ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第8話
前書き
今回は短めです。
Side 渚
翌日の放課後。
僕らは旧校舎の開かずの教室とされている部屋の前にやってきた。【KEEP OUT】大きく書かれたテープや、人払いなどを織り込んだ札が張られている。当の開かずの教室は外からも見えないように厳重に封鎖されている。記憶が確かなら、ここにもう一人の「僧侶」の人間と吸血鬼のハーフくんがいる。
「もう一人の僧侶はここにいるの。一日中この中にいて生活しているわ。一応、深夜には旧校舎限定で部屋から出てもいいけど、あの子は拒否しているの」
リアス先輩が呪術的な刻印の刻まれた扉に手をかざす。魔方陣が展開された。しばらくすると、封印が解かれる。
「ひ、引きこもりなんですか?」
兄さんが質問すると、リアス先輩はため息をつきながらうなずいた。
「中にいる子は眷属の中でも一番の稼ぎ頭だったりするのですよ」
朱乃先輩がリアス先輩を手伝いながらそう言う。ネオニートみたいだな。
「さて、開けるわ」
ついに封印が解かれて、扉を開く。
「イヤァァァァァァァァァァァァッッ!」
思わず耳をふさぐほどの絶叫が聞こえた。みんなも耳を押さえている。リアス先輩はため息をつきながら、朱乃先輩とともに中に入っていた。僕たちは外で待機。
『ごきげんよう。元気そうでよかったわ』
『な、何事なんですかぁぁぁぁ?』
中のやり取りが聞こえる。中世的な声だ。
『あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さあ、行きましょう?』
朱乃先輩の優しい声が聞こえる。しかし―――
『やですぅぅぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅぅ! 外に行きたくない! 人に会いたくないぃぃぃぃぃ!』
兄さんとアーシアさんは首をかしげ、ゼノヴィアは「?」を頭に浮かべている。事情を知っている祐斗と小猫ちゃんは、苦笑いとため息という反応だ。
そして、兄さんは意を決したのか中を覗き込むように足を踏み出す。僕も便乗して中を見ることにした。
部屋の中は可愛らしく装飾が施されていて女の子の部屋のようだ。だが、ギャスパー?くんは男だったはず。ただ、僕と同じではあるが。
どんどん中に入っていくと、金髪に赤い目をした人形のような顔立ちの男の娘が力なく座りこみ、後ずさりをしてリアス先輩たちから逃れようとしている。
「おおっ! 女の子! しかも外こk―――なんだよ、渚?」
「兄さん、よく見るんだ。あの子は彼女じゃなくて彼だ」
喜んでいる兄さんに、僕は真実を告げる。兄さんは「ピシッ!」と固まった。そして、鈍い動作でリアス先輩に確認を取る。
「ははは、う、嘘ですよね?」
「この子は男の子よ」
リアス先輩は首を横に振った。
「女装趣味があるのですわ」
しばしの停滞を含んで、兄さんは大声を上げた。
「えええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
「ヒィィィィィィィッッ! ごめんなさいごめんなさぁぁぁぁい!」
その声に反応して、謝り始めてしまった。兄さんは頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
「こんな残酷な話があっていいのか? 確かに渚も完全な美少女の外見だ。しかし、渚は双子だから大丈夫だった・・・・・・・。だが! 渚のほかにこんなやつがいるなんて! こいつも完全に美少女の外見で○○○がついているなんて・・・・・・」
なんか僕は悪くないはずなのに、悪いことにされているんだけど。
「女装趣味ってのがさらに残酷だ! そりゃあ、渚も小さい頃は女装していたし、似合っていたけど初めからわかっていたからよかった。でも、こいつは酷い! 知らなかったもんだからショックだ! 引きこもりなのに女装癖って意味わからんわ!」
ちょっと待て! 僕は女装したくてしていたわけじゃないんだぞ!? あたかも女装壁があるみたいに言うんじゃない!
