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東方変形葉

作者:月の部屋
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全国10カ所の妖気
  東方変形葉40話「奈良・白高大神」

 
前書き
妖夢「幽々子様、お茶が入りました。」
幽々子「ありがと、妖夢。それよりも妖夢は聞いた?」
妖夢「なにをですか?」
幽々子「裕海が10か所のうちの一か所を叩きのめしたらしいわよ。」
妖夢「そうなんですか!早いですね!この調子なら一か月足らずで帰ってきますね!」
幽々子「この調子なら、ね~。妖夢、裕海に負けないように今のうちに鍛練しなさい。」
妖夢「はい!」
幽々子「・・・あまりよろしくない噂も耳にしたしね。」
妖夢「はい?何か言いましたか?」
幽々子「なんでもないわよ~。ほら、頑張ってきなさい。」
 

 
朝。起きて目に飛び込んだのは、真っ白な世界だった。
「そうか、昨日確か大雪特別警報が出たんだっけ。」
清水寺から帰ってきた後にテレビで見たニュースを思い出した。姫雪や人形たちはテレビそのものを見たことがなかったので、興味津々に見ていた。
特別警報が出るほどの大雪だったためか、積雪は30センチを超えていた。幻想郷ももしかしたらこのぐらい降ったかもしれない。
「わあ~っ雪だ~!」
今日は早起きした姫雪が雪に興奮している。今日の夜は奈良に行くのだが、大丈夫だろうか。奈良の方が雪がかなり積もってそうだ。
「さて、ごはんをつくろうか。」
「うん!」



「間違っても、新聞記者をちぎって投げ飛ばしちゃだめよ?」
メリーがよくわからないことを忠告する。
「・・・そんなことするわけないよ。ちゃんと手加減はするからさ。いざとなったら波長を操って俺を見えなくするし。」
「メリーは心配性だね。まあ、噂では『万事千段の新聞記者を倒した少年!彼はいったい何者なのか!』っていうのが電光石火の如く大学内に広まってるよ。だから新聞記者が来るのは確定事項と言っても過言じゃないね。」
蓮子が言った。・・・確定事項か。いやだな。そして2人は大学の中に入っていった。
「ふう、さて見張り見張り・・・」
『ねえねえ!あなたの名前は!?』
『秘封倶楽部に入ったって本当!?』
『あの万事千段を倒したって本当か!?』
・・・なんか来た。どうしよう。とりあえず。
「『霊撃』」
『きゃあっ!?』
『まぶしっ!?』
威力をかなり弱めて、幻想郷住民誰もが持っているカードを使う。突然の光に驚いてひるんでいるうちに。
“記憶の変化”をいじる。3分ぐらい前の記憶を。そして”波長の変化”。よっぽどのことがない限り、どんなに近い場所にいても俺に気が付かない。
『ん?わ、私は何をやっていたんだっけ?』
『お、俺もいったい何を?』
目の前にいるのに、全く気が付かない。
「今日こそ写真を撮らせていただきますわ!あの子はどこだ~っ!」
・・・昨日の新聞記者がいる。
「3人も見え無くしておいたからもう出てきてもいいよ。」
「「わ~い!」」
「外だ~!」
スキマを開け、3人を出す。俺たちの姿は、メリーと蓮子しか見ることはできない。
「ねえねえ、おひざに乗っていい?」
「ん?いいよ。おいで。」
姫雪が膝に乗る。桜のような淡いピンクの色をした髪からは、ほんのりと金木犀に似た甘い匂いがした。
「あ~っ!ずる~い!私は頭に乗る!」
「わ、私は肩に乗る!」
きらちゃんが頭の上に、ほたるちゃんが肩の上に乗った。体がとても暖かく、心地よかった。



「・・・ん。あれ、俺寝てしまったのか。」
どうやらあまりに気持ちが良すぎて寝てしまったようだ。
「くぅ~・・・すぅ~・・・」
「くぅ~・・・・・・」
「すぅ~・・・・・・」
姫雪と人形たちも寝ている。人形たちはいつの間にか横で俺にもたれかかっている。20センチ程度の人形たちや、幼い顔立ちの姫雪が寝る様子は可愛くて少し笑みがこぼれた。
「あっ!おまたせ~・・・ってその子たち寝てるの?」
蓮子が戻ってきた。
「ああ、俺も少し前に寝ていたよ。あれ?メリーは?」
「メリーなら、少し用事とかで遅れるらしいよ?」
大学の勉強はやはり難しいようだ。
「部室でのんびりしてましょ!」
「そうだね。そういえば俺はなぜ部室じゃなくってここで見張ってたんだろう。」
「・・・さあ?」
・・・うん、自分でも馬鹿だって思ったよ。



