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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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宣戦布告

 
前書き
祝・50話!
・・・え?今回は51話だって?
そういう細かい事は気にしない!
何てったって今回は、ルーファンが喜ぶかもしれないお話なのですから!
・・・関係ないけど、ルーファンってルーファスに似てるな・・・。 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドと同じくらい・・・もしくはそれ以上の大きさの屋敷が目に飛び込んでくる。
ここはハートフィリア邸。ルーシィの実家だ。
そしてそこに、ルーシィとルーは向かっている。

「!」

すると、使用人の女が2人に気づく。

「お、おお、おお・・・お嬢様ーーーっ!」

その女の一言で、庭師やメイドが一気に歓声を上げた。

「何じゃと!?」
「お嬢様だー!」
「お嬢様がお帰りになったぞ!」
「うわああ~ん!」

様々な声を上げながら、使用人達はルーシィの周りに集まっていく。

「お嬢様・・・よくご無事で・・・私、お嬢様が帰ってらして、本当に・・・うぅ・・・」
「スペットさん、心配かけてごめんなさい」

スペットと呼ばれた女性は、ルーシィに抱きつき涙を流す。
普段はこれでもかというほど空気の読めないルーも、さすがに少し後ろの方でその光景を眺めていた。

「お嬢様、東方からの新書が届いておりますですぞ」
「魔法学を怠ってはいませんかな?星霊魔法は信頼と愛の魔法・・・ムニャムニャ」
「ルーシィ様」
「お嬢様」
「お帰りなさい」
「1年もどこに行ってたんスか~」

尚もわらわらと集まり続ける使用人達。

「お嬢も年頃なんじゃい。駆け落ちの1つや2つ、のう?若さゆえの何たらってやつよ・・・」
「うんうん」
「駆け落ちじゃないですよ」
「そちらの男性がお相手じゃないんですか?」
「あ、僕は違うよ」

駆け落ちだと勘違いする使用人に変わらない笑みを浮かべてそう言うルー。
「・・・今はまだ、ね」という一言は誰にも聞こえなかった。

「ルーシィちゃま。魔法学を怠ってはいませんかな?ムニャムニャ」
「はい!それは大丈夫です!」
「私・・・私ィィィ!ぽおおおおっ!」
「ぽおー・・・て」
「あははは!」
「ルーシィちゃま。魔法学を怠っては・・・」
「ベロ爺、くどいぞ!てかお嬢様はこっちや」
「駆け落ちは罪じゃないんよ、お嬢・・・のう?」

ベロ爺と呼ばれるお爺さんは魔法学についてルーシィに聞くが、その先にいるのは涙を流すスペットだった。
そして変わらず駆け落ちだと思っているコック。

「皆、面白いし良い人なんだね」
「うん」

ルーにそう答え、ルーシィは少し目を閉じる。

(皆・・・変わらないな・・・)

すると、そこに若干慌てた様子の使用人が駆けてくる。

「お嬢様。旦那様が本宅の書斎まで来るようにと。お連れ様もご一緒に」
「僕も?」

ルーがこてっと首を傾げる。

(家出した娘が帰ってきたのに『部屋で待ってるから来なさい』か。あの人も変わらないわね)

使用人同様、変わらない父親に溜息をつくルーシィ。

「さあさあ、旦那様にお会いするのにそんな御古物じゃいけませんよ。お連れ様も」
「そんなのいいのに・・・」
「これ、新しい方だよ?」









その後、髪をアップにし桃色を基調としたドレスを身に纏ったルーシィは、本宅の書斎の前にいた。
その横にはダークグレーのスーツを着たルーがいるが、これでもかというほど似合っていない。
本人も堅苦しい恰好は嫌いらしく、やけに落ち着きが無かった。
・・・元々落ち着きのない性格ではあるが。

「失礼します、お父様」

ルーシィがそう言い、ルーが扉を開ける。
ルーシィを先に部屋に入れ、ルーは後に入り扉を閉めた。
ちなみにこれはティアから「いい?部屋に入る時は女を優先するの。他の事でも。レディファーストってやつね」と教えられていたからである。
そして部屋には体格のいい、ルーシィと同じ金髪の男が1人。

「よく帰ってきたな。ルーシィ」

その男こそが、ルーシィの父親にして幽鬼の支配者(ファントムロード)にルーシィを連れ戻すよう依頼した『ジュード・ハートフィリア』だ。

「何も告げず家を出て申し訳ありませんでした。それについては深く反省しております」

ルーシィは申し訳なさそうに頭を下げる。

「賢明な判断だ。あのままお前があのギルドにいたのなら、私はあのギルドを金と権威の力を持って潰さねばならないトコだった」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を『あのギルド』呼ばわりするジュードに、ルーの眉がぴくんと上がった。
ルーシィは目線を足元に落としている。

