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久遠の神話

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第九十八話 道場にてその六

「凄いものだよ」
「そうですか、けれど」
「けれど?」
「これだけの攻撃は」
 防ぎつつだ、上城は言うのだった。
「僕もこれまで」
「なかったっていうんだな」
「はい、とても」
 なかったというのだ、実際に。
「ここまでは」
「そうか、けれどな」
「この攻撃もですね」
「ああ、最初に出しただけにな」
 最初に出すには理由がある、その理由はというと。
「もっと凄いのがあるからな」
「だからですね」
「さて、じゃあな」
 こう言ってだ、中田は。
 その突きによる炎の矢の連射を止めた。そのうえで。
 今度はだ、二刀の剣の炎を倍以上に大きくさせて。
 間合いを詰めた、そこで一気に斬った。
 上城は今度も防ぐ、二刀流で遠くから攻めて来る炎の剣擊を。
 今度も激しい蒸気が続いて起こる、聡美はその蒸気を見て樹里に言った。
「あの蒸気が」
「そのままですね」
「はい、この戦いの強さを表しています」
「炎と氷の攻防ですね」
 樹里はその激しい闘いをこの言葉で表現した。
「まさに」
「その通りです」
「あの、今上城君は」 
 彼はだ、どうかというと。
「防いでいますね」
「そうですね、中田さんの攻撃が激しく」 
「攻撃する余裕がありませんね」
「そうです」
「ですが」
 それでもだった、樹里は防いでいる上城のその目を見た。そのうえで聡美に対して確かな声で言うのだった。
「負けていません」
「そうですね、確かに」
「ですから」
 それでだというのだ。
「時が来れば」
「彼はですね」
「反撃します」
 それに転じるというのだ。
「ですから」
「上城君を信じているのですね」
「上城君は負ける人じゃないです」
 確かな声でだ、樹里は言い切った。
「決して」
「何に対してですか?」
「自分が誓ったことに」
 それにだというのだ。
「負けません」
「約束は守る人ですね」
「必ず、ですから」
 それ故にだというのだ。
「上城君は反撃に転じて」
「そしてですね」
「勝ちます」
 中田にも誓ったことにもだというのだ、つまり自分自身にも。
「私はそう信じています」
「勝ちますね」
「はい、そして」
「そしてですね」
「勝つだけでなく」
 それだけでなく、というのだ。 
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