戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十五章 幕間劇
夜食
「ハニー。お夜食ですわ」
「ああ。ありがとう」
そう言って梅が差し出してくれたのは、俺がいつも使っている弁当箱だ。これはトレミーから持ってきた物だけど、受け取ると伝わる重さ。中身がたっぷりと入っているようだ。
「今日はころさんが腕を振るって作りましたのよ」
「・・・・そうか」
「・・・・・」
「どうかしたか?」
「あ・・・・いえ、大丈夫ですわ。それでは失礼いたします」
頭の中は明日の事でいっぱいだな。一真隊の主要メンツは俺の様子がおかしいとか言っているが。黒鮫隊の諸君は俺が考えていることを知っているし、教えたら余計な情報で混乱するし。
「とりあえず、弁当でも食うか」
「一真様!」
そんなことを考えながら弁当箱の蓋を取ろうとしたら、元気いっぱいの声が飛び込んできた。
「ん?綾那」
「こんばんは、一真様」
「歌夜もか」
「すみません。夜遅くに・・・」
「構わんがどうした?」
松平衆があっという間に手筒山城攻略したのは知っている。遊びに来るのは、少し遅い時間なのではないのか。
「はい。あのですね・・・・綾那が、どうしても一真様にご用があるそうで・・・」
「綾那が?」
「です!綾那、一真様にとっても、とってもお会いしたかったです!」
「ほう、そうか。でも急にどうしたんだ?」
現代ならまずはアポを取るのが常識だ。ケータイで電話やメールとかでするが。ここにはそういうのはないし、あるとしても俺ら黒鮫隊だけだな。それにしてもこんな夜に何の用だろうか。
「ええっと・・・・やっぱり、ダメだったですか?」
「別にだけど、なんで?」
「だって綾那、越前攻めが終わるまで、一真様に会わないって約束したですから」
「んー?そんな約束したか?」
「手筒山に行く前に・・・」
「してないし。越前攻めが終わったら遊ぶ約束はしたけど、それまで会わないという事はしてないぞ」
綾那的には、戦が終わるまで会わないみたいなことだったのかな。
「ホントですかっ?」
「綾那がいいなら来ても構わんぞ」
「じゃあじゃあ、さっき何だかご機嫌が悪かったのは、綾那が約束を破って来たからじゃないですか?」
「俺、そんなに機嫌が悪く見えたか?」
「です。いつもの一真様じゃないみたいだったです」
ふむ。隠していたわけではないが、外まで漏れてたのか。俺が明日の事でピリピリ感出してたからなのか。
「・・・歌夜はどう見た?」
「ええと・・・失礼を承知で言わせていただければ、私も同じように・・・。・・・あ、もしかして」
「んー?」
「私がお邪魔・・・・でしたか?」
「そんなことはない。ただ今回の戦について考えていたから苛ついていたのさ」
「今回の・・・?」
「うむ。二人とも、手筒山城はどうだった?」
「どうだった・・・ですか」
「綾那は楽しみにしていた城攻め何だろう。実際はどうだったのかなと」
トレミーの報告と早馬からの情報を聞いたときは驚いたほど落城させたと。当事者の綾那たちがどう見たか、凄く気になるけどな。
「んー。・・・なんだか、つまんなかったです」
「お待ちかねの城攻めなのに?」
「城攻めだったですけど、あっという間に終わっちゃって全然物足りなかったです。普通お城を攻めるのって、門の所でやりあったり、壁を乗り越えようとしたり、大騒ぎするですよ。そのわーわーっていう声を聞いたら、綾那、わくわくしてくるです!」
「そのわくわくがいっぱいになった所で、一気に門を突破するわけか」
「です!」
さすが三河武士だな。こっちは城門に向かってライダーキックしたからな。それも一個目の城門から本丸に続く城門全て破壊してからだったけど。
「けど、今日はそれがなかったです・・・」
「そうですね。鬼の守勢も手薄でしたし、城門も何が何でも死守・・・という感じでもありませんでしたから」
「空城の計とかでもなく?」
「はい。それは葵様や悠季も警戒して、草に厳重に調査させてから入城したのですが・・・そういった計略の類というわけでもありませんでした。鬼は守勢が苦手・・・・と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、兵の被害もほとんどありませんでしたし」
「そうか。それを対人戦で考えたらどうだ?」
「だとしたら、何かを企んでいるようで・・・正直、気味が悪いですね」
