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IS インフィニット・ストラトス~普通と平和を目指した果てに…………~

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number-12




あれから特に起こることなく、いつもの日常が過ぎていった。蓮は、IS学園にいるという変わった日常に慣れようとしている。一夏に至っては、もう既に馴染んでいる。学園の生徒たちも最初の頃は、物珍しさに一年一組の教室にまで押しかけていたが、もう一か月経とうとしており、それにクラス代表戦というイベントも近いこともあって元に戻りつつあった。


そして今日はそのイベントであるクラス代表戦なのだが、一夏の一回戦の相手はいつの間にいたのか分からなかったが、中国から来た代表候補生、鳳鈴音だった。


一年生のしかも一回戦から専用機持ちが戦うとあって会場であるアリーナは、喧騒の中にあった。生徒会長である楯無は、この会場の運営を行わなくてはいけないため蓮のもとに行きたくても行けない状況にある。いつもであれば、他の人――――布仏虚(のほとけうつほ)に任せているところなのだが、さすがに今日ばかりは会長も働かねばただでさえ人数が少ないのだから過労で倒れてしまう恐れもある。そのため蓮のもとに行きたい気持ちを抑えて、こうやって会場運営を行っているのだ。


ただ、今回は部外者の人は呼ばない方針になっている。会場を埋め尽くしているのは全てIS学園の生徒、または関係者なのだ。だが、その会場内には蓮はいなかった。
ではどこにいるのか。ここで一つ留意しておかなければならない点が一つ。蓮は、学園の生徒に嫌われているのだ。ということは、誰も蓮のことなど気に留めないということだ。
布仏本音だけは、蓮を探していたようだが、見つかることなく一回戦が始まってしまう。そのうえ、クラスメイトに捕まり、不承不承といったところではあったが、クラスメイトについていくことにした。最後にもう一度会場を見渡すが、見つからない。姉に怒られるとは思いこそしたものの、さほど気に留めずにクラスメイトと一緒に席に座った。


蓮は何処にいるのか。会場内にはいなかった。だが、今日のクラス代表戦は全員参加ということになっている。代表以外は観客だが。
蓮は、今日は誰も使うことの無い控室の一室に部屋の明かりもつけず、テレビを通して試合の様子を見ていた。部屋は、テレビから発せられるブルーライトでぼんやりと照らされている。椅子に腰かけながら視線はテレビに向いていた。蓮は、蓮しかいない控室で一人呟く。


「今回は、俺は手出しはしない。物語を進めるためには必要なことではあるが、そこで死んでしまえば、お前はその程度の人間だったということになる。織斑一夏。お前は何を見ている? 誰かを守るためにこの力を使うと言っていたが……他人の威厳を借る狐の癖に言葉だけは一人前だな。
そんなやつに『白騎士』のコアを流用したのには若干理解に苦しむが、まあ束にも何か考えがあるのだろう。……『白騎士』といえば、束が織斑千冬のことがそんなに好きでないことにもびっくりしたな。――――利用できたから利用しただけ、か……。
束は織斑姉弟はいらないとでも言いたいのか。まあ、いい。
俺は今回は静だ。束がアリーナにISを送り込むが、俺は何度も言うように動かない。その程度、どうにかしてみろ」


蓮は、要所要所を省きながら誰かと話すように一人で話していたが、当然答える人などいる訳もなく、言葉は暗闇に吸い込まれていった。蓮は、テレビから目を話すことはない。だが、丁度一夏が零落白夜を発動させたところで激しい頭痛が蓮を襲う。
頭痛だけでなく、何か声が聞こえてくる。幻聴かと思ったが、どうやら本当に幻聴のようで頭の中に直接響いて聞こえる。


(――――燐夜君っ!!)
(――――燐夜っ!!)


声からして二人の少女のようだ。頭痛のせいなのか反響して聞こえる。誰だろうか。駄目だ、痛みのあまりそこまで考える余裕がない。耐え切れずに床に這いつくばってしまう。


――――まただ。また、さっき聞こえた声が聞こえる。


また誰かが誰かを呼ぶ声が頭の中に反響して聞こえる。今度は頭の中に鮮明なイメージが作り出されていく。
声と同じように二人の少女がこちらを見て誰かの名前を呼んでいる。それもかなり焦ったようだった。年は、蓮と同じくらいだろうか。少なくとも高校生とかそのぐらい。
一人は、白い何かの制服のようなものを着て長い栗色の髪をサイドでポニーに纏めており、誰か(・・)を君付けで呼ぶ少女。
もう一人は、黒い制服のようなものの上に白いマントを羽織る形で身につけて、同じように長い金髪の髪を先端の方で黒いリボンで結わえた少女。こちらは、呼び捨てで誰か(・・)を呼んでいる。