姫雪と人形たちをおんぶして部室は暖房でぬくもっていた。椅子に座り、お茶を飲む。
「・・・ところで、その子まだ膝に乗せてるの?」
「幼い女の子を床や机に寝かせるわけにもいかないよ。」
ソファーがないので、この手を使わざるを得なかった。人形たちは、ウエストバッグの中で寝かせた。
「そうだ!昨日のこと記録したんでしょ?見せて!」
「いいよ。」
紫から渡されたノートを出す。昨日の夜にわかったことを一ページと二ページに書いている。
「なになに?妖気の場所は京都の清水寺の『音羽の滝』と呼ばれる場所。暗く青い境界に住む妖気主の正体は酒呑童子。種族は鬼。かつて京の都で暴れていた。日本三大悪妖怪のひとつでもある。へえ~。・・・意外と乙女な字だね。」
乙女な字って何?まあそれは置いておこう。
「まあ、清水寺は確かに霊感のある人には恐れられてるけど、今日行く奈良の白高大神ほどではないんだよね。」
「えっ?そうなの?」
「一昨日飛ばした紙に、妖気の量も測ってもらったんだよ。そしたら、白高大神は清水寺の10倍ぐらいの妖気があったな。」
あれには驚いた。清水寺もそれなりに妖気があるのにその10倍も妖気があるんだから。
「10倍?それってどんな量?」
「清水寺は、霊感のある人なら体調が悪くなったり実際に霊が見えたり。その10倍だから、まあ霊感のある人なら意識が薄れたり、最悪の場合体や精神がおかしくなるな。」
それを聞いて蓮子は真っ青になった。
「あわわわわわ、どうしよう。」
「ああ、蓮子には霊感はそれほどないから心配しなくていいよ。」
「それもなんか・・・。」
ちなみに、メリーはあの能力があるだけに霊感もあるようだ。そのとき、廊下から足音が聞こえてきた。
「遅くなってごめん。」
ガラッと開けて入ってきたのはメリーだ。おっと、もう五時か。
「さてと、ここでくつろいだら奈良に向かうよ。今日は少しかかりそうな気がするからね。」



スキマを開け、奈良にやってきた。雪は思ったよりは積もっていなかった。
少し妖しげな鳥居がある。暗くてあまりよく見えない。
「きらちゃん、リボンについてる懐中電灯をつけて。」
「いいよ!」
きらちゃんが「ついて!」というと、ぴかっと眩しく光った。おかげで見えるようになった。
「こ、こんなに小さな物からすごい光が!?」
驚くのも無理はない。俺も驚いたから。一円玉サイズの半球から眩しい光が出てきたからな。
しばらく進むと、気配がした。洞窟の方からだ。
「・・・メリー、この洞窟の中に境界はある?」
「ええ、あるわ。」
”境界の可視変化”。たしかに境界がある。かなりすごい気配を感じるな。
「2人はそこで待ってて。お札を絶対に体から離さないようにね。」
「え、ええ。」
「うん。」
「3人とも、今日は少し長くなりそうだよ。いい?」
一応確認する。これだけの妖気の持ち主なら、一瞬で消すのは少し無理があるからだ。
「「うん!」」
「いいよ!」
境界の中へ入り込む。
そこは、がらんとした場所だった。
・・・目の前に、”何か”があった。黒い塊。闇の塊と言った方がいいか。闇の塊に一つだけ、目があった。
『お前は誰だ?』
「葉川裕海だ。妖気をつぶしに来た。」
闇の球体の塊で、単眼。あんな妖怪がいるのか。
『ふん、人間風情が生意気な口をたたく。これでも喰らってさっさと死ぬがいい!』
闇で構成された槍がいくつも飛ぶ。
「衝撃波の矢!」
姫雪が矢を放つ。すると、闇の槍はすべて衝撃波によって吹き飛んだ。相手がひるんだすきにスキマに入り、背後に回る。
『ちっ、なかなかやるやつだ。』
「俺の弟子だからね。」
『っ!?いつの間に!』
「遅い。」

神変「無限変幻 閃」

閃光のように強烈な光線が無数に放たれる。
『があああぁぁぁぁあああっ!くっ!』
闇の剣をこちらに向けてくる。それを扇子で払い、

変化「十字砲火陣」

スペカを唱えた。炎の陣が敵を囲い、その陣から砲火が飛び交う。陣はどこまでもついてくるので、地味に厄介だ。
『はあっ!!!』
しかし、それを闇の塊は一声で吹き飛ばした。なんて妖力だ。
『お返しだ。』
いつの間にか、俺の周りにはナイフが配置されていた。スキマで緊急脱出する。
「あぶないあぶない。」

遊戯「スキマ遊び」

スキマが無数に展開され、光線や弾幕が飛び交う。“速度の変化”で、目にも止まらない速さで光線や弾幕が相手を襲う。
しかし、すべて妖力によってはじかれた。
『ふん、私の妖力をこんなものだと思うな。』
視界を埋め尽くすほどのナイフが飛んできた。
「すべて吹き飛べ!」
扇子を最終レベルで仰ぐ。竜巻級の風が起こっているはずなのに、ナイフはびくともせずにこちらに向かっている。風を妖力で守っているようだ。・・・なんて強力なんだ。
「仕方ない。神力解放!」
体の全神力を解放する。すると、ナイフは次々と落ちていった。
『なんだと!?なぜ人間がそんな巨大な神力を持っている!?』
「一発で決めるよ。」

