ファイナルファンタジーⅠ
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22話 ≪異なる世界≫
【ウイユヴェール・星々の間】
「 ────ん? さっき来た時とは、様子が違うな」
「 ………! 中央に、何者かが倒れておるぞ」
「ほ、ほんとだ……! 最初ボク達がここへ来た時には、モーグリ以外誰もいなかったはずなのに………」
「もしかして、あたし達がさっきのおっきな船倒してグルグストーン手に入れたからかしらっ?」
「とにかく、このままにしておけまい。こやつ、見た所かなり衰弱しておるようじゃ」
「他の仲間の命もかかってると言っても、目の前で弱ってる人を放っておく訳にいかないしな」
「でも、何だかあいつに似てる気がするけど……まさか手下とかじゃないわよねっ」
「そ、それはないと思うよ。髪の毛が白いのは似てるけど……」
「回復魔法を、掛けてやってみてはどうじゃ。意識を戻すやもしれぬ」
「いいよ、あたしに任せて!……<ケアルラ>っ!」
「駄目、みたいだな。奴らの反応はともかく、一緒に連れてこうぜ。人質に取られてるみんなも、早く助けに行ってやろう!」
「みんな、大丈夫かしら……。何されてるか分かったもんじゃないわっ」
「だ、大丈夫だよ。……たぶん」
「んもぅ! あんたがそう言うと余計心配になっちゃうじゃないのっ!」
「ご、ごめん………」
≪ ……メ覚メ、ヨ…… イ世界ニテ与エラレシ時ハ短イ……力ヲ借リ受ケ、次元ノ狭間ニテ導キノ光ヲ見ツケ出セ──── ≫
「 ────── 」
「おぬし……、気が付いたか?」
朧気な意識を取り戻すと、目の前には竜の両翼を象った帽子を被ったその端から肩程くらいの銀髪が流れている、凛々しき女戦士を思わせる容姿の亜人の女性がこちらを見つめていた。
「随分長い事眠り続けておったので、このまま目を覚まさないのではないかと案じていた所じゃ。────身体の方はどうじゃ? おぬしを見付けた当初は相当衰弱しておったようだが、何が……あったのじゃ?」
ベッドからおもむろに上体を起こし、問いに困惑した様子なく無感情に答える。
「 ………すまないが、何も憶えていない」
「そうか……、それは難儀じゃな。私はフライヤ、竜騎士のフライヤ・クレセントと申す。おぬしは……自分の名も憶えておらぬか?」
「 いや、────マゥスンと云う 」
「ではマゥスン、ここが何処なのか教えておこう。リンドブルムという巨大城の、客室じゃ」
「 ……あっ! あなたやっと目を覚ましたのね!」
元気の良い女の子の声がしたかと思うと、頭部に黄色いリボンをした青い髪色で額には一角獣のようなツノを持った小さな少女が駆け寄って来、
その後から金髪で細長い尻尾が目に付く少年と、天辺がへたり折れている尖り帽子を被った素顔の窺えない男の子が客室にやって来る。
「やあ、意識が戻ったみたいで良かったぜ」
「もう起きないんじゃないかって、心配しちゃったよ……」
「安心するといい、私の仲間達じゃ。他にも何人かおるがの」
「自己紹介しておくわ、あたしはエーコ! マダイン・サリから来た、エーコ・キャルオルって言うのよっ!」
「 ………… 」
「って何の反応もなし?! あなたって無愛想ね~っ」
「目を覚ましたばかりなんだし、無理もないだろ? ……オレはジタン、よろしくな!」
「あ、ボクはビビって言うんだ。えと……、あなたは?」
答えないつもりではなかったが、フライヤが代わりに答える。
「マゥスン、と申すそうじゃ。……どうやらほとんど記憶を失っておるらしい」
「じゃあ……何であんなトコに倒れてたのかも、憶えてないって事か?」
「ほんとにぃ? 物語じゃアリキタリな話だけどっ」
「エーコ、そんな言い方しちゃダメだよ……」
ジタン、エーコ、ビビからの言葉を意に介した風もなく、マゥスンは短く礼を述べておく。
「 ………助けてくれた事に、感謝する」
「いいんだよ、誰かを助けるのに理由なんて要らないからな。────様子を見に来たついでに、フライヤを呼びに来たんだ。完成した飛空艇、ヒルダガルデ3号でこれからイプセンの古城へ向かうぜ!」
「判った。……マゥスンよ、我々にはやらねばならぬ事がある為、この場を離れる。後はおぬしの好きにすると良いが、ほとんど記憶を失っている上にこれからどうするべきか判らないのであれば、暫くここにおると良い。城の者達には、おぬしの事を丁重に扱うよう任せてあるからな」
「じゃあそーゆうことで……、あたし達も早く行きましょ! 他のみんなはとっくに乗り込んでるんだからっ!」
「……ここの人達はいい人ばかりだから、安心してね」
客室を後にする際、フライヤ、エーコ、ビビに続いてジタンが言葉を添える。
「記憶を取り戻すにしても、焦らない方がいいぜ。少しずつでも、思い出してくといいよ」
初対面とは思えなぬ程の手厚い気遣いに何を感じてか、マゥスンは4人を呼び止める。
「 待って欲しい。────私も共に、行かせて貰えないだろうか」
思わぬ申し出に、目を見張る4人。
「 私は、この世界の者ではないかも知れない。真偽を確かめる為、少しの間同行させて欲しい。………無理にとは、云わない」
「えぇ!? それっていきなりすんごく次元の違う話じゃないのっ?」
「オレ達の旅は、生半可じゃないぜ。それでも、一緒に来るかい?」
ジタンの真剣な表情を受け止め、頷くマゥスン。
「分かった、オレ達と一緒に来いよ! 他の仲間にも紹介してやらないとな?」
快く承諾してくれるジタンだが、エーコは納得し難い。
「いいのジタン、病み上がりの人を同行させちゃうなんてっ」
「覚悟の上で願い出られちゃ、断れないだろ。……それに、どう見たって悪い奴には見えないしな!」
「そうだね、ボクも協力してあげたい……!」
「私もおぬしの力となろうぞ、マゥスン」
同意を示すビビとフライヤ。
「しょーがないわねぇ……あなた、無茶しちゃダメよっ?」
「 ………すまない 」
「んもぅ! あなたってば堅っ苦しいわねっ、そーゆう時は"ありがとう"でいいの!」
「 ………… 」
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