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私立アインクラッド学園

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第二部 文化祭
  第52話 ストレア

 ストレア。
 ここの森に出現するモンスターのレベルは大して高くはない──しかしそれは、俺やアスナにしてみれば、という話である。シリカとリズ辺りが協力して挑んだとしても、恐らくアッサリ負けてしまうことだろう。運だけで逃げ延びることの出来るレベルではない。
 そんな森の奥深くに、傷や服の汚れ1つない彼女は1人でやってきたらしい──現に、周りに仲間の気配はない。相当な実力を持っているはずなのに、見たことはおろか、名前を聞いたこともない。一体、何者なのだろうか。

「どうしたの? 怖い顔して」

 ストレアの声にはっとさせられた俺は、一呼吸おいてから訊ねた。

「ストレア……俺をつけていた目的はなんだ?」

「んー……ちょっと興味があったから、観察させてもらってたの」

「興味?」

「キリトは強くて有名人だもん。興味をもって当然!」

「……あんたも、相当にやるみたいだけどな」

「あ、わかる? アタシも結構強いよ」

 ストレアはすました笑みを浮かべて言った。

「それにしても……う~ん、やっぱりね~」

「やっぱりって、何がだ?」

「キリトやっぱり、近くで見たほうがずっとカワイイね!」

「へ? か、カワイイ?」

「──えいっ!」

 呆気にとられた俺を、ストレアはぐいっと引き寄せ──。

「ぎゅー!!」
「うわっ! ちょっと! く……くるしいっ!」
「いいじゃん!」
「よくないよくない! っていうかあたって、というより埋もれて……っ」
「だってカワイイんだもん! ぎゅーってしたくなっちゃうよ」
「どんな理屈なんだ! わっ、ぐりぐりするなって!!」
「あっ、ねえねえ! これから時間ある? 一緒にお茶でも飲みたいなー! いいよね? さっきも要望を聞くって言ってたし」
「わかった! 付き合うから、まずは離し──」
「…………へえ~」

 後方から、聞き覚えのある声がした。ストレアのものではない。もっと近くて、よく知った──。

「キリト君に何かあったんじゃないかって思って、リハーサル放り出して必死に捜してたのにー……キリト君はそんなわたしのことも露知らず、1人でお楽しみだったみたいだね~。あ、1人じゃなくて美人のお姉さんも一緒だったか」

 ──画面の向こうの皆さんは既に、この声の主が誰なのかおわかりであろうか。
 ようやく俺を解放してくれたストレアは、更に特大の爆弾を投下した。

「ねえキリト、誰なの? この女のひと」
「ストレア、誤解を招く言い方はやめてくれ!」
「へえー……その人ストレアさんっていうんだ。キリト君がお世話になってます、わたしはキリトの“恋人”の結城明日奈です」

 もう最悪の事態である。

「……アスナ、これは誤解なんだ。ストレアとは今知り合ったばかりだし、そもそもさっきのはちょっとした事故で」
「何のこと? わたしは別に何も疑ってないけど? それとも、言い訳しなくちゃいけないようなことしでかしたのかな?」

 にこやかな表情だが、目が笑っていない。アスナさん激おこ。

「頼むから信じてくれ。俺は無罪潔白innocenceなんだ!」
「言い訳はあとで聞きます。とりあえず、今は無事に文化祭を終わらせることが先決でしょう?」
「……ごめん、完全に忘れてた」
「そんなことだろうとは思ってたわ。……それじゃ、ストレアさん。わたしとキリト君には用事があるから、お先に失礼させてもらうわね」

 アスナが言うと、ストレアはにこっと無邪気に微笑んだ。

「うん、いってらっしゃい! また今度デートしようね、キリト!」
「……キリト君?」
「だから誤解なんだって! ああもう、早く行かないと文化祭終わるぞ!」
「何よ、自分だってさっきまで忘れてたくせに。っていうか、そんなにすぐに終わらないわよ……きゃっ!?」

 俺は、アスナの手をぐいっと引いて駆け出した。




 
 

 
後書き
明日奈「キリトくん、出口わかんないんじゃないの?」
和人「……」
明日奈「ったく……大体わたしのほうが足速いんだから、手を引かなくてもいいわよ。っていうかわたしがキリトくん引くし」
和人「…………」 
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