「綾那、手筒山城攻めをすっごく頑張ろうと思って、一真様と一緒に遊ぶ約束したです・・・・。でもこれじゃ、全然気持ちよくならないです」
「俺も同じ理由さ」
「にゃ?」
「綾那が苛立っているのと同じ理由で、俺も少しな」
「そうでしたか・・・・」
そしたら綾那はイライラしていないそうだ。俺から見て敦賀城は呆気なかったからだしな。それにライダーキックで終わらせたけど。城門破壊して後、鬼が出てくるのかと変身解除しなかったし。
「でも、一真様がそんなにお城攻め大好きだったとは思わなかったです。やっぱり観音寺城みたいに、こっそり忍び込むの楽しいですか?」
「戦うのは好きだけど、城攻めはそんなに好きではないよ」
「綾那と同じ理由なのに、城攻めはそんなに好きじゃないですか・・・・?」
「綾那、それはそういう意味じゃないよ」
「うぅぅ・・・。一真様は時々すっごく難しいこと言うです」
「悪かったって、あまり気にするな」
と言ったが気にされるんだな。これが。
「それより、弁当食っていいか?」
「はい。どうぞ」
「お弁当ですか!今日は誰が作ったです?」
「ころだって聞いたけど」
「ころですか!」
と綾那の元気な声を聞いてから、俺は弁当箱の蓋を取る。
「・・・・・・・・」
一杯に詰まったご飯に注がれるのは、綾那の熱い視線だった。
「・・・・・・・・」
箸を取れば、綾那の視線は自然とそれを追うように。
「綾那?」
「なんですかっ?」
そんなに食い気味に視線を注がれると困るんだがな。
「ほら、綾那。あんまりじっと見てたら失礼でしょ。・・・・すみません、一真様」
「それはいいんだが・・・・」
「良い匂いです・・・・」
「そうね。ころさんのお料理、美味しいものね」
「ん?ころの料理、食べたことあるのか」
「すみません。実は京や小谷にいたときも、綾那と一緒に遊びに来たことが何度か」
ふーん。そうなのか。でも、俺の料理はころのよりもっとうまいけどな。一度ころやみんなに食べてもらったら、やはり落ち込んでいたとか。女のプライドを粉々にさせるとか。
「まあその時は、俺も誘ってほしかったよ」
「一真様もお忙しいですから。・・・・だから今日も、ご飯がこんなに遅くなってからなのでしょう?」
「俺の場合は、回る所も多いし。直属部隊である黒鮫隊の長でもあるからな」
一真隊の仕事は大半は丸投げだけど、黒鮫隊の仕事はしっかりとやっている。明日の戦についての作戦会議や、何班か分かれるときも分断するとか。あとは照明弾の色とか信号拳銃を各人に配るとかな。
「そうして気を配ることも、なかなか出来ることはではないと思いますよ」
「それならいいけどな。ありがと」
「・・・・いえ」
歌夜が言った瞬間に腹が鳴った音がした。誰かと思ったら綾那だったけど。
「あぅぅ。良い匂いかいでたら、お腹空いたです・・・・」
「って、綾那。私たちはもうお夕飯は食べたでしょ?」
「ころのご飯は別腹ですよー」
「もぅ・・・。そんなこと言うと、一真様が食べづらいでしょ」
「別にかまわんが、一緒に食べる?」
「いいですか?」
「皆で食べた方が美味しいだろ」
おそらく一人で食べた後は、トレミーに戻っての仕事か寝るだけだし。それに明日のこともある。そういう意味では二人がいて助かるな。話し相手がいるから。
「でも箸が一膳しかないよ」
「ふぇ?一真様が食べさせてくれないですか?」
「それでいいの?」
「それがいいですっ」
「え、ちょっと、綾那・・・・っ?」
「まあいいか。で、何が食べたい?」
そう聞くと俺の弁当箱を凝視している。
「ええっと、ええっと・・・・じゃあ、このお芋がいいです!」
「こら綾那。それは一個しかないんだから、ご飯にしなさい」
「別に気にしなくても構わんのだが」
こういうふうに、賑やかで食べるのが一番良い。おかず同士を交換とか、取り合いとかあって注意したけど。心が落ち着くんだよな。
「うー。じゃあ、ご飯でいいです」
「遠慮しなくてもいいんだぞ」
「歌夜の言うとおりです。綾那はお夕飯ちゃんと食べたですから、一真様がきちんと食べるです。お腹が減っては戦が出来ぬですよ!」
「じゃあ、芋は俺が食べるとして。綾那はご飯な、はい、あーんして」
「あーん」
一口分のご飯をつまんで、大きく開いた綾那の口に入れる。
「むぐむぐ・・・・。ころのご飯、美味しいです」
「そうかい。じゃあ、たくさん食べな。あーん」
「あーん。・・・・むぐむぐ」
