大丈夫だと言った。念話で。今は帝釈天たちは見えなくしてるからな、護法神四天王が現れたら、騒ぎの種になりかけると思うし。

「大丈夫。そう、信じたい」

信じたいって言われてもな、どうなるんだろうな。

「だ・・・・大丈夫なんですよね?一真様ぁ」

「梅と歌夜もいるから、大丈夫だろう。それに手合せとなれば騒ぎとなって、何とかなる。あと黒鮫隊の諸君、ご苦労」

と言ったら、敬礼をしたあとに作業に戻った。どうやって来たんだろうと思ったら近くにパラシュートがあったから降下させたのか。あと作業をしていたのは女性隊員だった。おそらく荷物をISを装着した者で運んだんだろうな。

「じゃ、松葉は一真さんと先に戻る」

「ええ。補給が終わったら、柘榴ちゃんの様子を見てから戻るわね」

「一真様、お出かけですか?」

「ああ。美空からのお呼び出しだ、黒鮫隊の補給物資と秋子からの補給を頼んだぞ」

「はいっ」

「それと、補給が終わり次第、秋子を柘榴の所に案内を頼む」

「任せといてください!」

そのあと、ひよ達と別れたあとに一々驚かれると面倒なので大天使化を解いた。でも、目だけは神の力によって使えるので、帝釈天たちはここにいられる。俺と松葉は改めて美空の元に行く。陣地同士はもう少し近い方がいいのではと思ってしまったが、この距離が俺達と長尾衆との距離なのだろうなと思った。まずはこの距離を何とかしたいのだが。

「なあ、松葉。今春日山はどんな感じなんだ?」

「さあ?情報は軒猿が集めている最中。今話しても無駄」

「ふむ。軒猿とは草のことだよな?」

「そう。加藤を大将が追い出してから使えなくなったけど、いないよりまし」

「加藤・・・。前にも話してた飛び加藤って奴か。なぜ追い出したんだ?」

「怪しかった。裏切った事も気付かせないくらい、優秀。だから大将、加藤を信用しなかった」

なるほど。優秀過ぎると、切り捨てられるのか。無能はと聞いたら、切り捨てるとそうだ。

「どちらにしても、城攻めの算段は立っていないのか。美空の手勢は?」

「今集めている」

「今・・・?」

「大将の手勢は、多くはいらない。すぐ集まる」

まあ、たぶん一真隊のこと期待してないからだろうな。俺達黒鮫隊は何度も城攻めをやっているが、そこまえ人はいらなかったな。

「では、美空の用事は何?」

「大将の考え、分からない事多い。でも間違ってた事、一度もない」

一枚岩っぽいが、それ以上は何も言えないな。長尾衆は。

「・・・・これは情報収集?」

「ん?」

「話すのは、秋子と柘榴が担当。松葉の役目ではない」

「ああ。別にそういう事ではない、話題を振ったら話してくれただろう。それに情報収集だったら、そんな風には喋らん」

「・・・・・・松葉も恋人にする気?」

「してくれるなら良いけど。俺達は会って間もないだろう?それに仲良くしたいのならまずは話してどんな感じの子なのか、知りたくてね。長の性分だ」

「ならいい」

「あと、柘榴とは付き合い長いのか?」

「腐れ縁」

「ふむ。二人の性格は違うけど、仲はよさそうだな」

「柘榴は攻める担当。松葉は守る担当。仲良いかは知らないけど、息が合わないと連携は取れない」

「秋子は?」

「秋子は家老。お金と兵站の担当」

「なるほど・・・・」

そういう分担なわけね。一真隊は全員が何でも出来る感じだし、黒鮫隊もだけど。長尾勢はそれぞれに特化した者たちを配置させてるのか。そういえば美空の様子の事を聞いていたが。

「そういえばさ、さっき秋子が言ってた美空の様子って何?」

「・・・・・・」

ふむ。そこはタブーな質問だったのかな。でも帝釈天たちは何やら苦笑いだ。

「・・・・・出家」

「出家?」

出家って坊さんになるあれか?帝釈天たち、笑いすぎだぞ。

「大将、機嫌が悪くなると出家するって言い出す」

「なんだそれは?」

「もともと大将、僧籍の身」

「そうなんだ・・・・」

「普段は空様がいれば平気。でも、今はいないから・・・・みんな心配している」

おいおい。ストレス発散のために出家するのか。まあこの時代の人達の発散方法は知らないが、現代なら色々とあるのにな。身体を動かしたり、買い物したり、カラオケしたりとか。

