ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第9話
Side 一誠
ギャスパーの説明が行われる。この野郎は『停止世界の邪眼』という神器の所持者で、能力は視界に映った物体の時間を止めること。反則級の力だ。
「そう言えば、こいつ日光は大丈夫なんですか?」
よくある映画とかだと、吸血鬼は日光が苦手のはずだ。
「彼はデイウォーカーだから大丈夫よ」
デイウォーカー?
「太陽が出ていても活動できる吸血鬼のことですわ。ギャスパーくんはそういう吸血鬼の血を引いているのです」
朱乃さん補足説明ありがとうございます。しかし、そんな吸血鬼がいるのか・・・・・・。
「日の光嫌いですぅぅぅぅ! 太陽なんてなくなっちゃえばいいんだぁぁぁぁぁっ!」
悪魔も日光は苦手だから、悪魔で吸血鬼なこいつはさらに日光が嫌なんだろう。しかし、学園の生徒ならば授業は受けないとダメだろう。
「お前、授業に出てないだろ? 力を克服してクラスのみんなと打ち解けないとダメだぞ?」
「嫌です! 僕はこのダンボールの中で十分です! 外界の空気と光は僕にとって外敵なんですぅぅぅぅっ! 箱入り息子ってことで許してくださぁぁぁぁぁい!」
誰がうまいこと言えって言ったよ・・・・・・。しかし、これは重傷だな。
「そう言えば、こいつ血は吸わないんですか?」
「ハーフだからそこまで血に飢えているわけではないわ。十日に一度、輸血用の血液を補給すれば問題ないの」
「血、嫌いですぅぅぅぅ! 生臭いのダメェェェェェ! レバーも嫌いですぅぅぅぅ!」
血が嫌いな吸血鬼って存在が矛盾してるだろ!?
「・・・・・・・へたれヴァンパイア」
「あはははは、なかなか厳しいね小猫ちゃん」
「・・・・・・事実です」
渚が小猫ちゃんの発言に反応する。
「うわぁぁぁぁぁん! 小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅ!」
なんというか、情けないな・・・・・・・・。
「とりあえず、私が戻ってくるまでの間だけでも、イッセー、ナギ、アーシア、小猫、ゼノヴィア、あなたたちにギャスパーの教育を頼むわ。私と朱乃は三すくみトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。それと、祐斗、お兄様があなたの禁手について詳しく知りたいらしいから、ついてきてちょうだい」
「はい、部長」
本来ありえない現象らしいからな木場の禁手は。そりゃあ、調べたくもなるよな。
「イッセーくん、悪いけどギャスパーくんのこと、お願いするね」
「任せろ。まあ、俺だけじゃなくて他のみんなもいるから問題ないさ。・・・・・・たぶん」
正直不安だけどね。
「ギャスパーくん、そろそろお外になれないとダメですよ?」
朱乃さんが段ボールの中にいるギャスパーに話しかける。
「朱乃お姉様ぁぁぁぁぁ! そんなこと言わないで下さいぃぃぃぃ!」
「あらあら。困ったわね。ナギくん、イッセーくん、お願いね」
「了解です」
「任せてください!」
まあ、頼まれたんだから精一杯やってやるさ。
「では、こいつを鍛えよう。軟弱な男はダメだぞ。それに私は小さい頃から吸血鬼と相対してきた。扱いは任せてほしいね」
ゼノヴィアはそう言うと、段ボールに括りつけてある紐を引っ張り出す。キミはギャスパーを滅する気なのかい?
「ヒィィィィィィッ! せ、せ、せ、聖剣デュランダルの使い手だなんて嫌ですぅぅぅぅ! ほ、滅ぼされるぅぅぅぅ!」
「悲鳴をあげるな、ヴァンパイア。十字架と聖水、さらにニンニクもつけるぞ?」
「ヒィィィィィ! ガーリックらめぇぇぇぇぇぇぇ!」
マジで滅ぼす気じゃないよね? 俺はそう本気で思ってしまった。
Side out
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Side 渚
「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだ」
「ヒィィィィィッ! デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇ!」
夕暮れの時間帯に吸血鬼が聖剣使いに追いかけられていた。なんでも、「健全な精神は肉体から」らしく、ゼノヴィアはギャスパーの体力から鍛えることにしたらしい。はたから見たら、ただの吸血鬼狩りだけど・・・・・・。
「私と同じ『僧侶』さんにお会いできたのに、目も合わせてもらえませんでした・・・・・・。グスッ」
涙目のアーシアさんは兄さんに任せるとして、僕はゼノヴィアとギャスパーくんを見守ろう。あれ? そう言えば小猫ちゃんはどこに行ったんだろう?
