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魔法少女リリカルなのはStrikerS~破滅大戦~

作者: Blue
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1st
邂逅篇
  第6話『模擬戦』

 
前書き

『はずかしいや‥‥。調子にのって安請けあいしたことも、みんなが努力してやってきたことを死ぬ気弾で楽々とやろうとしたことも‥‥。やるだけやって‥‥終わったらみんなにあやまろう』
────by沢田綱吉(家庭教師ヒットマンREBORN!)
 

 
【3人称side】

「模擬戦?」

はやての言葉を復唱したのは一護。

響きから何となく意味は読み取れるが、一応、訊いてみる。

「そや。本来なら君たちみたいな民間人を任務や戦闘に巻き込んだりはせえへん。機動六課(ウチ)にも優秀な人材はイッパイおるしな。けど、さっき一護くんが戦ったガジェットの件もあるし、()()何より戦力が多いに越したことはない。3人ともチカラを持ってるんなら、協力して欲しい思うてな」

その問いに答えるのはもちろん、最初の発言者であるはやて。

不敵な笑みを浮かべる策士然とした雰囲気で、流暢に言葉を紡ぐ。

「協力するに当たって、オレたちのチカラを試したいって訳だね」

「ご名答~♪」

ツナが自分の読みを言葉にするが、どうやらそれは正鵠を射抜いていたようだ。

はやてが笑みを浮かべている。

対しツナは冷静な面持ちで立っているが、その表情にはチカラを得た当時のようなオロオロとした雰囲気──非死ぬ気モード時のソレ──はまったく感じられない。

この数年で、飛躍的な精神的成長を遂げたようだ。

「どうやろ? この申し出、受けてくれるかな?」

少々の真剣さを込め、改めて3人に問うはやて。

問いを受けたツナが一護とナツに視線を向ける。

アイコンタクトで互いの意思を確認しようとしているのだろう。

一護もそれに応えるように視線を合わせる。

しかし、応えたのは一護のみで、

「模擬戦ってことァバトルだろ? ヘっ、おもしれェじゃねーか。やってやンよ!」

ナツは既に()る気マンマンといった具合で、1人先走って答えを出した。

一同は思わずポカンとしてしまう。

問いを出したはやて本人も然り。

てっきりもう少し思案を巡らせたのちに答えを出すと思っていたようだ。

もちろん、ツナとしてはそのつもりだったし、アイコンタクトを受けた一護もそうだ。

しかし、ナツはその限りではなかったらしい。

「おっしゃァ! 燃えてきたぞ!」

1人で燃え上がっているナツ。

「ははは、ナツは元気だね」

「ああ、ちょっとウゼーな」

そんな彼の様子を見て、一護もツナも、思わず苦笑してしまった。

「えっと‥‥承諾してもらえた‥‥と、受け取ってもええんやろか?」

目の前に立つ桜色の髪の少年のテンションに困惑しながら、改めて問う。

「あ?‥‥まあ、いいんじゃねーか」

「確かに‥‥。どのみち厄介になるんだし、協力は惜しまないよ」

ナツが先走った形になってしまったが、一護もツナも模擬戦にも協力的な意思を示す。

「そっかそっか♪ それは感謝するわ。じゃあ今日はもう遅いから模擬戦は明日やるとして、人選やけど──「主はやて!」──‥‥っと、やっぱりか‥‥」

一護たちの模擬戦の相手を選ぼうとした時、1人の女性が名乗りを上げた。

シグナムだ。

はやてはそれを予想していたのか、呆れ顔で苦笑している。

「出たよ‥‥」

「やれやれだな‥‥」

ヴィータとザフィーラも同じく。

3人──2人と1匹──は、彼女の性質(タチ)を深く理解しているのだ。

「その模擬戦、私に任せていただけませんか?」

「ははは‥‥うん、ええよ」

──シグナムの気質は決闘趣味だ。こうなったこの騎士は、何を言っても無駄だろう。

そんな思いが頭を(よぎ)り、はやてはシグナムの申し出を了承した。

「ありがとうございます!」

はやてに対して頭を下げたのち、今度は一護の方へと向き直るシグナム。

「黒崎、と言ったか。お前はガジェットと戦っていた時、剣を使っていたな」

「あ、ああ」

「主はやてより許可は下りた。私とお前の刃を、存分に交えようではないか!」

シグナムの怜悧な双眸は戦いを前にして、その昂りを体現かのするようにギラギラと輝いていた。

一護はそんなシグナムの瞳と同じソレに覚えがあった。

〝更木剣八〟

護廷十三隊十一番隊隊長の死神の名だ。

尸魂界(ソウル・ソサエティ)にはいくつかの地区が存在し、死神たちは〝瀞霊廷〟という場所で暮らしている。

その瀞霊廷を守護する死神の組織が〝護廷十三隊〟であり、更木剣八は十三隊中最も戦闘に長けた十一番隊の隊長にして、尸魂界(ソウル・ソサエティ)〝最凶〟の死神と呼ばれている。

