ファイナルファンタジーⅠ
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19話 『反属性』
『余計な事してくれんじゃないか、そこの紅いの。洞窟内の吹雪を鎮めたのも、お前だな……?』
赤マントに身を包み、羽付き帽子をした人間の仕業に苛立ちを覚え、見る間に氷剣を片手に形作って中空から赤魔道士へ向け突進する氷結の女王。
「危ない……!<インビジ>!」
回避率を高める白魔法をシファが唱え、それによってかマゥスンは迫り来る氷剣をいとも容易く避ける。
「ボクも補助を……<ストライ>!」
ビルは物理攻撃力を強化する黒魔法を掛け、氷結の女王も先程より強力な冷気を帯びた氷剣を振りかざし、マゥスンは炎剣によって迎え撃つ。
────両者白刃一閃の元、冷気と炎がせめぎ合って擦れ違い、互いに背を向けたまま静止した。
『………やるじゃないか、お前』
云うなり氷結の身体の片腕にヒビが入って砕ける。
そこへシーフのランクが更に追い討ちを掛けようと─────
『待ちな、アタシはもうやり合う気はないよ。お前達の力量は知れたからな』
「それって……、わたし達の事を認めてくれるって事でしょうか?」
氷結の女王に控え目に問うシファ。
『グルグ火山へ行くのにアタシの加護が要るとか云ってたな。……つい最近目醒めたらしい"アイツ"を、倒そうってのか?』
「知ってンのかよソイツ……、火のカオスって奴のコト?」
まだ警戒して、武器を収めぬまま問うランク。
『"相反す因果同士"、とでも云っておこうか。
────なるほどな、そこの紅いのは火の欠片を司ってるのか。アイツ、まだ"カオス"として目醒めたばかりで本来の力は半減してるだろうけど、お前らが容易に倒せるほど甘くない。それでも、やろうってんだな』
4人、というより"紅いの"に目を向け、云い知れぬ視線を交わす。
『………気に入ったよ、紅いの。アタシの"主"にしてやる。アイツとは、アタシも浅からぬ因縁があるからな』
「勝手に話が進ンでるみてェだけどよ、どーゆうこった?」
「ボクら……というより、マゥスンさんを"召喚者"にするって事じゃないでスか?」
「だとすると氷結の女王を喚び出せるのは、マゥスンだけって事になるね」
ビルとシファはそう解釈し、ランクにはよく分からないがその時、氷結の女王の砕かれていた片腕に冷気の塊が集束していき元通りになる。
『これくらいなら、少し経てば再生出来るからな。────それにしてもアタシとアンタはあからさまに"反属性"だな。アンタがアタシを使役するには、普通より魔力の消耗が激しい。それでも構わないってんなら、話は簡単だけどな』
「 ……承知の上、その力を借りたい」
「ちょっと待てよ、ソイツに負担掛けるくれェならシファかビルが代わりに──── 」
口を挟むランクを、氷結の女王は一蹴する。
『他の奴の出る幕じゃない、アタシがソイツを主と決めたんだ。……早速だがアンタに宿らせて貰おうか、必要ならいつでも喚び出しな』
蒼白い光の粒と化した氷結の女王はマゥスンへと同化してゆき、その煌めきが治まると同時に突如支えを失ったかのように両膝を落とし、前のめりに倒れ掛かるのを自ら押し止めるように両手を付く。
「おい、大丈夫かよ……!?」
「 ────大した事は、ない 」
ランクにそう答えたマゥスンの、羽付き帽子の下向かれた表情は窺えない。
「一旦、クレセントレイクに戻った方がよくないでスか?」
「そうだね、シドさんにも報告してあげたいし、このままグルグ火山に向かうのはマゥスンの負担になるから」
「 私に構う必要は──── 」
「だから強がるなっつってンだろ!……ビルとシファの云う通り、一旦戻るぜ。報酬のコトもあるしな。ほら、手ェ貸すぜ」
「 ………… 」
「ほっほう! やってくれたんかい、あんたら!!」
黄昏時に氷の洞窟から戻り、氷結の女王を鎮めたというより認めて貰えた証に、ほんの少しの間召喚して見せるとシドは興奮した様子で4人を屋敷で歓迎する。
「いんやぁ感謝・感激・雨・嵐ってもんよ、ありがとな!!
早速依頼の報酬くれてやりたいけんど、まず休んでったらどうでい? 見たとこお疲れっぽいし、氷の洞窟から戻ったばっかでお身体冷えちょるだろうけんな!
うちの屋敷に湧き出とる温泉に浸かるといいぞー! ひと晩休んで元気なったあんた方に報酬渡したいかんな!
これで心置きなく探索出来るってもんだ! 翌日出発するとして、俺っちもそれなりに準備ってのがあるから、客人の4人様のお相手は頼んだぞなテューテ! そいじゃ、また明日お目に掛かろうな!!」
云うだけ述べて、シドは屋敷の奥へと引っ込む。
「お、お元気な人でスねぇ……」
「喜んで貰えたならそれでいいじゃない? 宿屋に行こうと思ってたけど、シドさんのお言葉に甘えようか?」
「オレぁ別に報酬貰えりゃどーでもいいぜ」
「 ………… 」
「では皆さん、遠慮なさらずどうぞお入り下さいませ──── 」
メイドのテューテの案内で屋敷に上がらせて貰うビル、シファ、ランク、マゥスン。
「客室は各々こちらになります。浴室の方はあちらになりますので、ご自由にお使い下さい。……ちなみにシド様が設計された、"混浴"となっております」
「ふえっ? 皆さんと一緒に入れるんでスか……!?」
「そ、それってわたしが一番困る……?!」
「おいビル、シファ、なに妙なコト考えてンだ。順番決めて入りゃいいだけじゃねェか」
「あ、そ、そっか! じゃあ誰から……ってあれ、マゥスンは??」
「先に、お部屋を決めて入られましたよ」
「アイツは後回しで、シファから入りゃいいンじゃねェの? そン次ビルで、オレはその後でもいいぜ」
「それならわたしが先に入らせて貰っちゃうけど……次、ビルに声掛ければいいのね?」
「じゃあボクはその次に、ランクさんにお声掛けすればいいんでスねっ」
「で、ランクはマゥスンに声掛けるの忘れちゃダメだからね!」
「あ? 分かってるっつのッ」
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