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FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~

作者:ラドゥ
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第一話『転生』





(どういうことだ・・・?)

俺、夜神悠斗は現在自分がおかれている状況に、困惑を隠せないでいた。


俺はあの通り魔から妹を守るために死んだはず。なのに俺の目の前には天国でも地獄でもない。ただ見たことのない天井が広がっていた。


とりあえず周りの様子を確認してみる。


そこにはタンスやテーブル。本棚に鏡台など、ごく普通の家具が並んでいた。どうやらどこかの部屋のようだ。


(てっきりあれから病院に運び込まれたのかと思ったが、この様子じゃ違うようだな・・・)


汚いわけではないが、少なくとも病院の患者が運び込まれるような部屋でもなかった。次に体の調子を確認しようと自分の体を動かしてみるが、


(あ、あれ?なんか動きにくいな?)


体に力を入れてみるが、思ったようになかなかうまく動かせない。

だが全く動かせないというほどではないのでなんとか手を持ちあげてみる。

視界に小さくかわいらしい手が映る。・・・あれ?


(なんか・・・小さすぎねえか?)


まるで赤ん坊の手のようなサイズなんだが。


(・・・ひょっとして)


おそるおそるいつもより重く感じる頭を動かして自分の体を確認してみる。

そこにはいつもの空手で鍛えた高校生にしては鍛え上げられた体ではなく、








オムツをはいた赤ん坊の体があった。


・・・な、


「ばぶばぶばあああああああああああああああああああああああ!?!?(なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ!?!?」


な、なんだこれ!?俺赤ん坊になってる!!え、なに?どうなってんの?俺、コ〇ン君みたいにアポトキシンな毒薬なんて飲んだ覚えないんですけど!?

お、落ち着けー。落ち着け俺。そうだ。この体はきっと俺の体にかけてある掛け布団の模様かなんかで本当の俺の体はこの下にあるとかだきっと。


それを証明するために腹に力を込めて動かしてみる。

腹が膨れるように動かすために息を思いっきり吸い込んでみる。



すー、ふん!




ぽん!


俺が息を吸い込み腹に力をいれると、先ほどから視界に映っている赤ん坊の体の腹がそんな擬音とともに突きだされる。


うん。思ったようにちゃんと腹が膨れたね。


・・・やっぱり俺の体だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?


あまりの状況に一気にメダパ二状態に陥る俺。

しょうがないだろ!?こんな状況に陥って混乱しないほうがどうかしている!!


(いったいなにが起こったんだッ!?)

とそこで、


「あれ?起きたのユウト?」
「ばぶ?」

見知らぬ声が聞こえてきたのでそちらを向くと、そこには巨大な体の女性が俺の顔を覗きこんでいた。









「ば、ばぶ?(どなた?)」







~それから六年後~








「それじゃあ、遊び行ってくるよ母さん!」
「気をつけていってくのよー!」

それにはーいと子供らしく返事を返し、俺はこの世界(・・・)での自分の家を飛び出した。




あ!どうも、お久しぶりです皆様。夜神優斗改め“ユウト・ベラトリックス”です。今年で六歳になりました。



















結論から言うと、俺はやはり死んでしまったようだ。



なぜわかったのかというと、俺が目覚めたときに俺の顔を覗き込んでいたあの女性。あの女性の言動から俺の身に起こった現象を理解することができたからだ。





彼女の名前は“ミラ・ベラトリックス”。


艶やかな黒髪を持つその女性はどうやら俺のことを自分の息子だと思っていることがわかった。

それがわかったとき、俺は彼女がなんでそんな考えを持っているのかわからなかった。

俺の母親は今年で五十近くなる中年というのも無理がある年齢。よく若く見られると近所で評判の母親だったが、それでもせいぜい三十代後半にしか見えない。

しかし目の前の女性は明らかにそれより下の年齢。下手したら十代後半にも見える若さだった。


俺はわからなかった。なぜ目の前のこの年若い女性が俺の母親を名乗るのかと。


(死んだと思ったら見知らぬ部屋にいて・・・見たことない人が俺の母親?なんだこの状況。まったく意味分からんぞ?・・・いや、待てよ?)


そこで俺は気づく。自分が置かれたこの状況。それと似たような状況を見たことがあることに。


(そうあれは夏休みも終盤にさしかかったころのことだった)


俺はその日、あまりにも暇だからなにか面白い物でもないかとネットの海をさ迷っていた。なにか暇つぶしの道具でも見つかればいいなと思ったのだ。

そのときに見つけたのがネット小説だった。

それは無限の数ほどいる電子の世界の住人達が紡ぐ無限の数ほど綴られた物語。

さすがに素人が創っただけあって、明らかに読む価値がないと思わせるほどひどい物もあったが、中にはプロが書いたのではと思わせるほど緻密な設定の物もあり、俺はその世界にどんどん引き込まれていった。

そのネット小説のジャンルに今の状況と一致するものがあったのだ。


そのジャンルとは『転生物』といい、これはだいたいが不慮の出来事で死んだ主人公が様々な理由で別の世界に生き返る『転生』をし、その世界で活躍するというもの。現在俺が置かれた現状が、このジャンルの展開にそっくりだった。



(まさか・・・俺は小説と同じように転生したのか?)


