ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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キラーパンサーに転生
12命の選択
雪の女王さまは、本当は女王さまじゃなくても勝手に女王さまを名乗っちゃうだけあって、とっても強かった。
魔法が使えるドーラちゃんやベラさんとは違って、あたしにできるのは攻撃と身を守ることと、当たらないように避けることくらいだから。
頭を使うことは二人に任せて、あたしはドーラちゃんの指示に従って、身を守らないといけないときはそうして、攻撃できるときはどんどん攻撃していったんだけど。
一番強くて体力のあるドーラちゃんは、それなりにダメージを受けてても、効率を考えてすぐには治さないでそのまま戦い続けてることが多くて、見てるのがつらかった。
ゲームなら数字で割り切れることが、現実ではそうではないんだ。
これはほんとに現実の、命を懸けた戦いなんだって痛いほど感じながら、それでも攻撃の手を休める暇なんてなかった。
だってそんなことしてたら、ほんとに死んじゃうから。
あたしが油断してあたしが死ぬならともかく、あたしのせいでドーラちゃんが死んじゃうなんて、そんなのは嫌だから。
せっかく仲良くなれたベラさんが死んじゃうなんて、そんなのも嫌だから。
あたしの大事な人たちを守るためなら、目の前の生き物を殺すことに、ためらいなんてない。
これまでだってあたしは、自分が生きるために他の生き物を殺して、命を食べて生きてきたんだから。
食べる以外でも生きるために殺さないといけないことがある、ここはそういう世界だから。
なにを殺してなにを生かすか選び続けないといけないこの世界で、あたしが一番に生きていてほしいのは、ドーラちゃんだから。
そのためならあたしの命だって惜しくないのに、目の前の敵を殺すことにためらいなんて、あるはずがない。
どんな理由でも、あたしが攻撃の手を緩めたせいでドーラちゃんを死なせちゃうだなんて、そんなのは許せない。
傷付いたドーラちゃんの姿に密かに心を痛めながらも、ドーラちゃんがきちんと勝てるように計算して指示を出して、それにきちんと従って戦ったあたしたちが、負けるはずがなくて。
とうとう雪の女王さまは戦う力が尽きてその場に倒れて、あたしはもう止めを刺してもいいのかどうか、相手を威嚇しながらドーラちゃんの指示を待ってます。
こんな、人みたいな生き物を殺したことは、あたしだってまだないけど。
でもドーラちゃんのためならそれくらい、いつでもする覚悟はあるから。
ドーラちゃんに会わないまま大人になってたら、きっと心の底まで地獄の殺し屋キラーパンサーになってたんだから、あたしにそうさせることをドーラちゃんはためらわなくてもいいんだから。
だから、ドーラちゃん。
あたしに指示を、ちょうだい。
そんな気持ちで、待ってたのに。
ドーラちゃんは威嚇を続けて構えを解かないあたしには見向きもしないで、自分で雪の女王さまに向かっていきます。
……ドーラちゃん。
ドーラちゃんは人間で、まだ子供なんだから。
人間の子供はこんなことからは、本当は大事に守られてないといけないんだから。
あたしは元は人を殺す魔物で、そういう生き物なんだから、まだ子供でもあたしにさせていいんだから。
ドーラちゃんは、自分でそんなこと、しなくてもいいんだよ。
だけどあたしは、相手を殺すつもりで待ってたあたしは。
同じように覚悟を決めて向かってるドーラちゃんを、止めるのがいいかどうかわからない。
元はそんなことのない世界に、直接にはなにも殺さなくても生きていけた世界にいたから、こういう世界でこういうときにどうするのが正しいのか、逆にわからない。
本当はドーラちゃんにそんなことさせたくないけど、それでも黙って見守るしかないあたしの前で、ベラさんがドーラちゃんを止めます。
「ダメよ、ドーラ!殺しちゃ、ダメ!!」
……そっか、ベラさんは、止めるんだ。
ベラさんがそうしたからって、それが正しいのかどうかわからないけど。
でもベラさんは、そうするんだ。
ドーラちゃんが人みたいなものを殺さなくて済んで、あたしは少しほっとしたけど。
でも殺す理由がなくなったわけじゃないから、ベラさんもドーラちゃんにはさせたくないっていうなら、やっぱりあたしがやらないと。
あたしだってドーラちゃんにそんなことさせたくないし、大丈夫、あたしはできる。
そんなことを思いながら、また相手を睨み付けると。
「びどを、ごどじだごど、あでぃばでん!!」
人を、殺したこと、ありません?
……あれ?
あたしたちに死ねとか、言ってなかった?
人を殺す、危険な魔物なんじゃないの?
この、雪の女王さまだったひと。
逃がしたらまた他の誰かとか、あたしたちを殺しにくるんじゃなかったの?
もしかして、殺さなくても、本当に大丈夫なの??
ドーラちゃんが改めて、元雪の女王さまにお話を聞いたところ。
なんか、大丈夫みたいでした。
設定とかなんかよくわからないところがたくさんあったけど、とにかく、なんか大丈夫みたいでした。
よくわからないけど、いろいろとかわいそうなひとだったみたいです。
そこのところも含めて、ドーラちゃんがお話とお説教をしてくれたので、もう大丈夫だと思います。
オカマって言われたくないオネエさんはザイルくんを好きだったみたいで、初めはキレイな女の人みたいだったオネエさんのことを、ザイルくんも好きだったみたいだけど。
真実が明らかになって、いろいろと複雑みたいです。
あたしはなんだかよくわからなくなってきたので、あとはドーラちゃんに任せて毛繕いをしてようと思います。
あたしが全身を二回ほど念入りに整え終えて、さらに細かく手入れをしてみようかと三度目の毛繕いに入った頃、ドーラちゃんとザイルくんのお話は終わって、ザイルくんは帰っていったみたいです。
あたしは全然聞いてなかったけどザイルくんはなんだか感激したみたいだったし、ドーラちゃんとベラさんは楽しそうに笑ってるし。
きっと、全部が丸く収まったんだね!
うん、よかったね!
きっと、よかったんだよね!!
あとは早くフルートを持って、妖精さんの村に帰ろうね!
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