ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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キラーパンサーに転生
11ザイルくんと戦います
また洞窟の外に出て、せっかく暖まった体が冷えないように、またどんどんドーラちゃんが魔物を倒してくれて、どんどん先に進んで氷の館に着きました。
カギのかかった扉は、盗賊のカギの技法でドーラちゃんが開けて。
「ドーラ……。大丈夫、よね……?」
ベラさんがまたなにか心配してるけど、どうしたのかな?
中に入るのが、怖いのかな?
「だいじょうぶです!さんにんでたたかうのも、なれてきましたから!すこしくらい、あいてが、つよくても!」
うん、そうだよね!
確かにこの中の魔物は、外よりも強かったと思うけど。
練習を通してつちかったあたしたちのキズナの前には、ちょっと手強いくらいの相手なんて、敵じゃないよ!
ベラさん、大丈夫だから!
だから安心して、先に進もう?
あたしもお話はできないけど、そんな気持ちを込めてベラさんを見つめて。
「……そうね!そのために、来たんだものね!よーし、行きましょうか!」
うん、行こう、ベラさん!
気合いを入れ直した様子のベラさんが、扉の開いた館の中に足を踏み入れて。
「ザイルは、どっちかしら……って、きゃー!?」
氷の床で足を滑らせて、そのまま滑っていってしまいました。
あ、ベラさんが、ベラさんが!
一人で滑って行っちゃった!
ドーラちゃん、どうしよう!?
早く、助けに行かないと!!
ベラさんは心配だけどあたしが勝手に追いかけるわけにはいかないし、ベラさんの悲鳴を聞きながら焦ってドーラちゃんの顔を見上げると。
「モモ、いきますよ!まものもでるだろうし、ベラさんをひとりには、できません!」
「ニャッ!」
うん、ベラさんだって弱くはないけど、一人じゃやっぱり危ないもんね!
早く追いかけて、追いつかなくちゃね!
あたしたちは、仲間だもんね!
四つ足で氷の上を滑るなんて前世も含めて初めての体験だったけど、必死になってバランスを取りながら、先に行くドーラちゃんのあとを追いかけます。
ドーラちゃんとベラさんがなにかを叫び合ってるみたいなのを、聞いてる余裕はなかったけど。
なんとか転ばないで落とし穴までたどり着いて、そのままドーラちゃんに続いて穴に落ちていきます。
氷を滑るのは慣れないけど、これくらいの高さを落ちるのなら問題ないから。
猫科のケモノらしく余裕で着地を決めようとしたところを、ドーラちゃんに受け止められます。
あ、そっか。
ドーラちゃんのあとから落ちたんだから、ドーラちゃんの上に落ちるってことだよね。
ありがとう、ドーラちゃん!
ベラさんは、どうしたのかな?
なんだか、姿が見えないみたいだけど。
一人で先に進んじゃったのかな?
ベラさんはそそっかしいから、そんなこともしちゃうかもしれないけど。
でも、そんなに器用に進めそうには見えなかったけど。
あたしがドーラちゃんの腕の中できょろきょろしながらそんなことを考えていると、下のほうから声が。
「うう……重、い……早く、退い、て……!」
あ、そっか。
あたしがドーラちゃんの上に落ちたなら、ドーラちゃんはベラさんの上に落ちたってことだよね。
ごめんね、ベラさん!
今すぐ、どくから!
ベラさんの上からあたしとドーラちゃんがどいて、ドーラちゃんがベラさんにホイミをかけて。
ドーラちゃんがベラさんに謝ってる横で、あたしも項垂れてベラさんに向かってミュウミュウ言ってます。
ごめんね、ベラさん。
あたしもお話しできたら、ちゃんと謝りたいんだけど。
でも、わざとじゃないの。
ベラさんが心配で、早く追いかけないとって思ったの。
でも、わざとじゃなくてもやっぱり痛かったよね。
ほんとにごめんね、ベラさん。
「ドーラもモモも、私よりも小さいし。逆じゃなくて、良かったわ。私が潰しちゃったら、それこそ悪いもんね!」
……ベラさん、優しいなあ。
ベラさんの優しさに、ドーラちゃんもすっかり気合いが入ったみたいだし!