加えて自他の一切が認める戦闘狂であり、今し方一護が見たシグナムの瞳の輝きは、彼のソレに似たモノを感じさせるのだ。

まあシグナムの方が美形な女性である上、斬り合いや殺し合いではなく純粋な〝戦い〟を楽しもうとしている分、全く以て可愛げがあるのだが。

「いいぜ」

目の前の女性の性質(タチ)を、仮に剣八のソレと同種のモノとするのならば、今ここに〝No〟の選択肢は存在しないだろう。

はやてたち同様、一護も彼女の性質(タチ)を踏まえた上で、その誘いを受ける。

「よしよし! では黒崎。明日とは言わず、今からやらないか? 見たところそれほど疲弊してもいないだろう」

シグナムは満足気に頷き、翌日に予定された模擬戦を今からやろうと言い出した。

これに対し一護はチラッとはやてに視線を向けるが、はやてはそれに苦笑で応える。

その意味は語らずとも汲み取ることができた。

「ハァ‥‥わかったよ、今からやってやるよ」

「よし! ではすぐに準備しよう!」

対戦相手の了承を得たことで、シグナムは意気揚々と部隊長室を後にし、一足先に模擬戦が行われる訓練施設へと向かった。

「あはははは、ごめんな、一護くん」

「まあ別にいいさ。俺もこの世界のチカラには興味があるからな」

自分の守護騎士の行いに僅かながら負い目を感じたはやては、一護に謝罪する。

‥‥が、一護はそんなことは気にも留めていない。

むしろ一護もシグナムと戦ってみたかったようだ。

「なんだよ、一護が先かよ」

「まあまあ。どのみち戦えるんだから、順番なんかどうでもいいだろ?」

「むぐぐ~‥‥」

模擬戦の相手であるシグナムが一護を選んだことで、自動的に後回しとなったナツが愚痴を(こぼ)す。

ツナがそれをフォローする形で宥めているが、ナツは何となく納得できていないようだった。

その時、

「ただいまでーす」

シグナムと入れ違いで体長僅か30cmほどの、差し詰め小人とでも呼ぶべき少女が、中空を飛んで部隊長室へと入って来た。

「あの~、シグナムが喜色満面に小走りで訓練施設の方へ向かってたんですけど、一体何が──‥‥って、その方たちは誰ですか?」

少女は一護たち3人を見つけると、はやてに問う。

「お帰り、リイン。この人等は今日から六課で保護することになった新しい仲間や」

入室して来た少女──リインを迎えながら、はやては簡単に説明する。

「保護、ですか?」

リインはこてんと首を傾げる。

容姿や体躯も相俟って、何とも可愛らしい。

「そうや。自己紹介しとき」

その愛らしさを微笑ましく思いながら、はやては促す。

「はいです! えっと、初めまして。はやてちゃんの〝ユニゾンデバイス〟のリインフォース(ツヴァイ)曹長です。よろしくお願いします」

今度はぺこりと頭を下げるリイン。

「黒崎一護だ。こっちこそよろしくな」

「沢田綱吉です。ツナでいいよ。よろしくね、リイン」

「ナツ・ドラグニルだ! よろしくな!」

「はいです!」

3人の自己紹介に対し、リインは透き通るような声で元気に返す。

「ちょうどええわ。リインも模擬戦観る?」

「模擬戦? 今からですか? あ、もしかしてさっきのシグナムは‥‥」

「そういうことや」

「なるほど納得です」

リインもまたシグナムの性質(タチ)をよく理解している。

廊下ですれ違った彼女の態度に、ようやく合点が行ったようだ。

体は小さいが、理解力は十分にある。

「じゃあ模擬戦の相手は‥‥」

リインは視線を横へと僅かに移す。

彼女の視線の先には一護たち。

「そや。3人とも何やチカラがあるみたでな、シグナムがやる気になってしもうたんよ」

「そうなんですか‥‥」

ジッと一護たちを見つめるリイン。

(決闘趣味のシグナムがあんなに浮かれるなんて、よっぽどすごいチカラがあるんでしょうか‥‥?)

浮かれる仲間の姿を思い浮かべながら、リインは物思いに耽る。

「どうする?」

「リインも観たいです!」

シグナムの性質(タチ)も相俟って、一護たちのチカラに俄然興味が湧いた。

リインは模擬戦の観戦意思を表明する。

「それじゃあ、私たちも移動しよか」

はやてに言われ、一同はシグナムの後を追うように訓練施設へと向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「そういえば、一護くんたちは地球出身なの?」

訓練施設へと向かう途中、ふとなのはが問う。

一護と初めて会った時にも頭を過った疑問だ。

「随分とスケールのデカい質問だな。括りが広すぎんだろ」

街や国の出身を問われるのは理解できるが、まさか惑星単位で問われるとは思わず、一護は返答に困る。

「あははは、他所から来ていきなりそんなこと訊かれたらそら困るわな」

困り顔の一護を見て、はやてが笑う。

「まあ簡単に説明するとやな、この機動六課は〝時空管理局〟っていう組織に属してるんやけど、その管理局の大筋の仕事は〝次元世界の管理及び監視〟なんや。諸々違いはあるけど、その次元世界の中に地球も含まれとるって思ってくれればええわ」

