遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード10 〜月一試験デュエル vs帝王〜
前書き
ついに話数が二桁行きました!
そして、アカデミア最強が登場!!紫苑とのデュエルの勝敗はいかに!?
『え〜、叢雲 紫苑さんと丸藤 亮さんはデュエルを始めるので指定のデュエルフィールドに来てください。』
「「「「「「えぇーーー!!」」」」」」
まさかの対戦相手に紫苑を知るもの達は驚きを隠せない。一方紫苑はというとめんどくささとこれ以上目立ちたくないという気持ちからどよ〜んと効果音がつきそうな勢いで落ち込んでいた。
うう…まためんどくさい相手を用意してくれたよな、ホントに…
「紫苑さんでも兄さんには勝てないっす!」
極めつけに翔のこの発言である。もし、勝ってしまったら周りからの視線が痛いこと間違いなしである。
「あぁ、マジどーしよ…とりあえず、行ってきます。」
とぼとぼと移動を開始する紫苑。後ろではがんばってね〜と姉が手を振っている。
◆
「紫苑と言ったな。デュエルを始める前に聞いていいか?」
デュエルディスクを構えると待ったと丸藤先輩が制してきた。
「いいですけど、手短にお願いしますね」
「では、おまえはサイバー流なのか?おまえが使っていたサイバー・エルタニンというモンスターは俺は知らない。」
「それは自分の師匠にでも聞いてください。ついでに俺はサイバー流ではなく、色んなデッキを使い分けているだけです。」
そこまで言うとそうかと頷く亮。
「じゃあ、もう一つ。おまえが師匠に勝ったというのは本当か?」
目線をやや上に向けて質問をしてくる。その視線を辿ると鮫島校長がニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていた。
やっぱりあの禿げ達磨の仕業か…もし負けたらどんなことを言ってくるかわからんからな〜…使いたくなかったけど、使うか…
決意を固めるとデュエルディスクにさしてあったデッキを抜き、もう一つのデッキを挿入する。
さぁ、鮫島…お前を昔完封したデッキに弟子はどう戦うのかな?
「今の質問ですけど…………。自分で確かめたらどうですか?」
ニヤリと笑う紫苑
「くくく、面白い。俺を前にそんなことを言ってくれる奴がいなくてな。ならそうさせてもらおう!!」
「「デュエル」」
◆
紫苑LP4000 亮LP4000
「俺の先行、ドロー!」
俺が先行を宣言すると意外と言わんばかり、ほぅと呟く亮
今回、自分が後攻をとった理由は相手はアカデミア最強と謳われる丸藤 亮でサイバー流の使いで高火力のモンスターを召喚してくる。後攻をとってもよかったけど、こっちは展開力がそんなにないから、高火力で押しつぶされてしまう。だから自由に行動ができる先行1ターン目で態勢を万全にする!
自分の手札を確認し、思わず笑みが零れる
オイオイこれじゃあ・・・Meの勝ちじゃないか!!
「手札から【ナチュル・アントジョー】を守備表示で召喚する。さらにカードを2枚伏せてターンエンドだ。」
【ナチュル・アントジョー】 ☆2 DEF200
俺の場に絵本に登場するような蟻が出てくる。一部女子から可愛い〜と歓声が上がっている。
「俺のターン、ドロー!俺は俺の全てを持って全力であたりにいくぞ、紫苑!」
お決まりのリスペクト精神ですか…全力でデュエルをすることを悪く言うつもりはない、むしろいいことだと思う。けど、サイバー流のリスペクトは何処か違う気がしてならないんだよな…
「じゃあ、俺はスタンバイフェイズに手札から【増殖するG】を捨てて、効果発動。このターン、相手が特殊召喚する度に1枚ドローする。」
「G?知らないカードだな。だが、関係ない!まず、【天使の施し】を発動して、3枚ドローし、手札を2枚捨てる。俺は手札から【サイバー・ドラゴン】を特殊召喚する。このカードは相手のフィールドのみモンスターが存在する時に手札から特殊召喚できる。」
亮の場に機械でできた蛇型の竜が登場する。そして、それに合わしてGがフィールドをよこぎり、アントジョー達が仲間を呼ぶ。
ヒィィと観客席から悲鳴が上がる。……だからこの効果使いたくないんだよな〜。
「この瞬間、Gとアントジョーの効果発動!Gの効果で一枚ドローし、アントジョーの効果でデッキからレベル3以下のナチュルを呼ぶことができる。来い、【ナチュル・ローズウィップ】!」
【ナチュル・ローズウィップ】 ☆3 DEF1300
「壁を増やしたか。だが、俺のサイバーの前には無力!手札から【プロト・サイバードラゴン】を召喚。このモンスターは場に表側表示で存在する時、【サイバードラゴン】として扱う。そして、手札から【融合】を発動!手札のサイバードラゴンと場の二体のサイバードラゴンで融合召喚!来い、【サイバー・エンド・ドラゴン】!!」
【サイバーエンドドラゴン】 ATK4000
場に三首のサイバードラゴンが現れ、その迫力はナチュル達とは比べものにならない。
エースモンスターの登場に観客がより一層盛り上がりをみせる一方で、紫苑に対してあいつのまけただなという声が聴こえてくる。
全く、攻撃力4000くらいで負けとかほざくなよ……。ナチュル達の目を見ろ!奴らの目はまだ死んじゃいねぇ!!