「・・・・・・ギャーくん、ニンニク食べれば健康になれる」
「いやぁぁぁぁぁん! 小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅ!」
ああ、そんなところにいたのか。それにしても小猫ちゃんは楽しそうだね。
「おーおー、やってるやってる」
「おっ、匙か」
生徒会の匙くんが現れた。
「解禁された引きこもりの眷属がいるとか聞いたから見に来たぜ」
「それならあそこだ。ゼノヴィアに追いかけられているぞ」
兄さんはギャスパーくんたちのいる方を指さす。
「おいおい、ゼノヴィア嬢、伝説の聖剣豪快に振り回してるぞ? いいのか、あれ。おっ! てか、女の子か! しかも金髪!」
うれしそうな匙くん。まあ、彼も僕と同じで男には見えないからね。
「残念だけど、あの子は男だよ。女の子の服の方が可愛いから女装しているんだ」
僕がサジくんにそう言うと、心底落胆した様子だ。
「マジかよ。そりゃ詐欺だ。初めて、兵藤弟を見た時と一緒だ・・・・・・。女装って誰かに見せるためにするもだろ?それで引きこもりって、矛盾してるぞ・・・・・・」
「そうだな。意味の分からん女装癖だ。似合っているのが何とも言えないしな。ところで、お前は何してるんだ?」
兄さんが匙くんに質問した。匙くんは今ジャージを着ている。手には軍手をしてスコップを持っていた。
「見ての通り、花壇の世話だよ。一週間前から会長の命令でな。ここ最近学園の行事が多かっただろ? それに今度魔王様たちもここにいらっしゃる。学園を綺麗に見せるのは生徒会の俺の仕事だ」
胸を張って堂々としているけど、それって雑用なんじゃないかな?
「ん?」
「どうかしたのか?」
「誰かくる」
僕は気配を感じて、そちらの方を見る。しばらくすると、浴衣を着た男がやってきた。
「へぇ。お前らはここに集まってお遊戯をしているわけか」
「アザゼル・・・・・・」
「よー、赤龍帝。あの夜以来だな」
兄さんがそう言うと、この場の全員が戦闘態勢に移った。ゼノヴィアはデュランダルをアザゼルに向け、兄さんはアーシアさんを守るように前に出て、赤龍帝の籠手を発動させる。僕も白銀魔術礼装を発動して、黄金色の聖約を構える。匙くんも自身の神器を発動させていた。
「ひょ、兵藤! アザゼルって!」
「マジだよ、匙。俺はこいつと何度か接触しているんだ」
匙くんの問いに兄さんは答える。当のアザゼルはそんな僕たちを見て苦笑いをしていた。それを見て、僕は白銀魔術礼装を解除して、黄金色の聖約を消す。
「おい! 渚!?」
兄さんが驚愕の目で見てくるので、説明することにした。
「兄さん冷静に考えるんだ。三すくみの会談の前で事を起こしたら、どんなことになるかは目に見えてる。それに、僕たちが束になっても勝てる相手じゃないよ」
『有限殺しの無限廻廊』が使える状態なら話は別だろうが。
「そいつの言うとおりだ。まあ、ちょっくら聖魔剣を見に来たんだが・・・・・・ちょうどいないみたいだな」
僕がそう言うと、みんなは構えをといた。ギャスパーくんは気に隠れたままだけど。
「ああ、そうだ。そこに隠れているハーフヴァンパイア」
アザゼルは急にギャスパーくんの方を見る。
「『停止世界の邪眼』の持ち主なんだろ? そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えばいいと思うが・・・・・・。そういや、悪魔は神器の研究が進んでなかったな。五感から発動する神器は持ち主のキャパシティが足りないと自然に動き出して危険極まりない」
アザゼルはギャスパーくんの目を覗き込むようにして言った。ギャスパーくんは堕天使の総督に近づかれてプルプルと震えている。
その後、匙くんの神器についてもアザゼルは説明を行い去って行った。
匙くんの神器『黒い龍脈』はいろいろ使い道があるようで、単に相手の力を吸収するだけでなく、神器の力も吸うことができるらしい。さらには吸収した力を他の人に渡すことも可能だとか。黒邪の龍王ヴリトラという五大龍王の一匹の力を宿しているそうだ。
ギャスパーくんの神器修行は匙くんも協力してくれることになった。その代わり、僕らも花壇の手入れを手伝うことになったけど、ギブアンドテイクだ。
そして、ギャスパーくんの練習は夜になるまで続いた。何度かデュランダルが掠めたようで、終始ギャスパーくんの鳴き声はやむことはなかった。
Side out
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