うん、あたしも頑張るよ!
ドーラちゃんのためだけじゃなくて、ベラさんのためにも、あたし頑張るね!
みんなで頑張って、ちゃんとフルートを取り戻そうね!!
ドーラちゃんがベラさんに氷の上でのバランスの取り方を教えてるのを聞きながら、あたしも一人で練習して。
四つ足なせいもあってか慣れれば全然難しいことはなくて、すぐに楽に滑れるようになります。
ベラさんもそのうちに上手に動けるようになって、みんなで声をかけあって気合いを入れて上の階に戻り、さらに先に進みます。
途中でベラさんが調子に乗りすぎちゃって、倒したホネの魔物が積み重なってるところに突っ込んじゃう、なんてこともあったけど。
ドーラちゃんとあたしに遠巻きにされてちょっと落ち込んでたベラさんも、敵への怒りでまたやる気を取り戻して。
あとはベラさんも落ち着いて、順調に魔物を倒し続けて、ザイルくんのいる場所に着きます。
ベラさんがザイルくんに大声で呼びかけて、そのあと二人は少しの間言い合いをしてたけど。
全く話を聞く様子のないザイルくんを見てドーラちゃんがベラさんを止めて、いよいよ戦闘開始です!
今まではあたしもベラさんもいなくても、ドーラちゃん一人でも本当は問題なかったけど!
ボス戦ともなれば、いくらドーラちゃんだって一人じゃ大変だよね!
うん、あたしも頑張るよ!!
頑張ったけど。
あたしも、頑張ったけど。
なんだかやっぱり、あたしいらなかったような気がする。
ザイルくん、あんまり強くなかった。
もしかして……弱かったかもしれない。
ドーラちゃんもそのまま倒しちゃえばいいのに、あんまりザイルくんが弱いからか、途中でブーメランからひのきの棒に持ち替えてて。
守りはドーラちゃんの魔法で固めてるし、ザイルくんの守備力はベラさんの魔法で下げきってるし……。
そのあとドーラちゃんとあたしで集中攻撃して、なんだかもう弱いものいじめみたいな……。
ここまでする必要、あったのかな……。
……ううん、そんな風にして倒したのに、それでもザイルくんは全然反省してないみたいだし!
きっとこれはこれで、必要なことだったんだよね!
全くわかってないザイルくんに、ドーラちゃんがこれからお説教を始めるみたいだし!
どう言ったらわかってくれるかなんて、あたしには全然わからないけど。
きっとドーラちゃんなら上手くやってくれるんだから、あたしはドーラちゃんを信じて待ってよう!
ドーラちゃんはやっぱり怒鳴ることなんかしなくって、静かにずっと言い聞かせてたから、あたしは途中からまた毛繕いに集中してて、あんまり聞いてなかったんだけど。
次の戦いがあるんだから、冷えた肉球もちゃんと血行をよくして、動きやすくしておかないといけないもんね!
ともかくあの、人の話を全く聞かなかったザイルくんが、いつのまにかすっかり丁寧な口調になって、ドーラちゃんの言うことに全部きちんと答えてます!
あのザイルくんでも、ちゃんとお話しすればわかってもらえるものなんだね!
すごいね、さすがドーラちゃん!
どうやってお話ししたのかな?
あたしも、もっとちゃんと聞いておけばよかったかな?
必要なら、あたしにもできるように。
……でも、お話ができないあたしには真似して試す機会なんてないだろうから、やっぱりいっか。
ドーラちゃんに聞かれてザイルくんが雪の女王さまの名前を出したとたん、辺りに邪悪な気配が漂います。
これは、次の戦いの気配だね!
ザイルくんは思ったよりもかなり弱かったけど、雪の女王さまならきっともっと強いだろうから!
今度こそ、あたしも頑張らなくちゃね!
雪の女王さまが女王さまじゃなかったり、女の人でもなくてオカマさんだったり!
なんだかよくわからない設定のお話もあったけど、そんなことよりも!
今度こそしっかりドーラちゃんを助けて、役に立ってみせるんだから!
どんなに強くたって、あたしは、あたしたちは負けないんだからね!!
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