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東方変形葉

作者:月の部屋
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全国10カ所の妖気
  東方変形葉42話「岩手・慰霊の森、そしてついに・・・」

 
前書き
鈴仙「失礼します。お茶が入りました。」
永琳「ありがとう。」
輝夜「永琳、結局この前あの妖怪の賢者が言ったことを信じるの?」
永琳「今は信じておきましょう。攻め込んでくること、最悪の事態を想定して、今は万全の準備を整えましょう。で、結局誰も攻め込んでこなかったらあのスキマ妖怪を笑ってあげましょ。」
鈴仙「そうですね。」
 

 
「なるほど・・・。そうなると早く終わらせて向かわないと。」
朝になり、机に置かれていた手紙を読んだ。開封した跡があったので、おそらく蓮子やメリーも読んだのかもしれない。
「今日は岩手・・・。昨日よりもさらに強いところ。」
それを想像すると、恐ろしくなる。ただでさえ昨日、危ないところだったのに。
こんな感情は初めてだ。手が震え、体が震え、足が震え、動悸が激しくなる。
「むにゃあ、おはよ~・・・きゃっ!?」
姫雪の声が後ろからした。俺は無意識に姫雪に抱きついていた。
「ゆ、裕海様?どうしたの?」
「・・・姫雪、もう少しこのままでいてほしい。」
自分でも意識的には思っていなかったことが無意識に口から出る。恐怖に震える声が。
「・・・もしかして、こわいの?」
「・・・ああ、そうだ。俺は今、怖くて怖くて仕方がないんだ。」
少し抱きつく力を強くする。ぎゅっと抱きしめ、恐怖を和らげる。
「そっか、裕海様は力は強くても人間だもんね。怖くなるよね。」
姫雪も、抱きしめる力を強くする。
「・・・ごめんね、こんな頼りない師匠で。」
「ううん、頼りないだなんて思ってないよ。裕海様の可愛いところが見られて私は満足だよ。」
いつの間にか、俺の目から熱いものが流れていた。
心が落ち着いてくる。恐怖の感情は、いつの間にか消えていた。
「ありがとう、姫雪。だいぶ心が落ち着いたよ。」
抱きついていた姿勢を元に戻す。と、今度はあぐらしている俺の膝の上に乗ってきた。
「えへへ、裕海様の恐怖が完全に消えるまでこのままでいるね。」
そういって、俺の胸に後頭部を当てる。寝息が聞こえてきた。
安らいでいた心はさらに安らぎ、恐怖は完全に消え、代わりに前向きな心が生まれた。



慰霊の森。ここにはある飛行機が墜落したそうだ。全日空機雫石衝突事故という、乗客・乗員全員162名の命が犠牲になったという極めて悲惨な事故だ。
長い階段を抜け、慰霊碑のあるところに辿り着く。
「ここよ。無理しないでね。」
確かにそこには境界があった。メリーがスキマに入り、家に戻る。
「2人とも。いい?」
「「うん!」」
人形たちに確認し、境界の中へと入った。
境界の中は、青暗かった。そこには、着物姿の男性の姿があった。
『あん?人間がどうしてここにいる。』
「お前を退治に来たからだ。」
そういうと、男は笑い、
『はははははっ!喰らえ!』
すぐに攻撃を開始した。日本刀を構え、素振りをする。その衝撃波が俺を襲う。
「くっ!!」
なんとか避けたが、顔の2カ所に傷をつけた。
「“風の変化”」
扇子を取り出し、最終レベルの風をおこす。風は能力によって不規則に流れ、予測できないところから風が吹く。
『はん、その程度の風で私が吹き飛ぶとでも思っているのか!』
と、電撃が風を切り裂きながら飛んでくる。
「『金剛結界』!」
電撃を防ぐ。しかし、あまりの威力の強さに思わず後ろに足を引いた。
『おらおらおらおらぁ!』
電撃は量を増し、威力を増していく。
「神力解放!」
神力を解放し、電撃を消し、光線を放つ。
『ちいっ、人間風情がおかしな力を持っていやがる。これでどうだ!』
と、電撃の光線が俺を襲う。それを神力の光線で対抗する。
後ろから刃物が飛ぶ。しまった!トラップか!
と、それをきらちゃんがスキマを開いて回収する。
神力をさらに加えると、電撃の光線は押され、敵とともに地面に叩きつける。
気配がある。まだ生きているようだ。
『はははははははは!しねぇ!』
一瞬で詰め寄り、電撃を放ってきた。
「ぐっ!?」
威力はかなりある。服の一部を切り裂き、電撃が走る。
威力が強すぎて、俺は吹き飛ばされた。
「やってくれるなっ!」

天変「ミーティアマジック」

弾幕を展開する。一部の弾幕が細かな光線となり、敵を襲う。
それをさっさとかわし、光線をめちゃくちゃに飛ばしてくる。
それをすべて読みきり、スキマを開けて回収し、敵に返す。
『がああぁぁぁあああっ!!』
すべて体の急所に当てたので、相当痛いはずだ。
「“神力と大爆発の比例変化”!」

大変化「無と有の境界」

何もないところから大爆発が連鎖して起こる。昨日よりもかなり威力が強いはずだ。
『があああああぁぁぁぁあぁぁぁあああ!』
爆発に巻き込まれている。よし、勝った!
と、思った瞬間だった。
日本刀が俺の肩を切り裂いた。
「ぐああっ!」
危ないところだった。もう少しで肩を持って行かれるところだった。
「“止血の変化”」
血を即座に止め、再び爆発を起こす。
『があああぁぁぁぁああああっ!こ、こんな人間にぃぃぃぃ!』
そして、爆発の中へと敵は消えていった。

