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人形の姫と高校生の鬼

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前書き
毎度ご覧頂きありがとうございます。
誠に勝手ながら、「序章~今ある日常2」の中で話の一部を
修正させて頂きました。

これからも宜しくお願いします。 
1/22 熊野 ナトリ
 

 
「ったく・・・・・・いっくらぶっ壊してもキリがねぇな」

雲一つ無く、綺麗な三日月が映える夜。とあるビルの屋上には、一房に纏めた髪をなびかせながら、眠気覚ましにミントタブレットをボリボリと噛みつつ眼下を見下ろす女性の姿があった。今このビルの下には数台の救急車が停車していた。

「こんだけ暴れてやれば、普通はそうそうデカイ動きも出来んだろうと踏んでいたんだが・・・・・・さて、どうしたもんかね」

「先生」

そこに一人の少女が現れた。黒地の和服を着用しており、手には木の棒が握られ、その先端には赤い、見た目には血液の様な物が付着していた。

「もう止めてください。これ以上続けてしまえば、先生の命が・・・・・・」

少女は目の前にいる自分が「先生」と呼んだ人物の姿を見た。本人はやせ我慢をしているのかもしれないが、体のあちこちで出血をしている。ここまで手酷くやられたのは、以前の戦いで痛めた右腕が完治していないと言うのもあるだろうが、原因はやはり

「先生・・・・・・やはり貴方では」

「うっせぇ。じゃあ私がやらないで一体誰があいつ等を相手にするって言うんだ?」

彼女はガンッ!と屋上の床を踏みつける。そして眼下の光景から目を離し今この場にいる一人の少女に目を向けた。

「確かに私は『お前に適さない』。このままお前と一緒に戦えば、きっと・・・・・・いや、確実に私は死ぬ。けど、それでも良い。誰かがお前と一緒に戦う事になって、その結果そいつに怖い思いを、苦しい思いを・・・・・・もしかしたら誰かを殺させてしまうかもしれない。そんな事をさせるだなんて・・・・・・この私が許さない」

「現実的に考えて下さい。先生が今言った様に、このまま先生が、私と共に戦い命を落とした場合、一体どこの誰が奴らと戦うのですか?私一人じゃ流石に分が悪すぎます」

「・・・・・・」

「それに・・・・・・先生を慕っている生徒の方達も」

「あー!それ言うな!!言われると決意が鈍る!」

彼女は両手で髪をガリガリと掻き毟り、頭痛を抑えるかのように手で頭を抑える。彼女は別に戦いを生きがいにする戦士では無い、ましてや世の中を救うべく悪と戦う為に生まれた勇者では無い。彼女はあくまで、とある高校で働く一教師なのだ。彼女が何故今、自分の血を流し、人知れず誰の手も借りずに日夜戦い続けているのか。それは

「くっそ・・・・・・あんのクソジジイめ。死ぬなら死ぬ前に全部片付けてから逝けってんだよ・・・・・・」

彼女は痛む右腕を押さえ、ビルの屋上から階下に降りる為の階段へと向かう。

「あ、明日は一緒に登校するんだよな?大丈夫だとは思うけどくれぐれも・・・・・・」

「わかっています」

少女は空を見上げ言った。今、自分はどの様な表情をしているのだろうか。期待?不安?それとも・・・・・・。

「誰にも気付かれない様にします。私が・・・・・・」

その時、突風が吹いた。まるでこの秘密を漏らすなと警告されているかの如く。結果、少女の言葉は風にかき消されてしまった。

 
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