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FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~

作者:ラドゥ
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第二話『気づいたら奴隷ライフ』

 
前書き
今回は原作キャラが登場します。ヒロインの一人になると思います。 

 


アースランドのカ=エルム地方の近海のとある島にその塔の姿はあった。


未だ建設途中のその塔の名は『楽園の塔』。別の名を『Rシステム』といい、死者を蘇らせる魔法と言われている。


なぜそのようなものがここにあるのか。それは黒魔術を信仰するとある魔法教団。彼らが自分たちが神として信仰する伝説の黒魔導師『ゼレフ』この地に建設を開始したのだ。


しかしそのようなことを政府や『評議員』が許すはずもない。ただでさえこのRシステムというものは、人道に反する禁忌の魔法とされているのに、彼らの生き返らせようとしている人物は、アースランドの歴史上でも最悪の魔導師といわれた危険人物である。どう考えても発覚した時点で阻止されるに決まっている。


そのため教団は評議員らにばれないように、アースランドの各地からさらってきた人々奴隷にして、密かに塔の建設にあたらせていた。


その奴隷の中にその少年の姿があった。


少年の名は“ユウト・ベラトリックス”。この物語の主人公である









サイド:ユウト

「ほら、しっかり働けこのカスどもが!!」

ピシイィィイン!

手に持っているムチを地面に打ちつけながら奴隷(おれ)たちを脅すその神官(ぶた)の声に思わず舌打ちする俺。


「いい気なもんだぜ。自分はふんぞり返っているだけのくせによ」


そんな俺の毒づく声に、それをたしなめる声が。


「おいユウト、気持ちはわかるが耐えろ。やつらに聞こえたら面倒だぞ」
「わかってるよジェラール。だからこうして小声で話してんじゃねえか」


どうもお久しぶりの人はお久しぶり。ユウト・ベラトリックスです。今年でハ歳になりました。


ちなみにこの俺と一緒に石の建材を運んでいる少年の名前は“ジェラール・フェルナンデス”。この楽園の塔に同じ時期にやってきた俺の友人の一人。この年齢にしては精神年齢が高いので、一番うまがあう存在だ。


さて、俺がなぜこんなところで建材を引きづっているのかと言うと、それは単純なことで、どうやら人攫いにあってしまったらしいのだ。

いつものようの釣りに出かけようと村をだたあたりから記憶がなく、気づいたらうす暗い部屋で転がされていたところから待ち伏せされていたのかもしれない。


それから俺はこの塔に連れて来られこうして同じように連れてこられた他の奴隷の人たちと一緒にこうして働かされているというわけでいる。


・・・どうしてこうなったんだろうなあ。俺はただ第二の人生を有意義にすごしたいだけなのに。


「おいっしょっと!ふう・・・」

運んできた最後の石材を集積場所に置き、一息つく。


やれやれ。慣れてきたとはいえ、さすがに八歳の体でこの労働はきついな。とそこへ、


「きゃあ!?」

ガシャアァアアン!!

「あん?」

可愛らしい悲鳴とともになにかが崩れる音がしたのでそちらをむくと、辺り一面に広がる建材と、そのなかで尻餅をついている俺と同じくらいの女の子がいた。どうやら積まれていた建材を崩してしまったようだ。


「貴様!なにをやっている!!」
「ヒッ!?」


それを見た監視役の神官が怒鳴りながら少女に近づき、少女がその神官の形相に小さく悲鳴をあげた。


そんな少女に神官はムチを振りかざす。


ピシィ!
「ッ!?」


突然の痛みに少女は顔を歪めるが、神官はそんな少女の様子に構わず、さらに打ち続ける。


ピシィ!ピシィ!ピシィ!

「なにをやってるんだ貴様は。貴様のせいで儀式に遅れたらどうする!!」

ピシィ!ピシィ!ピシィ!

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


少女は泣いて何度も謝るが、神官はムチを振るうのをやめない。神官の顔にはどこか少女にムチを思う存分振るうこの状況をどこか楽しんでいるふしを感じられた。


・・・神官が仕事に失敗した奴隷に懲罰と称してムチを振るう。ここではさほど珍しくない光景だった。

絶対的上位にいる神官に奴隷は抗う術はない。なので年端もいかない少女が非道な暴力に晒されても助けるものはいず、神官の気がすむのを待つしかない。


なので誰も少女を気にするものはいなかった。あたかもそれが当然の光景のように誰も見ようとしない。


俺も普段なら彼らと同じように振舞っていただろう。下手に助けたりしたら自分に被害がきてしまうこともあるからだ。


だがそのときは違った。


なぜなら恐怖に彩られた少女のその顔が、あいつ(・・・)の顔と重なってしまったから。


(マリア・・・)


