久遠の神話
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最終話 あらたなはじまりその十
「あの、確か」
「ええ、戦いは終わってね」
そしてというのだ。
「消えるわ」
「これからですか」
「私達は戦いの中で作られたから」
「その戦いが終われば」
「ええ、消えるわ」
そうなるというのだ。
「間もなくね」
「そうですね」
「そうよ、けれどその前にね」
消える、その前にというのだ。
「貴方に会いたかったのよ」
「それで来てくれたんですね」
「そうよ、よくやったわ」
穏やかな声でだ、スフィンクスは上城に告げたのだった。
「これでもう戦いはね」
「終わってですね」
「皆解放されたわ」
「永遠に戦い続ける運命から」
「そう、誰もがね」
そうなったとだ、スフィンクスは言った。
「あの方もね」
「あの方といいますと」
「セレネー女神もよ」
戦いを行わせていただ、彼女自身もだというのだ。
「解放されたわ」
「この戦いから」
「あの戦いで最も囚われていたのはあの方だったわ」
「心がですね」
「そう、愛する人とどうしても永遠にいたいという想いに」
それに囚われていたというのだ
「戦いの中にね」
「それから解放されたと」
「君によってね」
「ですがあの方は」
上城は自分を褒め称えるスフィンクスに対して答えた。
「もう」
「やがて帰って来るわ」
聡美達と同じことを言う、しかし彼女の言葉は聡美達のそれとは違い前向きだ。その言葉を言ってだった。
そうしてだ、こうも言ったのだった。
「待つだけよ」
「銀月さん達がですね」
「月の女神達は二人で一つだから」
「やがてはですか」
「また一つに戻るわ」
そうなるというのだ。
「必ずね」
「そうなのですね」
「ええ、それは長い時がかかるけれど」
セレネーにとっても聡美達にとっても、というのだ。
「それでもね」
「やがてはですね」
「あの方はご自身を見詰めて反省されてね」
「そうしてですね」
「アルテミス女神達のところに戻って来るわ」
「そうですか」
「貴方の心配はね」
セレネーに対するそれは、というのだ。
「幸せな結末で終わるわ」
「それは何よりです」
「そしてね」
「そして?」
「私もね」
スフィンクス自身もだというのだ。
「これでね」
「これで、ですか」
「消えるわ」
そうなるというのだ。
「長い戦いだったけれど」
「これで、ですね」
「もう」
「戦いが終わったから」
「それでなのですね」
「もう」
「怪物は戦いの中で生きるものよ」
それ故にとだ、スフィンクスは賢者を思わせる静かであり確かな声で上城と樹里に対して話すのだった。
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