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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十六章 前半
  順調すぎる×敵が来る予感

「・・・・それにしてもな」

一乗谷に入ってからだが、鬼を押している森一家と松平衆の活躍。鬼は俺達にとっては強くも何ともないんだが、こんなにもとんとん拍子だとはな。何か罠でも仕掛けられているのか。

「とんとん拍子しすぎて、気になるな」

「確かにな。全てが順調に行き過ぎてはいるから、気になる事ではある」

「一葉も感じるか」

「うむ。下級、中級を含め、鬼と武士が互角に戦えることに対して、特に不思議は感じない。しかし敦賀よりこちら、全てが順調というのは、正直、胡散臭いと感じるの」

「森一家や松平衆は強さが別だとは思う。本隊の戦力の大半は足軽。そんな状態で鬼と互角に戦えるなんてことはないはずだ」

簡単に言うなら生まれてから死ぬまで、何の波乱もなく生活しているようなものだ。そういうのは、まずありえないこと。人は幸運や不幸が起こる事を。

「油断させてガブリと丸かじり・・・・であろうかの」

詩乃に対して今孔明と呼んでいたので、それをやめてもらった。詩乃自身も虚名みたいな感じなのか、自分で自分を納得しない感じだったらしい。素直に謝罪した一葉に礼を言ったあとに言ったが、敵が俺達の油断を誘って奇襲で決着など策とは言えんとな。これは誰もが思いつくこと。

「策とは相手の意表を突き、自失させ、己の目的を易々と達成するためのもの」

「ふむ。つまり?」

「我らの油断を突いて奇襲するという作戦は、連合軍に所属する将ならば、当然織り込み済みでありますれば、通用するはず無し、ということです」

「ますます順調になるが、怪しさは倍増だな」

「まさしく。・・・ですから考えているのです。果たして鬼は。・・・・いえ、ザビエルとやらは一体、何を目的とし、どうしたいのかを」

「ザビエルの目的は、日の本に住む全ての民を鬼にして、侍の国ではなく鬼の国に変えるだったな」

「その初手として、何かしらの方法で越前を鬼の国にした・・・・それが迅速な行動の下、随行されたのならば、信じられるのですが・・・・」

「なるほど。越前を鬼の国にしてから次の行動に移るまであまりにも時間が掛かりすぎている、ということか」

「時間が掛かったが故に反攻勢力が生まれた。そしてその反攻勢力・・・・我らのことですが、その我らに対して直接動きを見せたのが、二条館の襲撃だけ・・・・」

「そのくせ、示威行為として賤ヶ岳の村々を襲ってみせるなど、その行動に一貫性がない」

「ふむ。ザビエルとやらが何を考えているか分からないな」

「そういうことです。・・・・エーリカ殿の仰るザビエルとやらは、本当に日の本を鬼の国にするべく、行動しているのでしょうか?この日の本を鬼の国にする、という目的を、信じ込んでも良いのでしょうか?」

「・・・・ふむ」

敵の狙いは俺達の排除のはず、なのになぜという感じか。エーリカ=明智光秀だからなのか?そして敦賀城では抵抗が全くなく一乗谷に引き上げたのか気になる点ではある。それに越前討ち入りの際は時間があったからザビエルは、俺達を偵察する時間はあったはず。それと二条館の襲撃に関してもザビエルが動いていたと聞く。

「備える時間はあったはずなのにな。それに賤ヶ岳で襲ったことは、強行偵察を行ったとも推測される。本拠地で相手を待ち受け、膠着状態に持ち込んでの隙を見ての背後への攻撃。そんな作戦は通用しないと思ってもおかしくない。そんな愚かな敵であったか、そのザビエルという奴は」

「そうですね。それほど考えが甘い愚か者なのか、それともわざとこうなった上での奇襲攻撃をするのか」

「今は考えてもしょうがない。とりあえずさっき言った配置についてくれ。風や地の精霊に空からの監視もあるからな」

そう言って、一真隊の梅、ころ、雫と黒鮫隊の者たちを送ったあとも考えていた。ザビエルの真意が分からないことだ。何が目的なのかも不明だしな。と考えていたら何やら音が聞こえた。

「何の音だ!トレミー」

『どうやら、一乗谷の入り口を突破した模様。先鋒が雪崩れ込んで、内部に突入した模様です』

「そうか。ありがとうよ。で、小波。後ろはどうだった?」

「後方一里、くまなく探したのですが、鬼の姿などは全く見当たらず。念のため、手の者を四方に放って調べましたが、同じような結果です。鬼の姿も無ければ獣の姿もなく・・・・」

「ふむ。船や精霊たちの報告と一致しているな、どういうことだ。俺の勘は外れることなどないのに、外れるとは珍しい事もあるんだな」

一応衛星カメラでくまなく探したが、反応なし。風と地の精霊にも捜索させたが、反応がない。

「一里四方に適影なし、か。ふむ・・・・」

「やれやれ。一乗谷の鬼を倒せば全て解決万々歳、とでも思い込めということでしょうな」

「余がザビエルならば、その様に楽観はせん。念のためにと兵を伏せて置くぞ」

「で、ございますなぁ。・・・となると、これはどうやら我らの思惑を見事に外す、敵方の策が進行中ということでしょうかな」

「思惑を外す策・・・・」

幽の言葉を受けて、何かを考える詩乃。そのときであった。

「・・・・っ!?」

「どうした?」

「・・・・森一家との繋ぎをやらせていた手の者から、連絡が途絶えました」

「・・・・なんだと?」

句伝無量からの連絡が途絶えたということは、俺達でいうなら通信範囲を越えたのであろうか。

「前線で何かあったということか?」

「分かりません。ですが普通ではない、何かが起こったのだと思います。我が隊に所属する伊賀者たちは皆、事切れる寸前に、状況を念で飛ばすように訓練しております。ですから、不測な事態が起こったとはいえ、念が急に途切れるようなことは無いはずなのですが・・・・」

「ということは、そんな余裕もなく、念を飛ばせない状況になってしまったということですね」

「これは・・・・始まったと見るべきでしょうな」

珍しく真剣な表情で呟いた幽が、得物の位置を確かめるようにしている。やはり俺の勘が的中したのか。何かが起こることを。幽の行動で皆は、臨戦態勢を取る。

「一応連絡しとくか。こちら右翼だ。左翼の者、応答せよ」

『こちら左翼。何か起こりましたか、隊長』

「うむ。小波の句伝無量で、森一家の繋ぎの者と応答しなくなった。厳重警戒せよ」

『左翼、了解です。いつでも戦闘できるようにしておきます』

俺は左翼に通信をしたあとに、いつでも戦闘準備ができるようにしておく。

「誰かあるか!」

「はっ!」

「久遠の本陣にこの書状を届けておけ」

「承知仕りました!」

「一葉、良い判断だ」

「うむ。念のためだ、退路についてを送っておいた」

「前線には何かがあったのなら、こちらにも何かが起こるはずだ」

「ご主人様、ここは私が前線に赴いて状況を・・・・」

「駄目だ!これは予想外の事だ。皆の者、俺の周りを固めろ。来るぞ!」

「やはり、主様にも分かるか。やっと余らにも察知できた。ひよ、詩乃、早く集まれ!」

「「は、はいっ!」」

やはりか、地の精霊からの報告を聞いたときは疑ったが、地響きが聞こえる。左翼に向かって連絡しようとしたときには、遅かったようだった。 
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