東方変形葉
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全国10カ所の妖気
東方変形葉41話「沖縄・SSSの妖気主」
前書き
魔理沙「お茶を飲みに来たぜ~!」
霊夢「毒キノコ茶でも飲んでなさいよ。」
魔理沙「上がるぜ!」
霊夢「はあ・・・。どうしてみんな玄関から入ってこないのかしら。」
魔理沙「は~っ!冬の温かいお茶は美味しいぜ!」
霊夢「そうね。そういえば、昨日紫が言っていたことは本当なのかしら?」
魔理沙「ああ、あれか。まあ本当だとしても私たちがぶっ潰せばいいだけだしな!」
霊夢「・・・・・・そうね。」
俺が外の世界に戻ってきてからもう一週間が経った。今日は金曜日。積もっていた雪もだんだん融け始めていた。
窓から外を眺めていると、遠くから紙が飛んできた。
「帰ってきたか。ええっと、8枚ちゃんとあるっと。さて、一枚ずつ確認していこう。」
・北海道 血妖魔沼
・岩手 慰霊の森
・新潟 ホワイトハウス
・千葉 油井グランドホテル
・広島 似島
・香川 立石隧道
・長崎 つがねの滝
・沖縄 sss
・・・これらが妖気主の居場所。一つずつ妖気の量を確認する。北海道のは言うほど大したことはない量。それ以外は、白高大神と清水寺の間、または白高大神ぐらいの妖気だ。しかし、2カ所ほどとんでもないところがあった。
「・・・沖縄のsssが、白高大神の10倍!?岩手の慰霊の森が20倍!?」
どういうことだ?ただでさえこの前の妖気はかなりのものだったのに、それ以上はないと思っていたのに。
・・・これは、一刻も早く妖気を潰さないととんでもないことになる。
今日の夜と明日の夜はここへ行かないと。姫雪の鍛練に良いと思っていたが、ここ2カ所ばかりは危なすぎる。
霊感のある人なら、最悪の場合死ぬ恐れがある。メリーにも、境界を探してもらった後に帰した方がいい。
人形たちは何があっても壊れないからついていかせても大丈夫だろう。・・・俺に万が一のことがあったら人形たちに助けてもらわなければならない。
「今日と明日行くところは、かなりとんでもないところだ。霊感ある者は死に誘われ、そうでない人も悪霊に憑りつかれる。だから、今日と明日だけはメリーには境界を探してもらった後にすぐに帰ってもらうよ。」
大学へ行った後、家に戻って説明した。
「あなた、一人で行く気なの!?本気!?」
「ああ、本気だ。あの妖気の量は、今すぐにでも幻想郷に影響を与えてしまうほどだ。もしかしたら今既にそうなっている可能性は否定できない。俺は幻想郷の守護者の代理として、行かなければならないよ。俺に万が一のことがある場合も想定できるから、きらちゃん、ほたるちゃん、ちょっと来て。」
人形たちを呼ぶ。不思議そうにしながら飛んでくると、人形たちの手を取った。そして、
「な、なにこれ!?」
「まぶしいっ!」
手は黄金の光に包まれた。
「よし、できた。君たちの能力を、一時的に『空間を操る程度の能力』に塗り替えたよ。これで、俺が万が一のことがあったらスキマを開いて俺を助けてくれ。いいか?」
「うん!」
「わかった!」
これで、なんとかなる。あとは。
「姫雪、君は家で蓮子と、途中で帰ってくるメリーを護衛しててくれ。あまりに強大な妖気だから、俺の関係者である君たちを妖気主の使いが襲ってくるかもしれない。」
「わ、わかった!」
姫雪は頷いた。
これで準備は整った。
「・・・本当に大丈夫なんだよね?」
蓮子が訊いた。
「ああ、少なくとも絶対に死なない。」
「・・・わかったわ。私たちはあなたが元気で帰ってくるって信じてるからね。」
蓮子は、元気いっぱいの笑顔で言った。
「メリー、よろしく頼む。あっちにいる間は俺が守るから。」
「・・・ええ。こちらこそ。」
メリーは、大人びた顔で微笑んだ。
「2人とも、よろしくね。」
「まかせて!裕海様が危なくなったら絶対に助けるから!」
「私も!裕海様を全力で助ける!」
人形たちも笑顔で言った。スキマを開き、沖縄へ向かう。
沖縄はかなり暖かい。さっきまでの寒さが嘘のようだ。