「もしかして、小さい頃に寺に預けられたとか?」

「・・・・・・・」

その問いに黙ってしまう松葉。

「喋りすぎた」

どうやら、これ以上は駄目らしいけど。あとで毘沙門天に教えてもらうか。

「・・・・大将には内緒」

「黙っとくよ」

そういえば双葉も小さい頃に寺に預けられたと聞く。双葉がキレる所は見たことないが、もしそうなったら出家するのかな。
いやしないだろうな、あの性格で一葉よりちゃんとしてるからな。発散方法も知ってると思うし。

「着いた」

そんな感じで、松葉と話をしていたら辿り着いたところは、美空の陣だった。一応帝釈天たちが、いるから何かあったら助けてくれるだろう。

「大将。一真さん、連れてきた」

「遅かったわね。柘榴は?」

「悪い癖」

「ちょっと抜け駆け!?誰とやり合ってるの。一葉様だったら承知しないわよ!」

「違う。槍使いで、ちっちゃくて、強いの」

「槍使いで、ちっちゃくて強い・・・・。誰?」

「何人か候補はいるな。その内の1人じゃねえの」

「ちっちゃくて強い槍使いだけでそんなにいるの?ちょっと有能な人材が多すぎるんじゃない?」

「ありがたいことだ。それより、火薬の補給はありがたいことだ」

「貴重な鉄砲だもの。食料はそっちで何とかなりそうだけど、火薬はないと言われたからね。ないと言い訳されたら困るもの」

「一真隊でも鉄砲には、ありがやく使わせてもらう。黒鮫隊は別だ」

俺が黒鮫隊は別と言ったことに対して頭が?になっていたが、いずれ分かることだろう。

「大将。松葉はこれで」

「ええ、ご苦労様」

「大将も一真さんに口説かれないよう、気を付けて」

「・・・・あなた、松葉に何したの?」

「何もしていない。ただの世間話だ」

「へぇ・・・。松葉が世間話に応じるなんて、珍しいわね。・・・・良い子だけど、愛想悪いでしょ。あの子」

「そうかい?口数が少ないくらいだろ」

「なるほど。だから、人気なわけね。あなたの部下も慕っていると聞いたし」

人気なのは、よく分からんが親しみがあるからなのであろうな。それに妻もいるし。

「で、今日は何の用?城攻めの手勢も、春日山の情報もまだ揃ってないと聞くが」

「その辺りは今軒猿にさせているわ。暇だから呼んでみただけ」

「暇ね。それで呼んだってことは、少なくとも俺に興味を持ったからか?」

「そうね。使い物になるかどうか見定めようとは思っているわ」

「10割使い物になるとは思うけどな。それに俺にはこいつらがいるし」

と言って、指を鳴らしたら帝釈天たちが半透明になって美空にも見えるようにした。

「いつの間に帝釈たちがいたのよ?」

「松葉たちが俺の陣地に来た時からいたな。俺は神界から戻ってきたばかりなんだから」

「見下したら、本気で帝釈たちからの契りが無くなると思うとゾッとするわよ。でも幕府公認で妾を何人も作ってもいいとは聞いたけど、女ったらしだとは思っていたけどどうやら違うようね」

「そりゃそうだろう。俺には妻がいるんだから、ここでいうなら正室と側室な。だから、今空いてるのは愛妾のみ。理解が出来たかな?」

と言ったら納得はしたようだった。どうして、一葉も愛妾なのか、疑問だらけだったようだ。それに一夫多妻制というのは聞いたようだけど、国持ちの者も愛妾なのも理解してくれたようだった。

「そうだ。そういえば、一つ聞きたかったんだけど」

「何?」

「ここに来るまでに、あなたの兵に風邪の予防法を教えてたわよね。あれは南蛮のやり方?」

「ああ・・・。こっちの方は京や美濃より寒い地方だろ?だからその対策をしただけだ」

「良かったらそれを教えてくれない?」

「俺のやり方を教えてもいいけど、そっちにはそっちのやり方があるだろう。国の皆に聞けばいいじゃん」

「国の皆に・・・・?」

「越後になら、風邪の予防や対策の方法はいくらでもあるだろう。民間に出回っている、地元で取れる品を使った方法とか」

「それは・・・・あると思うけど」

「俺らのやり方より、土地や人が変わると合わなくなるようになる事も多い。その点、地元には古くから伝わっている方法だと合うだろうしな。美空が民間から集めて広めれば、地元の人たちは美空の役に立てたって喜ぶだろうよ」