「やっと大人になったな、ルーシィ。身勝手な行動が周りにどれだけの迷惑をかけるのか、いい教訓になったであろう。お前はハートフィリアの娘だ。他の者とは住む世界が違うんだよ」

そう言って、ジュードはルーシィより少し後ろにいるルーに目を向けた。

「そういう訳だ。君がルーシィにとってどんな存在かは知らないが、もし付き合っているのなら諦めてくれ。君とは住む世界が違う。好きで居続けられても、はっきり言って迷惑なんだ」

自分の子でないからか、少しだけ口調が柔らかくなる。
が、ルーにとって落ち込むポイントがあったらしく、ルーは少し俯く。
ジュードはすぐにルーシィに目線を戻し、口を開いた。

「今回お前を連れ戻したのは他でもない。縁談がまとまったからだ」

縁談、という言葉にルーがピクッと反応する。

「ジュレネール家御曹司、サワルー公爵。以前からお前に興味があると言ってただろう」
「・・・言ってましたね」

サワルー公爵というのは、エバルーの様なハンプティ・ダンプティ体型で、何故か顔中に汗を掻き、どこか下心を感じさせるように手を動かし、この顔を見た10人が「あ、ブスだな」と思う顔をしている。
それを聞いたルーが姿も見た事のないサワルー公爵に怒りを感じたのは余談だ。

「ジュレネール家の婚姻により、ハートフィリア鉄道は南方進出の地盤を築ける。これは我々の未来にとって意味のある結婚となるのだ」
(何だよ、我々って・・・自分の商売が広がってほしいだけじゃないか。物は言いようだよ、全く)

ジュードの言葉にルーは不機嫌そうな表情になる。

「そしてお前には男子を生んでもらわねばならん。ハートフィリアの跡継ぎをな」

ルーシィは何も言わない。
ルーも何も言わない。
それを同意と受け取ったジュードは表情を変えずに口を開く。

「話は以上だ。部屋に戻りなさい」
「・・・お父様」

ルーシィはゆっくりと口を開く。
そして、言い放った。




「勘違いしないでください」



「!」

まさかの言葉にジュードは目を見開く。

「私が戻ってきたのは自分の決意をお伝えする為です。彼に来て貰ったのはその決意を聞いてもらう為・・・確かに何も告げず家を出たのは間違ってました。それは逃げ出したのと変わらないのですから。だから今回はきちんと自分の気持ちを伝えて、家を出ます」
「ルーシィ・・・?」

ジュードの声が震える。

「あたしはあたしの道を進む!結婚なんて勝手に決めないで!そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)には2度と手を出さないで!」

ルーシィはそう叫ぶと、着ていたドレスを勢いよく掴み・・・。



「今度妖精の尻尾(フェアリーテイル)に手を出したら、あたしが・・・ギルド全員があなたを敵とみなすから!」



ビリビリと、引き裂いた。
腰辺りまで引き裂き、ドレスの布が宙を舞い、落ちる。

「あんな事をしなければもう少しきちんと話し合えたかもしれない。でももう遅い。あなたはあたしの仲間を傷つけすぎた」

ルーシィは強い決意と意志のこもった目で、ジュードを睨みつけた。

「あたしに必要なものはお金でも綺麗な洋服でもない。あたしという人格を認めてくれる場所」

その右手の甲には、桃色の妖精の紋章。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもう1つの家族。ここよりずっとあたたかい家族なの」

