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戦国異伝

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第百七十五話 信長着陣その十一

「そして加賀にも城を築く」
「加賀を治める為にですな」
 ここで問うたのは前田だった。
「その為にも」
「そうじゃ、越前には北ノ庄に城を築きじゃ」
「さらに加賀にも」
「それで北陸への備えとする」
「だからですな」
「加賀の、そうじゃな」
 その城の場所も言う信長だった。
「金沢じゃな」
「あの地にですか」
「城を築く」
 上杉との戦の後でそれを進めるというのだ。
「わかったのう、このことが」
「はい、それでは」
 前田をはじめとして諸将が応える、そしてだった。
 信長は彼等にだ、あらためて言ったのだった。
「では次の戦ではじゃ」
「はい、負けぬ為に」
「どうするかですな」
「よいか、ではな」
 信長は諸将に話した、そのうえでだった。
 皆信長の話を聞き終えてだ、驚いた顔でこう言った。
「そうされますか」
「ここは」
「その様に」
「うむ、ではよいな」
 信長は微笑みさえ浮かべて応えた、そしてだった。
 あらためてだ、彼等に言うのだった。
「この度の戦は負けぬことじゃ」
「だからですな」
「負けぬ為にですな」
「次は勝つ」
 それにつなげる為にというのだ。
「ではよいな」
「はい、では」
「その様に」
 家臣達も応える、そしてだった。
 夜の中に彼等は明日の備えに入った、その中で。
 ふとだ、佐々は前田にこんなことを言った。
「殿が来られるとな」
「違うというのじゃな」
「うむ、殿がおられるとな」
 もうそれだけでだというのだ。
「我等は違う」
「それはその通りじゃな」
 前田も佐々のその言葉に頷いて言う。
「殿がおられるとな」
「まさにそれだけでじゃな」
「違うわ、何もかもな」
「我等の士気もな」
「何もかもが違う」
「やはり織田家は殿がおられてこそじゃな」
 それでこその織田家であり織田軍だというのだ。
「負ける気がせぬ」
「例え相手が上杉でもな」
 謙信が相手でもだというのだ、軍神とまで呼ばれている者が相手であろうとも。
「負けぬ」
「わしもそう思うわ」
「ではまずはじゃな」
「この加賀の全てを手に入れ」
 そしてというのだ。
「金沢に城を築き」
「そのうえで」
「次じゃ」
 前田もこう言った。
「次の戦でじゃ」
「上杉に勝つか」
「そうしようぞ」
 こう二人で話した、そのうえで。
 周りの兵達を見る、すると彼等もだ。 
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