ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン~神々の狂宴~
第五話
「大分収まってきたようだな……」
「やはり増殖が抑えられたのがよかったのか。だが、一体なぜ……?」
六門世界に突如発生した無限に増殖する影の蛇は、突然その増殖を止めた。そこから先は非常に攻略しやすい。なぜなら彼らは、一体一体がちょっと信じられないくらい弱い。
ハザードとリーリュウのチームでは、レノンの火力や、ハザードのソードスキル、そしてそれらを後押しするリーリュウの六門魔術、加えて《冥刀・岩覇蒼炎》の活躍で、すでにかなりの規模、影の蛇を蹴散らすことに成功していた。
増殖が止まった理由はよくわからないが、恐らく『足止め』をする必要がなくなったからだろう。そこにどのような目的があるのかは分からないが……。
「とにかく、今のうちに先に進んでしまおう。いつまた妨害されるか分からない」
「分かった。……行くぞ、レノン」
ハザードが手を鷹匠が鷹を止まらせるときのような形に曲げると、巨大なドラゴンの姿をしていたレノンは、ハザードの顔程の大きさの子龍の姿に変わり、そこにとまる。この世界ではこの止まり木の様な感じでレノンのサイズダウンを行う事に気が付いたのは、つい先ほどのことである。
リーリュウが双剣を収め、遥か遠くを目指して歩き出す。目指すは《央都》。仲間たちと合流するために――――。
***
実際のところ、ノイゾが《ボルボロ》を足止めした理由はいくつかあるのだが、その中でも特に重要な理由は二つあった。
そのうちの一つは、エインによって征服された《アルヴヘイム・オンライン》において、キリト達が戦闘準備を整えるのを待つこと。新たに鍛えられた武器と、伝説級武器《聖剣エクスキャリバー》を携えたキリト。その頭の上に乗る、《娘》のユイ。持っている中で最強の装備で身を包んだアスナ、シリカ、リズベット、クライン、リーファ。そして、この日のためにわざわざアカウントをとった、アリス・シンセシス・サーティ。
アリスは人工知能でありながら真正の知能を獲得した、真正人工知能《ALICE》である。彼女は現実世界にも、仮想企業《ラース》が総力を結集して作り上げたボディを持っており、ほとんど人間と変わりのない存在として生きている。
キリト、アスナと共に現在行っているアンダーワールドの再開拓の合間を縫ってALOにダイブしていた彼女は、今回の作戦にも参加してくれることになったのだ。さすがにアンダーワールドの装備は使えないので、全装備がリズベットが作った一級品か、キリト達の持ち寄ったアイテムだが……。
ほかにもシルフ領主サクヤ、ケットシー領主アリシャ・ルー、サラマンダー将軍ユージーン、シルフ領官僚のレコンやティール、スリーピングナイツの面々まで集まってくれている。
「よし……みんな、今日は来てくれてありがとう。厳しい戦いになると思うけど……ALOを取り戻そう!」
「「応!!」」
メンバーたちの威勢のいい返事を頼もしく思いながら、キリトは強くうなずく。
今回メンバーを集めたのは、ALO上空にうかぶ新生アインクラッドだ。なぜ地上ではないのかと言うと、上空から降下した方が、イグドラシルシティに早く着くからに他ならない。さらに、エインヘルヤルの配下である黄金のガイコツには、どうやら飛行能力がないらしいことが判明していて、地上を進むよりも上空降下のほうが安全性が高い。
「キリト君……」
「パパ……」
「大丈夫……大丈夫だ」
不安そうに、隣を飛ぶアスナと、頭上のユイが呟く。キリトは彼女たちと、そして自分にも言い聞かせるように答えた。
世界樹イグドラシルの上に作られた街、《イグドラシルシティ》は、荘厳な建物を片っ端から破壊されていた。廃墟には黄金のガイコツ達がうごめき、広場があったところは王座のように開けている。
その中心に、白い少女。幽霊めいた儚さと異質さ、そして外見通りの幼さと、見合わない美しさを兼ね備えたその少女の名は、エインヘルヤル。エインヘルヤル・イクス・アギオンス・レギオンルーク……今回の惨劇を引き起こした、《白亜宮》のレギオンの一員。
「……」
気付いた。しかし、手を出してこない。キリト達のレイドがイグシティに着陸するまで、彼女は静かにたたずんでいた。
「……よう」
「ええ……久しぶり……名前、何だったかしら?」
「キリトだ」
「そう。か弱い命の名前なんて覚えてなかったわ」
自分で聞いたくせに、そう答える。苛立ちを覚えなくもないが、そう言う奴なんだろう、と割り切って、話しを進める。
「ALOを返してもらうぞ」
「……いやだと言ったら?」
「お前を倒すだけだ」
その瞬間。
エインヘルヤルの纏う気配が、急激に重圧を帯びた。
「馬鹿ね。以前既に負けている、と言うのに、まだ戦うと?」
「当然だ。ここは俺達の場所だ。お前には渡せない」
「そう……お兄様の筋書き通り、か……つまらない。じゃぁ、消えてもらおうかしら」
そして彼女が唱える。以前キリト達を一瞬のうちに滅ぼし去った、悪魔を呼び出す式句を。
「『十九八七六五四三二一〇
いと尊き我が兄に、この誓いを捧げます』」
重圧はますます強くなっていく。動けない。無防備なエインヘルヤルに一太刀入れられてもいいようなものなのだが、全く動けないのだ。
これが、彼女の能力の一端でしかないことは、既に知っている。
「『私の存在は、あなたの心を埋めるために創られ
また私の心は、あなたの傷を癒すためだけに存在する。
