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東方変形葉

作者:月の部屋
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全国10カ所の妖気
  東方変形葉39話「清水寺の妖気」

 
前書き
レミリア「はあ~、大丈夫かなあ。」
咲夜「お嬢様、裕海が出かけてからもう17回もため息をつかれていますよ。」
パチュリー「仕方ないよ。妹様もレミィも裕海にすっごい懐いてたんだから。」
咲夜「・・・悔しいです。悔しいですが、何か惹かれるところがあるのは確かですね。」
パチュリー「そうね。」
魔理沙「本をパクリに来たぜ~!」
パチュリー「魔理沙も落ち着きないわね。咲夜、あの白黒鼠をつまみ出してちょうだい。」
咲夜「はい。・・・終わりました。」
パチュリー「はいご苦労さま。それにしても、どうして急に外の世界で妖気が異常に高まったのかしら?」
紫「それは私から説明しましょう。」
咲夜「つまみ出しますか?」
パチュリー「お願い。」
紫「まっ!?待ちなさい!外の世界ではね、妖怪などの“怪異”の存在は迷信となってしまってるけど、“心霊”の存在は未だに迷信じゃないのよ。それに目を付けた一部の妖怪が、長い間人間から恐れなどの霊的信仰を受け続けることで力を持ち、やがて邪悪な大妖怪になるのよ。」
パチュリー「・・・なるほどね。それでその大妖怪の有り余る妖気がにじみ出てその場所に染みついて、だんだんとその場所の妖気が高まって行くのね。そしてそれによって大量発生した霊によって人間を驚かせ、また霊的信仰がいっそう強くなる。見事な循環だわ。」
紫「そう。それを放っておけば世界を包むほどの妖気が充満し、人間は次々と倒れ、妖怪だけの世界となる。人間と妖怪の均衡は保てなくてはこの世界が成り立たなくなる。妖怪なんて、結局は人の心から生まれるものだからね。人間が現場に行ってもその怪異を目撃しないのは、怪異が顕界と幽界の境界に住んでいるから。境界は必ず空いているけど、人間には見えないからね。特別な力がない限り。」
 

 
朝。日が昇るとともに起きるのが習慣となっている。みんなはまだ寝ているようだ。
「・・・護符を用意しておこう。」
カバンから墨と紙を出し、“守護の変化”の護符を書く。これを身に着けておけば、妖怪などに襲われても必ず守られる。さらに、“作用の変化”で、襲った妖怪はしびれるようになっている。・・・ただし、これをつけていると戦う力が出なくなるから、俺はこれをつけない。
さて、朝ごはんを作るか。



「じゃあ、俺は外でここを見張ってるよ。」
大学内のベンチに座る。
「わかったわ。無理はしないでね。」
「そうよ。あ~あ、今日の講義も疲れるわねえ。」
2人が大学内に入って行った。
ほたるちゃんに、気配の域を大学の敷地内に張ってもらう。これで怪異は絶対に入られない。念のため、大規模な結界を張る。“排除の変化”で、不浄の者を排除する仕組みになっている。
『ねえ見て、あの子が噂の・・・』
『あっ、ほんとだ。秘封倶楽部に入ったらしい子だ。』
『彼も電波系かしら?』
・・・なにやら草陰から声が聞こえる。まあ、あっちは隠れているつもりなんだろうけど。清々しいほどにバレバレだ。
「ちょっとそこのあなた!」
小柄な女性に声をかけられた。ここの大学の生徒のようだが、新聞記者のような感じの雰囲気を出している。
「何か用?」
「あなたを取材したいの。いいかしら?」
面倒だ。気づかず例のことを話してしまってはとてつもなく面倒なことが起きる。新聞記者って、微妙な言葉のあやだって見逃さないからな。
「だめ。ほらあっちいった。」
雑にしっしっと追い払おうとする。しかし、頑なにそばを離れようとしない。
「いいえ、狙った獲物は逃さないのが新聞部の誇りですので!」
知るか、そんなこと。
「だめったらだめ。」
「くっ、だったら勝負をしましょう。」
勝負?
『おい、誰か止めにいかなくていいのか?あんな子供と、あの“万事千段”のあいつが勝負なんてしたら・・・』
草陰で誰かがつぶやいた。・・・ふうん、なるほど。暇つぶしにはいいかな。
「私が挑む勝負で、あなたが勝ち越しなら取材には応じなくていい。だけど、私が勝ち越したら取材に応じてもらう。最初はチャンバラよ!」
ぽんっと竹刀を渡される。
「行くわよ!やあああっ!」
すごい勢いで襲い掛かる。・・・意外だ。妖夢よりは腕はいい。しかし、
「甘いよ。もっとよく相手の動きを見ないと。えいっ」
「あうっ!」
ばしっと気持ちのいい音が響き渡る。
『う、嘘だろ!?あいつが一本取られた!?』
『あの子、何者なの!?』
「うう、まだ2本あるわ!えいやあああああっ!」
「だから甘いっての。ほら、こっち。」
バシッと竹刀の音が響く。
「いたあっ!?」
「2本、とったよ。続ける?」
まあ、いい運動にはなったな。
「ぐうう、チャンバラはあなたの勝ちでいいわよ!次は50メートル走よ!」
・・・くそう、地味に疲れるやつを。
「そこにいる君!隠れてないでタイマーを持ってきなさい!」
『は、はいい~っ!』



