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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十六章 前半
  後方奇襲からの対策

「何をごちゃごちゃと細かいことを。横が駄目なら、正面玄関から殴りこめば良いのですわ!」

俺が考えている間に、なんかみんな横撃とかで考えていたようだけど。

「うむ!よくぞ言った、蒲生の!」

「公方様よりのお言葉、光栄ですわぁ!」

そして二人とも笑っていたけど、それは洒落にならんな。

「・・・・おお。ご覧下され一真様。この陣中に、季節外れの牡丹が大輪の花を咲かせておりますぞ!いやぁ見事見事。見事ですなぁ、あははははー・・・・」

「幽よ。笑いに力が入ってないぞ」

「そういう時もござるのですよ・・・・」

主の牡丹っぷりに、呆れと諦めが混じりながらだったけど。

「まあ、先鋒は森のお二人だしな。切り込み役としては最適だろうから何とかなると思うが」

森の二人を話してたら相変わらず、梅と小夜叉の相性は最悪。

「ところでお頭。私たち一真隊は、結局のところ、どう動けばいいのでしょうか?よくよく考えると私たちが入り込む隙間はなさそうだと思うのですが」

「確かにな。先鋒は戦国最狂を謳う森一家。その後ろには東海道にその名を響きかせる松平衆。畿内随一の江北衆や、戦上手の鬼柴田、その横には安定性抜群の米五郎左に売り出し中の織田の三若・・・・」

「むぅ・・・その面子では、抜け駆けして武功を挙げることも叶いませんわね・・・」

「なぁに。そこは源氏の白旒旗と二つ引き両を押し立てて道を空けさせれば・・・・・」

「馬鹿者!そうなったら混乱するに決まってるだろう、が!」

パシィィィィィィィィイン!

一葉の頭にハリセンで叩いて止めた。まったく何考えているんだ、この将軍は。

「いやぁ、ありがとうございます。止めていただいて」

「うぅ・・・・主様のそれは地味に痛すぎる・・・・・」

「ところで俺達には役目は他にあるだろが」

「後方よりの奇襲に備える。・・・・確かに一真様のご心配も分かります」

「敦賀より小早を使って撤退した鬼たちが、後方より襲い掛かってくる。・・・・確かにあり得る話です」

「少し探りを入れてみましたが、撤退した鬼は、自分の知る限り、一乗谷に入った形跡は見つかっておりません」

「そうだ。船での索敵をしたが、逃げた鬼が一乗谷に入ったという報せは来ていない。撤退した鬼はどこから来るのかだな」

「我らを撃滅するのが目的ならば、後ろか横か・・・・と言うところが、現実的な判断でしょう」

「沙紀、トレミーとヴェーダの予想はどうだ?」

「そうですね。予測だと後方からの奇襲が7割はあるかと」

ちなみにこういう作戦とかを決める場合は、ヴェーダを使って考える。トレミーだけじゃ、情報だけで戦うのは至難の技だし。ちなみにヴェーダは全ての外史を見張っている月中基地に配備されている。

「それにもし鬼達が本陣を狙って奇襲をしたら・・・」

「来たら、どうなりますの?」

「持ちこたえて、久遠を安全圏に逃がす。それしかないだろう」

奇襲に備えても、相手は人間の数倍を持つスペックを持つだろう。普通の場合だが、俺たちの兵器でやれば一真隊が危なくなったとしても、IS部隊の者達がシールドビットにより守るからな。それにISは現代兵器を上回る物だ。それに女性しか使えないという欠点ではあるが、野郎どもにとっては別に不愉快だとは思っていない。一真隊に足利衆や姫路衆を加えても、その数には勝てない人数だ。しかし、ISでの攻撃なら1人で戦えるしな。サバーニャだったら得意中の得意だし。