これはまるで小動物に餌をあげているようだな。癒しだ。
「こら、綾那。そんなに食べたら、一真様のご飯が無くなっちゃうでしょ?」
「あ・・・・そうでした!」
「もぅ・・・・」
「歌夜も食べたいですよね?」
「え、ちょ・・・・ええっ」
「歌夜も食べる?」
「わ、私は・・・・ちゃんと、ご飯を済ませてきましたので・・・。それに・・・」
「それに?歌夜、どうかしたですか?」
「ええっと・・・・」
もしかしてダイエット中かな。いや、これは確か禁句のうちの一つだな。それに横文字言っても分からないだろうし。
「綾那も食べたのなら歌夜にも分けないと不公平か」
「え、あの、その・・・・それは・・・・・っ」
「ご飯でいいかな?はい、あーんして」
「や、やるんです・・・・か?」
「強制ではないから、嫌だったらいいけど」
「そ・・・そういうわけでは・・・・ないですけど」
「歌夜、なんだかおかしいです。ころのご飯、いつも美味しい美味しいって食べてるじゃないですか」
「それはそうだけど・・・・」
「それで、陣地に帰ったらお腹をむにってつまんで食べすぎたって・・・・」
「きゃーっ!きゃーっ!」
ああやっぱりね。女の子はそこを気にするから歌夜もかなと思ったけど。俺から見ても別にって感じだが、これは自分で気にしていることだから体重とか重いとかはタブーだし。
「か、一真様ぁ・・・・」
「ああうん。俺は何も聞いていない。俺は風の精霊と話してたから聞こえてないよ」
顔を真っ赤にした涙目でそんなことを言われてもな。可愛いとか言ったらますます顔を赤くするだろうしね。
「・・・それで、食べないですか?」
「うぅ、食べる。食べるわよ・・・」
「無理しなくていいんだぞ」
「いえ、ころさんのご飯が美味しいのは確かですから。ええっと、口を開ければいい・・・ですか・・・?」
「うむ。じゃあ、あーんして」
「あ、あーん・・・」
俺の言葉に従うように、歌夜はまだ顔を赤くしているけど。恥ずかしそうに口を開ける。綾那と同じように一口分のご飯を歌夜の口に入れる。
「ぁむ・・・・ん、んむ・・・・むぐむぐ・・・・」
「どう?」
「はい・・・・・。とっても・・・・美味しいです」
艶めかしく開けた口をそっと閉じた歌夜は、穏やかな月明かりの下で微笑む。
「そう。ならよかった」
「一真様。歌夜ばかりずるいです!綾那も食べさせて欲しいですよ」
「こら、綾那。一真様の分が無くなっちゃうでしょ」
「俺も食うから大丈夫だよ」
と言って、芋を口に入れて食べる。
ん、これってもしかして間接キスでもしたかな。
「どうしたですか?一真様」
「なんでもない」
これ、歌夜が食べたあとのだからなのか。嫌な気分でもするかな。さっき歌夜が嫌がってたのってもしかしてこれの事かな。
「一真様・・・・・」
歌夜。なぜにそんな潤んだ目で見るの?
「歌夜、次は綾那の番ですよ」
「わ、わかってるわよ。別にご飯が食べたいわけじゃ・・・」
「別にかまわんよ。嫌ではないのなら、気にせずに食べればよい」
「綾那ですー!」
「はいはい。綾那、あーん」
「あーん。・・・・むぐむぐ」
まあ、普通のあーんはこんな感じだろうしな。奏だって桃香たちだって、あーんして食べると笑顔になるし。
「次は歌夜な」
「ぁ・・・・・・はい・・・」
「はい、あーん」
「あーん・・・・。ぁむ・・・・・ん・・・・っ」
なんか綾那のときは普通なんだが、歌夜の場合は小さな唇の中に飲み込まれていくご飯や、舌先で絡む箸もなんかエロく見えるのは気のせいか?俺も歌夜も綾那と同じことをしているんだが、なぜだろう。
「どうか・・・・なさいましたか?」
「いや、なんでもない。美味しい?」
「はい・・・・。一真様のご飯・・・・とても美味しかったです・・・・」
そんな潤んだ目で見られると困るんだが。
「そうか、よかった。綾那は?」
「美味しかったですよ!」
「まあそうだろうけど。俺のご飯の方が美味しいんだぞ」
「そうなのです?」
「一真隊の中で料理が上手いのは一番は俺で二番目はころだ。今度は俺の手料理をご馳走してやるよ」
そしたら綾那も歌夜も喜んでいたが、今はこのご飯が食べたいわけで。
「一真様・・・・・?」
「まだ食べたい?」
俺の言葉に反応して、歌夜は頬を赤くしてこくりと頷く。
「じゃあ一真様!綾那も食べたいです」
「いいよ。二人とも、たくさんお食べ」
「はい・・・・」
「はいです!」
で、しばらくすると、満腹になったのか笑みでいる綾那と歌夜。