ルーシィの言葉を聞くジュードは小刻みに震えている。

「わずかの間だけどママと過ごしたこの家を離れる事はとても辛いし、スペットさんやベロ爺やリボンさん・・・エイドさん・・・皆と別れるのもとても辛いけど・・・」

それを扉に張り付いて聞いていた使用人たちは涙を流す。

「でも・・・もしもママがまだ生きていたら・・・あなたの好きな事をやりなさいって言ってくれると思うの」

そう言うルーシィの背後に、彼女の母『レイラ・ハートフィリア』が見えた気がした。
ジュードは目を見開き、ルーシィはそんな父親に背を向ける。

「さよなら、パパ」

そう言い残し、ルーシィは扉の外へと消えていった。
部屋にはジュードとルーが残る。

「・・・君は、行かないのか?」

驚愕しながらも口を開くジュードをルーは見つめ、扉に向かって歩き・・・足を止めた。
そんなルーを怪訝そうに見つめるジュードに、ルーは口を開く。

「ルーシィ、泣いてた」

突然の言葉にジュードは特に反応を示さない。

「ファントムとの抗争が自分のせいだって知った時・・・それでもギルドにいたいって、泣いてた」

そう言葉を紡ぐルーの声にいつもの明るさはなく、真剣そのもので。
まるで・・・銃を握っている時のもう1つの人格のルーのように。

「抗争の間だって怖い事いっぱいあったはずなのに・・・終わるまで、泣かなかったんだ」

ルーの表情は読めない。
俯いているし、エメラルドグリーンの髪がルーの顔を覆い隠しているし、何よりジュードに背を向けている。

「アンタさ・・・自分の娘をこんなに泣かせて、しかも自分の商売に利用しようとしてるんだよ?自分のやってる事、解ってるの?」
「な、何を・・・」
「確かに僕は他人だよ。ハートフィリアの家には全く関係ない。でも、アンタは否定できないよ。だって自分で言ったでしょ?ジュネレールとかいう家の公爵と婚姻する事で鉄道は南方に築けるって」

ルーはルーシィと違い、庶民だ。
だから、お嬢様御曹司の世界の事は何1つ解らない。
でも、解らないなら解らないなりに、必死に言葉を紡いでいく。
そしてルーは振り返り、口を開き、叫んだ。




「これ以上ルーシィを泣かせるなら、僕はアンタを生かしてはおけない!」



その言葉にジュードは再び目を見開き、震える。
そりゃそうだろう。初対面の男に「生かしてはおけない」と言われたら、誰だってこんな反応をするのではないだろうか。

「悪いけど、僕は本気だよ。どんなギルドが来たって相手になってやる。ルーシィは僕にとって、大切な人だからね」

そう言って、扉を開く。
・・・が、途中で何かを思い出したのか「あ」と足を止めた。

「そうだったそうだった・・・大事な事言い忘れてた~」

もう呑気なルーに戻っている。
ルーはにっこりと、いつもの子犬の様に愛らしい笑顔で、ジュードを見つめた。

「迷惑だって言われても、僕はルーシィを好きで居続けるよ!」








その後、来た時と同じ服を着たルーシィとルーは祈るように手を組んだ天使像の前にいた。
その少し下の墓石に刻まれているのは『レイラ・ハートフィリア』の文字。
そしてその墓石を、ルーシィは少し悲しそうな目で見つめていた。

「・・・ねぇ、ルーシィ」
「ん?どうしたの?」

と、本宅を出てからずっと無言だったルーが口を開く。
ルーシィがルーに目を向け首を傾げると、ルーの黒い目がルーシィを見つめる。

「僕がルーシィの事好きでいても、迷惑じゃないよね?」
「・・・え?」
「僕、ルーシィの事ずっと好きでもいいんだよね?」

突然の言葉にルーシィの思考がストップした。
そりゃそうだろう。
だってこの言葉、ルーからすれば疑問を投げかけた事になるが、ルーシィからすれば・・・

(それってもう、告白じゃない)

が、そんな事に全く気づいていないのがこの空気クラッシャールーで。
ルーシィは急いで思考を再起動させ、口を開く。

「何でそんな事聞くの?」
「だって僕、ルーシィの事好きだから」
「!?」

どストレートで来た。
さすがにルーも自分の発言に気づいているのか、照れくさそうに頬を赤く染めている。

「笑顔で、元気で、ツッコみ上手で、将来の夢は小説家で、星霊魔導士で、時々残忍で、本が好きで、純情で、何にでも一生懸命で、色気が無くて、優しくて、笑顔の似合うルーシィが大好きだよ」

時々貶しているような発言もあるが、まぁそれは置いておいて。
ルーの武器であるいつもの愛らしさと、微量の大人っぽさと、ルーシィの知らない、人を引き付け魅了する雰囲気が混ざった笑みを浮かべ、ルーはルーシィを見つめている。
その笑顔はまるで、魔法ではない無自覚の魅了(チャーム)の様で。

(これ・・・無自覚だったらタチ、悪いわよ)

ルーシィは家出してギルドに入るまで、異性同棲問わず友達がいなかった。
その為、恋愛は未知の世界なのだ。

「ルーシィは?」
「え?」
「ルーシィは僕の事、嫌い?」

フッと、いつもの子供っぽさがルーから煙のように消える。
そういえば年上だったな、とルーシィが思っている間にも、ルーはルーシィに一歩近づく。
距離の近さに気づいた時には、ルーは首を傾げていた。

