ファイナルファンタジーⅠ
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25話 『人魚の面影』
前書き
【23話からの続き】
◇ 共闘 ◇
「「海魔だ……! 海魔共が、襲って来たぞーー!!」」
突如外から危機を知らせる大声が上がり、先程シーフのランクが"人魚を見た気がする"という発言に驚いていた面々だが、ひとまずその事は置いておきすぐに宿屋から外へ出る7人。
雨はそれ程でもないが、沿岸から吹き荒れる強風の中オンラクの町の港は騒然となっており、様々な海の魔物────海魔(かいま)がひしめくように居住区まで迫ろうとしていた。
「4人の旅人さん達……、悪いけど町の為にまたお願いするよ!」
「あぁ、おれ達に任せとけ! 行くぞ、みんなっ!」
ランク達3人が訪れる前から滞在していたらしい4人の若者は町の人々から頼りにされているようで、
戦士ルーネスは腰の両脇に携えた長剣と短剣を引き抜き3人の仲間に声を掛け、学者アルクゥ、忍者イングズ、赤魔道師レフィアは多数押し寄せる海魔へと果敢に向かって行く。
「……ランク、わたし達も協力しよう!」
「あぁ? メンドーだなッ」
「ランクさぁん、せめて"オレ達も行くぜ!"って号令くらい掛けて下さいでスよぅ」
シファ、ランク、ビルも戦闘体勢をとり、武器を手に戦える町の人々と共に様々な海魔────ゲル状のプリン、半魚人のサハギン、海蛇のシースネイク、渦巻く水塊のウォーター、海で還らぬ者となったアンデッドらを迎え討つ。
学者の少年アルクゥは、手にした何かの物体を投げつけて放電させ次々と海魔を感電させてゆき、程近くで黒魔法で応戦していたビルはそれを見て声を掛ける。
「き、君! アルクゥさん、でシたっけ……何を、投げつけたんでスかっ?」
「あ、これは[ゼウスの怒り]っていう雷の魔力が凝縮した攻撃アイテムで、投げつけると魔法と同じような効果を発揮するんだ! 前に調べておいたけど、大体の海魔は雷属性が弱点だからやっぱりこれじゃないと……それ!」
少年と呼ぶには大人っぽい忍者のイングズは、投てきと刀を駆使して海魔達を素早く屠ってゆく。
「(あの人、すごい……! わたしだって、アンデッドになら──── ) <ダディア>!」
アンデッド系に有効な白魔法だが他の海魔には流石に効果は薄く、シファは半魚人のサハギンに狙われ襲い掛かられてしまう。
「 あ……っ!? 」
「 ─────! 」
そこへあの忍者の青年が駆け付け、背後から強烈な一撃を見舞い倒してくれる。
「 大丈夫か?」
「う、うん、ありがとう……!」
「他の海魔はこちらに任せてくれ、アンデッドの方は頼む」
「 分かった!」
「これでも食らいなさい────やあっ!」
赤魔の少女レフィアは片手剣に雷属性を付加させ海魔達を華麗に斬り伏せてゆき、その勇ましい姿にランクはつい見とれてしまう。
(あのレフィアって女、やるな。やっぱアイツと……、マゥスンと同じ赤魔だからか?)
「おまえ、よそ見してるとやられるぞ!」
長剣と短剣を巧みに扱うルーネスは、シースネイクやブループリンを相手にしつつランクに声を掛けた。
「……あ? 分かってるっつのッ」
気を取り直しランクは二刀の短剣グラディウスで数いる海魔を相手にしていく。
(コイツら送り込ンでるのが海底神殿に巣食ってやがるっつう諸悪の根源だとすりゃ、水のカオスに違いねェんだ。さっさと片付けて、アイツが戻って来てるか確かめに行かねーと……ッ!)