「美味しかったです。ごちそうさまでした!」
「ごちそう・・・・さまでした・・・・」
ふむ。三人で分けて食べたはずなのに、全然食べた気がしないな。俺が食べた後の箸で歌夜の口にご飯を運ぶのが、頭に焼き付いてしょうがない。
「一真様・・・・すみません。ご迷惑でしたよね?」
「そんなことはないよ。気にするな」
「ですが、一乗谷を控えてお疲れなのでは?綾那、遊ぶ約束はまたにして、今日は帰りましょう」
「そうですね・・・・。一真様、明日は頑張るですよ!」
「そうだな。明日は決戦だ!」
まずは明日を乗り越えなければならない。何が起こるかは分からないが、準備だけはしておこう。
「それでは、失礼します」
「あ、歌夜」
陣を去ろうとする二人を止めた。
「はい?」
「それと、綾那も」
「なんですか?」
「明日が終わったらさ。またみんなで遊んで、ご飯を食べような?」
「またあーんしてくれるですか?」
「そうではなくてだな。みんなでちゃんと席を囲んで、一緒にご飯を食べようかということだが?」
「え・・・・・・・」
「ん?俺、変な事言ったか?」
「え、あ、いえ・・・っ。そ、そうですね。今度はみんなで、ご飯食べましょうっ」
「変な歌夜なのです」
「そ、そんなこと・・・・ないよ・・・・」
綾那はまたあーんがいいので歌夜も聞いてみた。小さな声だったが、ちゃんと聞こえたのだが様子がおかしい。歌夜はぺこりと頭を下げると、綾那を連れて足早にその場を去って行ったのだった。まあ、ああいう歌夜もいいなと思いながら、トレミーに戻ろうとしたが、風の精霊が陣地を去った二人の会話を聞いていたそうだ。
「・・・・どうしたのですか?歌夜」
「え、あ・・・・ううん。何でもないよ」
「そうですか?何か、顔が赤いみたいですけど・・・・お風邪ですか?」
「大丈夫だってば。それを言うなら、綾那だってちょっと顔が赤いよ?」
「綾那は一真様と遊べて楽しかったですから!それに一真様と一緒にいると、心の臓のあたりが、ほーってあったかくなるのです」
「あ・・・うん。・・・そうだね」
「歌夜は楽しかったですか?」
「う・・・・・うん」
「あら、どうしたの二人とも。こんな時間まで夜遊び?・・・・呑気なものねぇ」
第三者の声が聞こえたと思ったらこいつは女狐か。たく、ムードぶち壊しだぞ。やっぱり俺が調教しなければダメかな。ちなみに俺は風の精霊と一緒に女狐の真上にいる。俺は風と同じようにしてるから気配とかは消している。風と同化してる感じかな。
「何ですか女狐。殿さんには、一真様の所に遊びに行くってちゃんと言ってあるですよ」
「なになに?狩りや見回りならともかく、若い娘が二人揃ってこんな時間まで他国の殿方の所に・・・?風紀、見直した方がいいかしら」
「・・・・何か文句あるですか?」
「別にあなたの事はどうでもいいけど、松平に仕える武士として、公序良俗に引っかかるような行いはねぇ・・・」
「別段、後ろ暗い事はしていませんよ。葵様にも織斑様にも、きちんとした形で許可は取ってあります」
「まあ、ならいいけど。・・・・小波じゃないんだから、気が付いたら天人殿の子供を孕んだ・・・・なんて事がないように気を付けて頂戴ね?」
「・・・・・・っ!」
「うっさいです。とっとと帰って寝ろですよ!」
「はいはい。それじゃ、明日も早いんだから、あんたたちもさっさと寝なさいよ」
と行ってしまった女狐は、あとでお仕置きするからいいとしよう。今風の精霊と地の精霊が追っ手をしているからな。
「・・・・・ったくもう、アイツのせいで楽しい気分が台無しです。・・・・・・歌夜?」
「え・・・あ、うん・・・・。何でも・・・・ないよ。早く戻って寝よ?」
「歌夜、お腹なんてさすって・・・。もしかして、お腹痛いですか?お薬もらいにいくですか?」
「ううん・・・・大丈夫だよ。でも、ちょっと・・・・キュンってしてるかも・・・・・」
とのことだったので、俺は女狐の所に向かうとまだ森の中だったので。首根っこを掴んだ状態で、地面に倒してからさっき言ったことについてO・HA・NA・SIをした。もちろん鞭を持ちながら尻を叩きながら、触手で永遠に穴と言う穴を犯しまくろうかと言ったら、首を横に振った。なので、尻は回復させてから、二度と俺の部下である小波や仲間である綾那と歌夜の文句を言うなと言ってから帰した。
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