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久遠の神話

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第八十話 残る四人その八

「それで戦っていましたが」
「過ちからですね」
「戻れました、私の過去の過ちは」
 戦いを選んだ、このことをというのだ。
「何があっても忘れません、高校時代の過ちも」
「いじめですか」
「私は変わっていなかったのですね」
 寂しい苦笑いになってだ、こうも言う高代だった。
「全く」
「高校時代からですか」
「過ちを繰り返していたのですから」
「人を傷つける過ちですか」
「いじめも、己の願いを適える為に戦うことも」
 その二つは同じ根だというのだ、彼にしってみれば。
「共に過ちだったのです」
「ですね、本当に」
「しかし」
「しかしですね」
「はい、私は運あがよかったのでしょうか」
「運命かも知れませんね」
「運命ですか」
 高代は上城の言葉を受けてだ、彼に顔を向けて言った。
「私が救われたのは」
「先生はもういじめはされませんね」
「痛みがわかりましたから」
 それで一時日本を去るまでになり家族にまで迷惑をかけた、徹底的な糾弾を受けてそのうえでわかったのだ。
「ですから二度と」
「そうですよね、過ちがわかってそれでそれを二度としないと誓う方だからこそ」
「救われたのですか」
「運命として」
 そうなったというのだ。
「僕はそう思いますが」
「そうだといいですね」
「それで先生はこれからは」
「もう二度とです」
 何があろうともというのだ。
「いじめも己の為に戦うこともしません」
「それを身体の悪い子供達に向けられますよね」
「そのつもりで学校を立ち上げようと考えていましたし」
 だからこそ、というのだ。高代も。
「ですから」
「そうした人は救われる運命だと思います」
「救われるべき者だからですか」
「どうしようもない人は救われないでしょう」
 サイコパスやそうした輩はというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「先生は救われて多くの子供達も救われます」
「そうしていきます」
 決意も見せる高代だった、そのうえでの今の言葉だった。
 この言葉と共にだ、こうも言うのだった。
「学校は形が出来ていっていますし」
「頑張って下さいね」
「ここからが私の本当の戦いですね」
「剣を持たない戦いですね」
「はい」
 まさにそれだというのだ、上城に対して語る。
「戦いは剣や銃を持つだけでなく」
「戦争だけではないですね」
「誰かを救うこともまた」
「それも戦いですね」
「偏見、差別、疲労、そうしてそれ等に怯もうとする己との」
「全てを賭けた戦いですね」
「そうです、全てがです」
 まさにだというのだ、こう話してだった。 
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