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久遠の神話

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第八十話 残る四人その八

「絶対にね」
「そうした意味で女神の方々の行動は正しいですね」
「もう戦いとは関係がないけれど見てね」
「応援することは出来ますね」
「それは出来るからね」
 だからだというのだ、王は。
 そしてだ、スペンサーもだった。
 今は当事者ではなく過去はそうであった者、その客観的な立場の者となった顔でだ、こう王に言うのだった。
「ですね、女神の方々と戦いを止めようとする剣士の方々を応援しましょう」
「出来る限り力になってね」
「そうしていくべきですね」
「これからはね」
 二人で話してだ、スペンサーは昼食を食べ王も厨房に戻りまた料理を作る。二人はそうしたのだった。
 高代も今は剣士ではない、その剣士だった者として学園の中庭のベンチに共に座る上城にこう話していた。
「思えば私は愚かでした」
「戦われていたことがですか」
「血に塗れた手で子供達を救えるか」
 それは、というのだ。ベンチに座りつつ己の手の平を見てそのうえでの言葉だ。
「それは出来ません」
「そうですよね、やっぱり」
「罪のある手で出来るものではありません」
 そのことがわかった目だった、今の高代の目は。
「絶対に」
「そうですね、本当に」
「戦いから降りて」
 そしてだというのだ。
「それと共に願いが適えられて」
「それでおわかりになられたのですね」
「そうです」
 高代は遠い目で語る。
「その時になってです」
「ですか、それは」
「それは?」
「お言葉ですが遅いと思います」
「そうですね、願いが適ってから気付くのでは」
 上城も高代に言う、横から彼の顔を見つつ。
「若しも他の人を倒して一人だけ生き残られてからでは」
「遅かったですね」
「はい、そうでした」
 それでだ、上城は今は咎める顔で高代に言うのである。
「そうなれば」
「その通りですね、本当に」
「しかしです」
「しかしですか」
「先生は救われました」
 遅かったのは事実だ、だが今はというのだ。
「願いを適えられて」
「誰かを倒すこともなく」
 高代も言う。
「そうなれましたね」
「銀月さん達がおられたからこそ」
「そして君も」
「僕もですか」
「私は君に教えてもらいました」
 高代も上城に顔を向ける、そのうえでの言葉だった。
「この戦いのこと、そして人間としてあるべき姿を」
「人間としてもですか」
「例え誰かを救う為でも他の誰かを傷つければ」
 それをしてしまえば、というのだ。
「過ちですね」
「そうです」
 その通りだとだ、答えた上城だった。
「僕はいつも先生にお話していましたね」
「わかっていましたが」
「それでもですね」
「そのことを認めませんでした」
 自分でだ、それを否定していたのだ。 
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