『位置について~、よ~い。』
ドン!という掛け声とともに走り出す。あ~、走るのはあまり得意じゃないんだよ。体力はあるけど。結局一秒ぐらいの差で負けた。
「ふふん、私の勝ちね!さあ、次よ!次はテニス!」
まだやるのぉ~?スキマの中にいる姫雪と人形たちは楽しそうに見ているが、こっちはかなり疲れる。
「そいっ!」
ボールが放たれる。・・・テニスって、読みやすいね。
「ちょっと手加減はなしで行くよ。『威力の変化~鬼~』」
ラケットで思いっきりボールをたたく。すると、ボールは凄まじい勢いで飛んでいく。
「きゃっ!?何よ今の速・・・さ?」
新聞記者の後ろでは、地面が凹んでいた。
「あちゃ~、やりすぎたか?やっぱ加減はした方がいいか。死人が出るな。」
「・・・!?」



その後、頭脳戦に切り替えられた。囲碁、将棋、チェス。全部勝った。読みが足りないな。
「・・・あなた、何者なの?」
「ただの人間だよ。」
俺はそういいながら周りを見渡す。誰も見ていない。この人も目を地面に向けている。よし、今がチャンスだ。こっそりとスキマを開き、その中へ入る。
「くっ、こんなことは初めてだわ。せめて写真だけでも・・・あれ?いない。」



「はあ、疲れた。」
「裕海様、お疲れ様!すごかったよ!」
「すごかった~!」
「裕海様をもっと尊敬しちゃいました!」
・・・なんか、たちの悪い妖怪と対峙するより疲れた気がする。



「おわったよ~!ってどうしたの!?」
「・・・新聞記者に追いかけ回されて疲れただけだよ。」
あの後再びベンチに戻ってくつろいでいたら、なんかカメラを構えてきたから全速力で逃げた。今度は“速度と停滞の変化”を使って。それでも追ってきたから、“睡眠の変化”で眠らせておいた。一時間ぐらいで起きるだろう。
「それは災難ね。ここの新聞記者はたちが悪いから気をつけた方がいいわね。」
「・・・それは先に言って。」



「さて、疲れも癒せたからそろそろ行くよ。今日は清水寺だよ。ついてきて。」
「秘封倶楽部史上最大の活動が今!幕を開けようとしている!」
「蓮子、ノリノリね。」



清水寺。観光名所として知られている。しかし、ここにはとてつもない量の妖気と気配が感じられた。
「・・・2人とも、これをしっかり持ってて。これを持っていたら絶対に命は守れる。」
蓮子とメリーは、きゅっと握りしめた。最も気配がする「音羽の滝」と呼ばれるところに行く。
「・・・メリー、何か見えるかい?」
「ええ。あそこに暗くて青い境界が・・・」
やはりか。“境界の可視変化”で俺や蓮子にも見えるようにする。すると、確かに青くて暗い感じの境界がある。
「こ、これがいつもメリーが見ているもの・・・。なんて恐ろしいの。」
「とにかく、この中へ入るよ。きらちゃん、ほたるちゃん、姫雪。いいか?」
「「うん!」」
「準備は大丈夫だよ。」
「よし、入るぞ!」
そいっと境界の中へ入る。危険なので蓮子とメリーは待機してもらう。
すると、目の前には、刀を構えた武士の霊と、農具を担いだ町民の霊がいた。
「悪いけど、お前たちと遊んでいる暇はない。散れ!」

