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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十五章
  出陣×松平衆

「もう少しで・・・・また満月の夜になる・・・・。あれからどれほど経ったのだろう?何時間?それとも何十時間・・・・?長き時を得て、ようやく次のステップに向けて動き出せる・・・・さぁ始めましょうか」

次の日の朝、俺たちは久遠の下知を待っていた。

「出陣する!」

凛とした久遠の声が響き、小谷の馬出に待機していた連合軍の面々が、一斉に動き出す。目指すは越前国の中心である、朝倉義景が鎮座する一乗谷に向けて。

「(一乗谷に向けるのはいいが、邪魔な城は次々と落とさないと行けないが)」

織田勢、詳しく分けると、織田、松平、浅井、足利の連合であるこの軍は、俺達一真隊が先頭だ。戦いになれば、俺たちの後ろにいる松平衆や壬月たち織田衆と入れ替わるようになる。一真隊は物見とかで、戦闘前の露払い的な役割があるためなのか先陣を任されているんだけど。はるか上にはトレミーがいる。トレミーからの反応があれば、俺は素早く仲間に伝達するけどね。

「一真様ぁーっ!」

一真隊の物見役に指示を出しながら進んでいると、後方から足音が聞こえる。

「綾那?松平衆の指揮をしなくてもいいのか?」

「綾那が先頭に行きたいって、聞かなくて・・・・」

「そうなの?」

「えへへー、行軍するなら、やっぱり先頭が一番楽しいです」

「ならば、しばらくはここに居な」

「はいです!」

「申し訳ございません一真様。お忙しいときに」

「別にかまわん。実務は主に仲間がやってくれる。だから、今は暇なんだ」

綾那は喜んでいたけど、歌夜もだけどな。笑みを浮かべながら、槍を振り回してたけどな。

「いよいよ越前ですよ越前!一真様!綾那、腕が鳴るです!」

「腕が鳴るのはかまわんが、槍を振り回すな。危ないだろう。それに、今回は数多くいるからな。楽しみなところもある」

「です!鬼をたくさん殺っちゃうですよ!」

「こら綾那。物騒な物言いしないの。三河武士がみんな綾那みたいに好戦的だって思われるじゃない」

「違うです?」

「そうだな。ここで殺っちゃうって言ってると、そう思われるから発言は控えた方がいいぞ」

この前の観音寺城もだけど、仲間の屍さえありながら進んでたしな。

「山深く、近隣との戦いが絶えない土地でしたからね。頑固者が多くて困りますけど」

綾那は頑固者そうだな、さっきのを聞くとな。歌夜はそうじゃないみたいだけど。三河武士の特徴はそんな感じかと思ったけど。

「ところで一真様」

「何かな?」

「先の久遠様の宣言で、一真様が有力者との縁組みつまり恋人になるということになりましたけど」

「ああ、そうだな」

久遠の宣言は仲間たちにも主旨はきちんと説明している。周辺国の有力者たちにも、幕府より正式に説明がいっているようだ。

「一真様ご自身は納得されているのですか?その、まるで物みたいに扱われているような気がして」

「物ね、確かにそう思うときもあるだろうが。もし有力者たちがなりたいと言っても愛妾停まりだから、気にしてはいない。それに俺がここに来た理由も繋がるかもとな」

「一真様は天より舞い降りた方、降臨された意味が繋がると?」

「たとえ意味がなくとも、意味があるのではないかと思う」

「その通りなのです!一真様が我らの下にご降臨なされたのは、この日の本を一つにまとめて、鬼を退治するためなのです!綾那はずーっとそう思ってたですよ」

「そのために一真様は天上より遣わされたと?」

「そです!綾那はそう信じているです!」

まあ、この世界に舞い降りたのは自分自身の意志で来たことだ。それにだな、この世界が破滅する確率は、もう8割近くだからだ。だからかもしれない、有力者と恋人になったら必ず保護するんだと。

「まあ、俺もある使命があってここに来た訳だ。こういうところが魅力に繋がるかもしれないな」

「その通りなのです!」

「綾那、歌夜。一真様のお邪魔をしてはいけませんよ」

「今は平気だ。それに久々に二人と話して嬉しいからな」

「それは重畳です」

ふふっ、と柔らかく微笑みながら、葵は馬を並べる。

「なんかこうして葵と話のも久々な感じがするな」

「そうですね。上洛が決まってからは、慌ただしい日々を過ごしていましたから」

俺はそうだなと言ってしばし無言になる。必要以上なことは、話さないようにしてるけど。話題が思いつかないな。無言のままだった葵だったが、ぽつりと呟いたけど。

「この国はこの先、どのようになっていくでしょうか」

「どうなるかは、俺ではなく久遠や葵で動くんじゃねえのか。神の俺が運命を動かしてはいけないだろうし。ただ、今だけ言えることは鬼の被害を抑えること。越前侵攻がうまくいけばいいかもしれんが、あのザビエルだ。久遠達が考えている以上に、ザビエルの手の上で踊らされてるかもしれないな」

「それは、今の状況がザビエルには把握済みだと。それと一真隊の小荷駄が多いと関係が?」

「まあ、それは一応のことだ」

織田信長と越前のことになるとつい考えてしまうこともある。何も起こらなければそれでよい。最悪の事態を想定として動いた方がいいと判断したからだ。

「そういえば葵は、三河を空けといても大丈夫なのか?」

上洛を開始してから、かなり日は経っている。それほど長く、自分の領地を空けてはいけないことだけど。

「駿府のことや武田がいつ動くかわからんけど」

「はい。ですが心配はしておりません。三河の北と西は織田勢の勢力下。駿府に対しては酒井と石川、二人の宿老に任せておりますから」

「そうか、なら安心だな。それに越前を落としてから状況が落ち着いたら、久遠に駿府を取り戻すように言うつもりだ」

「そのときは、是非、我ら松平衆を先鋒としてお使い下さいませ。鞠様のため、命の限り戦ってご覧にいれましょう」

「ありがとうよ。そのときは葵の力、存分に貸してくれ」

「是非に・・・」

「ご主人様」

「小波、お帰り。で、どうだった?」

今のところ、異常はないだろうとのことだったので、俺の側にいることにしてもらった。それに異常を感知したら、トレミーのレーダーが反応するだろうし。

「一真様。小波はよく働いておりますか?」

「まあな。一真隊には無くてはならない存在だ。俺にとっては傍に居て欲しい子だと思っている」

「は、あの・・・・その・・・・自分はそんな・・・・で、ですがご主人様のお役に立てて、その、嬉しいです・・・・」

「まぁ。小波がそんな表情をするなんて・・・・」

「こ、これは!その、ち、違うのです、葵様。自分は別にそんな・・・・」

「いいえ、良いのですよ。小波の年頃の女。ましてやお相手は戦国一の女心が分かる神様である、織斑一真様なのですから」

女心が分かるのは、すでにこの織田勢は知っている。何せ、妻だけでも100人以上いるんだからな。それに神界の女神とも付き合ってるし。ちなみに付き合っている神は、主に帝釈天と四天王。男神は主に酒友達だし。この世界のオーディンはあちらと同じ姿をしている。他の神話からは、雑談ルームがあるからそこで話をしているしいしな。 
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