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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第7章:過去から未来への歴史
  第16話:集まりし猛者共

(バドランド)
ラピスSIDE

我らはライアンの故郷であるバドランドで、彼の主である国王に謁見している。
世界を平和にした報告と、勇者共々無事帰還した事の報告である。
ただ報告をして2.3挨拶をすれば、あとは城下にてライアンとホイミンとの別れをすれば終わりのはずだった……だが、ちょっとしたトラブルから大惨事の様相が漂ってきている。

と言うのも、国王の前に通され皆が恭しく頭を垂れる中リュカだけが平然と立っていたのだが、同席した兵士(位は高そうな男)の一人が咳払いで注意を促すと「あ、そうか。膝をつかなきゃダメなのか(笑)」と空気を緊張させたのだ。

勿論それだけで一触即発の危機に陥ったわけではないのだが、その後先程の兵士がシンを見て「とても伝説の勇者とは思えぬ風貌。どれ……一手指南お願いつかまつる!」と、見下した口調で言い出したのだ。仲間である無礼な男(リュカ)に対する高圧的嫌がらせなのだろう。

だがシンは「確かに私は勇者と呼ばれておりますが、それは伝説の武具を装備できる存在であるだけです。今回、世界を平和にする事が出来たのは、皆様のお仲間であるライアンさんを始め、ここに居る仲間が手助けをしてくれたからに他なりません。何より私の腕前ではご高名なるバドランドの猛者を失望させてしまいます。ですから手合わせなどとても……」と謙遜しつつ完全拒否。

しかし向かっ腹の立ってる兵士は引き下がる事が出来ず「なるほど、勇者とは手練れを纏めるリーダーであって、本人に戦闘能力は不要か。よく解った、では貴様等の中で最強の手練れは誰か? 武人として是非とも手合わせお願いしたい!」と言い、我らを嫌な目で値踏みしてきた。ライアンは国王に助けを求める様に視線を向けたが、国王も兵士と同じ気持ちらしく視線を外し止めさせない。

正直腹が立ったから、私が名乗り出て殺してやろうと思ったのだが、
「あ、僕僕。このパーティーで最強なのは僕だよ。痛い思いしたいのなら相手してやるよ。どうする、怖いのなら“裸踊り”で勘弁してやるけど……お前等、踊る?」

普段なら絶対に手合わせを自ら志願する男ではないのだが、リュカが珍しく名乗りを上げた。
しかし兵士を侮辱する台詞と共にであり先程の無礼な態度と相まって、この場に居る兵士全員から殺気を叩き付けらてる。

だが、そんな事に動じないのがリュカであり、シンやライアンの「リュカ殿止めて下さい」「そうですよリュカさん。問題を起こさないで!」と言う言葉を無視して「めんどくせーから兵士全員でかかってこい馬鹿。それが出来ないのなら全員今すぐ裸踊りな(笑)」と挑発。

ブチ切れた猛者共30名が、薄ら笑いを浮かべるリュカへ一斉に襲いかかる。
リュカを知っている者なら、この後の結末は説明の必要は無いだろう。
だがリュカを知らない猛者30名の為にも、どうなったのか説明しよう。
一言で“無残”だ。

襲いかかった全員、顔面を骨ごと潰され両腕両足の骨を粉々に砕かれ背骨も腰の辺りで粉砕された。それだけならまだマシだろう。
リュカは直後にベホマで回復させてるのだ。どんな回復かというと、顔面は骨が潰れたままの接合で二度と喋れないし目も開けられない。両腕両足は人間の可動範囲を無視した方向に曲げ、腰を180°回した状態で接合させる。

しかも全員兵士だった為、それなりの鎧を着ていたのだが、両腕両足そして腰は鎧を巻き込む形で固定されてしまった。
連中が鎧を脱ぐには、一度両腕両足の骨を粉砕させないと脱ぐ事が出来ない。

デスピサロ様は以前、人間共を殺し滅ぼす恐ろしい計画を持っていた。
しかし今はそれが恐ろしいとは思えない……何故なら、殺さない方がよっぽど恐ろしいからだ。
襲いかかった兵士30名は玉座の間の床に転がり、ただ生きてるだけの肉塊に成り代わっている。

(ゴン!!)
私が元猛者共を哀れんでいると、リュカが杖を床に叩き付け全員の視線を集中させた。
「さて……世界を救った立役者たる我々に楯突いたのだ。その報復を受ける覚悟は出来てるんだろうなぁ王様?」

「ほ、報復!?」
今まで静観をきめてた国王が、素っ頓狂な声でリュカの言葉に反応する。
兵士が30名で一斉に襲いかかったのだ……負けた時の事を考えてなかったのか?