困惑顔の一護に、はやてが大まかな説明を施す。

「〝次元世界〟っていうのは、いわゆる〝平行世界(パラレルワールド)〟のこと?」

次に言葉を発したのはツナ。

エレアから〝平行世界(パラレルワールド)〟について聞いていたための発言だ。

「う~ん、色々面倒くさい違いがあるけど、まあ間違ってはないかな」

「ふ~ん‥‥」

ツナははやての回答から色々と思案を巡らせているようだ。

察するに、情報を整理しているのだろう。

「まあ地球出身ではあるな。東京の空座(からくら)町って場所だ。ツナは?」

「オレは並盛町。でも次元世界ってたくさんあるんでしょ? なんでオレたちが地球出身だと思ったの?」

情報整理を終えたツナは一護の問いに答え、次いでなのはに問いかける。

「名前の響きが似てたからね。わたしも地球出身なんだ。海鳴市って場所」

「じゃあはやても?」

「そうや。私は関西出身なんやけど、ここに来る前は海鳴に住んでたから、海鳴出身でもあるかな」

「フェイトも地球出身なのか? どっか外国とか」

「ううん、私はちょっと違う。けどなのはたちと同じで海鳴市にいたから、地球出身と言えないこともないかな」

地球の話題で盛り上がる5人の後ろで、ナツは物珍しそうに彼らの会話を聞いていた。

「お前は地球出身じゃねーのか?」

そんなナツに問いかけるのは、その隣を歩いていたヴィータ。

「生まれた場所は覚えてねェけど、オレはアースランドっつう世界にいたからなァ。〝ちきゅう〟って場所のことはわかんねェ」

「う~ん、聞いたことねーなぁ‥‥。なあリイン、〝アースランド〟なんて世界聞いたことあるか?」

ナツの口から発せられた未知の単語について、前を飛んで行くリインに訊ねるヴィータ。

「いえ、聞いたことありませんね‥‥。はやてちゃんはどうですか?」

リインは首を横に振る。

彼女はヴィータからの質問を、自分の前を歩くはやてに投げかける。

「うん? 〝アースランド〟? 私も聞いたことないなぁ‥‥。それがナツくんのおった世界の名前なんか?」

「ああ」

ヴィータやリインにとっての未知は、どうやらはやてにとっても未知だったようだ。

はやての返しの問いに、ナツは頷く。

すこし思考したのち、

「まあ、あとでロングアーチに言うて検索かけるから、今はええか」

今は出身世界云々の話題を置いておくことにした。

気が付けば、一同が立っているのは訓練施設の入り口。

話し込んでいる内に、目的地に到着していたようだ。

「ねえヴィータちゃん、あの子たち連れて来てもらえるかな?」

