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ハイスクールD×D ~銀白の剣士~

作者:strik
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第10話

 
前書き
久々の更新・・・ずいぶんお待たせしました。 

 


Side 渚


 深夜、旧校舎にリアス先輩、兄さん、そして僕が扉の前に集まっていた。

「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理してイッセーに連れて行かせた私が悪かったわ」

 ギャスパーくんの部屋の前で、リアス先輩が謝っている。兄さんの依頼にギャスパーくんを連れて行ったみたいなんだが、どうやらうまくいかなかったらしい。

「イッセーと仕事をすれば、もしかしたらあなたのためになるかと思って・・・・・・・」

『ふぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇえええんっ!』

 閉じこもったギャスパーくんは大声で泣いている。

 さっきリアス先輩が言っていたが、ギャスパーは名門吸血鬼を父に持つが、母が人間の妾だったため純潔ではない。悪魔以上に吸血鬼は純潔であることを重視するので、腹違いの兄弟からずっといじめられ、人間界に行ってもバケモノ扱いで居場所がなかったそうだ。それに、ギャスパーくんは類まれなる吸血鬼の才能と人間としての強力な神器(セイグリット・ギア)の両方を兼ね備えていたため、望まなくともその力は年を取るとともに大きくなっていったそうだ。

 仲良くなろうとするが、ちょっとした拍子に停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)が発動して、相手を止めてしまう。僕が例外的に白銀魔術礼装(セイグリットワルツ)が時間停止を異常状態だと認識して無効化してくれるが、そんなことは気休めにもならないだろう。

『僕は・・・・・・こんな神器(セイグリット・ギア)はいらないっ! だ、だって、みんな停まっちゃうんだ! 怖がる! 嫌がる! 僕だって嫌だ! と、友達を、な、仲間を停めたくないよ・・・・・・。大切な人の停まった顔を見るのは・・・・・・、もう嫌なんだ・・・・・・』

 すすり泣くギャスパーくん。

「困ったわ・・・・・・・。この子をまた引きこもらせてしまうなんて・・・・・・。『(キング)』失格ね、私」

 落ち込むリアス先輩。

「部長、サーゼクス様たちとの打ち合わせがこれからあるんでしょう?」

「ええ、でももう少しだけ時間を延ばしてもらうわ。先にギャスパーを―――」

「あとは俺に任せてください。何とかしてみせます」

 兄さんがリアス先輩にそう言う。リアス先輩は兄さんに強く反対できなかった。眷属も大切だが、今回の打ち合わせは三すくみに影響する重要な会議だからだ。

「大丈夫です。せっかくできた男子の後輩です! 俺が何とかします!」

 胸を張って宣言する兄さん。弟だからわかるが、本当は自身がないんだろう。しかし、兄さんはギャスパーくんに何かしら思うところがあるらしい。

「・・・・・・イッセー。わかったわ。お願いね」

「はい!」

 勢い良く返事をする兄さんに、リアス先輩はうなずいた。そして、名残惜しそうにこの場をあとにする。兄さんは扉の前に座りこんだ。

「俺はお前が出てくるまで、ここを一歩も動かないからな!」

 どうやら、兄さんは持久戦に持ち込むつもりらしい。

「怖いか? 神器(セイグリット・ギア)と俺たちが・・・・・・」

『・・・・・・・・』

 兄さんは語りかけ始める。

「俺は正直自分の神器(セイグリット・ギア)が怖い。使うたびに、体のどこかが違うものになっていく感じがするんだ。でも、俺はこの力で前に進もうと思っている」

『どうしてですか? も、もしかしたら大切何かを失うかもしれないんですよ? どうしてそこまでまっすぐでいられるんですか?』

 おっ! 返事が返ってきた。

「うぅん・・・・・・・。俺は難しいことはよくわからん。バカだからな。でも―――」

『でも?』

「―――みんながいる。部長、朱乃さん、木場、アーシア、渚、ゼノヴィア、小猫ちゃんがいる。一人じゃないから強くなっていけるんだ。一人じゃないから、俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使って戦える。みんながいるから怖くないんだ。だから、俺はこの力でみんなを守りたい」

 兄さんがそんな風に思っていたなんて、ちょっと恥ずかしい・・・・・・。それにみんなと言いながら、視線はアーシアさんの方を向いていた。

―ギィ・・・・・・

「ぼ、僕もそんな風に考えられるでしょうか」

 扉が少しだけ開いて、中から赤い瞳がこちらを見ていた。

「ああ。きっとな。心配すんな、俺たちはお前に停められても嫌いになったりしない。だから、一緒に頑張っていこうぜ? お前が何かを怖がるなら俺たちがそれをぶっ飛ばしてやる」