神変「無限変幻 閃」

無数の光線が閃光のように走る。“威力の変化”を最大限までいじっているので、触れるだけで消滅してしまう。
『『『『ぎじゃあぁぁぁぁああぁぁああぁあぁぁ!』』』』
一帯の霊は消滅した。
『ちっ、何者だ!』
大声で叫ぶ妖怪の姿。それは、鈴奈庵の本で見たことがある妖怪だった。
「お前は・・・酒呑童子か。京の都で暴れまわったという。」
『ああ、その通りだ。貴様は何者だ!』
「俺か?俺はな、幻想郷の守護者代理の葉川裕海だ。」
『幻想郷だと?はははっ!あんな忘れ去られたどうしようもない者たちが集う駄目な土地か!』
聞き捨てならないことを聞いた。・・・駄目な土地だと?
『あんな下らん世界の住民が俺を倒せるわけがないだろう!』
「ふん、くそみそ言ってくれちゃって。地獄の奥で眠るがいい、酒呑童子!」
結界を張る。“痺れの変化”の結界だ。一瞬で消そうと考えていたが、幻想郷を侮辱したならその分だけ苦しみを味わってもらう。ちなみにこの結界はカモフラージュである。
『ふん、こんなものが効くとでも・・・っ!?』
気が付いたようだな。“神経毒の変化”の結界が混ざっていることに。
『ちいっ、小賢しい真似を・・・』
酒呑童子は腕に力を込め、妖気の塊の光線を放ってきた。普通の人間ならかすっただけで死ぬほどの強さだ。
しかし、俺には通じない。“無の変化”で妖気の光線を消す。
「姫雪、滅の矢!」
「うん!」
ぴゃっと矢が放たれる。見事に酒呑童子の額に刺さった。
『が・・・あ・・・こんな人間に・・・やられるとは・・・』
がくっと倒れ込み、酒呑童子は灰になった。
「“浄化の変化”。異常に充満する妖気よ、消えてしまえ!」
扇子を上に向ける。すると、さっきまでよどんでいた空気は晴れた。



「ふう、疲れた。」
境界から出た。そして、
「“開閉の変化”閉じろ、境界。」
境界は綺麗に閉じられた。
「「やった~!」」
「一か所終わった~!」
人形たちと姫雪は安堵の表情を浮かべた。
「すごいね!あんな量の霊を一瞬で片づけるなんて。」
「しかも、かなりやばそうな妖怪を余裕で倒していたわね。」
「あれ?見てたの?」
2人に少し怒ったとことか見られたかな?いやあ恥ずかしい。
「・・・あなた、本当に人間なの?」
メリーがつぶやいた。
「ちょっと寿命がなくて、体に神が封じられているだけのただの人間だよ。」
そのとき、雪が舞ってきた。その日、近畿を中心とする全国のほとんどの山間部では大雪特別警報が出たそうだ。春になるまでに帰れるだろうか。
体が冷えつくようなこの夜、一か所の妖気主退治は終わったのだった。



「・・・あら、一か所の妖気が消えた。うまくやってるみたいね。」
10か所の妖気が外の世界であふれていたが、裕海は今日そのうちの一つを滅したようだ。今日は雪がやけに多く降っている。
「今日も雪がたくさん降っていますね。」
「そうね、裕海は大丈夫かしら。」



そのころ、ある場所でこんな話が持ち上がっていた。
?1「おい、そろそろ例の計画を立てるぞ。」
?2「ああ。ついにこの時が来たな。我らが幻想郷を支配するときが。」
?3「実行は二か月後だ。それまで策を練るぞ。」



続く
 
 

 
後書き
39話です。
早速一か所終わりました。次は奈良県の白高大神です。ここはかなりやばいと評判のある心霊スポットらしいです。 
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