「もし本当に背後からの奇襲があったとして、退路が断たれます。そうなったらどうやって久遠様を逃がすのですか?」

「それについては考えはあるが、ここは詩乃に譲ろう。軍師の意味がないからな」

「ありがとうございます。一真様が完璧な作戦があるならば、あなたを支える幸せを噛みしめられませんから」

言いながら、詩乃は前髪を弄っていた。目を瞑り、微動だにしなかった詩乃はやがて、目を開ける。

「・・・・小波さん」

「はっ」

「物見に出ている小波さんなら、この辺りの地理をある程度把握出来ていると思います。それを教えてください」

俺の方をチラリと見て、許可を取る素振りをしていたので頷いた。それに、俺たちのだと地図では物見に出た小波に申し訳ないしいしな。

「・・・・ではお話致します」

頷いた小波が、江北から一乗谷に至る大道や、山の中を縫い走る小道の詳細を詩乃に伝えた。その情報も俺たちは、沙紀や俺が持っているスマホで分かるんだけどな。衛星カメラで見てるから。

「なるほど。分かりました」

頷き、しばし思案していた詩乃が、口を開く。

「背後からの奇襲を足利衆、姫路衆を含めた一真隊と黒鮫隊の者で受け止めた後、すぐに本陣へ使番を出し、今から言う退路を指示して下さい。一真様、船からの監視をしていますよね。詳細な地図をくれませんか?それで退路図を書いてくれませんか?」

「よかろう。沙紀」

「はい。すぐにこの辺りの地図と退路図を言って下さい」

と言って、スマホをボイスレコーダーにして詩乃の言葉で作成した。退路図はこうだった。

「退路は一乗谷より西。一度、敦賀に向かい、そこから南下して朽木谷を通り、京に向かう。・・・・これが比較的安全且つ最短の道となるでしょう」

「敦賀は大丈夫なのかな?」

「一度去った鬼が戻っている可能性もありますが、奇襲してきた部隊を突き抜けて南下するより、まだしも安全でしょう。朽木谷に辿り着けば、ほぼ危地を脱したと見て間違いないでしょう」

とのことだ、なので今トレミーが作成中だ。

「朽木谷か。朽木谷といえば確か・・・・」

「今は元綱殿が当主をしておられますな。昔、一時期お世話になりましたが・・・・一筆啓上しておきましょうか」

朽木元綱・・・・朽木谷を本拠地とする朽木氏の現当主。代々の領地を守るため、一所懸命な頑張り屋さん。

「・・・・どうする主様」

「詳細を伝えてしまえば、久遠の身の安全にも関わるが」

「ではその辺りをぼかしつつ、もしかしたらという事で適当に伝えておきましょう」

「それで大丈夫なのー?」

「元綱は時勢に聡い奴だ。見当はつくだろう」

「ならば、それでいくか。久遠が京に着いたら、きっと結菜と小谷の双葉が連携を取ってくれるだろう」

「双葉にも伝えておくか?」

「やめておく。双葉に伝えると余計な心配をかけるからな」

「双葉の性格を良く分かっているな主様。・・・・きっとそうなろう。主様の考え通りで良いと思うぞ」

「そりゃどうも。と退路図が出来たようだから、全員に配っておく」

と言って空間から取り出して、印刷したものをここにいる全員に配った。黒鮫隊のと俺のはない。スマホにてデータ送信されたからな。それに心配し過ぎて越前討ち入るとか言い出しそうだし、何も言わない方がいい。

「全員配り終えたな。それが、退路図だから頭の片隅にでも入れておいてくれ。あとそれは全員持っていろ、使番に持たせたときに他の者に見せ合えばいいことだ」

「でも本当に私たちだけで、奇襲を止めることができるのでしょうか?」

「そこは心配するな。一真隊の主要面子のところに黒鮫隊を配置しているから心配するな」

と俺が言ったら、本陣の方から勇壮な陣太鼓の音が聞こえる。

「本陣も動いたようだし、俺たちも行くぞ」

本陣の動きに続き、一真隊、黒鮫隊、姫路衆、足利衆が一塊となって動く。一乗谷の入り口に向かってジリジリと動きだして、しばらく時間が経った頃。急調子に太鼓が鳴り始めると共に、前線の方から腹中を揺らすほどの叫び声が聞こえてきた。一乗谷入り口、所謂城戸に取り付いた先鋒の森一家が、雄叫びと共に突撃を開始したのだった。 
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