美しき異形達
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第十九話 友人と仲間その六
「普通にね、毒も用意して密かに仕込めるよ」
「毒の方が安価なのですね」
「殺し屋に射殺させてもいいよ」
智和は菫にも答えた。
「そうしてもね」
「そうなのですね」
「毒はね、本当に色々な使い方が出来るものでね」
話しながらだ、智和は薊を見てだ。ここで例えを出した。
「寮だと。天枢さんの服を見付けて」
「あたしのかよ」
「そう、君の服にだけ密かに毒を塗るとかね」
「おいおい、寮に忍び込んでかよ」
「そうしてね」
「それはまた手が込んでるな」
「けれどそうしたことが出来るレベルの人間を雇えば」
学生寮に誰にも気付かれることなく潜入出来る、少なくとも軍の施設に潜入するよりは容易く出来ることである。
「そして毒さえあれば」
「出来るのかよ」
「そう、怪人を送り込むよりも手間暇も予算もかからずにね」
「怪人はそれだけ金がかかるのか」
「そう、普通に刺客を使う方が遥かに安価だよ」
「それでは」
菖蒲は智和の話をここまで聞いて述べた。
「国家では」
「国家は採算を最優先させるよ」
「政治だからですね」
「採算に合わないことはしないよ」
それが国家という組織だというのだ。
「合理性を求めるからね」
「怪人は合理的ではないのですね」
「採算ではね」
だから刺客を使う方がいいというのだ、若し何処かの国家が薊達を消したいのなら。
「そして消すよりもね」
「私達を殺すよりも」
「もっといい方法があるよ」
智和は淡々とした口調で暗殺以外のやり方も話した。
「それは雇うことだよ」
「私達を」
「そう、そうして工作員等に使う」
「雇って、ですか」
「お金でね」
そうする方法もあるというのだ。
「君達にしてもお金は嫌いじゃないね」
「嫌いな人はいないですよ」
向日葵は実に率直にだ、智和の言葉に答えた。
「やっぱり」
「そうだね」
「はい、お金が全てじゃないですけれど」
「お金があって困ることはないね」
「やっぱり世の中お金で動きますからね」
「お金じゃなくても方法は様々だよ」
金、この世を動かすもの以外にも報酬はあるというのだ。
「宝石なり芸術品なりバイクなりね。お家も彼氏もいいね」
「本当に何でもなんですね」
「将来の地位もあるよ。人を雇うには報酬は幾らでもあるんだ」
「それを出せば」
「雇うことは容易だね」
「そうですね」
「けれど君達の誰か一人でもそうした話は来たかな」
智和は六人をしかとした目で見つつ問うた。
「雇いたいという人は」
「いえ、全然」
「そうした方はどなたもです」
向日葵だけでなく桜も答えた。
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