「俺は…っ。俺は燐夜じゃねえっ!!! 蓮だっ!! 御袰衣蓮だぁっ!!!」


声を上げて額を思い切り床に叩きつけた。その衝撃で頭痛を打ち消したが、額を切ったようで血が止まらず、流れて白い床に赤い点をつける。
息を荒げ、頭痛が引いたことを確認すると再び椅子に深く腰掛ける。誰かが呼んでいたあの幻聴、幻覚は、治まり、今は何も聞こえないし見えなかった。切れた額を抑えようともせず、テレビに向けると控室が低い音を立てて揺れた。何かが落ちてきたかのような衝撃だったことから、蓮は始まったことを悟った。


「はあっ……はあっ……はあっ……――――ふうっ、つっ。……燐夜って一体誰なんだ…………?」


蓮の疑問に答えてくれる人は、誰もいない。


      ◯


アリーナでは、一夏と鈴音の二人で強襲してきた正体不明のISを相手取っていた。教師陣がアリーナ内に入ってこれないのは、あのISを通して束が学園にハッキングを仕掛けてセキュリティレベルを4にまで上げているからだ。


その様子は、控室にいる蓮の近くにあるテレビに映し出されている。先ほどから同じことの繰り返しでつまらないことだけしか行っていないのだが、今の蓮にはそんなつまらないものを見ている暇がなかった。額から血が止まらなくなって流れ続けてはいるが、見た目よりも傷は浅いようで血管を傷つけてしまっただけだろうと決め、放置している。
そのせいで蓮の顔を伝って血液が無機質な白い床に落ちて斑点を作り上げていく。しかしそれに気づかないほどに蓮は考え事に耽っていた。


先ほど頭の中に響き渡った二人の少女の声。その声の持ち主は、亡国企業に所属する幹部メンバーのうちの二人をほぼ瓜二つといってもよかった。それこそ一卵性双生児といわれてもおかしくないほどに瓜二つなのだ。だが、性格までは同じではないようだった。近くもあるが、どこまでといわれれば、さほど似てないのだ。先ほど出てきた二人の少女をその二人に当てはめてみてもいい。


ふと、暗い控室の光源になっているテレビに目を向けた。テレビには、どこか焦ったような一夏が鈴音の前に陣取って背部推進器(ブースター)を全開にしていた。さらにその後ろには、鈴音が第三世代兵器の一つである衝撃砲を全開にして溜めていた。そして、躊躇いもなく一夏に向かって放つ。流石に蓮もこれには驚いたが、一夏が衝撃砲のエネルギーを自分が纏うISのエネルギーが足りない部分に補うために吸収し、そのエネルギーで爆発的に放出して瞬時加速を行い、無人機との間を一瞬で詰めた。むちゃくちゃなことをする奴だったが、人工知能(AI)によって操作されているあの無人機には、行動がパターン化されて入力されていることが多いため、効果的であることも確かだった。


再び視線を床に戻すと、赤い斑点が出来ていることに気付いた蓮。それに触れてみると、まだ乾いていない自分の血であることを知る。それで額を触ってみると手のひらを覆って赤い液体が付く。それを脱ぎ言取ろうと拭くものを探すためにあたりを見渡してみるが、拭けるようなものは見つからなかった。仕方がなしに、自分で持ってきていたタオルで額を傷口を刺激しないように拭い、床を血痕が残らないように拭く。傷口に関しては、もう治り始めていてISの操縦者自己修復機能が働いていることを実感する。


今度は、念のために血が流れないように天井を見上げる。部屋を照らすための蛍光灯が寂しげに佇んでいるような感じがした。だが蓮は、天井のどこを見る訳でもなく、忙しなく視線を彷徨わせいる。それは、まだ何かを決めかねている目、迷っている目だった。


目のやり場がなかった天井を見上げるのを止め、またテレビに視線を向けた。
一夏が零落白夜で無人機を切り裂くもそれでは止まらなかった。一夏は背を向けたままで動こうとせずに、鈴音から呼びかけられる。無人機が粒子砲(ビーム)を放つ前に何時の間にかアリーナに侵入していたセシリアのビットで沈黙した。
そう判断した一夏は、鈴音のもとに近寄るが、また鈴音が声を上げる。先ほど完全に沈黙したと思われた無人機がまた動いて粒子砲(ビーム)を一夏に向かって放ったからだ。その距離では防ぐにも微妙であったが、一夏は自ら粒子砲(ビーム)の中に突っこんでいった。
やはりバカだった一夏。これには蓮も嘆息するしかなかった。


鼻で笑って控室をタオルを持って後にする。一夏のバカな姿を見ても蓮の頭の中からは、あの二人のことが離れなかった。


 
 

 
後書き


4月に入って、そろそろ大丈夫かなあとか思いつつも、月1、よくて月2が限界だった件について……
ストックを溜めて一気に完結まで駆け抜けてもいいけど……エンディングのビジョンはあるし。
なのはの方も似たようなものです。
SAO書きたい。

小説とか漫画を読むたびに二次設定が頭の中を駆け抜けるのがやばい。もうどうしようもないな、これ。

そして、誰が一日に投稿するといった。あれは嘘だ。……ごめんなさい、普通に投稿するの忘れてただけです。だから石とか投げないで。 
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