訓練施設に入る時──実質は外にあるので出る時──に、なのはがヴィータにお使いを頼む。

「いいけど、寝てんじゃねーのか?」

「別世界のチカラに触れる機会なんて滅多に無いし、そこはほら、〝観ることも教導の内〟ってことで、ね?」

「いつもと言ってること違ぇじゃねーか」

「まあまあ、ね?」

「‥‥りょーかい」

なのはに言われるまま、ヴィータは集団から外れる。

「リインも行きまーす」

リインもそれに続き、2人は廊下の先へと向かって行った。

「アイツ等は何しに行ったんだ?」

ヴィータたちの背中が見えなくなった所で、ナツが問う。

「新人たちを呼びに行ったんだよ。ナツくんたちの模擬戦を観てもらおうと思ってね」

聞くと、なのはは教導官で〝フォワード〟と呼ばれる新人魔導師たちに訓練をつけるのが役目の1つなのだという。

今回の模擬戦を見せるのも、新たに仲間となる一護たちのことを知ってもらうのはもちろん、〝他者の戦闘を観てることで学ぶことも色々とある〝とのことだそうだ。

それを聞いたツナは、数年前の自分ほどではないにしろ、こんな夜遅くに呼び出しを食らう新人魔導師たちの大変さを少々憐れんだ。

ともあれ、訓練施設へと足を踏み入れた一同はそれぞれの場所へと別れる。


◆◇◆◇◆◇◆◇


海上に張り出す形で設置された訓練施設のフィールド‥‥。

「遅い! 待ち草臥(くたび)れたぞ、黒崎!」

天窓から差し込む月明かりと室内の照明に照らされたフィールドの中央付近では、シグナムが仁王立ちで待ち構えていた。

「お前が部屋を出てからまだちょっとしか経ってねェぞ‥‥」

他の者と別れ、一護はシグナムの待つフィールドに立つ。

一護との模擬戦を待ち侘びたのか、仁王立ちのシグナムは、遅れた一護を怒鳴りつけた。

「ってか何も無ぇな‥‥。ホントにここで戦うのか?」

「何も無くはないだろう。眺めは良いぞ?」

「いや、月ぐらいしか見えねーよ‥‥」

「まあ心配するな。直に──」

言おうとして、変化は起きた。

シグナムの言葉を訝しんでいた一護だったが、その変化に、思わず息を呑む。

今までは何の変哲も無い普通の室内だった訓練施設が、一瞬にしてビル街──それも真昼間の──へと景観を変貌させたのだ。

「なっ、なんだ‥‥!?」

「驚いたか? ここは機動六課(ウチ)の優秀な科学者と教導官が設計・監修を行った〝陸戦用空間シミュレータ〟という特殊訓練施設でな。様々な地形・状況での戦闘を想定して訓練するために、このように擬似的な再現ができる仕様になっているのだ。今回は〝廃棄都市〟といったところか」