目の前に『ここからの立ち入りを禁じます』と書かれた赤い看板があった。かまわず俺達はその先へ入って行く。
ハブが出ないように、神力をちらつかせる。近づけば必ず痺れるような神力を。
「見えたわ。あそこよ。」
メリーが指を指した。一見ただの森のように見える。“境界の可視変化”を使うと、かなり大きな境界があった。
「ありがとう、メリー。家に帰って待ってて。」
「ええ。必ず帰ってくるのよ。」
そういって、スキマの中へと入って行った。
「・・・さてと、2人とも。いい?」
「うん!」
「いいよ!」
そして、境界の中へと入りこんだ。
目の前には、成人男性の姿があった。
『・・・誰だ?』
「葉川裕海。お前を消しに来た。」
そういうと、男は高笑いをした。
『はははははははは!変な人間もいたものだ!境界を見ることはできるようだが、私を倒すことはできぬわ!』
そういって、赤黒い柱を飛ばしてくる。かわしながら、相手の様子を見る。
『ふん、よく避けられたとほめてやる。だが、ここまでだ!』
赤黒い手が何本も飛んでくる。この威力で、これだけ連発できるということは、やはり強大な力を持っている。
遊戯「スキマ遊び」
“威力の変化”をいじった弾幕や光線が飛び交う。しかし、それらの影響を受けている様子は見受けられなかった。
「くっ!なんて力だ!『霊撃』!」
手を合わせ、青白い光を爆発的に放つ。赤黒い手はすべて吹き飛んだ。と、一瞬で赤黒い柱が飛んできた。
「『金剛結界』!」
ガードを張る。強度に特化したこの結界は、安々とは壊れない。
しかし、何度も攻撃を受け続けるには多少不利だ。
変化「恐怖と幻の夜」
奇妙な目がいくつも現れ、無数に光線を放つ。
『無駄だあ!』
さっと手を横に振る。すると、光線はすべて吹き飛んでしまった。
「“封印の変化”!」
『なっ!?』
妖力を短時間封じる。しかし、それでもかなりの力を持っていた。
一瞬で俺の傍に詰め寄ると、鳩尾に蹴りを入れてきた。
「がっ!!」
かなり痛い。しかし、小さな結界を張ったため、なんとか大事に至らなかった。
「神力、解放!」
全ての神力を解放する。
『なに?人間が神力だと?おもしろいじゃないか!』
速度を上げ、こちらに飛んでくる。
「はあっ!」
両手を構え、黄金の光線を出す。神力によるものだ。
『ぎぃっ!』
さっとかわすと、すぐに赤黒い弾を放ってくる。
「“大地の変化”」
と、地面の一部が盛り上がる。しかし、弾は構うことなく盛り上がった地面を貫いて飛んでくる。
神変「建御雷命のお怒り」
黄色い光線が網のように張られ、弾を全て裂いていく。神力の光線はどうやら効くようだ。
「くらえ!」
高密度弾幕を放つ。
『があっ!くっ!やられるものか!』
赤黒い光線を放ってくる。さすがに高密度弾幕も光線もすべて吹き飛んだ。
こちらも、両手を構えて神力の光線を放つ。赤黒い光線は負けることなく押してくる。
『もっとだ!もっと妖力を加えるぞ!』
赤黒い光線は、さらに勢いを増した。まずい、神力をさらに加える。全力を出した。すると、ある時を境に一気にこちらが優勢となり、相手を地面に叩きつけた。
砂煙が立つ。まだ気配がある。
と、ひとつの針が飛んできた。
「くっ!」
肩をかすめた。違和感がある痛みなので、すぐに“解毒の変化”で毒を消す。
すると、妖力でできた剣で攻撃してきた。それをなんとかかわすが、横腹をやられた。横腹からは血がにじんでいた。
・・・仕方ない。あれを使うしか。
『はははははははは!貴様ももう終わりだ!』
と、赤黒い光線が飛んでくる。俺は渾身の力を込め、放った。
「“神力と爆発の比例変化“!」
神力を持っていればいるほど、爆発の威力が高くなるという変化。
大変化「無と有の境界」
大規模の爆発が連鎖して起こる。爆発は、赤黒い光線とともに相手を巻き込んだ。
『な、なんだと!?そんな馬鹿な・・・がああぁぁぁあぁぁああっ!』
「ぐっ、“浄化の変化”妖気よ、消え失せろ!」
扇子を上に向け、妖気を消していく。
「はぁ、はぁ・・・ぐっ!」
