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戦国異伝

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第百七十五話 信長着陣その十二

 援軍が来ただけではない、やはり信長が来たことに喜び楽しげにこんなことを言っていた。
「明日は出来るな」
「殿がおられるからのう」
「殿がおられぬなら問題ないわ」
「わし等は生きられる」
「負けぬぞ」
「絶対にな」
「相手が上杉でもな」
 こう言っていた。
「絶対に負けぬ」
「そうじゃな、負ける気がせぬわ」
「越後の龍何するものぞ」
「軍神がどうというのじゃ」
 強気の言葉であった。
「我等は確かに弱兵じゃがな」
「率いられるのは殿じゃ」
「殿が率いられれば負けぬわ」
「例え上杉が相手でもな」
「絶対に負けぬ」
「何があろうともな」
 兵達もそれぞれ言う、そして。
 その彼等を見てだ、前田と佐々と確かな顔でまた話せた。前田は確信している笑顔で佐々に対して言った。
「織田は弱兵じゃ」
「天下でも随一のな」
「その弱兵達でもじゃ」
「ああ言えるのじゃからな」
「違うわ」
 まさにだ、全くというのだ。
「上杉に怯んではおらぬ」
「むしろ向かう気でおる」
「ではな」
「この戦は負けぬな」
「全くな」
 彼等も言ってだった、兵達に明日の戦の用意をさせた。そうしたことを言って彼等は夜の陣のあちこちを動いていた。
 織田家のその陣の動きは上杉軍からも見られていた、それでだった。
 上杉の者達はいぶかしみだ、こう話した。
「何をしておるのかのう」
「うむ、織田の方はな」
「しかもやけに元気じゃな」
「負ける気がせぬと思っておるのか」
「我等を相手に」
「あの弱兵共が」
 織田の兵の弱さは天下に鳴り響いている、越後者が多い上杉の者達もこのことは聞いているのである。
 だが、だ。今の彼等はというと。
「逃げようともせぬ」
「明日の戦に向けて励んでおるわ」
「殿がまた攻められるというのに」
「全くか」
「怖気付かぬか」
 こう話していぶかしむ、そしてだった。
 その彼等を見てだ、宇佐美は謙信に提案した。その提案はというと。
「夜討ちですか」
「はい」
 本陣で飲んでいる謙信の前に控えてだ、宇佐美は話した。
「それをされてはどうでしょうか」
「今織田軍は明日の朝の戦の用意をしていますね」
「左様です」
「今夜襲をすればです」
 まさにだ、その時はとだ。謙信も言うのだった。
「備えている最中の織田家を攻められ」
「かなりの手傷を負わせることが出来ます」
「上手くやれば勝てる」
「はい」
 こうも答えた宇佐美だった。
「それも出来ます」
「そうですね。しかし」
 ここでだ、謙信は宇佐美にこう言ったのだった。 
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