「サイバーエンドが特殊召喚されたことにより、1枚ドローし、デッキから【ナチュル・マロン】を守備表示で特殊召喚する!」
【ナチュル・マロン】☆3 DEF700
「いくら壁を増やしたところでサイバーエンドは貫通攻撃だ!やれ、サイバーエンド!アントジョーに攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!!!!!」
三首から破壊光線が発せられ、アントジョーを襲う
「させるか!トラップ発動【和睦の使者】!これによりモンスターの破壊及びダメージは無効になる。」
「っ⁉︎凌いだか。だが、これくらいやってもらわねばな。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
紫苑
LP4000
手札4枚
魔法・罠伏せ1枚
場
【ナチュル・アントジョー】 ☆2 DEF400
【ナチュル・ローズウィップ】 ☆3 DEF1700
【ナチュル・マロン】☆3 DEF700
亮
LP4000
手札1枚
魔法・罠伏せ1枚
場
【サイバーエンドドラゴン】☆10 ATK4000
さて、反撃開始だ!!
◆
SIDE翠
「ほぉ〜、あのデッキを使うとか亮君に勝ち目は薄そうだね」
紫苑が最も長く使い、最も信頼が厚いデッキー【ナチュル】。あの子がデッキに対する批判に人一倍敏感である理由がこのデッキと言っても過言ではない。
もともとナチュルは相手の行動をトリガーにして、相手を封殺するデッキの特性から対戦相手からは嫌われ、負けた時にはデッキのせいにされた事は多々あった。だからこそ、紫苑はそういった輩を許せない。
「先輩、お兄さんの勝ち目が薄いってどういうことですか?紫苑さんの場にはモンスターが3体並んでいるけど、攻撃力も低くてサイバーエンドには到底届かないっす。」
さっきの私の呟きが聴こえていたらしく兄が負けるわけがないとも取れる発言をしてきた翔
「ん〜とね?ボードアドバンテージとハンドアドバンテージってわかる?」
一同はてなを頭に浮かべている。おいおい!アカデミア、どんな教育してんだよ!基本中の基本だろ!
「そこからか…ボードアドバンテージはフィールドに出ているモンスターの数の差でより多く出しているプレイヤーのが有利になるっていう考え方で、ハンドアドバンテージはその手札版ってわけ。」
この説明で大多数が理解したようでなるほどと相槌をうっている。
よしよし、頭は悪くないな…って翔はわかってないか〜
「確かに紫苑さんはモンスターをたくさん召喚してるけど、どれも攻撃力1000にも満たない弱いモンスターばかりっす。それじゃあ、兄さんのサイバーエンドは倒せないっす」
なるほど、そういうことか…
この子はモンスターの効果は無視して、攻守のみに注目しているわけね…まぁ最もその考えの人間はこのアカデミアにゴロゴロといるけどね
「例えば、サイバーエンドが効果かなんかで破壊されたとする。そうすると亮の場に壁は存在しなくなり、紫苑の場にモンスターは3体になるよね。そこからモンスターを生贄召喚するなり強力なモンスターを出せば形勢逆転になるよね?これのモンスターの数の差による有利度がボードアドバンテージってわけさね」
「けど、そうそううまくいくわけないっす!」
「ちっちっちっ。多分、そうなるね。今、亮の手札はたった1枚。それに比べて紫苑の手札は4枚。まぁ、次のターンでドローするから5枚か。手札が多い分それだけできる幅が広がる。だから、サイバーエンドの一体や二体除去するのは容易いよ。それに亮の手札は1枚しかないから、形勢逆転なんてそれこそ無理に近いよ。」
「うぐっ…」
論破!!どゃぁ、反論できまい
「まあ、あくまで推論だけどね。けど、面白いものが観れると思うよ」
この布陣なら早速アレを使うんじゃないかな?