それは普通では一笑に付されるような突拍子もない考え。しかし今の状況を説明するのにそれ以外にしっくりくる考えが浮かばなかった。


とすると、また一つ疑問が浮かんでくる。


それは「なぜ俺が転生したのか?」ということだ。

俺が見た転生物の小説では、もちろんただの偶然という設定もあったが、大概はなにかの理由が存在した。


だから俺が転生したのにもなにか理由があると思うのだが・・・。


(だめだ。なにも思い浮かばない)


よくよく考えてみれば、そこまで頭のよくない俺がこんな常識の通用しない出来ごとの原因なんてわかるわけがない。考えるだけ全くの無駄だった。


結局俺は転生した理由を放棄して、大人しく新しい名前ユウト・ベラトリックスと共にこの世界で生きることにした。



どんな理由があるにしよ、せっかく第二の人生を手に入れることができたんだ。楽しまなくちゃそんだろう?



まあ、そういうわけでこの世界での生活ももう六年になり、この世界のことも大分わかってきた。



まずこの世界には前世の世界みたいに世界全体をそのまま世界というのではなく、世界全体に名前がある。



その名も『アースランド』。


世界の一割が魔導師になる素質を持つという世界。

・・・ここまでいえばわかるだろう。どうやらこの世界には『魔法』が存在するらしい。

これを聞いた俺の第一感想は、「あーやっぱりか」というものだった。

だってさー、転生なんて異常な体験をしてやってきた世界だぜ?前世の世界じゃ考えられないことがあるだろうと考えるのが自然ってものだろう?

その魔導師の殆どはそれぞれ『魔導師ギルド』というものに所属し、俺たちのような魔法の使えない、または必要な魔法を使えない一般人の依頼などをうけて生活しているらしい。

この『ギルド』というのは前世でいう労働組合みたいなもので、魔導師ギルドの他にも『傭兵ギルド』や『商人ギルド』などもあるようだ。…まじファンタジーだな。


さて、そんな世界で生きることを決めた俺だが、そこには思わぬ試練が存在した。




『娯楽』の問題である。





俺の産まれたこのベラトリックス家は、父親がいないために俺とこの世界の俺の母さんであるミラ・ベラトリックスの二人だけとなっている。父親は俺がまだ母さんのお腹の中にいるときに事故で死んでしまったらしい。

それゆえに我が家は決して裕福とはいえない経済状況である。母がキルト?パッチワーク?みたいな民芸品を定期的に村にやってくる行商の人に買ってもらったり(なんでも母さんの造った民芸品は評判がいいらしく、あちらからそれなりの値段で買ってくれる)、村の皆に助けられたなんとか生活できている状況である。


なので娯楽品など買う余裕もないのだが、娯楽大国の日本の産まれの俺としてはこの状況は少々つらかった。


なにせ家では母さんの仕事が仕事なために俺では手伝うことはできず、家事を手伝うにしてもまだ幼いということで簡単なものしか手伝わせてもらえない。母さんは「子供は遊ぶのが仕事」だと思っている人であり、すぐに「仕事は私に任せて遊びにいってきなさい」というのである。


だが母さんの言うとおりに遊ぼうにもどう遊べばいいのかわからなかった。村に同世代の子供は何人かいたが、その子供たちはどれも外見にふさわしい精神年齢の持ち主たち。前世で高校三年生までいった精神年齢の俺としては、どうしても心の底から馴染むということはできなかった。どうしても小さい子供の面倒をみているという感覚になってしまうのだ。なので俺自身が楽しむ娯楽というものがなかった。


だが最近この世界でもできる新しい娯楽を見つけることができた。


それは『釣り』である。


俺の村の近くにはちょっとした森があり、その奥には魚が生息する川があることがあることを村長に教わり、家のご飯のおかずの足しになろうと思い挑戦してみたがなかなか成功せず、やっと一匹つりあげて家に持って帰ったら母さんにとても喜ばれたのが嬉しくて、それ以来はまってしまい、今では週二のペースで釣りにでている。(本当はもっと行きたいのだが、子供同士にもつきあいというものがあるのでこれくらいしか行けない)


そして今日も釣りに出かけようと村を出たのだが、なぜか気づいたら、うす暗い部屋で両手両足を拘束されて床に転がされていた。








……あれ?


 
 

 
後書き
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