戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十六章 前半
各衆の鬨の声
城戸を挟んで群れに集まった鬼達が、しきりに威嚇の咆哮を上げる。
「へぇ・・・鬼が充ち満ちてやがるなー。・・・母ぁー。なかなか楽しそうな狩り場じゃねーか」
「応よ、腕が鳴るのぉクソガキよぉ。・・・・てめぇ、小便チビッてんじゃねーぞ?」
「はんっ!母こそなっ!」
「ぬかすわ。・・・・そろそろ始めっぞガキい!」
「応よぉ!」
「森一家のクソ馬鹿どもーっ!人間捨てる覚悟は出来たかーっ!」
『うぉおおおおおおーーーーっ!』
「一乗谷の中ぁ、刈り取るのに手こずるほどの鬼どもが、手ぐすね引いて待っていやがる!」
「稲穂はいくらでもあんだ!収穫のときに喧嘩すんじゃねーぞてめぇら!」
『うぉおおおおおおーーーーっ!』
「よーし!気合い充分だな、このケダモノどもが!いいかー、鬼どもは森一家が独占すんぞー!」
「鬼ども根こそぎ刈り尽くせーーーーーっ!」
『うぉおおおおおおーーーーっ!』
後ろで見ていた壬月と麦穂は呆れていたというかなんというか。
「やれやれ・・・・なんて煽動だ」
「良く言えば普段通り、ということでしょう」
「まぁ武功も期待通り、挙げてくれれば良いのだが」
「織田家最狂の森一家ですもの。・・・・きっと期待に応えてくれますよ」
「そう願おう。・・・・では麦穂。戦機は逃すなよ?」
「うふふ、心得ております。・・・・壬月様こそ武運を」
「応よ」
一方三河武士である松平衆たちも気合を入れていた。
「松平衆、集合なのですーーーーーーーっ!」
『うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』
「良いですか!この戦こそ、三河武士の力を日の本中に響き渡らせる、絶好の好機なのです!三河の殿さんの凄さを日の本全土に知らしめるため、みんな元気よく死んじゃうですよ!」
『おーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』
「・・・・綾那。もうちょっと、こう・・・・言い方があるでしょうに・・・・」
「違うです?」
「元気よく死ぬんじゃなくて、命を惜しまず働けとか」
「じゃあそれです!良いですか!みんな、殿のために元気よく死んじゃうのです!」
『おーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』
「(はぁ・・・もう、めんどうくさい・・・・)」
「やれやれ。さすが三河武士は面倒ですなぁ」
「なんですか腐れワレメのくせに。また文句つけるですかっ!」
「いえいえ、滅相もない。ただ・・・面倒だなぁと」
「何が面倒です、三河武士は元気一杯に死ねる、殿さんの忠臣です!馬鹿にしてたら、その腐れワレメに蜻蛉切りをブッ差してやるですよ!」
「綾那、悠季。お下がりなさい」
「はっ」
「むー・・・・」
「三河の友たちよ。この戦は越前のみならず、この日の本に迫る暗雲との初戦になるでしょう。三河の勇者たちよ。松平家のためだけではなく、この日の本のために。その命、私に捧げて下さい」
『うぉぉおおおおおおーーーーっ!』
「我ら三河武士、いつなりと殿さんに命を捧げる準備は出来ているのです!ほらっ!」
「葵様、ばんざーいっ!」
「ねっ!」
勢いで切腹したので、俺は切腹した者の手当をした。あと、綾那に向かってハリセン一発叩いた。
「馬鹿者!ここで無駄な命を落とさせるんじゃなーい!戦場で葵に見せた方がいいだろうがーーーーっ!」
切腹した者は、傷もなくいつでも行けますみたいな感じだった。
「一真様!どうしてこちらに?」
「嫌な予感がしたから来てみれば、綾那が率先して煽動してたのでな。あとその者はもう大丈夫だ。三河武士よ、無駄な命を散らせるな!いいな!」
『うぉぉおおおおおおおーーーーーーーーっ!』
「という訳で俺は後ろに戻るが、歌夜。綾那の手綱を放すなよ?」
「わかりました。それとありがとうございます」
と言って、俺は空間を切って後ろにいる一真隊のもとに戻った。
「前の者、良き武者振りでした。それでこそ三河武士です。が、戦う前から命を散らせることは許しません。皆の命は戦場で大輪の花を咲かせるもの。この日の本を救うため、存分に励みなさい」
『うぉおおおおおおーーーーっ!』
「さぁ!三河武士の名にかけて、鬼どもたくさん殺ってやるですーーーーっ!」
一方浅井衆はというと、森一家と松平衆の勢いで負けていたような。
「う、うわぁ・・・・森一家と松平衆も、何あの意味の分からない勢い・・・・」
「一番怖いのは葵ちゃんだねー。淡々としすぎてて、何考えてるのか分かんないよー」
「律義者で通っている葵さんの、新たな一面を見た気がするよ。・・・・まさに暗黒面だね」
「市、苦手なんだよねー、葵ちゃん。・・・・まぁいいや。それよりまこっちゃん。畿内屈指の実力と謳われる江北武士の棟梁としては、織田最狂の森一家と、東海一の松平衆には負けていられないよねー?」
「それはそうだけど。・・・・って、ええっ!?あんなキチガイな煽動、ボクには出来ないよぉーっ」
「大丈夫!まこっちゃんならきっとやれるから!」
「む、ムリムリムリムリ、無理だってーっ!」
「んもう。相変わらずビビりだなぁ。・・・・なら市が代わりにやってあげるから、まこっちゃん、ちゃんと見ててよね!」
「市がって・・・・あ、ちょ」
「江北のみんなーっ!猛ってるぅーーーーーっ!?」
『猛ってマーーーーーーーーーース!』
「滾ってるぅーーーーーーーーっ!?」
『滾ってマーーーーーーーーーース!』
「よろし!先鋒はあの森一家だし、その後ろには松平衆とか居るけど、ウチだって負けてられないっしょー!」
『おーーーーーーーーーーーーーっ!』
「良いお返事!じゃあみんな!北近江最強と呼ばれる浅井衆の力、天下に喧伝しちゃおっかーーーーーっ!」
『うぉおおおおおおーーーーっ!』
「それじゃ、突撃ぃーーーーーっ!」
「は、はは・・・・はぁ・・・・。市が棟梁になった方が、ウチの連中は力を発揮するんじゃないの・・・・?」
眞琴はため息を吐いたが、市に続いて行ったけど。一方その後ろの本陣ではというと。
「先鋒、次鋒ほか、各陣営より鬨の声が上がりました。そろそろ戦端が開かれるところでしょう」
「デアルカ。・・・・」
「いよいよ、ですね・・・・」
「そうだな。・・・・金柑よ」
「はっ」
「貴様はこの戦いで何を望む?」
「え・・・」
「・・・いや由ないことを口にした。貴様は貴様の思うとおりに動けば良い」
「・・・・・・・・・はっ」
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