| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十八話 道場にてその八

 上城は防ぎ続けている、その二人のうちの彼を見ての言葉だ。
「ああしてね」
「じゃあ上城君は一人では」
「あそこまではね」
 それはというのだ。
「闘えなかったわ」
「そうですか」
「人も神も一人ではその力は限られているわ」
「神様もですか」
「はい、そうです」
 今度は豊香が答えてきた。
「私達にしても三人いてこそです」
「それでなのですか」
「お姉様に対することが出来ています」
「アフロディーテ女神やアポロン神の力も借りたわ」
 二人の名前はだ、智子が出した。
「そうしてね」
「本当に多くの神々が力を合わせて」
「そう、お互いに信じてね」
 そのうえでだというのだ。
「力になっているのよ」
「そうなのですね」
「そうです、ですから」
 それでだというのだ、豊香も。
「貴女は最後の最後までです」
「上城君を信じることですね」
「それが大事です」
「ではこの闘いだけでなく」
「戦いが終わっても」
 それからもだというのだ。
「そうされて下さい」
「わかりました、じゃあ私は」
 上城を信じると誓うのだった、そして。
 上城をあらためて見る、すると彼はというと。
 まだ防戦に務めていた、そうして。
 中田の攻撃を防いでいた、中田の攻撃は果敢だ。
 だが、だ。その中でだった。彼は少しずつだが。
 動きが鈍くなっている様に見えた。しかしそれは。
 上城もだった、彼も力を使っているからこそ。
 お互いに疲労が見えてきた、それを見てだった。
 智子は今いる面々にだ、こう言った。
「そろそろよ」
「勝負がですね」
「決まりますね」
「ええ、そうなるわ」
 その通りだとだ、聡美と豊香の問にも答える。
「二人共今まで攻勢と防戦に徹していたけれど」
「それがですね」
「間もなく」
「動くわ」
 そしてだった。
「そのうえでね」
「闘いが終わる」
「そうなりますね」
「ええ、間違いなくね」
 こう言うのだった、それは断言だった。
「そうなるわ」
「そうですか、それでは」
「いよいよ」
「勝負は一瞬よ」
 それで決まるというのだ。
「ではね」
「それでは」
「勝負を見守りましょう」
 二人は智子の言葉に応えた、そして。 
 樹里もだった、二人の闘いをじっと見守っていた。今も上城を信じながら。
 上城は今も防いでいる、その彼に対して。
 中田は一旦後ろに跳んで間合いを開けた、そうして。
 両手の剣で乱舞の様に斬りつけてきた。その攻撃も防ぎに防ぎ。
 そしてだった、その攻勢が終わった時に。彼はこの闘いではじめて攻撃を繰り出した、氷の剣を一閃させたのだ。
 中田はその攻撃を今度は彼が防いだ、右手の剣の炎で受け止めたのだ。
 そうしてからだ、彼は確かな顔で上城に言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