横腹が痛む。“止血の変化”で血を止めたが、結構痛い。
「さて、2人とも。帰ろ・・・あれっ」
ぺたんっと地面に座り込んでしまった。動けない。
「裕海様、無理しすぎだよ!早く帰って寝て!」
「はい、スキマあけたよ!」
人形たちが俺の腕を持ち、体を持ち上げてスキマの中へ入った。
「あっ!帰ってきた!・・・大丈夫!?」
姫雪が出迎えてくれた。蓮子とメリーも出てきた。
「ちょっと横腹を斬られただけだよ。いててっ」
「もう、早く布団にいこっ!」
「はやく~!」
人形たちが引っ張る。
「そんなこともあろうかと、布団はもう用意してあるわよ。」
「今日の料理は私たちで作るから、安心して寝てていいよ。」
メリーも蓮子も笑顔で言った。布団に寝かされ、人形たちは俺の目の前に寝転がる。
「2人とも、ありがとう。」
人形たちの髪をなでる。満足そうな顔をしてくれた。
どっと疲れが押し寄せ、俺は瞼を閉じるとすぐに意識を手放した。
「あの子も大変だね。」
蓮子がつぶやいた。
「そうね。幻想郷ってどんなところか前に聞いたけど、ものすごくいいところだって。そんな世界をよっぽど守りたいのね。」
裕海がいつも作ってくれる料理は、男の子とは思えないほど味はちょうどよく、とても健康的なメニューだった。
「裕海様はね、いろんな人たちに気に入られているんだよ!力のない人から力のある人まで、みんなに気に入られているよ!」
姫雪ちゃんが元気よく話す。裕海の自慢話をしているはずなのに、まるで自分の自慢話かのように興奮している。尻尾をぴんと立てて、耳をぴょこぴょこ動かす姿はとても愛らしく、思わず微笑んでしまう。
その時だった。姫雪ちゃんの横に空間の裂け目が現れたのだ。
「お食事中失礼するわよ。」
空間の裂け目から出てきたのは、私と似た帽子に紐の大きなリボンが付いていて、紫のドレスを着ている金髪の女性だった。
「あれっ!?紫さん!どうしてここに?」
姫雪ちゃんの知り合いらしく、蓮子も私も一瞬警戒したが、そのことがわかってほっと胸をなでおろした。
「ちょっとね。裕海は今どこにいるかしら?」
「裕海様ならさっき沖縄の妖気主を退治して帰ってきて、すぐに寝たよ。」
「なら、この手紙をあの子に渡してちょうだい。」
そういって渡したのは、真っ白な封筒だった。
「・・・ところで、あなたはいったい誰?」
蓮子が訊いた。
「ええ、私は八雲紫。幻想郷の管理人よ。もしかしたら裕海から聞いたかもしれないけど。」
「えっ!あなたが!?」
蓮子が嬉しそうな顔を浮かべる。
「あら、裕海ったら私を褒めまくってたのかしら?」
「ある神社の紅白巫女曰く、『幻想郷一駄目な妖怪』のあの紫さん!」
「・・・・・・」
紫という人は、何かのダメージを負ったかのように沈黙した。
「・・・それよりも、この手紙にはある重要なことが書かれてあるわ。別にあなたたちも読んでもかまわないわ。」
話題を切り替えた。
「姫雪、あの子に頑張れって伝えておいて。」
「うん!」
「では、私はこれで。」
空間の裂け目の中へと消えていった。
「で?手紙の中には何が書かれているの?」
蓮子が封筒から手紙を出した。
裕海へ
元気かしら?妖気主退治は順調みたいね。いいこといいこと。
さて、話は本題へと行かせてもらうわ。落ち着いて聞きなさい。今、幻想郷がある妖怪の一団に狙われているという情報を耳にした。近いうちにこちらに来るだろう。私たちで何とかするけど、相手の力も数もわからない。私たちで何とかなるのかが疑わしい。そこで裕海、できるだけ早く妖気主退治を完了させてこちらに戻ってきて。
戻る方法は、スキマを開けて“無効化の変化”をすることで幻想郷の結界を無視して幻想郷に戻ることができるわ。
これを聞いたからってすぐにこっちへ来ないこと。今はやるべきことをきちんとやりなさい。
紫より
・・・確かにかなり重要なことだった。
続く
後書き
41話です。
次は岩手の慰霊の森です。
そこでは、いったいどんな戦いになるのでしょうか。
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