「我々は貴国の軍が束になっても勝てない魔王を倒してきたのだ。その我々に貴国の兵士が戦いを挑み、それを丁重に断ったにも関わらずしつこく戦いを求めた。そして国家元首たる陛下は、部下の暴走を止める事なく容認し、結果戦闘が生じてしまったのだ! これはバドランドが我々に対し宣戦布告をしたと同じ事である! その罪、陛下の命を持って償ってもらうが……覚悟の程はよろしいかな?」

青ざめる国王と家臣達。
リュカは国王に一歩踏み出すが、奴を守ろうとする兵士は誰も居ない……いや、居るのだがもう守れない。全員床に転がっているから。

「ライアン……お前はどっちに付くのかな? 祖国に付いて僕の敵になるか、僕等勇者一同の仲間としてバドランドと戦うのか……今決めろ」
冷たい瞳で見据えたままライアンに問い詰めるリュカ。

ど、どうするんだ!?

ラピスSIDE END



(バドランド)
シンシアSIDE

このオッサン最悪だ。
バドランドの城下町にあるカフェで、コーヒーを飲みながらライアンさんがリュカさん(オッサン)に向け嘆いている。

嘆くのも無理ないわよ。
向こうの態度が気に入らないからって、ライアンさんの職場の人達を再起不能にした挙げ句、国を滅ぼすと脅しをかけライアンさんに立場をハッキリする様迫ったのだから。

勿論ライアンさんは王様とリュカさんの間に立ち、互い(と言うか、主にリュカさん)を落ち着かせ仲裁に入ったけどね。
再起不能になった連中が悪いのであって、王様はリュカさんと争う気など微塵も無いと弁明してたけどね。
これで再起不能連中の仲間(全員貴族だったので、家族や縁の深い方々)に嫌われちゃったけどね。

「はぁ……私はまだ、このバドランドで働くのですぞ! それなのに大層居辛い環境を整えてくれましたね!」
怒りを抑え込み、なるべく冷静に嫌味を言うライアンさん。頑張れ!
「礼は要らないよ」

(バン!!)
「礼など言うか!」
だが軽い口調でリュカさんに返され、テーブルを両手で叩き叫ぶライアンさん。

「ライアン……僕は君の実力を高く評価してるんだ」
ライアンさんの激怒を見たリュカさんは顔を真面目な表情にして、何やら嘯こうとしてる。
騙されるなライアンさん!

「君の剣術レベルはかなり高い。だが、それ以上に高いのは……人を引きつける力だ。所謂カリスマ性というやつ」
「カ、カリスマ……?」

「そうだ……ホイミンを見てもそうだが、モンスターは相手の心を見抜く力に長けている。さっきの連中がライアンより先にホイミンに出会ってたとして、果たしてこれ程彼女に好意を持たれただろうか?」
「そ、そりゃ……ホイミンは人間になるのが夢だったのだし、一緒に旅する事が出来れば」

「違うね。確かに切っ掛けはライアンの言う通りかもしれないけど、最終的にホイミンの好意を得る事が出来たのはお前のカリスマ性が大きいんだ!」
「そうですよライアン様ぁ♥ ボクはライアン様が好きで一緒に旅をしたんです。でなきゃマリーさんと一緒に居るなんて出来ません!」

「あ、とうとう本音を言いやがったな!」
「本音も何も、ボクは前から言ってましたよ。マリーさんが苦手って」
素直というか……以外に遠慮がない()なのね。

「つまり、マリーや僕が苦手なのに一緒に居る事を選んだのは、ライアンが側に居るからなんだよ。マリーの非常識さよりも、僕の巻き起こすストレスよりも、ライアンと共に居る事の方が幸せに感じたんだよ」
意外に自分の評価を正しくしてるのね。

「……それは解りましたが、今回の事とどんな関係かあるんですか!?」
「だから、君はこんな国で宮仕えをしてないで、自らの才能で世界に旅立てと言ってるの。王様の命令で旅立ち、勇者の指示で戦い、全てが終わったら能力低い者達に扱き使われる……そんな人生から脱却し、お前の力で人々に幸せを与えるんだよ! 魔王やエビを倒し世界が平和になったと言っても、人々の生活が安定するのはこれからなんだから、お前は自分の才能を生かし、人々が幸せになれる手伝いをするんだよ」

凄い事言い出したわ……
本気でこの言い分を推し進めようと思っているとして、兵士達を再起不能にする必要があったのかしら?
どう考えたってムカついたから殴った感じよね?

「わ、私にそんな事が出来ると思ってるのですか?」
「さてね……やる気のない奴には能力があったって出来ないだろうね。でもね、魔族が大人しくなり、モンスターも人を襲わなくなった世の中で、貴族や王族が何をしてくれるのだろうか? 平民の生活水準を上げる努力をする事なく、税金だけ搾り摂って堕落して行くんじゃないのかな? お前はそれを黙認し、剰え手伝うのか?」

何度も言うが、それでも連中を再起不能にする必要は無かったと思う。
だけどライアンさんは下を向いて何かを考えてる……
理性を保て……騙されるんじゃない!

シンシアSIDE END



 
 

 
後書き
フィナーレは近いです。 
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