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久遠の神話

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第八十二話 四人への準備その五

「じゃあ今から銀月さんのところに行く?」
「何処におられるかしら」
「ちょっと携帯で聞こうか」
 食べ終わったそのままで言う上城だった、まだ席についている。
「今から」
「お店の中で携帯使うのはよくないから」 
 だからだとだ、樹里はここで言った。
「一旦お店出よう」
「あっ、そうだね」
 上城も言われてこのことに気付いた、そうして。
 彼等は一旦席を立ってお店の勘定を払った。レジにはそのお店の娘がいた。
 お店の娘はにこやかに笑って二人の出したお勘定を出して笑顔でこう言って来た。
「またのお越しをお待ちしていますね」
「はい、それじゃあ」
「学校でまた会いましょう」
 こうにこりと言うのだった、この娘とは笑顔で別れた。
 それで店の外に出てからだった、上城は携帯を出して聡美に連絡を入れた。するとすぐにその聡美が出て来た。
「どうしたのですか?」
「今銀月さんは何処におられますか?」
「大学の部活の方にいます」
 つまり弓道部にだというのだ。
「そちらで」
「あっ、じゃあ今からそちらに行きますね」
「お話がですね」
「はい、剣士の」
 その件でだというのだ。
「それで」
「わかりました、それじゃあ」
 こう話してそしてだった。
 二人で聡美のところに向かった、弓道部の道場に入ると丁度弓をつがえて的を狙っているところだった。聡美は今は袴姿だ。
 紺色の袴に上は白い着物だ、その見事な出で立ちで弓を放っていた。的の中心を的確に射抜いていた。
 その彼女にだ、上城は尋ねた。隣には樹里もいる。
「あの、これからのことですが」
「はい」
 聡美は弓を止めた、そのうえで二人に向き直って言うのだった。
「今私達も考えています」
「中田さんのことは」
「今お兄様にお願いをしているところです」
「銀月さんのお兄さんといいますと」
「アポロンといいます」 
 聡美は優しく穏やかな笑みで上城に答えた。
「ご存知ですね」
「太陽神ですね」
「そうです、太陽神であると共に」
 この辺りは聡美と同じだ、彼女は月の女神であると共にお産や狩りの女神であることの様に。
「音楽や予言、医療の神でもあります」
「医療ですね」
「はい、それです」
 まさにそれだとだ、聡美は答えた。
「そのお兄様なら」
「中田さんのご家族もですか」
「必ず助けられます」
 間違いなくだ、そうしてくれるというのだ。
「ですからご安心下さい」
「そうですか、それじゃあ」
「お兄様は私の従者から話を聞いています」
「あれっ、従者がいたんですか」
「実は犬を」
 従者にしているというのだ、狩猟の女神なので従者は犬なのだ。
「従者にしていまして」
「それでなのですね」
「そうです、従者です」
 だからだというのだ。
「彼等をお兄様のところに向かわしてお願いをしています」
「そうなのですか」
「はい、それに」
「それに?」
「私もまたお兄様と直接お話をしています」 
 聡美自らもだ、そうしているというのだ。 
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