◆
SIDE紫苑
「俺のターン、ドロー!手札から【天使の施し】を発動して、3枚ドローし、2枚捨てる。さらに魔法カード【ハンマーシュート】発動!最も攻撃力の高いモンスターつまりサイバーエンドを破壊!」
グッシャンと超巨大なハンマーに潰されてスクラップになったサイバーエンド
まさかこれほど容易く破壊されるとは思っていなかったのだろう…亮の顔に一瞬動揺が見て取れた。
そして、外野からは卑怯だなんだと野次が飛び交う。その言葉に対して怒りが積もる紫苑。
「俺は手札からフィールド魔法【ナチュルの森】を発動する」
フィールド一帯が森に包まれ、昆虫や獣達が寄ってくる
「いくぞ!俺は場のレベル2のチューナーモンスターナチュル・ローズウィップ】とレベル3の【ナチュル・アントジョー】でチューニング!!」
☆2+☆3=☆5
ローズウィップの身体が三つの光の輪となり、アントジョーをくぐり抜け、強烈な閃光を放つ
集いし絆が新たな力を呼び覚ます!シンクロ召喚!吠えろ!【ナチュル・ビースト】!!」
ナチュルの森の守護獣が一角、ナチュルビーストが召喚される
「な、なに!?シンクロ召喚だと!!」
シンクロとエクシーズはその画期的な召喚方法から認知度は高いが高価な故にそのカードを実際に持っている人は少ない。ゆえにこのリアクションである。
「マロンの効果を発動して、墓地のローズウィップとアントジョーをデッキに戻し1枚ドロー。そして、手札から【シンクロミラクルフュージョン】を発動!このカードはフィールド・墓地から融合素材モンスターを除外することによって、シンクロモンスターを融合素材とする融合モンスターを融合召喚扱いとして、召喚できる!俺は場のナチュル・ビーストと墓地の【融合呪印生物ー地】で融合召喚!【ナチュル・ガイアストライオ】!」
オオォン!とガイアストライオが雄叫びをあげると守護神の登場によりナチュルたちが歓喜する。まるで、俺とナチュルの勝利を祝うかのようにも見える
「まだだ!トラップ発動【異次元からの帰還】!これによって除外されているビーストと融合呪印生物ー地を特殊召喚する。そして、融合呪印生物の効果発動!ビーストとこのカードを除外してエクストラデッキから【ナチュル・エクストリオ】を特殊召喚できる!来い、エクストリオ!」
フィールドに2体の獅子が並ぶ。その様子はまさに圧巻である
「行くぞ!ガイアストライオでダイレクトアタック!」
「それを待っていた!リバースカードオープン【聖なるバリア ミラーフォース】!!」
ガイアの豪爪をバリアが弾き返そうとするが、エクストリオが咆哮を放ち、バリアを打ち消す。
「なんだと!?」
「エクストリオの効果…墓地のカード1枚を除外し、デッキトップを墓地に送ることで魔法・罠の発動を無効し、破壊できる。さらに相手の発動したカード効果を無効にしたことにより、ナチュルの森の効果でデッキから【ナチュル・ビート】を手札に加える。
さぁ、攻撃続行だ!やれ、ガイア!」
「くっ…墓地の超電磁タートルを除外し、バトルフェイズを強制終了させる!」
メカニックな甲羅を背負った亀が電極を振りまき、ナチュル達の行動を制限する
「天使の施しの時か…俺はカードを2枚伏せてエンドだ。」
会場はアカデミア最強の称号を持つ丸藤 亮が無名しかも一年生に圧倒的不利な状況に追い込まれていることに戦慄する。
「俺のターン……どろぉぉぉぉぉぉぉ!!!来たか!」
デッキトップに手をかけ、目をつぶると気合とともにドローする亮。そして、目当てのカードを引き当てた様子。
気合で、デステニードローとかありかよ!?
