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久遠の神話

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第九十八話 道場にてその七

「中田さんも」
「彼も」
「倒しません」
 それも間違いないというのだ。
「絶対に」
「彼を信じているのですね」
「はい」
 はっきりと答えた樹里だった。
「信じています」
「そうですか、貴女は強いですね」
「私が強いですか」
「はい、強いです」
 にこりとしてだ、樹里に言った言葉だ。
「貴女は」
「そうでしょうか」
「人を信じられるということは」
 そのことがだというのだ。
「強いということなのです」
「そうなのですか」
「強く信じられれば信じられるだけ」
 それだけ、というのだ。
「人は強いのです」
「信じるということはですか」
「それも誰かを」
 自分以外の者をというのだ。
「それが出来るということは」
「強いんですか」
「最初はです」
 その樹里を見てだ、聡美は語る。
「貴女について知りませんでした」
「そうですね、私も銀月さんのことは」
「はい、知りませんでしたね」 
 お互いに初対面だった、それで知っている筈がなかった。それで聡美もこう樹里に答えたのだった。
「それは当然ですね」
「そうですよね」
「しかし。貴女を見ていて」
 樹里、彼女をだというのだ。
「わかりました。貴女は強い人です」
「人を。上城君を信じられるから」
「強いです、その強さなら」
 どうかというのだ、樹里にその強さがあるのなら。
「貴女は上城君を守れます」
「私が上城君をですか」
「そうです」
 その通りだというのだ。
「そうなります」
「私は上城君に」
 守ってもらっていると答える樹里だった、実際に彼女はそう思っている。しかし聡美はその樹里にさらに言うのだった。
「それと共にです」
「私が上城君をですか」
「そうです、守っているのです」
「私は戦えないですけれど」
 眉を曇らせてだ、樹里は聡美にまた答えた。
「そうしたことは」
「守るということは心です」
「心ですか」
「そうです、上城君を信じ」
 それも強くだ、それでだというのだ。
「その信じる心が彼を守っています」
「自覚はないわね」
「今言われたばかりです」
 樹里は智子にも答えた、実際にそうだと。
「本当に」
「そうよね、けれどね」
「このことはですね」
「ええ、アルテミスの言う通りよ」
 聡美、彼女のだというのだ。
「貴女は彼を守っているわ」
「信じることで」
「だから彼も闘えるのよ」
 今中田と闘っているその上城を見ての言葉だ。何時しか間合いは詰められ中田は攻撃を続けている。そして。 
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