久遠の神話
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最終話 あらたなはじまりその十一
「その戦いが終わったから」
「だからこそ」
「これで消えるわ」
そうなるというのだった。
「もうね」
「それでは」
「さよならと言っておくわ」
静かな声のまま言うスフィンクスだった。
「そして有り難うと」
「有り難う、ですか」
「戦いを終わらせてくれて私も眠れるわ」
「だからですか」
「私も救われたわ」
戦いが終わった、このことによってというのだ。
「だから最後にもお礼を言わせてもらったのよ」
「そうだったのですか」
「ではね」
最後の礼を述べた、するとだった。
スフィンクスの身体が次第に消えていった、そうしてだった。
そのまま姿を下から上に、影も薄くなりそうして完全に消え去った。気配も完全に消え去ってしまった。
上城達はその全てを見送った、そのうえで。
樹里がだ、上城に対して言った。
「終わったのね、スフィンクスさんの戦いも」
「そうだね、ずっと僕達を導いてくれたけれど」
「最後に。上城君にお礼を言ってくれたわね」
「うん、けれどね」
「けれど?」
「お礼を言いたいのは僕だったよ」
こう言うのだった。
「ずっと導いて教えてくれたから」
「上城君もね」
「戦いを終わらせられたから」
それでだというのだ。
「本当に感謝しているよ」
「そうなのね」
「有り難うございました」
先程までスフィンクスがいた場所を見詰めてだ、上城もまた礼を述べた。
「これまでずっと」
「そう言うのね」
「うん、じゃあね」
「これからね」
「道場に行こう、もういい時間だよね」
「ええ、そろそろね」
「それならね」
時間的にもいい、それでだと言う上城だった。
「行こう」
「そうね、それで」
「中田さんと稽古をしよう」
剣道のそれをというのだ。
「道場で」
「そうね、じゃあ行きましょう」
樹里も言葉をかけた、そしてだった。
二人でだ、道場に向かって。
遂にその道場の前に来た、上城はその道場の扉を開けて中に入った。するとそこにはもう彼が立っていた。
道着は着ていない、しかし手には竹刀がある。その竹刀を左手に持ちながら二人に顔を向けて挨拶をした。
「こんにちは、だな」
「はい、こんにちは」
「お邪魔します」
「入ってくれよ、じゃあ着替えてな」
「そうしてですね」
「今から」
「稽古しような」
剣道のそれをというのだ。
「準備体操の後で」
「そうしましょう、それと」
ここでだ、上城は道場の中を見回した。すると左の方にだった。
聡美がいた、智子と豊香も共にいる。そして。
もう一人いた、その端整で明るい顔立ちの青年を見てだ、上城は聡美に尋ねた。
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