もう会うことのできない、前世の妹の顔と。

そう思ったらもう我慢することができなかった。

「・・・ああ、くそッ!」

俺は走ってその少女と神官の間に入り、神官のふるうムチをその背中で受け止める。


「ッ~~~~!?!?!かはッ!?」


念のために体の中で一番頑丈だといわれる背中で受けたのだがやはり痛い物は痛い。歯を食いしばっても、思わず口から苦悶の声が漏れる。


やっぱりこればっかりはなんどうけても慣れねえな。まあ慣れたくはないが。


「貴様なんのつもりだ!?」


まあこの神官(ぶた)が怒るのも無理はないだろう。むこうからしたら自分たちより格下の存在である奴隷が神官である自分のやることを邪魔したのだから。


俺はそんな神官の険しいまなざしを無視して口を開いた。


「申し訳ありませんが神官様。こいつはまだ俺と一緒に仕事をしなければいけないのでここらへんで許していただけませんか?」
「なに・・・?」
「それにこの場をこのままにしておくと仕事に差し支えると思いますが?」


そういってあたりを見回す俺。そこには少女が倒してしまった建材が散らばっていた。これをこのままにしておいたら仕事の邪魔になり塔の建設の遅れとなる。言外に「それでもよろしいのですか?」と尋ねると、言葉に詰まる。さすがに教団の目的である塔の建設の遅れを指摘されてはこれ以上懲罰を加えるわけにもいかない。


それを理解した神官は苦々しい顔をしながら「ならばさっさと片付けろ!」と言い捨ててその場を去って行った。


それを見送ってた俺は、こちらを呆けたような表情で見ていた少女に近づいて手を差し伸べる。


「立てるか?」
「え?あ、うん・・・あ!」


少女は一瞬戸惑いながらも俺の手を握って立ち上がる。が、まだ先ほどのムチ打ちのダメージが抜けきっていなかったのか、足元をふらつかせる。


「おっと」


俺はこちらに倒れこんできたので、少女が転ばないように抱きとめる。


「大丈夫か?」
「・・・・・・」


そう少女に聞くがなぜか返答がない。見るとなぜかぼーっとしているようだ。

なので今度は頬を軽く叩いてこちらに意識をむけさせながら「大丈夫か?」と聞いてみる。するとやっと気づいたようでこちらを向いたかと思うと、なぜか今度は顔を真っ赤にして「ご、ごめんッ!」と言い、急いで俺から離れた。

俺はそんな少女の様子に首を傾げながらも口を開く。


「大丈夫ならさっさとこいつら片付けちまおうぜ?でないと他の神官どもにもなんかされるかもしれねえし」
「う、うん!そうだね!」


未だ少女は顔が赤いままだったが、俺は気にせず作業にはいったのだが、


(見られてる。めっちゃ見られてるよ・・・)


作業に入ってから少女は何回もこちらのことをちらちらと盗み見てきた。何回かはなにかを言おうと口を開いたが、結局何も言わず作業に戻るの繰り返しとなっていた。
最初は気にしないようにしていたが、さすがにこの短時間に何度も見られていたら作業に集中できないので、とりあえずこちらから声をかけてみることにする。


「なあ」
「!?な、なに?」

いや、そんなびくつかんでもと思いながらも俺は言葉を続ける。


「さっきからなにか言いたそうにこっち見てたけどどしたの?」
「え、えっと…お礼がいいたくて」
「お礼?」

俺ってなにかお礼言われるようなことしたっけ?心当たりがなくて首を傾げる俺に、少女は言葉を続ける。


「ムチで打たれていたのを助けてくれたじゃない」
「…あー、なるほどね」


そういやあれって世間一般では助けたうちにはいるんだよな。感情的に行動した結果だったから助けたとかそういう認識なかったなあ。


「別に気にしなくても良いぜ。お礼を言われたくて助けたわけじゃないし」
「でも・・・」
「それに俺たちはこれからもここであいつらに使われて生きなくちゃなんねえんだ。少しでも助けあわなくちゃな。だろ?」


俺がおどけたような仕草でそう言うと、少女はそれがおかしかったのか「ふふ、そうだね」と笑みを浮かびながら答えた。


へえ・・・。


「お前さ」
「?なに?」
「笑うと結構可愛いな」
「へ……?」


少女は最初なにを言われたかわからなかったみたいだが、なにを言われたのか理解すると、一気に顔を真っ赤に沸騰させた。


「な、なな、急になに言ってんの!?」
「?別に普通に思ったこと言っただけなんだが?」


なんでこいつこんな興奮してんだ?じょうちょふあんていってやつか?


……あ、そういえば。


「なあ?」
「こ、今度はなに?」
「いや、大したことじゃないんだけどお前なんて名前なんだ?」
「……は?」

いや、は?じゃなくてさ。


「名前だよ名前。まだ聞いてなかったろ?」


俺のその言葉に少女はほっとしたような、それでいてどこか残念そうな顔で「な、なんだそんなことか」とつぶやく。

いったいどんなことだと思ったのか聞きたいところだが、聞いたらなんか怒られそうな気がしたのでやめておくことにした。


とりあえずこちらから名前を聞いたんだからこちらから言うのが筋だろうと、俺は少女に手を差しのべながら口を開く。


「俺の名前はユウト・ベラトリックス。ユウトでいいぜ」


少女は未だ頬を赤くしたまま、どこか恥ずかしそうに俺の手を握り返した。










「わ、私の名前はエルザって言うの。よ、よろしくね?」  
 

 
後書き
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