されば、私は其を是とし、私の欲望と、愛と、倦怠の、あらゆるすべてを以てして、
あなたの空虚な罪を埋めよう。
私の罪を―――お兄様に、捧げます
―――《惟神》――――
《Acedia‐Sloth》』
ゆらり、と、影絵のように重圧が揺れる。出現したのは、黒いフードの様なもので顔を隠した、二メートル半はありそうな巨体の、熊型のような悪魔。翼は無いが、代わりに蜘蛛の様な足が四本ある。顔は仮面と包帯で覆われており、見ることはできないが、口はやはり熊の様な形だ。盾のような形の腕と、刀のように研ぎ澄まされた爪は、近接戦闘に置いて大いに役立つだろう。
「吹き消して、バァル=フェゴル!」
「【ゴオォァァァァァッ!!】」
おどろおどろしい咆哮を上げて、バァル=フェゴルと呼ばれた悪魔が突進する。
「ぬぉぉおお!」
その攻撃線上に割って入るのは、エギルを筆頭とした多数の壁プレイヤー達。キリトらダメージディーラーは大きく回避し、エインヘルヤルに迫る。
「【グルゥッ!】」
唸り声を上げてバァル=フェゴルが方向転換、キリト達の戦線に突きこもうと、蜘蛛のような足を屈折させ、まるでばね仕掛けであるかの如く飛び上がる。
だが、この動きはすでに前回見ている。空にはユージーンを始めとするALOプレイヤー達が控えており、ソードスキルを含む全力攻撃をたたき込む。
悪魔は腕の盾状の部分を掲げてその攻撃をはじく。が、一筋の光がその盾を透過した。
「ぬぅぅぅん!」
ユージーンのもつ伝説級武器、《魔剣グラム》の能力、《エセリアルシフト》。かつてキリトを苦しめたその能力は、『一度だけ防御をすり抜ける』というもの。グラムが開発段階において《シェイプシフター》のコードで呼ばれていたゆえんである。
ユージーンの放った重攻撃は、バァル=フェゴルの胸にヒットし、落下を加速させた。ズズン、という轟音を立てて、イグシティ地表に落下する悪魔。すかさずプレイヤー達が群がり、攻撃を加える。
「……自慢のガーディアンさんは使い物にならないみたいだぜ」
無防備なエインヘルヤルの前に立ちはだかるキリトとアスナを始めとする十名ほどのプレイヤー達。ALOでも最高峰の実力をもつメンバーで構成されたエインヘルヤル討伐隊の中で、まさに『トッププレイヤー』と言っても過言ではない存在達だ。
だが、そんな彼らを前にして、エインヘルヤルの表情は《冷淡》のままである。どこかつまらなそうに眉をしかめて、呟くように言う。
「……そうかしら?使い物にならなくなるのは、あなた達の方だと思うけど」
何か来る。直感的にキリトはそう感じた。
前回の戦闘では、彼女が繰り出す重力攻撃の前になすすべもなく敗れ去った。今回もそれが来るのか、と身構えるが――――
エインヘルヤルが唱えたのは、初めて聞く式句だった。
「『 神・哭・神・装
―――《惟神》――――
《Acedia‐Sloth》』 」
後方で、エギル達の驚愕の叫びが上がる。振り返ったキリトが見たのは、影のように姿を揺らめかせるバァル=フェゴル。それはまるで衣のようにエインヘルヤルにまとわりつき、その容姿を変化させる。
楯状の腕パーツは爪ごとエインヘルヤルの細腕に装着される。仮面は小型のネックレスとなって首から下げられ、フードはエインヘルヤルの肩を蓋う。彼女の真っ白い髪をかき分けて生えた漆黒の角は、見ることはできなかったが恐らくバァル=フェゴルにもついていたものだろう。蜘蛛のような四足は背中に収束し、枯れ木のような形に変貌、その間に、薄い膜で作られた翼が広がる。
エインヘルヤルの肌とバァル=フェゴルを構成していたパーツが触れる部分には、ぼろぼろの包帯が巻かれる。それは眼帯のように彼女の右目を蓋う。その隙間から除く瞳は、先ほどまでとは違い、緑ではなく紅蓮色に変わっていた。
エインヘルヤルを中心に、重圧がさらに増加していく。地面に罅割れができ始めた。
「私が戦えない、と思ってたんでしょう?……そんな事、一回も言ってない」
その言葉を聞いた瞬間――――
キリトは、自らの立てた作戦の前提条件が間違っていたことに気づいた。この作戦は、エインヘルヤルの戦闘能力の大半が熊型悪魔に集約していることを前提としてたてられたものだ。たしかに、エインヘルヤル単体の戦闘能力は無いのだろう。だが、このように武装すれば、彼女自身にも十分な戦闘能力がある、という事になるのでは――――
それは、つぎの瞬間に実証された。
エインヘルヤルの姿が掻き消える。気が付いたときには、後ろで構えていたサラマンダーのプレイヤーが吹き飛んでいた。HPバーが消滅し、死体だけが残る。彼のHPは満タンだった。なのにもかかわらず、一撃で消え去ったのだ。それはそのまま、エインヘルヤルの戦闘能力の高さを証明するものだった。
「本気出していいって言われたから、出す。……消えなさい」
死神の姿が、再び掻き消えた。
後書き
はいどーもお久しぶりです、Askaです。
刹「結局全然更新しないまま夏休み終わりましたね……」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
刹「うるさいです」(ズバッ
ぎゃぁ!?せ、せっかく謝ってるのに……刹那ちゃんひどい……。
とりあえず、今回はALOサイドでした。特にここで話すことはありません。
刹「……はぁ……それでは次回もお楽しみに」
もうちょっと反応してよ!
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