どこか焦っている為か、ランクは目の前に集中し過ぎて背後から襲い来る海魔に気付かず、刃のように鋭く渦巻く水塊のウォーターに弾かれてしまう。
「 ────あ、ランクが……?!」
離れた混戦の中、それに気付いたシファは気が気でない。
「……仲間を回復しに行った方がいい、ここは任せろ」
イングズの計らいで、ランクの元へ駆けて行くシファ。
「い゙ッてェ……!」
「おまえ、大丈夫か!?」
ランクは身体のそこかしこに切り傷を負い、近くに居たルーネスが駆け寄る。
「ウォーターにちょっとでも触れると厄介だ、こいつら水っぽいけど見た目に反して冷気が弱点っぽくて、しかも物理効きづらいから魔法で倒した方が──── 」
複数の渦巻くウォーターが二人目掛け再び仕掛けて来た所へ、突然強力な冷気に包まれウォーターらが氷付いたかと思えば、勝手に砕け散っていった。
「レフィア! 助かったぜっ」
氷系黒魔法を放って二人の窮地を救った彼女は、くずおれていたランクに近寄る。
「ウォーターからかなりダメージを受けたみたいね、今回復するわ」
「 わ、わりィ…… 」
臨機応変に対応するレフィアに白魔法を掛けて貰ったランクは極りが悪く、ルーネスの方は周囲に目を配る。
「ふぅ……襲って来た海魔は、これでひとまず倒したかな?」
「回復、して貰ったんだね。ランク、ごめん……駆け付けるの遅れちゃって」
申し訳なさそうに一足遅れて来るシファ。
「いや……オレが勝手にやらっただけだ、気にすンな」
「な、何とかなりまシたでスねっ」
「町への被害も、どうにか防げたな」
「手傷を負った人はいるけど、回復アイテム渡しておいたから大丈夫だよ!」
安心したビル、イングズ、アルクゥもランク達の元にやって来る。
「 ────なぁ、人魚見たとか云ってたよな。ユメとかじゃなくて、ほんとの話か?」
「あぁ、まあ多分な。荒海に投げ出された海ン中で、なんつーかこう……淡く光ってやがって、ソイツに手ェ引かれたっつーか……下半身魚っぽくて、上半身女みてェな──── 」
ルーネスに問われて記憶を辿り、顔は見えなかったが髪は長く白っぽかったように思えるランク。
「あれ……、そういえばわたしも何かに手を引かれたような気がする。人魚……かどうか分からないけど」
「そうなんでスか? ボクは、覚えてまセんけど………」
シファも何かの感覚を思い出し、ビルは自分だけ何も覚えがない事を少し残念に感じる。
「おれ達でその人魚っぽいヤツを探してみようぜ! うまくいけば、[空気の水]ってのくれるかもしれないしなっ」
「そうだね、海底神殿に行くにはそれが必要みたいだから」
「そっちから姿現してくれれば、話は早いんだけどねぇ?」
「……とにかく諸悪の根源さえ倒せば、この町に多数の海魔が襲って来る事もなくなる筈だ」
「おいオマエら、勝手に話進めてンじゃねーよ。海底神殿にのさばってるヤロー潰すのは"オレら"だッ、オマエらじゃねェ」
ランクはルーネス、アルクゥ、レフィア、イングズに向けてきっぱり云い放つ。
「へ? そうなのか?? おれ達、協力し合ったじゃんさっき。この際一緒に何とかしよーぜ!」
「それは、そうだけど……でも3匹目のカオスを倒すのは、わたし達の役目だから……!」
ルーネスの提案が有り難くない訳ではないが、断りを入れようとするシファ。
「……この辺りの海域を荒れさせ、町に海魔を送り込んでいる奴ともなればそれなりに強敵だろう。3人だけでは、厳しいんじゃないか?」
「オマエらにゃカンケーねェ! アイツが居なくても、オレらだけでやれるってのを証明して……ッ」
「 ────ランクさん、それって何か違う気がしまス」
イングズの言葉に反発するランクにビルは何を思ってか、珍しく口を挟む。
「マゥスンさんが居なくても、ボクらだけで大丈夫って事じゃないでス。他の人の力を借りてでも3匹目のカオスを倒して、無事にマゥスンさんを迎えに行ってあげるべきじゃないんでスか?」
( ……そっか、無理するんじゃなくて、誰の手を借りてでも"確実に"って事なんだ)
シファはそのように解釈し、ランクはまだ納得しきれていないがそれ以上何も云えずにいる。
「わたし達からも、協力をお願いします。あなた達の力を、貸して下さい。────それでいいよね、ランク?」
「ちッ、しゃーねェ……足手纏いなンなよ!」
「じゃあ、決まりね!……そういえばあたし達の事はルーネスが勝手に紹介したけど、あなた達の事ちゃんと聞いてなかったわね?」
「あ、わたしはシファって云うの。あなたはレフィア……、だったよね」
「えぇ、そうよ。シファは白魔なのね? あたしは今、赤魔だけど……とにかく宜しく!」
「うん!……そしてあなたは、イングズさん?」
「あぁ、呼び捨てにしてくれて別に構わないぞ」
「えと、ボクはビルでス。君はアルクゥさん……、でスねっ」
「うん、よろしくお願いするね、ビル!」
「ふぁ、ハイっ、こちらこそ……!」
「おまえは、ランクって云うんだよな?」
「あ? あぁ……。オマエは、ルーネスっつーンだろ」
「そうだぜ! でさ……、おまえ宿屋で目を覚ました時レフィアの事、誰と見間違えたんだ? マゥスン、とか云ってたけど」
「……オレらにはもう1人、"連れ"が居るンだ。理由は話す気ねェが、今ソイツとは別行動しててな……。レフィア、お前と同じ赤魔なンだよ」
「ふぅん、そうなのね」
彼女はそれ以上何も云わず、アルクゥがふと皆へ声を掛ける。
「 ────大分暗くなったね、今夜はもう宿で休もうよ。海魔がまたいつ襲って来るか分からないけどね」
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