「ぐっ、“浄化の変化”!妖気よ、消え失せろ!」
扇子を上に向けると、よどんでいた空気は元に戻った。



「はぁ、はぁ、はっ・・・いてて・・・」
肩が痛い。相当深く切り裂かれたようだ。
今、これ以上は力を使えない。
「また無理して~っ!早く寝よ!」
「スキマ開いたよ~っ!さあ早く!」
意識がもうろうとしており、立ってもいられない。
「2人とも、頼む。」
「仕方ないね~、よいしょっと」
「よいしょっ!」
人形たちに腕を持って引っ張ってもらう。



寮に帰ってすぐ、布団に寝かされた。もうその時には、意識はかなり薄くなっていた。



眩しい感覚がして、太陽の光が目を覚まさせる。起きたてのせいで周りがちかちかして良く見えない。
「あっ!目が覚めた!」
姫雪が涙目で言う。
「・・・え?どうして何日も意識を失っていたかのような反応?」
「その通りだからよ。」
「君、もう5日間も寝てたんだよ?」
メリーと蓮子が呆れ気味に言う。わーお。5日間とな。
「力を使い過ぎたのよ。」
紫がスキマからにょきっと現れる。いたのか。
「紫?またどうしてここに。まさか!」
「半分正解。きっともう攻め込んできたのかと思ったようだけど、まだ攻めこまれていないわ。だけど、少しだけ嫌な予感がするのは確かね。でも目的はそうじゃないの。」
「?」
紫はお茶を一口飲んで湯のみを机に置いた。
「実は、あなたが退治した沖縄と岩手の2カ所の妖気が潰されたから、現在日本に異常な妖気は皆無なの。」
・・・ええ?
「あと6カ所あるけど、どういうこと?」
「あれらは、さっき言った2カ所の妖気が一部移ってできたものよ。だからあの2カ所の妖気が浄化されたのが連鎖して、他のところの妖気も浄化されたのよ。一応それを確かめておく必要はあるけど、今は優先順位が変わったわ。幻想郷にもどって、支配を目論む輩を潰してから行きなさい。」
なるほど。そういうことか。
「そうか、わかったよ。一旦幻想郷に帰って、輩を叩きのめしたらまたここに来て確認して、また帰ってくるよ。蓮子、メリー、出会いも別れも突然すぎて申し訳ないけど、そういうことなんだ。幻想郷で輩をやっつけたら、またほんの少しだけお世話になるけど、いい?」
そう訊くと、当然のように答えた。
「あたりまえじゃない。」
「そっちで派手にやっつけて、また来てね!」
「・・・ありがとう。」
俺はできる限りの笑顔で微笑む。その時だ。
「紫様!大変です!」
「あら藍。どうしたのかしら?」
藍が、紫が開けっ放しだったスキマから飛び出した。そして、思いもよらないことを聞いた。
「幻想郷が、例の集団に攻め込んできました!」
「なんですって!?はやく行くわよ!」
紫が藍の後を追う。
「・・・2人とも、今日までありがとう。また来るときもお世話になるよ。さて、きらちゃん。ほたるちゃん。姫雪。行くよ。」
「「「うん!」」」
「元気でね。」
「待ってるからね!」
2人に手を振り、紫たちの後を追った。



紫の屋敷。
「数はおよそ50。力は、どれも並大抵ではない強力な力を持っています!」
「・・・そう。一番まずそうなところを援護するわよ!」
紫が向かおうとしたその時だった。
『は~い、妖怪の賢者様。交渉に来ましたよ。』
一人の、中年男性の姿をした妖怪が目の前に現れたのだ。
「・・・交渉、ですって?」
『ええ。幻想郷の住民全員の命は保障する代わりに、幻想郷を譲ってほしいのです。』
それはとても残酷な内容だった。
「・・・幻想郷は渡さない。絶対に。まずはお前を潰させてもらうわ!」
紫は少し考えた末、結論を出した。そして紫は、俺が潰して回った強大な妖力をもつ妖怪よりも、それをはるかに上回る妖力を展開した。
・・・これが紫の本気なのか。それともまだ抑えている方なのか。さすが大妖怪。
「紫、ここは任せた!藍、姫雪、きらちゃん、ほたるちゃん、行くよ!」
スキマを開いた。しかし、スキマを消されてしまった。
『へへへ、先には行かせませんぜ。私の能力、『一つの目的を束縛する程度の能力』であなたのワープ機能を縛りました。』
ちっ、余計なことをしてくれたものだ。
「ふん、それならすぐに倒させてもらう!もう全開で行くよ!反則過ぎて使えなかったスペカを今、ここで使う!」

神速「光速結界閃々」

“速度の変化”で光速まで速度を上げた結界が次々と飛ぶ。
『なっ!?がああぁぁぁああぁぁああぁっ!』
相手がひるんだところで、神力の光線を放つ。
『ぐうっ、構うものか!』
妖力の光線をはなってくるが、神力に妖力が敵うわけがない。
『なっ!?神力だと!?ぐがぁぁあああぁぁぁぁあああ!』
地面に叩きつける。まだワープは使えないようだ。仕方ない。
「終わりだ。」
結界で相手の周りを囲み、その中だけを“温度の変化”で100度まで上げる。
『ぎぃぃぃいぃいいいい!』
妖怪は力尽き、ばたりと意識を失う。それと同時にワープ機能が回復する。結界を解き、縄で妖怪を縛り付ける。
「さてと、行くよ。藍は魔法の森へ行ってくれ。俺達は人里へ向かう。」
「ああ、任せておけ。私の、九尾の力を見せつけてやるよ!」
用意したスキマで藍は魔法の森へ行った。俺達もスキマで人里へ向かった。



続く
 
 

 
後書き
42話です。
攻め込まれた幻想郷。さて、どうなるのか! 
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