 兄さんはそう言いながら、僕らを見回す。僕らはうなずいて返した。

「ぼ、僕も・・・・・・少しだけがんばってみます」

 完全に扉が開く。中からギャスパーくんが出てきた。

「さすがだね。イッセーくんは」

 祐斗がここで登場する。兄さんはしばらく、祐斗を見ると何かを考え付いたような顔をした。

「木場、渚、話がある」

「なんだい、イッセーくん」

「何の話さ?」

「俺とお前らは男だ」

 兄さんはギャスパーくん、祐斗、僕の順で顔を見ていく。

「そうだね。でも、そんなことがどうかしたの?」

「俺はグレモリー眷属の男子チームで行える連携を考えた」

「それは・・・・・・興味がそそられるね。どういうのかな?」

 実はこの前、仮の駒(フェイク・ピース)が勝手に出てきたのだ。その時は焦ったがもう一回入れようとしたら問題なく入ったので、安心したのを覚えている。このことはサーゼクスさんに報告したが、不具合なのかよくわからないそうだ。まあ、この話は今はいいだろう。

「まず、俺がパワーを溜める」

 ふむふむ。それでどうするのかな?

「そして、溜めた力をギャスパーに譲渡して周囲の時を停める」

 なるほど、その間に敵をボコるという訳か。なかなか鬼畜な戦法d―――

「その間、俺は停止した女の子を触りまくる」

 ―――あれ?

「―――っ。・・・・・・また、エッチなことを考えていたんだね。でも、それなら僕とナギは必要ないんじゃないかな?」

「いや、ある。お前は禁手(バランス・ブレイカー)で俺を守れ。渚はギャスパーだ。もしかしたらエッチなことをしている間も敵が襲来してくるかもしれない。ギャスパーが停めて、俺が触り、お前と渚で守る。完璧な布陣だろ?」

 何がどう完璧なんだろうか・・・・・・? 欲望に正直すぎるのは考え物だろう。

「イッセーくん、力の使い方がエッチすぎるよ。ドライグ、絶対に泣いているよ?」

「僕もそう思うね」

『いいやつだなぁ、お前たちは』

 兄さんの腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が出てきて、そこから涙声が聞こえてきた。がんばれ、ドライグ!

「うるさいぞ、ドライグ! 木場もそんな目で見るな! イケメンのお前は女の子食い放題だろうけど、俺はそうじゃないだぞ!」

「キミのことだから、気づいたら気づいたでそっちにハマり込みそうだから、黙っておこう・・・・・・。覚えたては怖いというからね」

「僕もその考えに賛成」

 兄さんのことだからサルになるに決まってる。

「お前たちは何のことを言っているんだ? まあ、いい。男同士、腹を割って話そうじゃないか。―――第一回『女子のこんなところ、こんな恰好がたまらなく好きだ選手権』だ! 俺は女の子のおっぱいと足を見るね! 服は胸と足を強調するものなら名でも好きさっ!」

  笑顔でサムズアップしながら兄さんは言った。みんな苦笑いしている。

「すみません、段ボールの中でもいいですか? 蓋はしめないんで。ただ、人と話すとき、段ボールの中が落ち着くんです」

 ギャスパーくん・・・・・・・キミは心底変わっているな。兄さんも遺憾そうだが、許可している。たぶん、ギャスパーくんの手が震えているのを見逃さなかったんだろう。

「あー、落ち着きますぅ。これですよぉ。段ボールの中だけが僕の心のオアシスなんです・・・・・・」

 これはどういうリアクションを取ればいいんだろう? あんな狭い空間でしかぎゃスパー君はリラックスできないのだろうか?