シグナムの説明を受け、一護は周囲を見渡す。

廃棄都市と言った通り、通常のビル街ではなく、そこかしこから寂れた印象が見受けられる。

「‥‥スゲーな」

至極純粋な感想が、一護の口をついて出る。

シグナムは〝擬似的な再現〟と言っていたが、周囲のビルや地面の塗装から感じられる質感も、天から降り注ぐ日差しも、まるで本物のソレだ。

〝偽物だ〟と明言されなければ、気づかないかも知れない。

「フッ、褒めるならさっき言ったように優秀な科学者か教導官に言ってくれ」

「ああ、そうさせてもらうぜ。お前を倒したあとでな」

「‥‥ほう」

ピリピリとした緊張感が、次第に2人の間に満ちる。

その時、

《待たせてごめんな》

はやての声が施設内に響く。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「なのはー、連れて来たぞー」

「うん。ありがとう、ヴィータちゃん。リインもありがとね」

なのははヴィータたちに簡単ながら謝辞を述べる。

ヴィータの後ろには4人の少年少女──正確には少女が3人と少年が1人──と、そのうち1人の少女が連れている小さな竜が1匹。

彼女たちが〝フォワード〟と呼ばれる件の新人魔導師なのだろう。

〝訓練施設に来い〟と言われたからか、揃って訓練着と思しき服装に身を包んでいる。

「えっと‥‥これから何が始まるんですか?」

最初に声を発したのは、青い髪をショートカットにした少女──スバル・ナカジマだ。

「模擬戦だよ。新しい仲間のね」

「こんな夜遅くにですか? それに、新しい仲間って‥‥」

なのはの説明に反応したのは、小竜を連れたピンク色の髪の少女──キャロ・ル・ルシエ。

「もしかして、そちらのお2人が‥‥?」

そのキャロに続いて声を発したのは、赤髪の少年──エリオ・モンディアル。

彼の双眸は、なのはたちの奥に立つナツとツナを捉えていた。

「そう。ナツくんとツナくんだよ」

「ナツ・ドラグニルだ。よろしくな」

「沢田綱吉です。ツナでいいよ」

「‥‥何というか、ややこしい名前ですね」

2人の名前に反応したのは、オレンジ色の髪を黒っぽいリボンでツインに結った少女──ティアナ・ランスターだ。

彼女の発言に、他の3人も内心「確かに」と思ったのはココだけの話‥‥。

「それともう1人‥‥」

なのはがフィールドに視線を移すよう4人に促す。

4組の双眸が捉えるのは、シグナムと相対するオレンジ頭の青年。

「一護くんだよ」

「〝イチゴ〟? 果物のですか?──ッ!?」

言ったスバルに、なのははグイッと詰め寄る。

「スバル‥‥それは一護くんに言っちゃダメだよ。いい?」

「は、はい‥‥」

なのはの鬼気迫る忠告に、スバルは若干(すぼ)みながらも従うことにした。

「けど、いきなり相手がシグナム副隊長なんて‥‥」

「あの一護さんって人‥‥大丈夫なんですか?」

キャロとエリオが心配そうに一護を見つめる。

2人はシグナムの実力を知っている。

自分たちはもちろん、並の魔導師では到底かなわない強さだと認識しているが故の発言だった。

しかし、

「確かにリミッターを付けてるとはいえ、シグナムは強い。けど一護なら、もしかするともしかするかも知れないよ」

そんな2人の発言に、フェイトが異を唱える。

実際に一護のチカラを目の当たりにしているが故の発言だ。

なのはも同意見なようで、静かに頷いている。

「へえー‥‥。じゃああの一護って人も強いんだ」

フェイトの発言を受け、興味深々な眼差しで一護を見ているスバル。

「‥‥‥‥‥‥」

そんなスバルとは対照的に、怪訝な眼差しで一護を見つめるティアナ。

その時、夜の海の風景が真昼間の廃棄都市へと変化した。

シミュレータが作動したようだ。

「グリフィスくん。2人の戦闘の記録、頼んだで」

《了解しました》

はやてはロングアーチに所属する自分の副官であるグリフィス・ロウランに、これから始まる一護とシグナムの模擬戦の記録を命じる。

そしてすべての準備が整ったことで、はやてはフィールドに立つ2人に対して口を開いた。

「待たせてごめんな」


◆◇◆◇◆◇◆◇


観戦スペース側も、ようやく面子(メンツ)が揃ったようだ。

《ルールは簡単。どっちかが降参するか、もしくは継戦不能になったら終了。異論は?》

「無ぇよ」

「ありません」

言いながら、2人はともに戦闘準備に入る。

一護は代行証を胸元に当て、死神化する。

その時、自分の背後を確認する。

しかし、視界に映るのは廃れた街並みのみで、他には何も無い。

自分の肉体もだ。

(やっぱりそういうことか‥‥)