「・・・嫌い、かな」
「き、嫌いじゃないよ!」

しゅん、と落ち込むルーに、慌ててルーシィは言う。
一瞬子犬の耳と尻尾が見えたのは多分気のせいだろう。
と、それを聞いたルーはぱぁっと笑顔を浮かべる。

「じゃあ、好き?」
「え?」

再び思考がショートし、今度は先ほどより早く再起動する。
キラキラとした目でルーシィを見つめるルーに、ルーシィは少し考えてからゆっくり口を開いた。

「・・・解らない」
「?」
「あたしはルーが好きだよ。でもそれはルーの『好き』とは違う、仲間としての『好き』なの。だから・・・解らない」

それがルーシィの答えだった。
ルーはそれを聞いて少し考えると、微笑む。

「じゃあ、覚悟しといてね?」
「え?」

ルーシィが顔を上げると、ルーはスッと紋章の刻まれた右手の甲を手に取り、その紋章の中央辺りに軽くキスをした。

「!?」

ルーシィの顔がボッと赤くなる。
熟れすぎたトマト、とか、赤いペンキぶっ掛けたみたい、とか、熟れすぎたリンゴ、とか、ナツやアルカの炎の様、とかで例えるくらいじゃ足りないほどに。

「な、なななななな・・・っ!」
「ルーシィ顔真っ赤」
「う、ううううるさい!」

ルーはルーシィの右手を離すと、ウインクを1つ。

「宣戦布告。絶対にルーシィの『好き』を僕の『好き』と同じにしてみせるから・・・覚悟しといてね?僕、かなり積極的になるよ?」

そのルーの「宣戦布告」に対し、ルーシィが口を開こうとした、その時。

「「「ルゥシイイイイイイイイイッ!」」」
「ルウウウウウウウウウウウッ!」

向こうからナツ、グレイ、エルザ、アルカが走ってきた。

「えーーーーーーーーーーーーー!」
「アルカ、顔怖い」

そこからはいろいろ大変だった。
ハッピーはルーシィの胸に飛び込み、ナツは書き置きについて問い、その誤解をルーシィが解く。
それを聞いたナツとグレイ、アルカは「へ?」と言いたげな表情をし、エルザは堪えきれず笑いだした。
心配して損したというように地団太を踏むナツ、溜息をつくグレイ、混乱しまくって疲れたのか座り込むアルカ、腕を組み笑みを浮かべるエルザ、ハッピーはルーシィの胸に顔を埋め、泣く。
ルーシィは、幸せそうな笑顔を浮かべていた。

「母ちゃんの墓参り!?」
「でもってルーはその付き添い!?」
「そ♪」
「うんっ」
「え・・・ルーシィのお母さんて・・・」
「ハッピー、黙ってろ」

夕日に照らされながら、6人と1匹は歩いていく。
そんなルーシィ達を、書斎からジュードは見ていた。

「皆・・・心配かけてゴメンね」
「結局取り越し苦労だった訳か」
「グレイ、服」
「気にするな。早合点した私達にも非はある」
「マジでビビったぁ・・・」
「ハッピーなんかずっと泣いてたぞ」
「な、泣いてないよ!」

先ほどまでルーシィの胸に顔を埋めて泣いていたのは君だろう。

「それにしてもでけー街だな」

アルカの一言に、ルーシィは遠くの山を指さす。

「あ・・・ううん。ここは庭だよ。あの山の向こうまでがあたしん家」

ルーシィの発言に、4人は言葉を失った。

「あれ?どーしたの、皆・・・」
「お嬢様キター」
「さり気自慢キター」
「ナツとグレイがやられました!エルザ隊長!アルカ副隊長!一言お願いします!」
「空が・・・青いな・・・」
「何言ってんだエルザ・・・今は夕方だから、空は赤いぞ・・・」
「エルザ隊長とアルカ副隊長が故障したぞー!」
「あははは・・・」

ルーシィの言葉に敬礼するナツとグレイ、腰に手を当て空を見上げるエルザとアルカ、そんな皆を見て苦笑いを浮かべるルー。

〈天国のママへ あたしはね〉

ルーシィとルーの目が合う。
「宣戦布告した事は内緒だよ」というように自分の口に右人差し指を当てるルーに、ルーシィは頷いて見せた。

〈皆とじゃなきゃ生きていけないと思う。だって妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもう、あたしの一部なんだから〉 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ふふふふふふ・・・遂に!ルーが!ルーシィに!告白しました~!わ~、パチパチパチパチ・・・。
という訳で、今度からルーシィとルーは一緒に行動する事が多くなります、多分。
あ、もちろんルーはティアの事も大好きですよ?仲間として、尊敬の対象として。
そしてまさかのティアさん出番ナシ!

感想・批評、お待ちしてます。 
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