「そんなに人と目を合わせるのが嫌ならこれなんかどうだ?」

 兄さんが部屋にあった、紙袋に穴を二つ空ける。そして、それをギャスパーくんにかぶせた。

「こ、これは・・・・・・」

「どうですか~? 似合いますか~?」

 穴から赤い瞳が除く。正直、ホラーです。子供は絶対に泣き出すね。

「イッセーくん・・・・・・これは・・・・・・・」

「ああ、俺が悪かった」

 他の二人も同じように感じたみたいだ。

「あぁ、でもこれ・・・・・・・いいですねぇ。僕には似合うかも・・・・・・」

「ギャスパー、お前を初めてすごいと感じたよ」

「ほ、本当ですか・・・・・・? これをかぶれば、吸血鬼として箔がつくかも・・・・・・」

 断じて箔などつかないだろう。ただの不審者・・・・・・いや、変態だ。

「まあ、いい。次は渚、お前の番だ」

「僕? う~ん、そうだなぁ・・・・・・」

 ここでの選択肢は二つだ。ガチで行くか、ネタで行くかだ。しかし、あまり恋愛について考えてこなかった僕ではガチな話はできない。ネタで行くしかないだろう。

「おいおい、早く言えよ?」

「わかったから、急かさないでよ」

 まったく、楽しんでるの現状だと兄さんだけだよ。

「僕も、ちょっと興味あるな」

 って、お前もか祐斗。何気にお前も乗り気なのか。少し意外だ。

 まあ、それは置いといて、何を言うかだな。あんまり突っ込んだことを言うと取り返しのつかないことになるだろうからな。

「で、結局渚はどうなんだよ?」

「僕も、最初に見るのは胸を見るかな?」

 まあ、これは周囲にいる女性の胸が大きいのが原因だろう。あれだけ大きいと視線がそこに向かうのは仕方ない。

「やっぱそうだよな! 男はおっぱいだよな」

 兄さんはなんだかすごくうれしそうだ。仲間がいてうれしいのだろう。

「じゃあ、次はどんな恰好が好きなんだ?」

 恰好か・・・・・・。う~ん、悩むな・・・・・・。

「恰好は・・・・・・メイド服かな?」

 パッと思いついたのはメイド喫茶だったので、メイド服をチョイスした。

「メイド服・・・・・・あれはいいものだ。ここだけの話だが、俺はグレイフィアさんのメイド姿にかなり心を惹かれた」

 兄さんが感慨深そうにうなずいている。祐斗もなんだかんだで、しっかりと聞いていた。なかなかいい感じだ。

「あと、獣耳も好きかな」

 テレビで見たメイドさんに猫耳がついていたのを思い出して、それも追加する。兄さんの目が怪しく光った。

「獣耳装備のメイドか・・・・・・。ふっ、やるな、渚」

「悪くないんじゃないかな」

「け、獣耳ですかぁ・・・・・・すごいです。奥が深いんですね」

 う~ん・・・・・・ネタに走ったつもりだったので、“おいおい、それはねぇよ!”という反応を期待していたのだが、思ったよりここに居るのはスケベらしい。

 このままでは、本当に獣耳メイド好きの称号をもらってしまうことになるだろう。ここでもう一度、ネタ的な悪ふざけを入れるべきだ。

 そうゆう訳で、パッと身近にいる女子について思い浮かべる。リアス先輩、朱乃さん、ゼノヴィア、小猫ちゃん、アーシアさん・・・・・・・。

「ああ、あと・・・・・・こう、泣いている女の子を見るとゾクゾクするよね。もっと苛めたくなるというか・・・・・・・」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 今までの空気が一瞬で消滅した。確かに“おいおい、それはねぇよ!”とみんなで笑って言う反応を得ようとしたのは確かだが、限度と言うものがある。今の空気は“おいおい、こいつやべぇーよ”だ。

(なんで、朱乃さんのドSをチョイスしたんだ・・・・・・・)

 完全な選択ミスだ。みんなの沈黙が痛い。悪ふざけがどうやら、致命的なミスになった。どれだけあがいても挽回は無理な気がする・・・・・・。

「渚・・・・・・」

 兄さんがこちらを見つめてくる。精神力が削られていく。そんな目で見な―――

「さすがは俺の弟だな!」

 ―あれ?

「いや~、やっぱりお前も男だな!」

 僕の側に移動して肩を組んでくる兄さん。

「そこまではっちゃけるなんて・・・・・・僕も恥ずかしがっていたらダメだな」

「す、すごいです・・・・・・・」

 お、おかしいな? みんなから白い目で見られてと思ったら、なんかすごい打ち解けられた雰囲気になってるんですけど・・・・・・。

「これは俺も負けられん! 伊達に、女子から変態と言われていないことをお前らに教えてやるぜっ!!」

 やる気を満ち溢れさせる兄さん。祐斗もギャスパーくんも囃し立てるように騒ぐ。訳が分からなかったが、どうやら白い目で見られていたのは僕の杞憂のようだった。僕もみんなのノリに合わせるように声を出す。

 こうして、男子だけの猥談が始まった。僕は獣耳メイド好きのドSというありがたい称号を頂くことになった。どう反応していいかわからなかった。白い目で見られなかったのでよかったのだが、なんか納得できなかった。そして、祐斗が意外とスケベだった。内容は祐斗の名誉のために語らないことにする。ただ一言いうならば、祐斗はなかなかマニアックだということだろう。

 ちなみにだが、今回語られた内容はお互いの名誉のために消して口外しないことをみんなで誓った。


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