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久遠の神話

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第八十六話 運という実力その二

「ましてやまだ当選が決まった訳でもないです」
「権藤さんは慎重ですね」
「そうでしょうか」
「普通はここで喜びます」
 当選が決定的になるとだというのだ。
「議員になることはそれだけ大きなことですから」
「それ故にですね」
「そうです、しかしそこでそう仰るとは」
 浜崎は目を瞠って権藤に述べた。
「凄いですね、では将来も」
「無論一議員で終わるつもりはありません」
 ここでもだ、こう言うのだった。
「政治家は欲がないといけませんね」
「私利私欲ではなく」
 それのみの政治家がいることも事実だ、しかしそうした政治家はというのだ。
「あの市民活動家あがりの人物になるだけです」
「あの元総理ですか」
「政治家の中には私利私欲に走っている者がいることも事実ですが」
 そのことは紛れもない事実だ、浜崎もそのことは否定出来ない。
「与党にもいます、しかし私利私欲のみしかない輩は」
「そうはいませんね」
「野党はそうした輩ばかりです」
 だからこそそうした私利私欲のみの輩が首相、党の総裁にまでなれたというのだ。同類しかいない世界だからだ。
「ですから今回もです」
「ただテレビに出ているというだけで、ですね」
「ああした人物を選んだのでしょう」
「負けるべくして負けていますね」
「私もそう思います」 
 浜崎は鱧の吸いものの中のその鱧を箸に取って食べつつ言う。吸いものの中に入れても箸は殆ど濡れさせない。
「今回も」
「それもあってです」
「貴方は喜ぶことはありませんか」
「はい、特に」
 権藤は食べつつ淡々と述べる。
「そのことについては」
「その胆力、いえ冷静さでしょうか」
 浜崎は権藤にそうしたものを見て話した。
「それを買わせてもらって宜しいでしょうか」
「是非」
 権藤は浜崎の目を見て答えた、浜崎も権藤の目を見ている。二人の目は今は鋭いものになっている、浜崎の顔からは笑顔が消えていた。
 その顔と目でだ、浜崎は権藤の言葉を受けてだった。
 そのうえでだ、こう彼に言った。
「わかりました、それでは」
「損はさせません、むしろ」
「得をですね」
「約束します」
「期待しています、実は議員はです」
「一年生でもですね」
「俗に。かつては閣僚や党の要職にない議員は陣笠と呼ばれていました」
 つまり足軽のことだ、当然総裁等党首が大将である。
「しかしそれは実は違いまして」
「議員ならばですね」
「そもそも一国一城の主です」
 その選挙区で当選しているしその下に多くのスタッフがいるからだ。
「陣笠というよりは将です」
「そして総裁が将の将ですね」
「そうなります」
「では私もですか」
「はい、将としてです」
 期待しているというのだ。
「そのお力を見せてもらいます」
「ではそうさせて頂きます」
「それでは。それでなのですが」
 話が一段落したところでだった、浜崎は話題を変えてきた。その話題はというと。
「この料亭のことですが」
「味ですか」
「素晴らしい味ですね、お店の雰囲気もいいです」
「神戸では評判の店でして」
「料亭としてですね」
「そうです、私もよく利用します」
「そうですか」
 浜崎はここまで聞いた、そのうえでこう言うのだった。
「実はもう政治家もです」
「料亭は使わなくなっていますね」
「はい、そうした時代ではなくなっています」
 所謂料亭政治の時代ではないというのだ、与党も料亭を使いかなり批判されてきたので避けているのだ。ただし野党の人間が使っていてもマスコミは批判しなかったし左翼市民活動家あがりの総理大臣が連日連夜料亭等高級飲食店を巡っていてもマスコミは何も言わなかった。マスコミ達の主義主張に野党が近かったせいだという指摘がある。 
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