これで一護は合点がいった。

それは自分の死神化に関してのことだ。

普段はこうして代行証を使って死神化すると、肉体は魂が抜け出た状態となって倒れてしまう。

意識のある霊体と意識の無い肉体とにわかれ、2つが別々に存在することとなるのだ。

だが今この場にいる一護は死神化した〝霊体〟のみ。

〝肉体〟の方はどこを探しても見当たらない。

考えられることは霊体と肉体が同一──つまり、肉体がそのまま霊体になっているということだ。

そんな馬鹿なことがあり得るのかというと、あり得るのである。

一護の仲間に浦原喜助という男がいる。

彼は護廷十三隊の元十二番隊隊長兼技術開発局初代局長という肩書を持っていた、いわゆる死神の技術者である。

そんな浦原の持つ技術の中に〝霊子変換装置〟というモノが存在する。

これは一護の世界──〝現世〟においてあらゆるモノを構成する〝器子〟という物質を、文字どおり〝霊子〟に変換する装置のことだ。

この原理を用いれば、本来は器子で構成される一護の肉体を、霊子で構成された魂魄の状態へと変えることができる。

つまり霊体である魂魄から同じ霊体である死神の姿へと変化するのならば、存在が2つに分かれることもないということだ。

ではそれをやったのは誰かと問えば、

(これもエレアがやったことか‥‥)

当然の考えである。

そもそもこの世界へと一護を転移させたのが彼女なのだから。

ただ〝何故に彼女がそのような技術を持っているのか?〟という疑問は残る。

それだけは一護が如何に思考を巡らせようと、答えが出ることはないだろう。

だが彼女がその技術を持つ理由も、肉体の構成物質が霊子になっていることも、模擬戦という現状においては然したる問題では無い。

現に一護はこの世界ですでに死神化しての戦闘を行っている。

(問題無ぇな‥‥!)

多少強引にモヤモヤを晴らした一護は、背中に携えた斬月を両手に持って構え、改めて対戦相手の女性騎士を見据える。

相対するシグナムもまた、自身の愛剣であるアームドデバイス──《レヴァンティン》を起動させ、同様に両手で持って構える。

《よし、じゃあ準備はええか? ほんなら行くで‥‥》

2人はともに刃を構え、相手をジッと見据える。

いつでも動き出せるように‥‥。

そして、

《模擬戦スタート!!》

はやての高らかな号令とともに、一護vsシグナムの模擬戦は始まった。


─To Be Continued─ 
 

 
後書き

更新遅くなって申し訳ありませんでした(汗)

この話自体は以前連載していた時のバックアップがあったので既に出来上がってはいたのですが、次話以降のストックが少なかったのと、細かい所の加筆修正に手間取ってしまいました(>_<)

さて前回の後書きで言っていた〝一護の死神化に関する設定〟についてですが、本編では〝器子で構成された肉体を霊子で構成されたモノへと変換している〟と書きました。

しかし、あれはあくまで一護の主観的な考察によるもので、実際の設定はそうではありません。

ネタバレになるので多くは言えませんが、エレアが一護に掛けた術は全く違うモノです。

まあそれほど重要な設定ではありませんが、エレアが何故そのような技術を持っているのかも含め、今は一応伏せさせていただきます。

この伏線──伏線って言えるほどのモノでもありませんが──の回収は大分先になりますけどね(-"-;)

次回は1話丸々一護vsシグナムの模擬戦になります。

正直戦闘描写は苦手なのですが、盛り上がる描写が出来上がるように頑張ります!

今回はこの辺りで失礼させていただきます。

本作に関する感想、指摘、要望、質問等、お待ちしております。

お気軽にお寄せください。

では‥‥m(_ _)m


次回、第7話『刀vs剣』 
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