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私立アインクラッド学園

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第二部 文化祭
  第51話 風変わり

 
前書き
文化祭編をさっさと終わらせたい美桜です。
まりあの想いの結末とかはもう全部考えてあったんですけど、グダグダやってる内にこんな長編に。
遠回りはするもんじゃないですね。

う゛ぇえ… 

 
 どこまで進んでも、辺りは木、木、木。人の気配はない。
 ここのモンスターを倒すことは容易だが、何せ出現数が多いためにすぐに息が切れる。疲れた俺は、木陰に腰を下ろして少しお休み中。
 森というものは、深くなるにつれて一層不気味さが増すものだ。だんだん暗くなってくるし、ゴースト系のモンスターも増えてくる。そのため、おばけや階段話の苦手なアスナは森の奥深くまで進むことを好まない。アスナがここへ来たらどんな面白い反応をするのだろうか。一度連れてきてみよう。
 しかし、ここで座ってそんな恐ろしいことを考えていても、ユイを救ったあの女性に巡り会えるはずがない。

「……はあ」

 俺は溜め息をつくと、重い腰を持ち上げて更なる奥へと歩みを進めた。




 さすがに深く入り込みすぎた。
 アスナたちにメールを送ろうにも、画面の左上には«圏外»と表示されていて送ることができない。

「……こんなことなら、地図くらい持ってくるんだったなあ」

 しかし、ここへ来てしまった以上、言っていても何も始まらない。また歩くのか、と俺はため息をつきながら、深い森の中をひたすら歩き続けていた。
 ふいに、俺の背後にあった草木ががさがさっと揺れた。
 モンスターではなさそうだ。とすれば、俺と同じように何らかの理由があって森へやって来た人間か──それとも、俺の背後をとって斬らんとする狂人か。
 何にせよ、少し様子を見たほうがよさそうだ。俺は突然の攻撃にも対応できるように、剣の柄に伸ばしやすい場所に手を構え、早歩きで進んだ。

 **

「──はあっ!!」

 静かな森の中に、明日奈の気合い、そしてモンスターの消滅音が同時に鳴り響いた。

「……ふう」

 明日奈はレイピアをかちり、と鞘に収め、少しだけ学園から持ってきた水を口にした。
 そして剣の柄を優しく撫で、呟く。

「……切れ味、落ちたかな」

 通常、切れ味のいい剣で対象を貫くと、鋭い音がするものだ。しかし、先程の音はなんだか鈍かったような気がする。

「帰ったら、リズに研磨頼んであげるからね」
 
 剣に向けて、小さく囁いた。
 この剣«ランベントライト»は、親友・リズベットこと篠崎里香に鍛えてもらった細剣だ。軽くて、スピード重視の明日奈としてはとても使いやすいし、華奢な見た目とは裏腹に威力も高い。狙ったところを正確に突いてくれるし、秒速単位で技を繰り出すことができる。里香が、「これはあたしが今までに鍛えてきた数々の剣の中でも最高の一品よ!」と楽しそうに言ったものだ。
 明日奈自身この細剣を気に入っているので、かれこれ1年以上愛用している。
 だから和人に里香を紹介した。最初こそ里香に失礼なことをしていたようだが、今はいい友達になっているようで、喜ばしいばかりである。
 しかし、その和人は今、いったいどこにいるのだろうか。
 この森は見てくれよりもずっと深い。あまり進みすぎると、二度と戻ってこれなくなった──などという事態になりかねない。それに和人のことだ、地図すら持たずに行ってしまったのだろう。
 なんとか連絡をつけようと、何度もメールを送った。しかし、未だ返事はない。
 和人が返信もできない状況なのだとしたら──そう考えると、明日奈はいても立ってもいられなくなった。

 *

 ──つけられている?
 妙な気配があった。誰かの視線を感じるような──背中を走るその感覚は、どこまで行っても消えなかった。一方的に見られ続けているのもいい気分ではないので、思いきってこっちから動いてみることにした。
 俺はなるべく平常心を装った声で言った。

「……おい! そこにいるのはわかっているんだ! なにが目的かは知らないが、要望があるなら話は聞く。出てきてくれないか?」

 ──どうだ……出てくるか?
 犯罪目的で俺を追っているなら、恐らく出てはこない。仮に出てきたとしても、戦闘は避けられないだろう。
 身構えていると、後ろから声がした。

「……あーあ。気づかれちゃったか」

 声の質や高さからすると、女性のようだ。それも、俺との年齢差は然程なさそうな少女の、無邪気な声。

「こんにちは」

 声の雰囲気からすると、敵対意思はなさそうに聞こえる。しかし、それだけで判断するわけにもいかない。俺は後ろを振り向き、言った。

「……今までに会ったことはないよな?」

 立っていたのは、紫色の柔らかそうな髪に、緋色の瞳をした、俺と同じくらいの身長の少女だった。
 少女はくすっと笑った。

「ふふ、どう思う?」
「……俺は見覚えないけど」
「うん、はじめましてだよ。アタシはストレア。よろしくね!」

 俺の警戒を悟っているかいずか、ストレアと名乗るその少女は、人なつこそうに微笑んだ。 
 

 
後書き
キリトくんとアスナさんって、なんていうかすごいですよね。もちろん本家のほうですけど。
デスゲーム終了から数ヶ月経った程度なら、恋人としてラブラブしててもおかしくないと思うんです。そうじゃなきゃ、SAOの中でのあの誓いはどうなるんだよってなるし(笑

でもあの二人は、1年以上経ってもあのラブラブっぷり見せつけてくれちゃってるし、なによりアリシゼーションでは、SAO時代に負けないくらいお互いを想い合ってることがわかる描写もいくつかありましたよね。
ほんとすごいなぁーと、改めて思いました。なんとなく。 
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