ファイナルファンタジーⅠ
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24話 ≪己の遣り方≫
前書き
《22話からの続き》
◆リンドブルム巨大城・飛空艇ドック◆
「じゃ~ん! これが、人間に戻ったシドのおじさんが造ってくれた完成したばかりの新型飛空艇、ヒルダガルデ3号よっ!」
「ほう……、見事なものじゃな」
「 …………… 」
エーコを始めジタン、ビビは既に見知っていたようだがフライヤは目にするのが初めてらしく、機械技術が発展している為かどこか物々しい飛空艇を前に、マゥスンは大して興味を抱かない。
「先にオレ達がブリッジに入るから、呼んだらフライヤと来てくれよ。他の仲間に紹介するからさ」
「心配することないわ! 中にはヘンな人もいるけど、気にしないことねっ!」
ジタン、エーコ、ビビの3人が先に乗船してブリッジに向かい、その後に続くフライヤとマゥスン。
「 ……あ、遅かったじゃないジタン。どうかしたの?」
ショートの黒髪で、気品のある少女が出迎えた。
「あぁ、フライヤを呼びに行ったついでにちょっとな」
「ジタンさん! 出発しても宜しいですか?」
飛空艇を操縦するのは、女性の船乗りらしい。
「いいぜエリン、宜しく頼むよ!」
「はい! それでは皆さん、忘れ去られた大陸、イプセンの古城へ出発しまっす!!」
ちょっとした衝撃と轟音と共に、ヒルダガルデ3号は大空へと飛び立つ。
「フライヤは、どうしたの?」
「ちゃんと乗ってるよガーネット。……みんな! ちょっといいか? 新しく紹介しておきたい人が居るんだ」
ジタンの呼び掛けで先に乗船していた4人と、後から来た3人の計7人がブリッジに集まる。
「フライヤ、連れて来ていいわよ!」
おマセな女の子エーコが声を掛けると、竜騎士フライヤと共に現れたのは紅で統一された装いのマント姿で白銀の長髪に無表情でいて端正な容姿に、銀プレートに身を固めたがっちりした体格で騎士風の中年男は一瞬惑わされるも警戒する。
「な……、何者なのだ?」
「そういえば、ウイユヴェールという場所で倒れていたのをジタン達が連れて来た人ね?」
黒髪の少女がそう気付くが、常に長い舌を出したコック風のずんぐりした奇妙な種族と、焔色の頭髪で屈強な男は余り気に留めた様子はない。
「これから暫しの間我々に同行する事となった、マゥスンと申す者じゃ」
「事情はオレから説明してやるよ、実はさ───── 」
「 …………… 」
喋らないつもりではなかったが、フライヤが紹介しジタンが話してくれた為、沈黙したままのマゥスン。
「なんと……!? ほとんど記憶を失っているが異世界の者であるかも知れぬ為、我々と行動を共にして真偽を確かめたいと言うのか?!」
「わたしは構わないわ、何か少しでも力になれるなら……。わたしはガーネットというの、宜しくね」
騎士風の中年男は驚き、気品のある黒髪の少女は快く受け入れてくれるものの、他3人はそうもいかないらしい。
「んと……、ボク達と一緒にいて何か分かるかもしれないなら協力してあげようよ。ね、みんな」
黒魔道士の男の子ビビが同意を求めてくれるが、見兼ねたエーコが3人を強要し出す。
「んもぅ! クイナは食べ物のことしか頭にないし、スタイナーは"ゆうじゅうふだん"でサラマンダーは"はくじょう"ねっ! このヒトかなり無口でぶあいそだけど、困った時はお互い様でしょ?! ほら、スタイナーから自己紹介しなさいよ!」
「う、うぉっほん! ……自分はアレクサンドリア王国プルート隊隊長、アデルバート・スタイナーである!」
「空の下ばっかり見て食べ物探してないで、アンタも自己紹介くらいしなさいよねっ!」
ブリッジの強化ガラスにへばり付いている奇妙な種族に呼び掛けるエーコ。
「フヌ、ワタシ、アルか? ク族のクイナ、ゆうアル。カエルが大好物アルよ」
「 ……俺は、サラマンダー・コーラル」
エーコに急かされる前に口を開く焔色の頭髪の男。
「そう! それでいいのっ。で……、あなたからも何か言わなきゃダメでしょ? "仲良し"になる基本はアイサツからよ!」
「 ………宜しく頼む 」