「なるほどね。・・・・何だか上手く誤魔化されたような気がするけど、今回はそういう事にしておくわ」

「じゃあ、こっちも聞きたいことがある。空と愛菜のことで」

「・・・・・・」

ん?何か美空が凍ったが、何かまずい事でも言ったか。

「まさか、あの二人まで毒牙に・・・・!」

「何を考えていると思ったらそれかよ。そんなことじゃねえよ」

「柘榴や松葉はあの子達の事だし、秋子は行き遅れなくらいだから別にいいけど、あの二人に手を出したら織田との全面戦争くらいじゃ済まさないわよ!?」

「もしそうなったら、俺達の兵器で爆撃してやるけど、そんなことのために戦争などするか!」

「でも天下御免の妻持ち何でしょ!」

「そこは否定はしないが、それとこれとは別だ」

「やっぱりそうなんじゃない。それに、あの今川のおちびちゃんだって愛妾なんでしょ?前科だってあるくらいだし・・・・そんな相手が信用できると思う?」

「鞠との関係は合意の事だ。それにあの子ぐらいの妻もおるわ!」

妻の中には鈴々や真留とはじめがいる。だから、気にはしていない。

「今川のおちびちゃんぐらいの子も妻って、それこそ驚きだわ。言葉巧みな天下御免のお家流とかじゃないわよね?」

「そんなお家流があったら、今頃使っているわ」

「じゃあ、何であの二人の事を聞きたいの?」

「気になるんだろう。そこまで美空が大事にしてる二人が」

その二人は今後関わる可能性はあるんだからな、その二人の事も知りたいわけよ。あと春日山が取られていて、人質もされているんだから、その時点で俺達とは無関係な事ではない。

「ええ・・・・そうね。空は大事な子よ。それこそ、私の娘にしたいくらいに」

「愛菜は?」

「愛菜は秋子の娘だしね。それに空とも年が近いし、仲も良いから・・・・この先、絶対に空を助けてくれる将に育ってくれると思う」

「娘ね。妹ではなく」

「空には、姉様より、母様って呼んでほしいのよ」

「なるほどな。春日山を占拠してるのは、美空のあれだしな」

「それに娘なら私の跡目を継ぎやすいでしょ。妹なんかにしたら、私が死んだ後に周りがどう言ってくるか考えたくもない。まあ、私は姉様や母様より先に死んでやる気なんかないけど」

この歳から、そんな先のことまで考えているのか。毘沙門天も感心したと言っている。どうやら帝釈天たちも、美空の考え方を理解したようだ。すると、神界から声が聞こえた。その空と愛菜のことは守ってやろうとな。

「どうしたの?」

「ん?ああ。神界から声が聞こえた。空と愛菜を守ってやるとな。あと帝釈天たちも考え方を変えたようだ。今までは仕方がなくやってきたけど、呼ばれたなら従うとな」

「そうなんだ。これからもよろしくね、帝釈に毘沙門天。あとね、空は身内のいざこざで疲れた私を癒してくれるの」

「美空でもそういうのあるのか」

「私を何だと思っているの?周りは毘沙門天の化身とか何とか言ってるけど、これでも人間よ。そっちは本物の神で人間なんでしょ」

「まあ、そうだが。全てを丸投げして、もうやだーっ!のときはどうしている?」

「そのときはお寺に帰るわよ、しょっちゅうね」

「寺ね」

さっきの出家がどうのこうのとか言ってたな。

「どうせ柘榴や松葉あたりから聞いてるんでしょ。私が機嫌悪くなったら、出家するって騒ぎ出すとか何とか」

「まあ聞いたが」

「けど、今回はしないわよ。少なくとも、空と愛菜を助け出すまではね」

そうまでして助けたい二人なのか。

「・・・・本当に助けたいのだな、その二人の事が」

「あなたにはその相手はいないの?一真」

「いるよ。たくさんな」

「・・・・信長だけじゃなくて?」

「知ってるかどうかは知らんが、俺の妻はこの世界にはいない。俺も別の世界から来た者だ、妻たちは置いてきているから寂しいとは思うけどな。俺の妻は百人以上いる事もな。愛妾は今の所、久遠や家老、三若、一真隊のメンツ。一葉に双葉、浅井家の眞琴や市もな。あとは綾那に歌夜、鞠、桐琴に小夜叉」

「お・・・・多すぎじゃないの?」

「今の所、愛妾は恋人という風になっている。だけど、誰かを守りたいという気持ちは美空と同じのはずだ。今は妻の元より久遠のところに戻るために。それに鬼を全て倒して、この国を人の手に取り戻すつもり。無論神の力もだけど。それで春日山に恩を売るつもりだ」

「ふふっ」

「何がおかしい?」

「その割には、空や愛菜の事を知りたがったりするのね。どうして?」

「縁だろうよ。知り合うんだったら情報くらい欲しいだろう」

「そうね。それに私の用事も済んだから、退屈しのぎにはなったからもう帰っていいわよ」

「そうか?俺はいや俺たちは美空の色んな事が知れてよかったと思っている。こいつらもな」

俺の周りにいる帝釈天たちも頷いた。こういうことは、心の内は知らないからな。聞くにも、美空では話せないし喋れない。それに美空の物言いは悪意を感じないし。今の所は、無能とは思っていないよだ。