大変化「無と有の境界」

何もないところから突然爆発が起きる。
『がああぁぁぁああっ!?』
連鎖する爆発に巻き込まれ、黒い塊は消滅した。
「ふう、さてと。“浄化の変化”ここの妖気、消えて無くなれ!」
扇子を上に向けると、よどんでいた空気は元に戻った。



スキマを開き、寮に帰ってきた。今は8時だ。
「ふう、さて料理を・・・あれ?」
視界が暗くなり、意識が薄れていく。
「あれっ!?裕海様!?裕海様~っ!」
「わぁぁ~っ!裕海様~!」
「裕海様~っ!!」
「なに?何の騒ぎ・・・えっ?大変!裕海が倒れた!」
「みんな落ち着いて。疲れがたまって眠っただけよ。とにかく、布団に運びましょ。」



鳥の鳴き声が聞こえてきた。朝のようだ。・・・ん?俺、どうして眠ってたんだ?確か昨日、奈良に行って黒い塊を消して・・・それで寮に帰って料理を作ろうとして。そこからの記憶がない。ああ、そうか。神力を全開放したから反動が来たのか。そういえば、何かさっきから体を締め付けるような感じがする。布団をめくると、強く抱きついて寝ている姫雪と人形たちがいた。
「むにゃ・・・あっ!裕海様!もう大丈夫なの!?」
姫雪がほかのみんなを起こさないように小声で言った。
「ああ、心配かけちゃったな。ごめんね。」
淡いピンク色の紙をそっとなでると、涙目で「うん」と頷いた。



「今日は大学休みだ~っ!」
蓮子がはしゃぐ。今日は特にとらなくてもいい単位の授業ばっからしいので、大学に行かなくてもいいらしい。
「そういえば、この前飛ばした紙が一向に戻ってこないけど?」
「ああ、100キロ圏内ならすぐに来るんだけど、それ以外の範囲は少し時間がかかるんだよ。でも来るときはまとめて来るよ。まあ最悪でもあと一週間後ぐらいかな?」
メリーが質問し、それに答えた。100キロ圏内だから、どうやら少なくとも近畿には妖気はないようだ。
「まあ、気長に待つかな。さすがに昨日以上の妖気があるなんて考えられないし。」
普通ならそうだ。いくら霊的信仰を受けたからと言って昨日以上妖気が強くなるとは思えないのだ。
「それよりも、カフェ行こうよ!」
「かふぇ?なにそれ?」
姫雪は聞いたことのない単語に首をかしげる。
「カフェは、まあ喫茶店とほとんど変わらないね。」
「なるほど!」
人形たちが今、まだ寝ているので小声で納得した声をあげる。人形たちはどうやら俺が以前倒れたこともあり、かなり泣きじゃくっていたようだ。
「その子の耳と尻尾隠せる?」
メリーが姫雪を見て言った。
「耳は、猫耳型に編んだニット帽があるから大丈夫かな。尻尾は・・・俺が他の人には見えないようにしておくよ。」
「じゃあ決まりね。カフェでいろいろ話をしましょ。」
「決まり~っ!」
蓮子が大声で言った。
「「「し~っ!」」」
「・・・ゆうみしゃま~、もうだいじょうぶなの~?」
「だいじょうぶ~?」
人形たちが大声に反応して起きた。
「大丈夫だよ。」
「やった~!」
「ゆ~みしゃま~!」
人形たちが胸のあたりに飛びついた。
「今日は、あなたが住んでいる世界について話してもらおうかしら。ねえ、蓮子。」
「そうだね!じっくりと聞かせてもらうよ!」
今日はカフェでまったりと雑談や世間話をして終わるのだった。



紫「ゆっかりぃぃんっ!ぱわぁぁぁぁっ!はっ!2カ所目を滅したのね。いいこといいこと。」
藍「・・・紫様。」
紫「なにかしら?」
藍「妖気の状態を探る方法を見直してください。」
紫「え~?別にいいじゃない。」
藍「何か悪い物でも食べられてしまったのかと本気で思ってしまいましたよ。・・・それよりも、紫様が今朝に仰っていた通りなら、近いうちに・・・」
紫「ええ。近いうちに、ね。」



続く
 
 

 
後書き
40話です。
なんか、この章に入ってからギャグが少なくなってしまいました。なんとかしてギャグを入れていきたいです。
つぶやきでも言いましたが、pixiv様でこの小説のキャラのイラストを本日より投稿しています。ペンタブがない間は鉛筆で書くしかありませんが(泣)。
イラストの方も、よろしくお願いします。
※pixiv様でのニックネームは、フルーツキャットです。 
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