その簡潔な一言に、エーコは拍子抜けしてしまう。
「あなたってほんっっとぶあいそなんだからぁ……!」
「まぁとにかく、オレ達はこれからイプセンの古城って場所に向かうんだ。異世界への入口だっていう[輝く島]の謎を解く為にな! マゥスンには何の事か分からないだろうけど、気にせず自分の目的を探すといいよ。聞きたい事あったら、教えられる事は話すからさ!」
ジタンにそう言われても詮索する立場にない為か、黙然としているマゥスンに対しスタイナーが控え目に話し掛けてくる。
「 ……ところで、戦えるのであるか? この先強敵も待ち受けているであろうし、見た所剣士か魔道士に見受けるが──── 」
「どうやら赤魔道士のようじゃが、戦闘に関しての記憶はどうなのじゃ?」
「 ………問題ないと思われる 」
フライヤにそう答えるマゥスンに、ジタンは気さくに接する。
「ならいいけど、無理はしないでくれよ? マゥスンはこれからオレ達の仲間だ、改めて宜しくな!」
「 ────ほらほら、こーゆう時は何て言うか教えてあげたでしょっ?」
エーコに促され、マゥスンは少し間を置いて述べる。
「 …………、ありがとう 」
「う~ん……? それに"笑顔"があればカンペキなんだけどっ」
「ここが、イプセンの古城か……。逆さ向きにしたようなそうでないような、変わった城だな?」
一行は飛空艇ヒルダガルデ3号で忘れ去られた大陸の北にある古城付近に着陸し、直線に上に長く続く階段の先をジタンは訝し気に見上げる。
「二手に別れて、一方はここで待機してくれ。……マゥスンは、行く気なんだよな?」
古城探索メンバーに、優先的に入れてくれるらしい。
「 ………そうさせて欲しい 」
「ならば、私も行こう」
「フライヤが行くならあたしも行くわ! 何だかその人、ほっとけないもの……!」
「エーコ……、よっぽど気になるんだね」
「そ、そんなんじゃないわよ! ビビ、あんたも行くんだからねっ」
「え? それはいいけど………」
「もちろんオレも行くから、これで決まりだ。他のみんなは、ここで待っててくれよ!」
「おい………ジタン」
5人のメンバーが古城内に向かおうとした時、焔色の頭髪で屈強な男が呼び止める。
「ん、どうしたんだサラマンダー?」
「お前のやり方が、俺には理解出来ない。他の奴等と行動を共にしようとする所が、な。……疑う事なく常に独りで生きて来た俺にしてみれば、お前の考え方はどうしても納得いかない」
自分に対する不満らしく、唐突に切り出されたジタンはサラマンダーに向き直る。
「 ……何が言いたいんだよ」
「どっちの"やり方"が正しいか、この場ではっきりさせたい。……封印を解く鍵とやらが、この古城にあるという話だな」
「あぁ……、そうだぜ」
「そいつを先にどっちが見付けられるかで、勝負しろ。……俺は勿論、独りで行かせて貰う。そっちは今決めた人数分、行けばいい」
「サラマンダー……! いくらおぬしとて、単独行動は危険ではないか?」
制止を掛けようとするフライヤ。
「俺を案じるより、新しく"仲間入り"した奴の面倒でも見とくんだな」
「 ………… 」
「 ────分かったよ、それがサラマンダーの考えならそれでいいぜ」
「そういう所は、物分かりがいいらしいな。
……先に行かして貰うぜ」
承諾したジタンを尻目にサラマンダーは早速、古城内へ通じる直線階段を上って行き瞬く間に姿が見えなくなる。
「ちょっと~、いいのジタン、サラマンダーに勝手なことさせちゃってっ」
エーコは納得いかないらしい。
「まぁ、いいんじゃないか? それであいつが納得するなら、さ。……とにかく、オレ達も行くか! あいつに負ける訳にもいかないしな?」
「気を付けてねジタン……、みんな!」
「サラマンダーに仲間の連携というのを思い知らせてやるのだぞ!」
「ワタシも古城の中で何か喰いたかったアルが……、ジタン達に任せるアルね」
ガーネット、スタイナー、クイナに見送られ、ジタン、エーコ、ビビ、フライヤ、マゥスンはサラマンダーの後に続いてイプセンの古城内の探索を始める。
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