「イッセー、あとでその話詳しく」
「リアス先輩!?」
そんな僕の黒歴史ともいえる物を見てどうしようと言うのだ!?
「だ、だ、だって、女の子の服の方がかわいいもん」
「かわいいもん、とか言うなぁぁぁぁぁ! クソッ! 野郎のくせにぃぃぃ! 返せ! アーシアと二人で金髪美少女『僧侶』を夢見たんだぞ! 俺の夢を返せぇぇぇ!」
極論だが、確認取らなかった兄さんが悪いだろう。
「・・・・・・人の夢と書いて、儚い」
小猫ちゃん・・・・・・ナイスだ。頭を撫でてあげよう。
「と、と、ところで、この方たちは誰ですか?」
リアス先輩が僕、兄さん、アーシアさん、ゼノヴィアをさした。
「あなたがここにいる間に増えた部員よ。新しく導入されたお試し眷属の『仮の駒』の兵藤渚、『兵士』の兵藤一誠、『騎士』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶』のアーシア」
紹介されたので、会釈をしておく。しかし、「ヒィィィィ! 人がいっぱい増えてるぅぅぅ!」と怖がらせる結果になった。
「お願いだから、外に出ましょう? ね? もうあなたは封印されていなくていいのよ?」
「嫌ですぅぅぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁっ! 怖い! お外怖い! どうせ、僕が出ていっても迷惑かけるだけだよぉぉぉぉっ!」
リアス先輩が語りかけるが、ギャスパーくんは首を横に振るだけ。兄さんは次第にいらいらしてきたのか、ギャスパーくん腕を引いた。
「ほら、部長が外に出ろって―――」
「ヒィィィィィィ!」
叫び声が聞こえると目の前が白く―――ならなかった。ギャスパーくんと僕を除く他のみんなが停止している中、僕は動きが止まっていない。疑問に感じていると視界に一振りの剣と銀が映り込んだ。『黄金色の聖約』だ。『白銀魔術礼装』もいつの間にか発動されている。まさかとは思うが『黄金色の聖約』の意思がやったのだろうか? 止まっていない僕を見て、ギャスパーくんは驚愕の表情だ。
そんなことを考えていると、他のみんなも動き出した。何やら違和感を感じているようで首をかしげている。
「おかしいです。何か今一瞬・・・・・・」
「何かされたのは確かだね」
起こった現象に兄さんとアーシアさん、それにゼノヴィアが驚いている。リアス先輩や朱乃先輩、祐斗と小猫ちゃんはため息をついていた。
「怒らないで! 怒らないで! ぶたないでくださぁぁぁぁい! そして、なんで動いている人がいるんですかぁぁぁぁぁぁぁ!?」
一斉に僕に視線が集中する。なんで剣を抜いているのかという表情をみんなが浮かべていた。
「いや、みんなが止まった瞬間に、なんか勝手に発動したんですよ」
僕の意思ではない。だから変な目で見ないでほしい。
「勝手に発動した・・・・・・? まあ、今は後にしましょう。イッセーたちに説明してあげるわ。その子は興奮すると視界に移したすべての物体の時間を一定の時間止められる神器を持っているの」
とりあえず、僕のことは後回しにされ、リアス先輩が兄さんたちに説明する。時間を止められるということで驚いていた。時間を停めるのは反則級の力だからだ。
「彼は自分の意志で神器を制御できないので、大公及び魔王様の命令でここに封じられていたのです」
朱乃先輩が補足説明をしてくれた。兄さんたちはしたり顔でうなずいている。まあ、時間停止を暴発されたら、たまったもんじゃないから仕方ない処置だな。
「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』。一応、駒王学園の一年生だわ。そして、転生前は吸血鬼と人間のハーフよ」
リアス先輩が泣いているギャスパーくんを後ろから抱きしめながらそう言った。
Side out
後書き
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