戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十六章 前半
小休止×周囲に鉄砲の音
「さて・・・・主様よ」
「ん?」
「今は鬼の襲撃が小休止となっておるが・・・・今日中に次が来ると思うかの?」
「来るだろうな。今は態勢を整えているだろうが、今は爆撃のおかげで何とかなっている。黒鮫隊は全員生存してるし」
小荷駄の荷台で眠ってしまった鞠に、寒くならないようにトレミーから毛布を持ってきてかけながら答える。
「今は久遠が無事なだけマシな方だ。俺達は捨て駒ではないからな」
兵が足りない事はわかっていることだ。一真隊、足利衆、八咫烏隊の面々が、休んでいる。俺が回復のオーラを飛ばして回復させたり、黒鮫隊に渡したドリンクを飲ませたりしている。さっきまで限界な状態ではあったけど、俺の処置のおかげで兵たちはあっという間に回復。戦うより逃げる方が優先だし。
「さてと、兵たちが回復したから次はお前たちだ」
と言って、ひよや詩乃、一葉、幽、鞠に回復のオーラを浴びさせる。あと一応小瓶であるがドリンクを渡した。飲んだら回復したけど。
「ご主人様」
「おうお帰り。報告の前に回復をしてやろう」
手をかざして回復のオーラを浴びさせる。そのあと同様にドリンクを渡した。飲ませたあと、詩乃たちを集めて報告を聞いた。
「まずは現在地の報告ですが、どうやらここは越前北方、国見岳の麓になるようです」
国見岳・・・・・丹生山地にある山の名前。
「国見岳というと、九頭竜川の方角ですね・・・・」
「とすると・・・・我らは東に逃げているつもりが、北に逃げていたということですか」
「だけど北の方に逃げているなら、久遠様たちが逃げている方角とは真逆ですから、作戦は成功ってことですよね?」
「そういうことになる。で、鬼の動きはどうなっている?こちらから見ると止まっているように見えたが」
「我らを追撃していた鬼の集団は、後方一里に陣のようなものを作って集結中でした。どうやら後続を待っているようです」
「まだ増えるか。しかし、一真たちの兵器のおかげで何とかなりそうだしの」
俺はトレミーで状況を確認していたら、後方にいる鬼達のさらに後ろから迫ってくる反応があったようだ。見たら大量の鬼の集団なんだと。でもそこには俺らが仕掛けた爆弾をセットしたから、そろそろ鳴ると思うんだけど。
『ドッカァァァァァァァン!!!』
「な、なんですか!この音は?」
「やっと起動したようだな。この音は俺達が移動中に仕掛けた爆弾だ。鬼が通ると爆発する仕掛けになっている」
「さすがですね。これで数は減ったかと思いますが」
「ところで小波。鬼の陣中はどんな感じだった?」
「我らを追っていた集団以外にも、いくつかの集団があるようで。いくつかの集団が陣に合流していました」
数は増えるが関係はない。俺達には空からの攻撃に、現代兵器にIS。すると、詩乃たちは加賀に向かって加賀衆が鬼の集団と戦っている間に美濃に向かうそうだけど。
「越中の南は飛騨だが、山深い飛騨を抜けるのはきついだろう。行軍のしやすさを考えるなら、信濃にまで回り込めば良いが・・・・彼の地は今、武田が支配下にあるが、加賀の連中と違い、甲斐の虎が見逃してくれるかどうかじゃな」
「そこは一葉様のお力添えを期待しておりますよ」
「ふむ。・・・・まぁ出来んことはないだろうがば」
「武田は鎌倉以来の名家とはいえ、甲斐入国の際、初代・尊氏公の援助が薄かったことに腹を立てたという話もあります」
足利尊氏・・・・室町幕府を立ち上げた創業者。大層気前が良くて、家臣に領地をポンポン与えたため、足利将軍家は貧乏になってしまった。
「家として意趣があるかもしれませんがねぇ・・・。現に三好と事を構えているときに、上洛を促しはしてみたものの・・・のらりくらりと避けておりましたし」
「あれは余が、先に越後の龍と謁見しておったからな。その辺りで動く気をなくしたのだろう。・・・・あの二人は犬猿の仲じゃからな」
「・・・あのぉ。先に越後の龍さんと会ってて、それが気に食わないから上洛しなかったって言うのなら・・・・余計ダメな気がするんですけどぉ・・・」
「「・・・・・あ!」」
「まあ、武田が動いたとしても、その時はその時だが。俺達が出来ることはひよや詩乃、一葉たちを守りながらいくんだからな」
その時、鉄砲の音が聞こえた。
「どこからですっ!?」
「ちょっと待ってろ」
俺はトレミーからの通信で、小波は静かに聞いていたら、俺も現状が分かった。
「・・・分かりました。ここよりも更に北の方から聞こえてきたようです」
「俺達と同じように逃げてきた部隊がいるそうだ。どこの部隊かは知らんがな」
「鬼が複数動いてるって、そういうことだったんだ」
また鉄砲の音が聞こえた。またトレミーに通信をした。
「ほわっ!?これって違う方向からの音ですよねっ!?今度は違う方向から聞こえてきていますよっ!?」
「ふむ・・・・違う方向というか、この音は四方から聞こえてきておりますなぁ」
「南と西から同時に聞こえて来ているようです」
「ということは、私たちと同じように、追い立てられて北に逃げてきた部隊が、他にいくつも居るってこと?」
「まさにその通りらしい。加賀衆ではないとすれば、俺たちの味方かもしれんな」
「・・・・どうする、主様」
一葉の声と共にトレミーからの通信によれば、この辺りに俺達と同じ黒鮫隊の反応有だそうだ。
ということは、梅たち居る可能性が高い。となれば、やることは一つだ。
「一つに決まっている。照明弾と鏑矢を撃ち、一真隊ここにありと示す。旗も立てて、力一杯雄叫びを上げよ!俺達はここにいるとな」
「そうすれば、鬼まで呼び寄せることになりますよ?」
「確かに危険だが、俺達の武装なら問題ない。それに、力を合わせれば何とかなるだろ」
「そうです・・・・そうですよお頭!みんなで力を合せれば。きっと、なんだって出来ちゃいます!生きるために。生き延びるために。みんなの力を合わせて、鬼をやっつけましょう!」
ひよは熱く語ったから、皆のやる気にもなった。俺達より後ろにいる黒鮫隊を、こっちに来させてから言った。
「数は力だ。集まれば大きな力にもなるだろうし、孤立している部隊は不利のままだ」
「理に適っていますね。それに一真様と飲み物のおかげで、兵たちは全回復をしましたから。それに私たちには黒鮫隊がいますから」
「よし。一葉、行けるな?」
「うむ。余は主様の恋人であり、先の未来では妻になる者だ。主様に従うのみ」
「幽は?と聞かなくても大丈夫か」
「はっ。それがしは公方様の盾。主が戦うのなら、その横で戦うのみ」
小波と烏と雀にも聞いたが、大丈夫だと。俺のおかげで、体力と気力、あと鉄砲はまだまだ撃てると。
ひよは、生き延びるためなら何だってやるとな。正直、黒鮫隊無しだったらきついが。まだ皆は余裕の顔をしている。
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