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久遠の神話

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第九十八話 道場にてその九

「いい攻撃だね」
「有り難うございます」
「今まで俺の攻撃を防いでいたのかは」
「機を伺っていました」
 それ故にだというのだ。
「だからです」
「そうだよな、やっぱり」
「僕は一刀です」
 中段に構えている、その剣は明らかに一本だ。
 だが、だ。中田は両手にそれぞれ持っている。上城はこのことから言うのだ。
「しかし中田さんは二刀」
「剣の数はこっちの方が多いよな」
「そして中田さんの攻めは上手です」
 攻め上手であるのだ、彼は。
「ですから」
「迂闊に攻めずになんだな」
「そうです」
 それでだというのだ。
「今まで防いでいました」
「まあな、君はな」
「僕はですか」
「守りが上手だからな」 
 攻め上手である中田に対してだ、上城はそうだというのだ。
「だからそっちの方がいいな」
「そうなりますね」
「ああ、それでな」
「ここは」
「守りが上手なのはいいさ」
 このこと自体はというのだ。
「攻防共に重要だからな」
「それで、ですね」
「そうだよ、ただな」
「ただ?」
「それに加えてな」
 どうかとだ、中田は微笑んで上城に話すのだった。その笑みは闘いの中で見せる笑みではなかった。
「攻めもな」
「身に着けることですか」
「そう、それなんだよ」
 まさにというのだ。
「じゃあいいな」
「わかりました、それじゃあ」
「ああ、攻めてみるんだよ」
 今実際にというのだ。
「ここでな」
「わかりました、それじゃあ」
 上城は中田の言葉に応えた、そのうえで。
 その氷の剣で攻撃に掛かった、今度は彼が攻め中田が守る番だった。上城はその中においてだった。
 何かを見た、それで攻める動きがだった。
 次第にだ、智子がこう言うまでになった。
「よくなってきているわね」
「はい、攻めの動きが」
「出て来ていますね」
 聡美と豊香はここでも智子に応えた。
「これまで守りにばかり出ていましたが」
「ここは」
「元々攻めもよかったわ」
 智子は上城の攻めについてこう評した、これまでの彼のそれも。
「的確かつ慎重でね」
「そうですね、ですが」
「炎の剣士と比べると」
 劣っていたというのだ、中田に比べて。
「それで今も防戦でしたが」
「これまでは」
「それがです」
「今一太刀ごとに」
 変わってきていた、いや加わってきていたのだ。
 上城に攻めが、剣の流れが変わってきていた。
 中田の二刀流とは当然動きが違う、だが。
 その攻め方は中田のものだった、そのうえで。 
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