「何?女の子と話せれば誰でも良いの?」

「その前に『可愛い』を付けろ」

「良く回る口ね。そうやって妻にする者を言い負かしたのかしら?それと天下御免の条件?」

「俺がではなく、女の子側からかな。それに好かれる体質らしいし、それに本妻は一人だけど妻を全部数えると結構な数だぞ」

「女の子側ねぇ。それと好かれる体質というのもどうなのかしら。ちなみにだけど妻だけで何人いるのよ?」

「えーと。正室は一人で側室は百人以上だ」

「三桁って!どんだけいるのよ?」

「その内の百人は黒鮫隊の女性隊員だ。一緒に働いていく内に俺のことを好きになって結婚したけど」

「いきなり三桁になるなんて、人間不信で寺に籠りそうだわ・・・」

本当はもっといると思う。この世界に来てからは、神界にいる女神たちが俺のことを好きである事も。
ここにいる帝釈天たちもそうだけどな。すでに行為をしている訳だし。普通に考えるとあり得ないかもしれないけどな。あの北郷一刀も、妻は50人いて全員連れ帰ったらしいと聞く。

「・・・・まあ、あなたがどういう者かはだいたい分かったわ。情報が集まったらまや呼ぶわね」

「ああ。情報が多いほど、俺達に勝機はあるからな」

「期待してるわよ。それとありがとう。帝釈たちに、従うように言わせて」

俺は何も言ってないけどな。美空のことが知れたから、呼ばれたら従うと言ってたし。人の気配を感じたので、帝釈天たちを半透明から姿を見えなくするようにした。

「た、ただいまっす・・・・」

「あら、お帰りなさい。二人とも」

「一真隊への補給、終わりました」

「ご苦労。それより聞いたわよ、柘榴。抜け駆けで一真隊に道場破りに行ったんですって?」

「うわバレたっす!犯人は一真さんっすか!」

「ううん。松葉」

「黙っててって言っといたっすのにー!」

「それより、どうだった?ウチの連中は?」

「ああそうっす!あいつ何なんすか、あのちっこい槍使い!」

「どっちだ?」

「なんだか殺る殺る言ってる方っす!」

うーん。どっちだろう。綾那も小夜叉もどっちも言いそうだな。でも、補給のときにいたから綾那かな。

「ええっと・・・・確か、綾那ちゃんだったかしら」

あー、柘榴の相手は戦国最強の方か。

「どうだった?綾那は」

「どうだったじゃないっすよ!ひらひら避けるのは分かるっすけど、こっちが手応えアリって思っても、傷一つ付いてなくてピンピンしてるんすよ!何なんすかあれ!」

「あー」

まあ、綾那だしな。俺がやるとしても、傷は付かないし再生する。

「私も見ましたけど、あれは不思議でしたね」

「そういうお家流なのかしら?興味あるわね」

「なんて言えばいいのだろうか」

傷付かない宿命というか、傷付いたら死んでしまう宿命なのか。戦国の本多平八郎忠勝というべきなのか。

「けど、こっちも最後まで立っていたから今日は引き分けっす!」

「・・・・それでいいんだ」

「勝負なんて最後まで立ってた方が勝ちっすよ!次はもう一人の槍使いをボコボコにしてやるっす!」

「もう一人の槍使いも別の意味でヤバいからな。あと、歌夜や桐琴もいるし」

親の代を継ごうとしているけど、森一家の槍使いは最狂だからな。

「なら楽しみっすね」

「ちょっと。次に行く時は私も誘いなさいよ!」

「・・・・大事な戦いを控えているのですから、二人とも無茶だけはしないでくださいね・・・・」

「分かってるっすよ!ねえ御大将!」

「もちろんよ」

その分かっているのは、絶対に分かっていないだろうな。この二人は。槍使いは目の前にいるしな、戦国最強は綾那に譲るが、世界最強の座は譲らん。

「・・・はぁ。絶対分かっていないでしょ、二人とも」

「大変だな、秋子は」

「ええ。私もいい加減、出家しようかしら」

秋子も出家するのと驚きながらも、見送られながら俺は長尾勢の陣地をあとにした。ちなみに帝釈天たちは神界に帰って行ったので、大閻魔化になってから冥界に行った。そして、神界での会議の結果を知らせたあと善人だけど強制的に鬼になった者たちの魂を回収したあとに、この魂たちを八大夜叉大将に送った。で、悪人で人間の頃から鬼だった者は、我と閻魔が裁いてから地獄に送った。所謂処刑だけどな。 
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