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美しき異形達

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第十九話 友人と仲間その七

「いませんでした」
「一度も」
「若しそうした人が来てくれたら」
 菊は今度は探偵業としての立場から話した、家の仕事のそこから。
「殺人以外なら喜んで引き受けますよ」
「そうするね」
「身元調査とかなら本当に得意ですから」
 探偵だけあってだ。
「幾らでも」
「そうするね、けれどだね」
「そんないいお話一度も来てないです」
 これが現実だった、菊はその現実を言った。
「残念です」
「そうだね、そう考えたらね」
「国家じゃないですか」
「例えば日本政府だと」
 彼等の祖国のこの国の政府である、言うまでもなく。
「是非君達を雇いたいだろうね」
「自衛隊、いえ内閣調査室ですね」
 菫が答えた。
「若しくはそうした場所ですね」
「警察や宮内庁かも知れないよ」
「とにかくそうした場所ですね」
「日本政府は穏健だけれどね」
「それでもですね」
「君達みたいな人材を知っていたら是非欲しい筈だよ」
 このことは間違いないというのだ。
「皇室の方々の警護とかね」
「皇室の、ですか」
「それはまた」
 流石にだ、こうした方々の名前を聞くと誰もが息を呑んだ。普段はざっくばらんな薊ですらそうなってしまった。
 そしてその薊がだ、実際に強張った顔になって智和に問うた。
「じゃああたしが天皇陛下の」
「うん、身辺警護とかね」
「凄いな、そりゃ」
「君達程の腕と力があればね」
「宮内庁がスカウトに来るのかよ」
「物凄い話だね」
「そんなの嘘だろって思うよ」
 実際に話が来たら、というのだ。誰もが薊と同じ感じになっている。
「陛下のお傍なんて」
「そうだね、けれど君達なら」
「スカウトにかよ」
「来てもね」
 おかしくはないというのだ。
「けれど誰も来ていないね」
「はい、来るのは怪人だけで」
「そうした人は」
「国家ではないよ」
 こうしたことを考えていってだ、智和はあらためてこの答えを述べた。
「君達に怪人を送り込んできているのは」
「別の組織だね」
 国家以外の、というのだ。
「それもかなりの規模の」
「かなりのかよ」
「大企業か何かは知らないけれどね」
「企業でも、ですよね」
 裕香もここで言う。
「相当大規模な。世界規模の」
「そのレベルの企業だね」
 企業ならと、だ。智和はその場合はどうかと裕香に答えた。
「そうなるね」
「そうですよね」
「それこそ八条グループ位のね」
「八条グループは」
 裕香はこのグループについてはこう言った、それも難しい顔で。
「ないですよね」
「まずないね、生物化学の分野も研究しているけれど」
「そうした研究所があっても」
「ないね」
 智和もだ、八条グループの可能性はないとした。 
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