「行くぞ!俺は手札からサイバードラゴンを特殊召喚!さらに【アーマード・サイバーン】を召喚する!」
「相手の召喚成功時、手札からコスモビートを特殊召喚できる。がコスモビートの召喚にチェーンして永続トラップ【エンペラー・オーダー】を発動してコスモビートの召喚を無効にし1枚ドロー。破壊ではないため、コスモビートは手札に戻る。」
「くっ、実質俺が召喚する度に1枚ドローできるというわけか…厄介だな」
不利な状況にさらにハンドアドバンテージを稼がれ、顔をしかめる亮
「俺はアーマード・サイバーンをサイバードラゴンに装備する」
サイバーンがドラゴンにウィーンガシャンと音をたてながら合体する。その様子に会場が盛り上がる。
なんかゲッ○ーロボとか戦隊ヒーローのようだな…
「いくぞ!ワイバーンの効果発動!このカードを装備しているサイバードラゴンの攻撃力を1000ポイントさげ、相手モンスターを一体破壊する。俺はエクストリオを破壊!喰らえ!ジャジメント・キャノン!」
「させない!ガイアの効果発動!カード1枚を対象とするカード効果を手札1枚を捨てることにより無効にし、破壊する!
断罪の轟咆!」
合体ロボからしゃしゅつされたレーザー光線をガイアが口から衝撃波を発し打ち消す。
どんな声帯してんだよ…ガイアェ
「なん…だと!?」
はい、ネタ発言どーも
「さらにナチュルの森の効果でデッキからナチュル・チェリーを手札に加える。さて、手札は無し。場には攻撃力1100まで下がったサイバードラゴンが一体。どうしますか?」
「くっ…サイバー・ドラゴンでマロンを攻撃だ…」
「手札からガードヘッジを捨てて、効果発動。マロンの攻撃力を半分にすることにより戦闘破壊を1度だけ無効にできる。まぁ、守備表示だから関係ないですが」
蔦の壁みたいのが現れ、レーザーを受け止め、マロンを死守する
「くっ…ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。終わりですね。エクストリオとガイアで攻撃!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」
亮LP4000→-900
二体のモンスターの攻撃を受け、地面に倒れ伏す亮。そして、最強が1ダメージも、さらにモンスターの破壊さえ敵わずに負けたという事実に唖然なる観客達。その中にもちろん亮を紫苑に差し向けた張本人ー鮫島も含まれている。
そして、会場一帯が静寂に包まれる。
だが、その中で最初に動いたのが紫苑だった。
「ありがとうございました、丸藤先輩。いいデュエルができました。今度はこんな場じゃなく、デュエルができるといいですね」
ツカツカと亮の元まで歩くとにこりと笑い、手を差し出す
「ああ…こちらこそまた頼む」
少し苦い顔をしながらも、手を差し出す亮。だが、二人の手が結ばれる直前に待ったをかけられる。
「待ちなさい」
鮫島校長によって…
「紫苑君はロックやパーミッションというリスペクトの欠片もない卑劣なデッキを使いました。だからこのデュエルは無効とします。」
その言葉に外野が喜んだ。
「さらに処分が決まるまで自室で待機を命じます」
紫苑の笑みに一瞬だけ陰りが生じ、そしてまた笑みが戻る。だが、すぐに笑みに戻った。
「そうだ。俺も今一つ質問ができました。」
一拍おき、その続きを話す
「あんたが信じてやまないリスペクトっていうのは本当にあの校長が言っているようなものなのか?」
さっきまでの笑みから一変し、真剣な表情で訪ねてくる。
「返答はいらないんで。じゃあ、俺はこれで…」
それだけ言うと足早に会場を後にしてしまう
◆
SIDE亮
負けてしまった…全力を出しデュエルをしたのに負けてしまった。デュエルに負けた時は悔しさで一杯だった。
彼が手を差し伸べて来た時は一瞬、最強と呼ばれていた俺へのあてつけかと思ってしまった。だが、彼の屈託の無い笑顔を見てその考えはすぐに払拭され、ただいいデュエルができ、嬉しかっただけなんだとわかった。
だが、師匠の言った言葉によって、その笑顔にほんの一瞬だけ陰りがさし、すぐに戻った。
その時間は目の前にいる俺でさえ気づくか気づかないかくらい一瞬だった。笑顔はすぐに戻ったがそれはさっきまでとは別物…作られた笑みでその目には哀しみと怒りが見て取れた。
そして、彼が次に呟いた言葉に戦慄した
『あんたが信じてやまないリスペクトは本当に校長が言ってるようなものなのか?』
その言葉が楔のように突き刺さり、俺が今まで信じてきたリスペクトにピシリと亀裂が走ったようだった。
その後紫苑は一週間の停学をくらった。
紫苑は姉にこれで怠い授業を受けずに済むわ〜と笑って答えていた。
だが、その笑顔は何処かぎこちなかったと後日、翠は語った
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